『知的生産の技術』の第2章「ノートからカードへ」で梅棹忠夫さんはカードの原理についてのべていて、この原理は今日でもとても役にたちます。カードは「知的生産の技術」の中核的な原理といえるでしょう。
まず、梅棹さんはノートの話からはじめています。
まず、梅棹さんはノートの話からはじめています。
追加さしこみ自由自在の、いわゆるルース・リーフ式のノートほうが(大学ノートよりも)便利だ、ということになる。かいた内容を分類・整理するためにも、ページの追加や順序の変更ができたらよいのに、とおもうことがしばしばある。
ルース・リーフ式のよい点だけをいかしたのが、ちかごろ売りだされているラセンとじのフィラー・ノート式のものであろう。きりとり線と、つづりこみ用の穴とがついている。一冊のノートになんでもかきこみ、あとできりとり線からきりとって、分類してルース・リーフ式にとじる。片面だけを利用し、内容ごとに — 学生なら学科ごとに — ページをあらためることにしておけば、追加、組みかえ、自由自在である。
わたしも、中学生のころは大学ノートをつかっていましたが、高校生になってからはルース・リーフ式のノートに切りかえ、大学生のときにもそれをつかいつづけました。
そのご大学院生のころよりフィラー・ノートをつかいはじめ、「知的生産の技術」にしたがって片面(表面)だけに記入し裏面は空白にしておき、ノートが一冊おわるごとにページを切りとり、二穴ファイルにファイルするといことをくりかえしていました。このフィラー・ファイルは蓄積されて、そのトータルの厚さは約2メートルぐらいにまでなりました。
そのご大学院生のころよりフィラー・ノートをつかいはじめ、「知的生産の技術」にしたがって片面(表面)だけに記入し裏面は空白にしておき、ノートが一冊おわるごとにページを切りとり、二穴ファイルにファイルするといことをくりかえしていました。このフィラー・ファイルは蓄積されて、そのトータルの厚さは約2メートルぐらいにまでなりました。
結局、今世紀に入って iPhone をつかいはじめるまでは、フィラー・ノートはいつでもどこへでも持ちあるいて つかっていました。今でも、ヒマラヤのフィールドワークに行くときには予備ノートとしてフィラー・ノートを持っていきます。
*
つぎに、梅棹さんはカードについてかたります。
ノートのことを、くどくどしくのべたのは、じつはカードのことをいいたいからであった。見方をかえれば、ルース・リーフ式やフィラー・ノート式ののーとは、じつは一種のカードなのである。すでにのべたように、それは、ページのとりはずし、追加、組みかえが自由になっている。そして、そのつかいかたにおいても、項目ごとにページをあらためる、あるいは片面だけを使用する、ということになると、それは要するに、みんなカードの特徴にほかならないではないか。ノートの欠点は、ページが固定されていて、かいた内容の順序が変更できない、ということである。ページを組みかえて、おなじ種類の記事をひとところにあつめることができないのだ。
「知的生産の技術」の基本は、あたえられた前後関係をこわして、あらたな組みあわせを発見するところにあるといえるでしょう。固定した観念にとらわれずに発想せよということだとおもいます。
そして、有名になったあの「京大型カード」ができあがったときの様子がのべられていす。
自分で設計したものを、図書館用品の専門店に注文してつくらせた。それが、いまつかっているわたしのカードの原型である。このカードは、たいへん評判がよくて、希望者がたくさんあったので、まとめて大量につくって、あちこちに分譲した。ついにわたしは、文房具店の店先で、わたしのカードが製品として売られているのを発見した。その商品には、「京大型カード」という名がつけてあった。わたしは、いさぎよくパテントを京大にゆずることに決心した。
わたしも、『知的生産の技術』を読んで「京大型カード」を買った一人です。東京・日本橋の丸善まで買いにいきました。こうして、フィラー・ノートをカード式につかう方法とカードそのものをつかう方法を併用する期間がながくつづきました。
*
一方で、カードの苦労についてものべています。
いずれにせよ、野帳からカードに資料をうつしかえるという操作をふくんでいた。口でいえばかんたんだが、じっさいにはこれは、容易ならない作業である。野帳の分量がおおいと、野外調査からかえってからカードができるまでに数ヶ月を要したりした。
この問題は、わたしの場合は iPhone と Mac をつかうことにより解消されました。
iPhone で記録したデータは iCloue により Mac に同期されます。現場のデータはそのまま Mac で処理することができるので、転記の手間はかかりません。
カードという形にこだわるのであれば iPhone と Mac に付属しているアプリ Keynote をつかえばよいです。1枚1枚のスライドはカードとしてつかえます。これにはボイスメモ(ボイスレコーダ)機能もついていますし、写真などをペーストすることもできます。Keynote に現場でデータをどんどん記録していけよいです。あとで、カード(スライド)を入れかえたり、あたらしいカード(スライド)を挿入したりできます。
Mac 上で情報を処理するときには、Keynote の「表示」から「ライトテーブル」を選択すれば、画面上にカードを縦横にならべて、入れかえ・組みかえ・追加・挿入・削除などを自由にたのしむことができます。プレゼンテーション用のスライドや資料もできてしまいます。
Mac 上で情報を処理するときには、Keynote の「表示」から「ライトテーブル」を選択すれば、画面上にカードを縦横にならべて、入れかえ・組みかえ・追加・挿入・削除などを自由にたのしむことができます。プレゼンテーション用のスライドや資料もできてしまいます。
しかし、形にこだわらないのであればワープロソフト(Pages など)をつかえばよです。コンピューターが発明されて、データ(ファイル)の入れかえ、挿入、組みかえなどは、カット&ペーストで自在にできるようになりました。どのようなアウトプットの形式を選択するかによってアプリをつかいわければよいでしょう。
先にもふれましたが、「知的生産の技術」の基本は、あたえられた前後関係をこわしてしまって、あらたな組みあわせを発見するところにあり、固定観念にはとらわれずに発想することであると言ってよいでしょう。形にとらわれるよりもその原理・本質に気がつき、それを利用することの方が重要だとおもいます。
*
iPhone と Mac を iCloud で同期させるときの現時点での注意点は、OS のバーションです。
iPhone の iOS を最新の iOS 8 にアップグレードした場合は、Mac OS も最新の Yosemite にアップグレードしないと、最新の iCloud Drive がつかえず、Keynote と Pages の同期はできません(注)。これは重大な問題です。
つまり、iCloude を使う場合はつぎの組みあわせでつかわなければなりません。
iOS 7:Mavericks
iOS 8:Yosemite
Mac OS X を Yosemite に当面アップグレードする予定のない人は、iOS を iOS 7 のままにしておいた方がよいです。
新 iPhone の場合など、iOS 8 になっている場合、iOS 8 にした場合は、Mac OS X を Yosemite にアップグレードせざるを得ません。Mac OS X のアップグレードにあたっては、アプリの対応のおくれなどの不備もありえますので慎重さが必要です。
▼ 文献
梅棹忠夫著『知的生産の技術』(岩波新書)岩波書店、1969年7月21日
知的生産の技術 (岩波新書)
▼ 注:iCloud Drive をつかうときの現時点での注意点
iCloud Drive を利用するためには、サービスのアップグレードが必要です。
その場合、Mac では、OS を最新の Yosemite にアップグレードしないとつかえません。アプリの対応の問題がありますので、 Yosemite へのアップグレードには慎重さが必要です。
Mac の OS が10.9 Mavericks 以前の場合、Yosemite、iCloud Drive にアップグレードしてしまうと、それまでの Documents in the Cloud が利用できなくなってしまうので注意が必要です。
Mavericks あるいはその他の OS の場合でも、HTML5 が使えるブラウザで、iCloud.com にアクセスすれば、iCloud Drive のなかを確認できます。Yosemite にアップグレードしていない Mac や、iCloud コントロールパネルをインストールしていない Windows の場合です。