発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:縄文

ユーラシア大陸から日本列島へ人と文化が流入し「堆積」することにより日本の礎が形成されてきました。
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遮光器土偶(縄文時代晩期、前1000〜前400年)
(東京国立博物館本館、平行法で立体視ができます) 
(1)引いて見よ!(2)寄って見よ!(3)名を付けよ!。「問題解決の3段階」としてモデル化できます。
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日本の基層文化である縄文文化に注目することによって、自然と人間が共生するためのヒントがえられます。
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国指定重要文化財 深鉢形土器(火炎土器)
新潟県長岡市 馬高遺跡、縄文時代中期(約5千年前)
(交差法で立体視ができます)
 
縄文人は物に執着していなかったようです。縄文土器から、広域文化圏の形成や縄文人の精神性をよみとることができます。

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深鉢型土器(火炎型土器)(新潟県指定有形文化財)
新潟県津南町沖ノ原遺跡、縄文時代中期(約5千年前)
(平行法で立体視ができます)
縄文時代の信濃川下流域には共通文化圏がひろがっていました。そのシンボルが火炎型土器でした。シンボルだけでなく文化圏にも心をくばることが大事です。

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国宝 深鉢形土器(火焔型土器)
新潟県十日町市笹山遺跡、縄文時代中期(約5千年前)
(交差法で立体視ができます)

火焔型土器は芸術品ですが、他方で食料を煮炊きする実用品でもありました。生活のなかで縄文人がはぐくんだ高度な精神性をそこからよみとることができます。

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港川遺跡(沖縄)でみつかった男性頭骨(左)と女性頭骨(右)(2万年前)
(交差法立体視ができます)
後期旧石器時代に日本列島でくらしていた人々は、手をつかいこなしてさまざまな道具をつくりだしていました。創造的な能力は、すべてのホモ・サピエンスが本源的・潜在的にもっている能力です。

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角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』全15巻を一気に見れば日本史の大きな流れをつかむことができます。


角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』は KADOKAWA が創業70周年を記念して刊行したあたらしい学習漫画です(注)。歴史の大きな流れをつかむことを主眼にして編纂されてるのが最大の特色です。ベストセラーになり、累計発行部数で120万部をこえる売れゆきとなっているそうです。


第01巻 日本のはじまり ●旧石器~縄文・弥生~古墳時代
第02巻 飛鳥朝廷と仏教 ●飛鳥~奈良時代
第03巻 雅なる平安貴族 ●平安時代前期
第04巻 武士の目覚め ●平安時代後期
第05巻 いざ、鎌倉 ●鎌倉時代
第06巻 二つの朝廷 ●南北朝~室町時代前期
第07巻 戦国大名の登場 ●室町時代中期~戦国時代
第08巻 天下統一の戦い ●安土桃山時代
第09巻 江戸幕府、始動 ●江戸時代前期
第10巻 花咲く町人文化 ●江戸時代中期
第11巻 黒船と開国 ●江戸時代後期
第12巻 明治維新と新政府 ●明治時代前期
第13巻 近代国家への道 ●明治時代後期
第14巻 大正デモクラシー ●大正時代~昭和時代初期
第15巻 戦争、そして現代へ ●昭和時代~平成


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本書は小説ではなく、あくまでも学習漫画ですので受験勉強や社会人の復習用としてつかえます。ほかの類書とはちがい最新の研究成果が反映されているのもよいです。たとえば鎌倉時代の成立は現在では1192年ではありません。




歴史は、最初の段階では学習漫画でまなぶのがよいです。漫画(イメージ)をつかって日本史の大きな流れをとらえてから、その後で教科書(テキスト)を読むと理解がしやすいでしょう。

大きな流れをつかむためには細部にはとらわれないで、本書の全巻をなるべく短時間で最後まで一気に見てしまった方がよいです。本書では、権力欲や出世欲・名誉欲などがからんだ人間くさいストーリーが順をおってすすんでいくので、全体の流れが、理屈ではなくスッキリと意識の中に入っていきます。

日本という国は、世界的にもめずらしく、外国に侵略されて植民地になったことがなく、また歴史の厳密な断絶がなく現代にいたっています。「飛鳥時代→奈良時代→平安時代→鎌倉時代→室町時代→江戸時代→近現代」という時代の転換はいわば "政権交代" の歴史であったのだと感じられます。このような一本の流れが、今日の日本人の特質やかんがえ方や行動様式に通じていることがよくわかります。




このように歴史全体の流れを大づかみにできたら、つぎに第2段階目として教科書(テキスト)を今度は読んでみます。イメージ(漫画)で大局をつかんだら、今度は言語で詳細を確認するという方法です。

教科書の記述はしばしば理屈っぽくて無味乾燥に感じられることがありますが、全体のストーリーがわかっているのでそれぞれの出来事の位置づけや意味がわかるでしょう。要所要所の年号も「語呂あわせ」をつかっておぼえればよいです。イメージ(漫画)でとらえたストーリーがより鮮明になってくるとおもいます。筆記試験でも点がとれるにちがいありません。

テキストを読むときには、ふるい方から順番にたどっていく必要はありません。ふるい方からの順番は第1段階目で漫画をつかってすでに認識できているのですから。第2段階目でテキストで詳細をしらべるときには、自分のもっとも興味のある時代からしらべていけばよいのです。とりあえず自分が好きだと感じるところをふかく勉強してみるのがよいでしょう。

歴史学習のおもしろさは、自分の興味がある時代を掘りさげて理解するところにもあります。そのような「掘り下げポイント」を自分自身で見つけるとあらたな展開がおこります。掘りさげポイントを掘りさげていくと疑問がさらに増えてきて、ますます勉強したくなってきます。歴史学習の醍醐味です。

そして機会をみて歴史の "現場" に実際に行ってみるのです。そのような史跡にはおもしろい情報がたくさんころがっているはずです。戦国時代の古戦場跡などはおもしろいかもしれません。




このように第2段階でテキストを見たりして詳細がわかってくると、歴史のイメージは相当に大きくふくらんでくるとおもいます。漫画にはえがかれていなかった部分も自分なりに想像できる(イメージできる)ようになるでしょう。こうして第3段階目では歴史は想像であるということになってきます(下図)。


160209 漫画
図1 歴史理解の3段階モデル(1)


つまり次のとおりです。
  1. イメージをつかって大きな流れをつかむ
  2. テキストつかって詳細をしらべる
  3. 考察する

160209 流れ

図2 歴史理解の3段階モデル(2)

 
この3段階の方式の根底には〈大局観→小局観→本質追究〉という流れがあります。

このような方法は世界史を知るときにもつかえるでしょう。さらに地球の歴史を知るためにもつかえます。歴史とはたのしいものです。
 



割り付けのよい縄文土器は、全体像をイメージしてから文様をつける作業をはじめたことがわかります。

東京国立博物館 平成館の考古展示がリニューアルされ、縄文土器の展示も一新されました。ギャラリートーク「縄文土器の見方 大きさ・形・文様」では縄文土器の文様についても解説がありました。

下記の写真は平行法で立体視ができます。



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深鉢形土器(青森県八戸市南郷区島守字荒谷出土)
縄文時代(後期)・前2000〜前1000年



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壺形土器(秋田県北秋田市七日市出土)
縄文時代(後期)・前2000〜前1000年



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深鉢形土器(東京都板橋区 小豆沢貝塚出土)
縄文時代(晩期)・前1000〜前400年


縄文土器の文様は様々であり、割り付けがよくできている土器とそうでない土器とがあるそうです。仙台湾周辺の土器はいつの時代のものでも割り付けがよくできていて、きれいな文様のものが多いとのことです。割り付けがよくできていない文様は最後につじつまあわせをしているため文様がみだれています。

文様をつける作業をはじめる前に、どのような文様にするか全体像がイメージできていたかどうか、製作者の意気込みあるいはレベルがみてとれます。

たとえば絵をかくときでも、左上からかきはじめて、そこが完成したら右上をかき、つぎに真ん中をかき、つぎに左下をかき、最後に右下を完成させるといような直列的なかきかたはしないでしょう。まずスケッチをかいて下絵をかいて、そして全体的に色をつけていくでしょう。

つまり全体像あるいは完成品をまずイメージして、それから具体的な作業を実施するのがよいわけです。そして作業がおわったら全体をふりかえってうまくいったかどうか検証します(下図)。


151219 実施
図 全体像をまずイメージする


このような3段階は、仕事や問題解決の基本的な原則としてつかえます。



全体像をイメージしてから作業を実施する - 東京国立博物館・考古展示(3)-

東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)


▼ 平行法(パラレル法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。



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東京国立博物館 平成館 考古展示室入口(交差法で立体視ができます)


縄文土器を見ると、縄文人の当時の暮らしぶりを想像することができます。

東京国立博物館・平成館の考古展示室がリニューアルされました。展示も一新され、また展示ケースのガラスの反射・写り込みがほとんどなくなり展示品がとても見やすくなりました。下の写真は展示品の一部です。交差法(注1)で立体視ができます。
 


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片口付深鉢形土器(埼玉県ふじみ野市 上福岡貝塚遺跡出土、重要文化財)
縄文時代(前期)・前4000〜前3000年



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鉢形土器(神奈川県横浜市港北区下田町出土)
縄文時代(前期)・前4000〜前3000年



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壺形土器(秋田県鹿角市 大湯環状列石出土)
縄文時代(後期)・前2000〜前1000年



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異形片口土器(青森県七戸町長久保出土)
縄文時代(後期)・前2000〜前1000年



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鉢形土器(茨城県稲敷市 福田貝塚出土)
縄文時代(晩期)・前1000〜前400年



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注口土器(茨城県利根町 立木貝塚出土)
縄文時代(晩期)・前1000〜前400年



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香炉形土器(千葉県銚子市余山町 余山貝塚出土)
縄文時代(晩期)・前1000〜前400年



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異形台付土器(千葉県印西市天神台出土)
縄文時代(晩期)・前1000〜前400年



今回は、ギャラリートーク「縄文土器の見方 大きさ・形・文様」に参加しました。講師は特別展室主任研究員の品川欣也さんでした。

次のような話をしてくれました。

大学で以前おしえていたときに、自宅にある鍋や釜・食器などを学生にすべてスケッチしてもらい、それらを見せあうという実習をしていました。するとその学生がどのような生活をしているのか想像できます。一人暮らしなのか、実家で暮らしているのか、自炊しているのか・・・。


これとおなじで、わたしたちも土器を見て縄文人の生活をまずは想像するところからはじめた方がおもしろいです。最初から知識をえようとしたり理屈でとらえるのではなくみずからまずは想像してみるのです。

たとえば深鉢には水を入れていた。浅鉢で煮炊きをしていた。浅鉢に料理をもっていた。土器についたススの跡から調理をかなりやっていた。台付き鉢はお供え用? お酒も飲んでいた?・・・

「自分の方にひきよせて想像してみる」というアドバイスもありました。それぞれの土器を見ながら、自分だったら何につかうかを自由に想像してみるのです。これは、博物館のたのしい利用法のひとつでもあります。

たとえばこの土器では石焼ビビンバがつくれる。うどんをゆでる。ステーキを焼いてみる。野菜をもりつけたらおいしそうだ・・・




ウエブサイトなどでしらべると縄文人の暮らしぶりのイメージなどがすぐに検索できますが、そのような既存のイメージを見る前に自分自身でいろいろ想像してみることはおもしろいですし、その方が想像力をつよめる訓練になります。

想像することは情報処理でいうとプロセシングをすすめることであり、プロセシンのなかでもこれはかなり重要な過程です(下図)。みずからまず想像してみて、それから専門家がえがいたイメージを参照してみるという順序をとるとよいでしょう。

151217 想像する
図 想像することはプロセシングの重要な過程
 

▼ 東京国立博物館
平成館




いのちがもえる - 特別展「縄文 ― 1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(1)-
時代のピークと土器のモデル - 特別展「縄文 ― 1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(2)-
国宝土偶と精神文化 - 特別展「縄文 ― 1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(3)-
作品とともに展示空間もみる - 特別展「縄文 ― 1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(4)-
土器をみくらべる - 特別展「縄文 ― 1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(5)-
特別展「縄文―1万年の美の鼓動」(東京国立博物館)(まとめ)

東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)


▼ 注1:交差法(クロス法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。


▼ 追記
わたしがそもそも縄文時代に注目したひとつの理由は、縄文人は、自然環境と調和した生活をしていたため環境保全のためのヒントがそこからえられるにちがいないとかんがえたからです。



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東京国立博物館・平成館1階の考古展示がリニューアルされました。展示品が一新されただけでなく、展示ケースのガラスのうつりこみがなくなり大変みやすくなりました。考古ファンの方は必見でしょう。

ギャラリートーク「縄文土器の見方」に参加しました。

土器をみて縄文人の当時の生活を想像することはとてもたのしいことです。

また文様の割り付けがよくできている土器とそうでない土器があるそうです。仙台湾周辺の縄文土器はいつの時代でもよくできているそうです。よくできた文様は、つくりはじめる前に割り付けをよくかんがえていたということです。

縄文人は自然環境と共生してくらしていたので環境保全という観点からも興味がわいてきます。


▼ 東京国立博物館
平成館




▼ 関連記事
全体像をイメージしてから作業を実施する - 東京国立博物館・考古展示(3)-

東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)



ニール=マクレガー著『100のモノが語る世界の歴史』は「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」(注1)の関連解説書です。展覧会のショップなどで売られている図録(注2)よりもはるかにくわしく各作品について解説しています。「大英博物館展」での体験を言語をつかって確認し、認識をさらにふかめたいという人におすすめします。

「大英博物館展」は人類史を体験的に概観できるまたとない機会になっています。具体的なモノを通して理屈ではなく視覚的にまなべるのが大きなポイントです。

『100のモノが語る世界の歴史』(解説書)は、第1巻『文明の誕生』・第2巻『帝国の興亡』・第3巻『近代への道』という全3巻構成になっていて、「100のモノ」すべてについてきれいなカラー写真とくわしい解説が掲載されています。

第1巻『文明の誕生』では、200万年前の簡素な道具を出発点にしてヒトがいかに人になり、文明を誕生させたかをみることができます(注3)。

目 次
第1部 何がわれわれを人間にしたのか(二〇〇万年前~紀元前九〇〇〇年)
 ホルネジュイテフのミイラ
 オルドゥヴァイの石のチョッピング・トゥール
 オルドゥヴァイの手斧
 泳ぐトナカイ
 クローヴィス尖頭器
 
第2部 氷河期後 ー 食べものとセックス(紀元前九〇〇〇~前三五〇〇年)
 鳥をかたどった乳棒
 アイン・サクリの恋人たちの小像
 エジプトの牛の粘土模型
 マヤ族に伝わるトウモロコシの神の像
 縄文の壺
 
第3部 最初の都市と国家(紀元前四〇〇〇~前二〇〇〇年)
 デン王のサンダル・ラベル
 ウルのスタンダード
 インダスの印章
 ヒスイの斧
 初期の書字板
 
第4部 科学と文学の始まり(紀元前二〇〇〇~前七〇〇年)
 フラッド・タブレット - 洪水を語る粘土板
 リンド数学パピルス
 ミノアの雄牛跳び
 モールドの黄金のケープ
 ラムセス二世像
 
第5部 旧世界、新興勢力(紀元前一一〇〇~前三〇〇年)
 ラキシュのレリーフ
 タハルコのスフィンクス
 中国の周の祭器
 パラカスの布
 クロイソスの金貨
 
第6部 孔子の時代の世界(紀元前五〇〇~前三〇〇年)
 オクソスの二輪馬車の模型
 パルテノンの彫刻 - ケンタウロスとラピテース族
 バス - ユッツのフラゴン
 オルメカの石の仮面
 中国の銅鈴


1 道具がわれわれを人間にした
人類はアフリカで誕生しました。わたしたちの祖先はそこで最初の石器つまり道具をつくり、肉や骨や木をきざみました。わたしたち人類は物をつくることによって、ほかのすべての動物とはことなる存在になり、さまざまな環境に適応し、世界各地へと居住範囲をひろげていきました。

オルドゥヴァイの石のチョッピング・トゥール」(タンザニア)は人類が意識的につくった最古の物の一つであり、これが、すべてのはじまりです。


2 狩猟採集の生活から農耕定住の生活へ
1万年前の最終氷河期のおわりに、世界のすくなくとも7つの場所で農耕が発達しました。それまでの狩猟採集の生活から、作物をそだて、動物を家畜化したことにより、大勢の人々が一緒にすめるだけの余剰食糧が生みだされ、人類は定住生活をするようになりました。

こうしてわたしたちは、均衡のとれた生態系の一部としてのくらしからはなれて、環境に手をくわえ、自然を支配しようとこころみはじめました。

エジプトの牛の粘土模型」は、人々が野生の牛をどうにか飼いならす方法をみつけたことをしめしています。食料を手に入れるために一頭一頭を追いかける必要はなくなりました。


3 都市と国家が誕生する
5000年前から6000年前には世界で最初の都市と国家が北アフリカとアジアの河川流域に出現しました。支配者が登場し、富の不平等が生じてきました。増大する人口を管理するための手段として文字も開発されました。

都市が象徴する富や権力を維持するためには、それらをねらう人々から守ろうとしなければなりません。いったん裕福になると裕福でありつづけるために戦いつづけなければならなくなりました。

ウルのスタンダード」(イラク南部)は、都市をゆたかにする権力が戦争で勝つ権力とむすびついていたことをしめしています。古代メソポタミアの都市のうちもっとも有名なのはシュメールの都市ウルでした。

ウルのスタンダードをのこした人々は、最古の筆記の一例「初期の書字板」(イラク南部)ものこしました。内容はビールと官僚制度についてです。うまいビールをのむことをたのしみにして働く人々は当時すでに出現していました。都市を統治しようとした支配者は、文字によって民を統制しようとしました。


4 数学や科学、文学が生まれる
都市と国家が出現し、文字が生まれたことによって、科学や数学、高度な技術を要する物、また文学が生まれました。そこには権力を誇示する目的もありました。

リンド数学パピルス」(エジプト)は、古代エジプト人が数をどのようにかんがえていたかをしめしています。行政の実務で遭遇する課題を解決するために、さまざまな場面でつかわれたであろう計算がしめされています。全部で84の問題が掲載されています。


5 大規模な戦争がはじまる
紀元前1000年ごろ、世界のいくつかの地域に新興勢力が生まれ、既存の都市国家をほろぼしました。戦争は、まったくあらたな規模でおこなわれるようになりました。

紀元前700年には、イラク北部を拠点としたアッシリアの支配者がイランからエジプトまでにまたがる帝国をきずいていました。これは桁外れの軍事力の成果でした。

ラキシュのレリーフ」(イラク北部)をみると、最初の場面は侵略軍が行軍する様子、つづいて包囲された町での血みどろの戦闘場面となり、やがて死者と負傷者および無抵抗の避難民の列へとうつります。最後には、勝利した王が占領地を勝ちほこって支配する様子がみられます。アッシリアの軍事作戦が圧倒的な勝利であったことは、この浅浮き彫りの彫刻をみればあきらかです。


6 精神の国家 - 精神文化が発達 -
ソクラテスはアテネの人々にどう異議をとなえるかを説きました。孔子は中国で和の政治哲学を提唱しました。ペルシャ人は広大な帝国内でことなる民族が共存するための方法をみいだしました。中米では、オルメカ人が歴・宗教・芸術をうみだしました。

中国の銅鈴」がつたえる主たるメッセージは所有者の権力だったにちがいありませんが、それはまた社会と秩序に関する見解もあらわしていました。


本書は、「大英博物館展」を実際にみてから読むととてもわかりやすく、世界史を一層ふかく理解することができます。展覧会の会場での歩行や視覚などの実体験を本書をつかって言語(文字)で確認するという手順をふむとよいでしょう。言語は確認の道具として非常に有用です



▼ 引用文献
ニール=マクレガー著(東郷えりか訳)『100のモノが語る世界の歴史 1 文明の誕生』筑摩選書、2012年4月
100のモノが語る世界の歴史〈1〉文明の誕生 (筑摩選書)
※ この解説書は、別途発売されている図録(注2)とは別の本ですので混同しないように注意してください。

▼ 注1
「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」特設サイト
九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)

▼ 注2
図録『大英博物館展 - 100のモノが語る世界の歴史』筑摩書房、2015年3月25日
大英博物館展: 100のモノが語る世界の歴史 (単行本) 
図録は展覧会場でも買えますが一般書店でも販売しています。「100のモノが語る世界の歴史」をより簡潔に知るためにはこちらの図録をおすすめします。あるいは、この図録をまず見てから全3巻の解説書をよむとわかりやすいです。

▼ 注3
全3巻の解説書に掲載されている「100のモノ」は、日本の展覧会場で展示されている「100のモノ」とは完全には一致せず一部いれかわっていますが、大局的にはおなじであり問題はありません。どれが入れかわっているか、気がつくかどうかためしてみるのもおもしろいとおもいます。

▼ 関連記事
数字イメージにむすびつけて100のモノをおぼえる - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(1)-
作品の解説を音声できいて物語を想像する - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(2)-
人類史を概観する - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(3)-
建物の階層構造との類比により世界史をとらえなおす - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(4)-
文明のはじまりをみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第1巻〉文明の誕生』/ 大英博物館展(5)-
前近代文明の発達をみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第2巻〉帝国の興亡』/ 大英博物館展(6)-
近代化への道のりをみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第3巻〉近代への道』/ 大英博物館展(7)-
モノを通して世界史をとらえる - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(8)-
世界史を概観 → 特定の時期に注目 → 考察  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(9)-
文明と高等宗教について知る  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(10)-



仮説を形成することは発想法のなかでもとくに本質的な行為です。

哲学者の梅原猛さんは、縄文人がつくった土偶について大胆な仮説をうちだしています(注)。仮説をいかに形成するかという点で参考になります。


縄文時代の土偶は縄文文化のかがやかしき遺物ですが、それが何を意味するのかは謎でした。梅原さんは、まず、すべての土偶に共通する事実を枚挙し、つぎのようにまとめました。


1「土偶は女性である」
2「土偶は子供を孕んだ像である」
3「土偶は腹に線がある」
4「土偶には埋葬されたものがある」
5「土偶はこわされている」


そして、これらにもとづいて次のような考察をしました。


1と2から、土偶は、子供の出産にかかわっているものであると考えられる。

3から、 妊娠した女性が死んだとき、腹を切って胎児をとりだしたのではないだろうか。

4から、死者の再生をねがって埋葬したのではないだろうか。

5から、あの世はこの世とあべこべの世界であるという思想にもとづいて、この世でこわれたものはあの世では完全になるのであるから、こわれた土偶はあの世へおくりとどけるものとしてつくられたのではないだろうか。 土偶は死者を表現した像であり、死者の再生の願いをあらわしていると考えられる。土偶の閉じた目は再生の原理を語っている。


以上から、「妊娠した女性が死んだとき、腹を切って胎児をとりだし、その女性を胎児とともに土偶をつけて葬ったのではないか」となり、そして最後に、土偶は、「子をはらんだまま死んだ妊婦と腹の子をあわれんでの、また、再生をねがっての宗教的儀式でつかわれた」という仮説を形成しました。

このように、土偶の謎をときあかすためには、すべての土偶に共通する事実を枚挙し、それらの事実すべてを合理的に説明しうる仮説をかんがえればよいわけです。

梅原さんは、仮説形成の仕事をつねにしています。仮説形成の観点から梅原さんの著作に注目していきます。


▼ 注
梅原猛監修『縄文の神秘』(人間の美術1)学習研究社、1989年11月3日(初出)
梅原猛著『縄文の神秘』(学研M文庫)学研パブリッシング、2013年7月9日
 
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