情報処理の聴覚系はつかわずに視覚系だけをつかって楽譜を見るように書籍を見ることが可能です。
世界的指揮者の小澤征爾さんがオーケストラを指揮するテレビ番組が放映されていました。
演奏会当日、会場で舞台にでる直前に小澤さんは、かなりの速さで交響曲の総譜(スコア)をはやめくりしながら一気に見ていました。最後のページまで20秒ぐらいで見おわっていたようです。
実際に音にだして演奏するとその曲は40分ぐらいかかるのですが、楽譜を見るのでしたら約20秒しかかかりません。
そのとき小澤さんは、音楽を聞くのではなく見ていたのであり、聴覚ではなく視覚でとらえていたのです。つまり音を処理する回路(聴覚系)はつかわずに光を処理する回路(視覚系)をつかったのです。楽譜(音楽の記号)がわかれば音楽も見ることができるというわけです。
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たとえば読書でも同様なことが可能です。
ある書籍を、かなりの速度でページをめくりしながら最後まで一気に3分間で見てしまいます。文字がわかれば書籍(言語)は見るだけでも理解することが可能です。とくに漢字は音には無関係で(発音しなくても)意味がわかります。
しかし音読や黙読をした場合は1〜2時間かかるかもしれません。黙読とは、声帯はつかわずに頭のなかで音を発する方法です。
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音符や文字を音に変換することは可能です。しかし一方で音にはあえて変換しないで、音符や文字を見るだけにすることも可能です。楽譜を高速で見るように書籍を高速で見るということです。
ここに速読法の原理とおもしろさがあらわれています。人間の情報処理の仕組みにかかわる問題です。
音楽は、美術が視覚系の芸術であるのに対して聴覚系の芸術であるといってよいでしょう。しかし上記のように楽譜に着目し、人間の情報処理の仕組みという観点から音楽をとらえなおすといろいろおもしろいことがわかってくるとおもいます。
▼ 参考文献
栗田昌裕著『頭がよくなる速読術』中経出版 [Kindle版] 、2014年4月10日
頭がよくなる速読術 (中経出版)