発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:速読法

紙の新聞を読むときには、まず、紙面のなかのフレームとそれらの空間配置をとらえて、それからそれぞれのフレームのなかの記事を読むようにします。

IMG_3099
写真1 新聞の紙面


最近は、ウェブサイトでニュースを見る人がふえたために紙の新聞はあまり読まれなくなりましたが、紙の新聞には、ウェブ・ニュースにはないとてもおもしろいつかい方があります(注)。

写真1は、2015年10月4日付の朝日新聞朝刊の1面です。

わたしは紙面を見るときに、いきなり文字を読みはじめるのではなく、まず、それぞれの記事のフレーム(枠組み)とそれらの空間配置を見るようにしています。写真2にはフレームを仮に記入してしめしてみました。

 
IMG_3099b
写真2 フレームとそれらの空間配置をとらえる(実際に線をひく必要はない)


このようなフレームをまずとらえてから、それぞれのフレーム中の文字を見るようにしています。フレームのなかに文字がうめこまれていると見なします。

フレームがとらえられていると、ここのところはざっと見るだけしようとか、ここはくわしく読もうなどという判断を空間的におこなうことができます。これをすべての紙面についておこないます。

するとそれぞれの記事(文字)はそれぞれのフレームの中に位置づけられることになり、紙面の大局的な構造のなかに各記事が空間配置されているということになります。空間的に記事をとらえられるので記憶にものこりやすくなります。

たとえるならば、フレームと空間配置つまり構造をつかむことは森を見ることであり、個々の記事を読むことは木を見ることです。森を見てから木をみて、また森を見ればよいのです。そして森と木とが同時に意識のなかに存在するようになればなおよいです。

このような訓練を毎日つづけていると、大きな展望のなかでそれぞれの記事を把握できるようになります。同時に速読法の訓練にもなります。 


このようにするためには、紙面を見るときに紙面からやや(約1mぐらい)はなれて見ると紙面の大局と構造が瞬時につかみやすくなります。

そうではなくて紙面にかなりちかづいてしまうと文字だけをおいかけることになり紙面の全体像は見えません。この場合は、全体像をつかむためには個々の部分をつみあげていかなければならなくなり時間と労力がかかります。また記憶にものこりにくくなり、したがって情報の活用もしにくくなってしまいます。


▼ 注
朝日新聞などは、ウェブサイトで紙面がみられる「紙面ビューワー」というサービスもおこなっています。

▼ 参考文献
栗田昌裕著『頭がよくなる速読術』中経出版 [Kindle版] 、2014年4月10日
頭がよくなる速読術 (中経出版)

▼ 参考記事
ニュース情報の構造物として新聞紙をとらえる





わたしたちが本を読む場合、高速で一気に読む方法と時間をかけてゆっくり読む方法があるとおもいます。

短時間で高速で一気に読んだ方が細部の理解はやや不確かになるかもしれませんが、本の全体像や構造はつかみやすいです。一方、時間をかけてゆっくり読めば読むほど細部はよくわかりますが、全体像や構造はその分つかみにくくなります。木は見えるが森は見えないといった感じです。

ひとつのアナロジー(類比)をだしましょう。

たとえば東京から大阪まで移動するとします。飛行機にのって空をとべば短時間で高速で移動ができ、地上の景色が全体的に見えます。新幹線で移動すればやや時間はかかりますが、地上の様子がよりよく見えてきます。自動車で移動すればもっとこまかくいろいろなことが見えてきます。しかしもしあるいて行ったら時間はとてもかかりますが、非常にこまかくあれもこれも何もかもが見えてきます。しかし全体像は一気には見えません。

このようなことから、短時間で高速でおこなうと全体像が見えやすく、時間をかけてゆっくりおこなうと細部が見えてくるということがいえます。時間をかければかけるほど物事の詳細がわかってくるのです。

したがって時間のかけかたと見え方のちがいの対応関係はつぎのようになります。ここでいう見え方とは空間的な見え方のちがいですから、大局観と小局観といってもよいです。

短時間(高速):全体が見えやすい(大局観)
長時間(低速):細部がよく見える(小局観)

そもそも速読法の第1の目的は本の全体像や構造をつかむことにあります。いそがしいことを理由にしてやみくもに速く読めばよいというわけではありません。速読によって本の見え方が従来の読み方とはちがってくることに気がつくことが大事でしょう。

また博物館の展示などを見るときやフィールドワークをおこなうときにも同様なことがいえます。

高速で全体(大局)を見るか、低速で細部(局所)を見るかは課題や目的に応じてつかいわけるべき方法といえるでしょう。


中村元著『ブッダ入門』は釈迦の生涯についてわかりやすく紹介しています。一方、中村元著『古代インド』はインドの古代史について概説しています。どちらもいわゆる宗教書ではなく学者の研究結果を記述した学術書であり、このような学術書がすぐれているのは事実と仮説とをわけて書いている点にあります。情報処理と問題解決の観点からは事実を知ることが何よりも重要です。

今回、これらの伝記と歴史書とをあわせて読んでみて理解が一層ふかまりました。歴史書だけを読んでいるとつかみどころがなくて何だかボヤーッとした感じがすることがありますが、あわせて伝記も読むことにより焦点がさだまり、より鮮明に時代が見えてきます。ピントがあうといった感じです。またその人が生きた時代の前後の時代もとらえられるので視野が大きくひろがります。

150425a 伝記と時代

ある人の生涯は、その人が生きた時代の歴史的背景あるいはその時代の潮流と無縁では決してなく、むしろ、背景と共鳴したり時代の潮流のなかで生かされていたとかんがえた方がよさそうです。伝記と歴史書とをあわせて読んで全体像をつかみ、その人とその時代の本質をとらえることが大切だとおもいます。

150425b 伝記と時代

本書にかぎらず、あらたに何かを理解しようとおもったら、その中心人物の伝記とともに、その時代を記述した歴史書をあわせて読んでみることをおすすめします。この方法は、比較的短時間でその分野について認識をふかめることにもつながるとおもいます。



▼ 引用文献
中村元著『ブッダ入門』春秋社、1991年9月10日
ブッダ入門 
中村元著『古代インド』(講談社学術文庫)、講談社、2004年9月10日
古代インド (講談社学術文庫) 


▼ 関連記事
1枚のイメージで物語をあらわす - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(6)「ムーガパッカ本生」-
物語とイメージと場所をむすびつける - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(7)「四相図」-

時間と空間を往復する - 物語から場所へ、場所から物語へ -

世界遺産で仏教伝来の足跡をたどる -『世界遺産で見る仏教入門』-
ブッダの生涯と時代的背景を理解する - 中村元著『ブッダ入門』-
都市国家の時代の末期を検証する - 中村元著『古代インド』-
伝記と歴史書をあわせて読む - 釈迦の生涯と生きた時代 -


学研教育出版が、『学研まんが世界の歴史』の電子書籍版の配信をはじめました。第1巻〜第3巻までは、通常価格は 500 円(紙の単行本842円)のところが、セールス価格 200 円(税込み)で大変お買い得になっています。セールス期間は4月15日までです。

このシリーズは、人類がきずいてきた世界の歴史を15の時代にわけ、それぞれの時代を生きぬいた代表的な人物を中心にして物語をえがいています。とてもわかりやすくまとめられており、大人が見てもたのしめる内容になっています。

第1巻『古代文明のおこりとピラミッドにねむる王たち』はつぎの5章から構成されています。

1 人類が出現する前
2 人類の登場
3 メソポタミア文明
4 エジプト文明
5 ユダヤ教の成立

今回は、漫画が、速読法や記憶法の教材としてつかえることを強調したいとおもいます。

たとえば、ある敷地(土地)にまとまった5棟の建物群がたっているとイメージします。それぞれの建物には上の5つの章の看板がついています。電子書籍の各ページを見ながら、それぞれのページは階(フロアー)であり、漫画のひとコマひとコマは部屋であるとイメージします。そしてページをめくりながら1階、2階、3階と建物をのぼっていくイメージをします。

章は「建物」、ページは「階」、コマは「部屋」と空間的構造的なイメージをえがくことがポイントです。そして、各コマあるいは各ページをなるべく高速で見ていきます。読むというよりも見た方がよいです。視覚で情報をキャッチするのです。

このようにするとインプットがすばやくでき、インプットされた内容が記憶にのこりやすくなります。人がおこなう情報処理において、見たり読んだりすることはインプットに相当し、記憶はプロセシングととらえます。

こうすると何かをアウトプットするときに「あ!そういえば」といろいろなことが思い出しやすくなり、必要な情報がうかびやすくなります。

日本では、大抵の分野の漫画が出版されていますので、とくに何かあたらしい分野を学習したいとおもったときに漫画が役にたちます。


▼ 引用文献
『学研まんが世界の歴史』(電子版)学研教育出版、2015年3月


本多勝一著『極限の民族』は、イニュイ民族(カナダ=エスキモー)ニューギニア高地人アラビア遊牧民と生活をともにして書かれたルポルタージュであり、当時はほとんど知られていなかった「極限の民族」のくらしぶりを生き生きとえがきだしています。近代化がすすんで今ではもう見られなくなった「極限の民族」の姿の貴重な記録でもあります(注)。
 
本書は文化人類学の専門書ではなく、朝日新聞に連載されたルポをまとめたものであり、一般の読者が読んで十分にたのしめる内容になっています。初版は、1967年に、本多勝一著『極限の民族』(朝日新聞社)として刊行されました。
 
目次
第一部 イニュイ民族(カナダ=エスキモー)
 「ウスアクジュ」への道
 極北を生きぬく知恵
 アザラシ狩り
 犬を甘やかしてはならぬ
 カリブー狩り
 雪の家
 太陽の沈まぬ国
 セイウチ狩り
 エスキモーの心
 極北の動物たち
 遊猟の民
 
第二部 ニューギニア高地人
 意外なジャングル
 モニ族の簡素で家庭的な生活
 石器時代も案外不便なものではない
 アヤニ族とナッソウ山脈横断の旅へ
 ニューギニア高地人に襲われた日本軍
 ダニ族の団体生活と奇妙な男たち
 ホモ=ルーデンス
 
第三部 アラビア遊牧民
 アラビア半島内陸の砂漠へ
 親切で慎み深いベドヰンたち
 ラクダに人間が飼育されるような生活
 砂漠の夜の主人公は野生動物である
 「虚無の世界」としての大砂丘地帯
 羊飼いも重労働でなかなか大変だ
 親切で慎み深いベドヰンの実態
 ベドヰンの方が普遍的で、日本人こそ特殊なのだ
 『月の沙漠』の夢と現実
 
朝日文庫版へのあとがき・補記
 
 
第一部「イニュイ民族(カナダ=エスキモー)」では、イニュイ民族が極寒の環境下で生きていけるのは、彼らが普通の人とはちがう特別な体質をもっていたからではなく、極寒の世界に適した衣服や住居や狩猟法を開発、環境に適応した生活様式を生みだしたからだということが読みとれます。
 
第二部「ニューギニア高地人」では、一転して、赤道下のジャングルが舞台になり、そこには基本的に裸でくらす人々がいました。自然環境と一体になったくらしぶりが一層顕著です。
 
ペニス=ケースや指切りなどの変わった風習もありますが彼らは人食い人種ではなく、石の包丁やナイフや斧をつくりだし、また火をおこし石むし料理をつくるなど、自然環境をたくみに利用しながらくらしています。彼らの生活様式は人類の進化をかんがえるうえでもとても参考になります。

非常に原始的な生活をしているようですが、生肉を食べているイニュイ(カナダ=エスキモー)よりも多様性がありゆたかな生活様式をもっているような感じがします。ゆたかな自然環境の恩恵を享受しているということなのでしょう。
 
第三部「アラビア遊牧民」では、これもまた一転して、アラビアの広大な乾燥地帯が舞台となり、極北とも、ジャングルともちが砂漠の異空間が展開していきます。
 
本多勝一さんの言葉を引用しておきます。 
 
これほど大量に飲み、汗を出しても、決して「滝のような汗」ということにはならない。あまりにも乾燥しているから、汗は出る片端から蒸発してしまう。
 
エスキモーと共に生活したとき、私たちは「人間は、未開・文明を問わず、民族を問わず、結局おじものなんだ」という実感を強く覚えた。本当に、心の底から「世界は同胞だ」と思ってもいいような、感傷的気分にさえなって、私たちは北極圏から帰った。この実感は、ニューギニアのモニ族・ダニ族と生活したときも、強められこそすれ弱まりはしなかった。だが、ベドヰンはどうか。ここではエスキモーとは正反対に、「人間は、なんて違うものなんだろう」という実感を強く覚える。民族が違い、歴史が違うと、かくも相互理解が困難なのか。これこそ、本当に「異民族」なのだ。
 
 
以上のように、本書は、イニュイ民族(カナダ=エスキモー)、ニューギニア高地人、アラビア遊牧民のそれぞれを比較することによって、それぞれの民族の特徴が一層鮮明にうかびあがる効果をもっています

本書の中身は朝日文庫の3冊に分冊されて販売もされていますが、それらを別々にゆっくり読むよりも、本書を一気に読んで全体を一望したほうが3の民族のちがいがよくわかり理解がすすみます。わたしたち日本人が知らない「極限の民族」についてすこしでも認識をふかめておくことは世界や地球の多様性を知るためにとても役立ちます。


▼ 引用文献
本多勝一著『極限の民族』(本多勝一集 第9巻)1994年2月5日
極限の民族 (本多勝一集)  

▼ 関連図書


▼ 注:取材時期について
イニュイ民族(カナダ=エスキモー)、ニューギニア高地人、アラビア遊牧民のそれぞれの取材時期は、1963年5月~6月、1964年1月~2月、1965年5月~7月でした。 

▼ 関連記事
民族と生活様式と自然環境をみる - 本多勝一著『極限の民族』(2)-
極端を知って全体をとらえる - 本多勝一著『極限の民族』(3)-

電子書籍が急速に普及しています。一方で、ドキュメントスキャナーの普及もすすんで紙の書籍のデジタル化(データ化)も簡単にできるようになりました。書籍のデジタル化は時代の潮流になっています。

電子版書籍にきりかえれば、たくさんの本を一度にあつめて保存して利用することが簡単にできます。

たとえば何かの課題が生じた場合、その課題に関する本を5〜10冊あつめます。電子書籍版があれば電子書籍できで購入し、紙の本は ScanSnap でスキャニングしてデジタル化(PDF化)してストレージに入れておきます。

そして1冊1冊をゆっくり読むのではなく、5〜10冊をまずは一気に読んでしまい、その課題に関する情報の全体像をつかんでしまいます。ゆっくり読むよりも一気に読んだほうが全体や構造がよくわかります。

あとは、必要に応じて必要な書籍をとりだして読みなおすようにします。

電子版書籍の利点は、一度よんだ本をいつでもどこでもとりだして読みなおすことができることです

あ! そういえばあの本にこんなことが書いてあった」というように、ふっと記憶がわきあがってくることは誰にでもよくあることです。その瞬間がとても重要です。その瞬間にその思いをとらえ、すぐにその書籍をとりだして確認する。書籍がデジタル化(データ化)してあればそれが簡単にできるのです。

一気に読む。あとは必要なときに読みなおす。電子版書籍は、一気読み読みなおしを容易にします。こうして読書スタイルやワークスタイルは変わっていきます。

このようなことが簡単にできるようになってくると、課題の決め方がとても重要であることがあらためてわかってきます。電子書籍はやみくもにたくさんあつめればよいというものではありません。情報があふれている時代だからこそ、心の底から本当にとりくみたい課題は何なのか、自分自身の課題をしっかり見さだめて情報収集をしたほうがよいでしょう。


▼ 関連記事
電子書籍で多読する - 和田稔著『本好きのための Amazon Kindle 読書術』-
紙の資料や書籍をデジタル化して活用する

和田稔著『本好きのための Amazon Kindle 読書術』は電子書籍 Amazon Kindle の入門書です。

最近、電子書籍による出版が増えてきています。なかでも Amazon Kindle はその代表格といえるでしょう。

わたしも、電子書籍で本をよむ割合が徐々に増してきました。書店(実店舗)で立ち読みした本を Amazon Kindle で買ってしまうというケースもでてきました。

本書は、クラウドサービスのつかいかた、蔵書管理、ハイライト機能、その他のウェブサービスなどについての基本的な使用法を説明しています。

目次はつぎのとおりです。

第1章 Kindleと電子書籍の基礎知識 
第2章 KindleはAmazonのクラウドサービスだ! 
第3章 ソーシャルメディア時代のアウトプット読書術 
おわりに 〜読書でしか出会えない情報がある

Amazon Kindle で電子書籍を読むためには手持ちのタブレットスマートフォンにアプリを入れれば読むことができます。あるいは PC・Mac でも読むことができます(注)。あるいは Kindle 端末を買います。わたしは、Kindle Paperwhite という端末を最初に買って、その後 iPad Air を買いました。

電子書籍の大きな利点は、いつでもどこでも本が読め、結果として多読ができることや、一度よんだ本をいつでもどこでも必要なときに読みなおすことができること、また本を保管しておく場所がいらないことなどがあります。こうして手軽に読書ができるようになります。

電子書籍の場合は立ち読みはできませんが、最初の数ページだけを無料サンプルとして読むことができます。おもしろそうな本があったら無料サンプルをまずは読んでみるのがよいでしょう。

電子書籍が読書スタイルを今後おおきく変えていくことは間違いありません。


▼ 文献
和田稔著『本好きのための Amazon Kindle 読書術』(Kindle版)金風舎、2014年6月16日
本好きのためのAmazon Kindle 読書術: 電子書籍の特性を活かして可処分時間を増やそう! AmazonKindle術シリーズ


▼ Amazon Kindle 電子書籍リーダー

注:Kindle サポート(無料アプリ) >>

Mac でも Kindle 電子書籍が読めるようになりました。

Amazon.co.jp は、Windows むけの「Kindle for PC」にひきつづいて、Mac むけの電子書籍リーダー「Kindle for Mac」(無料アプリ)を公開しました(注)。これで320万冊以上ある Kindle 電子書籍が Mac でも読めます。 

本文検索、辞書参照、ハイライト、ほかの端末との動機などさまざまな機能がつかえ便利です。

電子書籍の世界はこれから急速にひろがっていくでしょう。

Amazon.co.jp は 2015年1月21日に、Windows 用 電子書籍閲覧ソフト「Kindle for PC」日本語版の提供を開始しました。これで、Kindle 電子書籍がPCでも読めるようになりました。ただし、Mac OS X にはまだ対応していません。

今までは、スマートフォンでは画面が小さくて読みにくかったり見にくかった電子書籍が、PCの大きな画面で読めるようになりました。今後は、スマートフォンとPCがあれば、タブレットはかならずしも必要はなくなるのではないでしょうか。


スマートフォンで読みはじめた本の続きをPCで読むなど、いつでもどの端末からでも、前回よみおえた箇所から読書を再開できます。

また、電子書籍の本文中にマークしたハイライト一覧などは、サインインすれば、下記ウェブサイトでも見ることができます。



電子書籍市場は着実に成長をつづけていて、2013年度には市場規模が1000億円をこえ、今後も伸び続けると予測されています(読売新聞)。現在、Kindle ストア 日本語版では約30万冊の和書をとりあつかっているそうです。

本書は、勉強や学習の方法・技術について体系的に解説しています。

目次はつぎのとおりです。

第1章 勉強は楽しいものだ
第2章 勉強はスピーディにできるものだ
第3章 勉強は簡単にできるものだ
第4章 勉強をすればするほど元気になる
第5章 勉強はよく覚えられるものだ
第6章 勉強は役立つものだ

印象にのこった言葉を書きだしてみます。

能力を開発する際にはその能力を支える諸機能について、①自覚、②制御、③発展という3段階を実現することが重要です。これを「能力開発の3段階」といいます。(p.14)

ひとまとまりの学習ファイルをつくる。(p.43)
 
速読で情報を素早く入力する際に重要なことは、「確実に情報を入れる」ということです。(p.50)

「大・中・周」の目で本を見る(p.58)
最初はまず「ページの大きさ」を意識して眺めていただきた。このときのものの見方を「大きな目」と呼ぶ。
次に、段落のなす「形」を意識して眺めよう。
さらに、文字の群れがなす模様をとらえるようにページを眺めてみよう。

速めくりで学習範囲の大局を速やかにとらえる (p.64)

意識には表面意識と潜在意識とがあり、潜在意識は本人が自覚しないうちに95%以上の情報処理を行っています。これが高まると、大量の情報をすぐに処理できるようになります。(p.66)

「感動、不思議、発見、意外体験」が多かった人は、潜在意識の魚がよく繁殖しています。(p.75)

新規性があり、重要性もある情報に関しては、必ず「要点」を見出して、自分なりの要約をしておきましょう。(p.84)

「本は家、ページは部屋」と見なして読書をする (p.86)

出力をすることで、内面が統合される (p.93)

目次を毎日呼んで全体像を得る (p.110)

空間認知力を導入すると学習は簡単になる (p.118)

一芸を極めると見識力は高まります。
何か1つの分野で、深く学習したり、多様な経験をしておくと、別な分野でも適応が容易になるのです。(p.196)


第1章では、勉強や学習に関する基本的な考え方がのべられています。第2章では「速読法」について解説しています。第3章では「情報処理」の基本について解説しています。第4章では「健康法」について解説しています.第5章では「記憶法」について解説しています。第6章では、勉強法がさらに役立つことについてのべています。

本書の特色は、速読法・記憶法・健康法などを、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の体系のなかに位置づけて体系的に解説しているところにあります。つまり、速読法・記憶法・心象法・健康法・速書法などは、情報処理の一環として、学習という課題のもとで体系的に実践できるのであり、またそうすべきなのです。

たとえば、教科書や参考書を見る・読むことは、心のなかに情報をインプットすることであり、理解し記憶することなどはプロセシング、試験で答案を書く、小論文を書く、要点を書くことなどはアウトプットにあたります。

 インプット:教科書や参考書を見る・読む、など
 プロセシング:理解する、記憶する、考察する、など
 アウトプット:試験で答案を書く、小論文を書く、要点を書く、など


このように、たとえば、入学試験や資格試験を受験することは情報処理の実践的訓練としてとらえなおすことができ、このようにとらえなおせば各種試験を能力開発のために有効に活用することができます。試験会場はアウトプットの場であるわけです。

こうして学習のできる人は、年をかさねても、あたらしいことをインプットし、情報処理のしくみを改善し、よりよいアウトプットをだしていくことができます。つまり、何歳になっても、あたらしいことをまなび、心をととのえ、人生を改善していくことができるのです。学習は、子供や若い人だけのものではありません

ポイントは、学習も情報処理の一環であることを再認識し、情報処理の方法を身につけ、心の仕組みを改善していくことでしょう。速読法・記憶法・心象法・速書法などはそのための具体的な技術です。

また、自分の潜在意識を最大限に生かすためには、まず第一に、自分が本当にすきな分野、心底興味がある分野の学習からはじめることが重要です。このことにまず成功すれば、あとは大方うまくいくでしょう

なお、第4章では健康法として、「指回し体操」「眼球運動」「呼吸法」「手の運動」「足指の運動」「肩回し」「アゴの運動」「肩の急速上下運動」などが紹介されています。すぐに効果があらわれますので、勉強につかれたとき、あるいは情報処理の場をととのえたいときにやってみるとよいでしょう。


文献:栗田昌裕著『「栗田式」超スピード勉強法トレーニング―』PHP研究所、2004年9月10日

ポーラ美術館のコレクションのなかから、19-20世紀のフランスの風景画を特集して、北部から南部までのフランス各地にわけて紹介、モネと印象派の画家たちの旅20世紀の画家たちの旅、さらに想像の世界の旅に案内してくれる風景画集です。

2007年9月〜2008年3月にポーラ美術館で開催された展覧会の図録を書籍として出版したものです。

画家たちが実際に旅し、えがいた場所によって風景画を分類していて、えがいた場所や土地とのむすびつき、その土地がはたした役割に焦点をあてています。

目次は以下の通りです。

I. パリ近郊 -近代風景画の揺籃
II. パリを離れて -自然との対話
III. 南へ - 光、色彩、エキゾティシズム
IV. 想像の旅

本書は、それぞれの風景画とともにフランスの地図を掲載していて、その風景の場所を地図上で特定できるところに特色があります

フランスに行ったことがある人は旅の記憶を想起しながらたのしむことができ、これから行く人にとってはフランス風景ガイドになるでしょう。

1ページが単位になり、画家・題・地図・解説文・写真・風景画がセットになっていてレイアウト的にもとてもわかりやすい構成になっており、旅をしながら風景を見るように、ページをめくってたのしむことができます。

IMG_1246


情報処理の観点からいうと、風景を見るようにページをめくることは速読法に通じます

地図上の特定の場所にむすびつけてイメージをとらえることは空間記憶法に通じます

風景をえがいたり、想像したりすることは心象法そのものです

いうまでもなく画家がえがいた風景画は、外界の風景をそのままうつしとったものではなく、心のなかに外界を一旦とりいれて(インプットして)、それを編集・加工(プロセシング)、その結果を絵画としてアウトプットしたものです。風景画とは、画家の心のなかを通りぬけてきたものであり、それは画家の情報処理の結果です。情報処理の観点からみるとこれは心象法にあたり、 画家はいわば「心象法のプロ」です。

このように本書は、旅によって、速読法や記憶法や心象法などに総合的にとりくめることをおしえてくれます

わたしたちが実際に旅をしたときも、風景を見て、写真をとったりスケッチをしたり、また、印象的な風景を記憶して心のなかにとりこんだり、あるいは自由に想像の世界をふくらませたりして、内面世界を構築していけばよいのです。本書を味わい参考にして、あるいは実際の旅をして、心の世界をさらにゆたかにしていきたいものです。


文章化(情報のアウトプット)をするためには、国語辞典や類語辞典に常日頃からなじんでおくのがよいです。

そのためにおすすめできるのが「速めくり」訓練です。

たとえば、角川書店の『類語国語辞典』の全ページを、できるだけ速くめくりながら最後まで一気に見てしまいます。読むのではなくて見るのです

これにより、この辞典の構造(構成)を空間的物理的につかむことができます。この辞典には、よくできた分類語彙表があり、これをつかってこの辞典がつくる語彙分類体系(全体像)をイメージすることもできます。

それに対して、今回の「速めくり」は、ページがつくりだす物理的な構造を実際に見て、全体像をつかむのです。

こうして、語彙分類体系のイメージにくわえて「速めくり」訓練をして辞典の全体構造をつかんでおけば、単語を検索したときに(普通に辞書をひいたときに)、構造の中に単語を位置づけて理解することができます。つまり、単語(要素)の空間配置がわかるようになるわけです。辞典のなかに掲載されている単語は構造(入れ物)のなかの要素に相当します。

これは、単語の言語的理解に空間的理解もくわえることになり、結果的に、意味とは、空間的な位置関係で決まってくることもわかってきます。

この「速めくり」訓練は類語辞典のみならず、一般の書籍にも応用することができます。たとえば、「速めくり」をしてその本の大局的な構造を空間的にまずつかみ、読書あるいは記憶法によって、本のなかのいくつかのキーワードを記憶すれば、全体構造のなかにキーワードを位置づけて理解することができ、記憶が定着し、キーワードが活用できるようになります。


参考文献:栗田昌裕著『頭がよくなる速読術』

サッカー日本代表のザッケローニ監督が12日、ワールドカップ(W杯)ブラジル大会にのぞむ日本代表メンバー23人を発表し、テレビ・新聞などで報道され話題になっています。

サッカーは、情報処理の観点から見てもおもしろいスポーツです。

サッカーの選手や監督・解説者は、サッカーボールを中心視野でおいながらも、周辺視野をフルにつかって、周囲にいるほかの選手のうごきもとらえ、ピッチ全体を見るようにしています。つまり、大きな視野で全体を常に見ています。

全体をまるごと見る(インプットする)ことは観察や速読の基本でもあります。大きな視野でその場全体をまるごと見て、自分の内面にすっぽり情報をインプットする方法は観察法や速読法の訓練になるばかりでなく、情報処理の本質である並列処理にも発展します。

サッカーを見るとき、 中心視野でボールをおいつつも、同時に、周辺視野をつかって(目をキョロキョロさせないで)、選手・ピッチ(フィールド)・サポーターの様子などをどこまでとらえられるでしょうか。周辺視野でフィールド全体をとらえることがで必要です。やってみてください。

眼力のある人は、ボール(中心)のうごきだけではなく、ボールからはなれた選手のうごきも同時に視野の中に入っています。中心とともに周囲と背景も同時に見ることができるということです。

プロの監督や選手や解説者はすべてを正確に見ています。すると予測もできるようになり、ゲームの局面も見えてきます。すぐれた監督や選手は先をよむことができる人です。

サッカー観戦がすきな人は、ピッチのなかのあらゆる情報を周辺視野もつかって同時においかけ、複数のうごきを同時に見る練習をしてみるとよいでしょう

野球よりもサッカーの方がこのような訓練のためには役立ちます。

今回のW杯は、ブラジルで64年ぶりの開催となり、6月12日(日本時間13日)に開幕するそうです(朝日新聞、2014/5/12)。


▼関連ブログ
視野をひろくし個と全の両者をとらえる 

高度情報化社会をむかえ、速読法や記憶法を情報処理の観点からとらえなおすことが重要になってきました。

速読法と記憶法とは相互補完の関係にあり、両者をくみあわせて実践することにより相乗的な効果をあげることができます

具体的には、速読で概略をつかみここぞというところをしっかり記憶するのです。

速読法では本を読むのに極力時間をかけません。その第1の目的はその本の概略をつかむことであり、大局を見ることであり、要点を瞬時につかむことです。

概略をつかむことには時間をかけないことがポイントであり、そもそも大局を「見る」ことには時間はかからないのです。

しかし、重要な事柄はしっかり記憶しておかなければ知識をつかいこなすことはできません。そこで今度は、多少時間がかかっても、「ここぞ」という重要な箇所(部分)はしっかり記憶するのです。

ここでは、「ここぞ」の選択が重要になってきます。課題によって人によって、おなじ本を読んでも「ここぞ」はちがってきます。

「ここぞ」という重要箇所を選択するためにも大局を見る必要があるのです。大局が見えれば選択しやすくなりますが、大局を見ないで選択すると、あとで迷路にはまります。

たとえば、1冊を速読し(大局を見て)、ここぞというページを何ページか選択して、そこに関しては記憶法をつかってしっかり記憶します。写真や図表があれば記憶しやすいでしょう。
 
あるいは、課題をきめて、その課題に関する本を10冊ぐらい一気に速読します。そして、これという重要な本や気に入った本を2〜3冊選択し、それに関してはしっかり記憶するという方法がよいでしょう。

速読する技術を解説した本です。速読ができるようになれば、「膨大な情報を、高速に取り組んで素早く理解し、的確に残して臨機応変に活用する」ことができるようになります。現代の高度情報化社会にあってはとくに重要な技術です。

速読は、従来の音読・黙読とはちがい、空間のなかで視覚で文章をとらえることによって可能になります。以下に本書の要点を書きだしてみます。

速読力で得た重要な情報を記憶し蓄積することは、知的情報処理の根幹を築き、記憶して想起すること自体が快感を生みだす。

従来の読書で使う場所「言語脳」は作業が遅く、加速が困難であり、記憶容量も少ない。

それに対して「視覚脳」は、加速が容易で、記憶容量も膨大で、知能全体の高まりを生み、さららに心身のさまざまな領域とつながって効果を生みだす。

あらゆる知的な情報処理には、「入力→処理→出力」という一連の働きがある。
 「入力」とは情報を入れること(=読むこと)。
 「処理」とは情報を内部で独自の仕方でとらえること(=理解すること)。
 「出力」とはとらえた結果に基づいて反応すること(=活用すること)である。

栗田式速読法は、その一連の知性の働きを、「分散入力→並列処理→統合出力」という新しい方式に進化させて、情報処理能力を加速するオリジナルな技術である。

速読では、大脳の中を情報が流れる情報の筋道を「空間的な経路」に変え、情報の流れを空間的に制御する。

読書の進化の4段階により、「音の読書」から「光の読書」へ進化を果たす。
 「かたつむり読書」
 「尺取り虫読書」
 「面の読書」
 「蝶の読書」
「蝶の読書」とは、頁の広がりを空間の出来事と見なして読む方式である。

速読をしたら、すぐに振り返って想起し、内容を書き出してみよう。このとき、書かれた内容が、どこに書いてあったかという位置(場所記憶)がともなうようにする。

中心視野だけをつかうのではなく、周辺視野を開発し、網膜の全域で対象をより精密に見る能力を高める(周辺視野の開発)。

対象のもつ大局的な情報と局所的な情報を同時に入力できる目をつくる。これは 大きな目と小さな目を同時に働かせることでもある(ホロニックな見方の開発)。

情報の階層性を理解し、ホロニックな目を獲得できると、人生観ががらりと変化する。

視覚の場を利用して、心の中を再構成していく。人間は視覚に関連するニューロン(神経細胞)が圧倒的に多い生物なので、見てわかるという能力は非常に強い。

以上のように、文章を音読・黙読するのではなく、文章を視覚的にとらえ、視覚に関連する領域を活性化させることが重要です。このことがわかると従来の音読・黙読をいくらはやくしても速読にはならないことがわかってきます。

このように視覚をきたえて、空間の中で対象をとらえ、心の中も空間化すれば、記憶力や想起力・想像力も強化され、並列的な情報処理ができるようになり、さまざまなアイデアも生まれやすくなるでしょう。


文献:栗田昌裕著『頭がよくなる速読術』中経出版、2010年10月23日
 
頭がよくなる速読術-...

頭がよくなる速読術-...
価格:1,019円(税込、送料込)

楽天Kobo電子書籍ストア
楽天ブックス 


【送料無料】 頭がよくなる速読術 / ...

【送料無料】 頭がよくなる速読術 / ...
価格:1,404円(税込、送料込)

楽天市場


関連ブログ:速読の近道は風景の見方にある 〜 栗田昌裕著『これは使える!【図解】栗田式速読トレーニング』〜

本書は、速読法を身につけるためのトレーニング本です。

多種多様な情報があふれる今日、速読法は、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の中の第一場面、すなわち心の中に情報をインプットする方法としてとても有用です。私も長年、速読法(栗田式SRS速読法)の訓練をしています。

本書で私がおもしろいのとおもったのは、「速読の近道は風景の見方にある/写真を一分間見て、最大の情報を得る」(14ページ)から、「新聞の紙面を風景としてとらえて速読する」(32ページ) へとつらなり、「『画像メモリ』を自由に活用できるようにする」(56ページ)へと深化、そして「立体的に対象を見て視覚的知能を高める」(76ページ)に発展するところです。

こうして速読法の訓練は、眼力訓練から記憶法の訓練にもつながっているのです。

このような流れのなかで、「『きちんと見る』ことと、周辺視野で『大きく見る』こととを同時におこなう訓練」がくりかえされていきます。

著者は、「本を読んでわかるということは、読者の内面と本のページの上の情報との間に共鳴が生じることです。だから、速読力を高めるには共鳴力を高めることが大事なのだ」とおしえています。

「速読の訓練が、直観力を磨き、大局をとらえる訓練になってい」て、「潜在能力を最大限に開発するのに役立つ方法」になっています。こうして、能力開発の入口として速読訓練がなされていくのです。

他書とちがって大判で図解がみやすく、とてもわかりやすいです。速読法の入門書として本書をおすすめします。


文献:栗田昌裕著『これは使える!【図解】栗田式速読トレーニング』PHP研究所、2005年4月27日
 

楽天市場で買う

本ブログの課題のひとつである情報処理は「インプット→プロセシング→アウトプット」という3つの場面からなりたっています。そのなかのインプットとは、様々な情報を自分の心のなかに取り入れることです。

そのインプットの仕方には、簡単な方法からむずかしい方法まで3つのレベルがあります。

初級レベルのインプットは読書です。すでに体系化されている情報を自分の心にインプットします。そのために速読法を訓練するのもよいです。

中級レベルとしては、インターネット・新聞・雑誌・テレビなどから二次的断片情報を自分の課題にそって収集し読みこみますます。 断片情報があつまっただけではよくわからないので、 断片を編集したり統合したり体系化したりする作業が必要になってきます。ややむずかしいです。

上級レベルとしては、フィールドワークや実験をおこない一次情報を収集し読みこみます。フィールドワークは現地調査とよばれることもあります。みずから主体的に行動をおこさななければなりません。それぞれの専門分野ごとにやり方があり上級者向けです。専門学校や大学で専門的な訓練をうける必要がある場合が多いです。

インプットの訓練としは、まずは、読書あるいは速読からはじめるのがよいでしょう。
スポンサーリンク

↑このページのトップヘ