発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:状況判断

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チンパンジー(平行法で立体視ができます)
自分の居場所を知り、ビジョン(今後の方向・見通し)を明確にすれば、不安になったり まよったりすることなく、つぎの一歩がふみだせます。
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図1 ウエイターの手の上のトレイに右の中から選択してのせてください
空間配置を認識することは、物事の意味をよみとるためにも重要です。
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図1 問題解決の3段階モデル

問題解決の3段階モデルにおけるアウトプットでは、課題を書きだし、事実を書きだし、目標を書きだすようにするとよいです。

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さまざまな項目について第1位と最下位の国を知ることは、それぞれの項目についての「物差し」をつくることになり、国際情勢を客観的に理解することにつながります。

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日本科学未来館・展示「100億人でサバイバル」(交差法で立体視ができます)

危険から命をまもるためには、危険の種に気がつくことがまず必要です。
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3月12日〜31日における被曝量の推定(パネル展示より)
大気中に拡散した放射性物質のうちの主なものとして、ヨウ素131、セシウム137、セシウム134 からの被曝量を推定したもの。1日のうち屋外に7時間、それ以外の時間帯は木造家屋にいたと仮定。(データ提供:国立研究開発法人海洋研究開発機構)


放射線被害から身をまもるためには放射線を定量的に計測して判断しなければなりません。


日本科学未来館(注1)の「Lesson#3.11:5年前、そして5年間に起きたこと」(注2)では、さまざまな物質の放射線量を線量計をつかって実際に計測するワークショップもありました。市販の線量計をつかえば誰でも簡単に放射線量を計測することができます。

国際放射線防護委員会(ICRP)勧告では、一般の人の年間積算線量の指標として、平常時は年間1ミリシーベルト以下としています。

ただしこれは、一般の人が受ける放射線の量をなるべく低くおさえようとするための指標であり、健康に影響をおよぼすか否かをしめす基準ではありません。

またこの指標値には以下はふくみません。
  • 自然界から受けるといわれている年間 2.4 ミリシーベルト(世界平均)の放射線量(注3)。
  • 医療行為によって受ける放射線量(レントゲンやCTスキャンなどによる診断やがんの治療など医療現場で使われる放射線)。

年間1ミリシーベルトを1時間あたりに単純に換算すると毎時 0.114 マイクロシーベルトとなります。

また国際放射線防護委員会(ICRP)は年間積算線量の指標として次もしめしています
  • 原子力事故などの緊急時:20~100ミリシーベルト
  • 事故後の復旧期:1~20ミリシーベルト



放射線被害から身をまもるためにはこのような数値と単位につよくならなければなりません。そうでないとみずから主体的に判断をすることができません。定性的な説明をただ鵜呑みにすることはよくないことです。

したがって線量計をつかってみずから計測することは重要なことです。

放射能物質で汚染された地域は一様に汚染されているのではなく、ホットスポットとよばれる高い濃度で汚染された地点がところどころに存在します。放射性物質をふくんだ空気と雨とがぶつかったとき、雨粒は放射性物質をとりこんで地面に降りそそぐため原子炉からの距離とは関係なくいくつものホットスポットが生じてしまいました。 

ホットスポットを見つけるためにも現場での計測が必要です。

なお全国各地の放射線量については、原子力規制委員会・放射線モニタリング情報のサイトを見るとよいとワークショップでおそわりました。全国各地の定点計測値がわかります。

原子力規制委員会・放射線モニタリング情報 >>

被災地からはなれてくらしている場合は線量計を購入してまで計測しないかもしれません。そのような場合はこのサイトをみて確認するとよいでしょう。


▼ 注1
日本科学未来館 


▼ 注2
Lesson#3.11 パネル展示「5年前、そして5年間に起きたこと」

▼ 注3
自然界からうける放射線は大地からの放射線、宇宙からの放射線(宇宙線)、空気中からの放射線、摂取した食物からの放射線があります。


日本史における武士団の潮流は、1156年の保元の乱以後 約835年間にわたって日本に流れつづけ、大きな役割をはたしてきました。


角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』(注1)をみれば日本史の大きな流れをよみとることができます。いくつかの注目すべき流れがあり、今回は、武士団についてみてみたいとおもいます。

第4巻『武士の目覚め 平安時代後期』(注2)にはつぎのように記述されています。


『愚管抄』という本に慈円はこう書いている。「保元の乱が起きた後 日本は武者の世になってしまった」と。


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日本の歴史において、武士の出現と鎌倉幕府の成立が、日本史の潮流を大きく変える転換点になったことは誰もがみとめることでしょう。 

武士のはじまりは、平安時代の後期、中央の武官や地方の豪族のなかから戦いの技術にすぐれたものがあらわれたところにあります。武士は最初は身分がひくかったですが、武士団を形成して次第に力をつけていきました。

そして1156年、保元の乱がおこります。崇徳上皇は、弟の後白河天皇と対立し戦になりました。この乱は、平清盛や源義朝らの活躍によって後白河天皇方が勝利します。これは、武士団の力によって政治の争いが決定された最初の出来事でした

その後、平氏の栄華、そして滅亡をへて、1185年、源頼朝は、後白河法皇と交渉して守護・持統を全国各所におく権利を獲得しました。最新の研究によりますと、この1185年に鎌倉幕府が成立したとされています(注3)。そして1192年、源頼朝は征夷大将軍に就任し、鎌倉幕府は名実ともに確立、武士によるあたらしい時代がはじまったのです。




この過程において注目すべきは武士団の誕生です。武士団とは一定の規律のもとに組織・編制された武士の集団のことです。これは、個人や個性よりも全体を重んじ、大きな集団が一体になって運動するという特色をもちます。 このような "武士団方式" は、その後の日本史の中を脈々とながれていくことになります。

武士の時代は江戸時代までつづき、明治維新をもって終わりました。しかし "武士団方式" はその後も生きのこったのではないでしょうか。生きのこったどころかますます巨大化し、日本国の近現代をすすめていくうえで非常に大きな役割を果たしたとかんがえられます。

第二次世界大戦までの軍事的拡大と海外侵略はいうまでもないことですが、戦後の高度経済成長においても "武士団方式" がでてきました。日本の会社組織は武士団の現代版であり、サラリーマンは企業戦士(注4)、会社のために一生懸命(注5)はたらいて経済戦争を勝ちぬいていく。個人よりも組織が重んじられ、一人一人は言われたことをきちんとやるという行き方です。

戦後の日本企業は、武士団が、姿かたちを変えてあらわれてきたと見ることができ、日本の高度経済成長は "武士団方式" で実現できたといえるでしょう。ここには、中国とも東南アジアともインドともあきらかにちがう日本固有の歴史の流れがありました。日本が、高度経済成長をアジアでいちはやく実現していわゆる先進国になれたのも "武士団方式" があったからでしょう




すくなくとも1980年代まではそうでした。 "武士団方式" は、実に約835年間にもわたって日本史の基礎的な潮流でした。




しかしながら、1990年代に入ってから様子がおかしくなってきました。すでに誰もがみとめているとおりです。

以前は、会社のために一生懸命はたらけば、とにかく頑張れば報酬がもらえました。しかし今ではリストラがいつあるかわかりません。転職はあたりまえになりました。"武士団方式" の時代は終わったのです。これは日本史上の一大事です。時代は転換しました。

これからの時代は、武士団のように、大きな集団が一体になって運動するというのではなくて、それよりも一人一人の個性が重んじられるようになるでしょう。一人一人がみずから主体性を発揮して自分らいしい生き方を見いだしていく時代になるのではないでしょうか(注6)。


▼ 注1
山本博文監修『日本の歴史』(角川まんが学習シリーズ 全15巻)KADOKAWA、2015年8月6日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全15巻定番セット 

▼ 注2
『武士の目覚め 平安時代後期』(角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』4)KADOKAWA、2015年6月30日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 (4) 武士の目覚め 平安時代後期

▼ 注3
『いざ、鎌倉 鎌倉時代』(角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』5)KADOKAWA、2015年6月30日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 (5) いざ、鎌倉 鎌倉時代

▼ 注4:企業戦士
日本の企業戦士は戦国武将から数多くのことをまなんでいました。

▼ 注5:「一生懸命」の語源
「一生懸命」という言葉の語源は「一所懸命」です。武士にとって、戦いに勝って手に入れた土地は命をかけてまもるものだったのです。1980年代までは、多くの日本人が「一生懸命」という言葉を口にしていました。武士の子孫だったからです。

▼ 注6:情報処理のすすめ
一人一人がみずから主体性を発揮して自分らいしい生き方を見いだしていくために、本ブログでは、情報収集(インプット→プロセシング→アウトプット)の実践をすすめています。特に、アウトプットを積極的にしていくことがもとめられます。

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日本の文化が形成されていく歴史的な過程では、日本よりもすすんだ文明を移植し模倣するという大きな流れがありました。


角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』(注1)をみれば日本史の大きな流れをよみとることができます。いくつかの注目すべき流れがあり、今回は、日本の文化形成あるいは文明化についてかんがえてみたいとおもいます。

第2巻『飛鳥朝廷と仏教 飛鳥〜奈良時代』
(注2)には、古墳時代の末期に次のような事件がおきたと記載されています。


587年 蘇我馬子・聖徳太子らが、物部守屋をほろぼす
 

蘇我氏(そがし)は、渡来系の一族とつながりがふかく、先進技術を外国からとりいれて勢力をつよめていました。対する物部氏(もののべし)は、朝廷の伝統的な祭祀をまかされていたこともあり、外国から伝来した仏教をとりいれることをこばんでいました。つまり、先進である中国文明を積極的にとりいれていくのか、古来からつたわる日本独自の伝統文化をまもりそれを発展させていくのかで、蘇我氏と物部氏が対立していたのです。


蘇我「仏教は大陸の国ぐにでみなが信仰している教えです。わが国にもぜひ取り入れるのがよろしいかと・・・」
物部「何を言う! みかどのお役目は天におられ地に宿る多くの神々を春夏秋冬お祭りすること・・・ 異国の教えなど信じてはばちがあたりますぞ!」


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そして587年、河内渋川(現在の大阪府八尾市、東大阪市付近)で武力による直接対決にいたりました。はげしい戦闘の末、蘇我氏は物部氏をたおしました。このとき、厩戸皇子(うまやとのおうじ、のちの聖徳太子)は蘇我氏と組んでいました。

こうして仏教をおもんじる時代がはじまり、中国文明を移植・模倣する歴史的な流れが日本国に生じました

そのご663年に、白村江の戦い(はくすきのえのたたかい)がおこり、唐・新羅連合軍に日本・百済連合軍が大敗をきっして「やっぱり中国はすごい!」と再認識したこともあり、日本はますます中国を尊敬するようになっていきます。中国から、仏教と律令を日本に移植したことにより、日本は文化を急速に発展させ文明化していくのです(注3)。

そして、すすんだ文明を模倣するという行き方はそのご脈々とうけつがれていきます。この流れは、1980年代まで実に約1400年間にわってつづきました。江戸時代までは中国文明を、明治維新以後は西欧文明を日本は徹底的に摂取しました。つまり日本の「真似る文化」は古墳時代の末(あるいは飛鳥時代初期)からつづく大きな潮流だったといえるでしょう。

日本において優秀な人材といえば留学生でした。自然科学にも「原書」を読めという教えがありました。オリジナリティーは外国にあるということです。 

その結果 形成された文化は「重層文化」です。すでにある基層文化のうえに先進の外来文化をかさねていくという方式です。日本文化の特色は「重層文化」であるということができます(注4)。




移植や模倣そして日本流に一部を改善することは決してわるいことではありません。このやり方を評価するかどうかよりもひとつの方法として容認すべきですし、これは日本の歴史の必然であったととらえた方がよいでしょう。




しかしながら、この移植・模倣・改善という方法あるいは重層文化の方法は1990年代ごろから通用しなくなりました。日本は十分に発展し、移植や模倣ではもはややっていけなくなりました。この点をとくに強調したいとおもいます。

このことが近年の日本の経済の衰退、国力の低下、停滞と混乱としてあらわれているのではないでしょうか。ソニー・東芝・シャープといった日本の企業、一体どうなっているのでしょうか。

日本の歴史全体の大きな潮流からみると、近年の事象は一時的な不景気といったことではなく、歴史的な転換期をしめしているといえます。約1400年つづいた移植・模倣・改善の時代は終わったのです。まさに日本史上の一大事です。相当な覚悟が必要です。

これまでの時代にはかならず "お手本" がありました。お手本をみながら一生懸命やれば、とにかく頑張れば成果がだせました。専門家や評論家は「欧米では〇〇ですよ」と言っていれば仕事になりました。

しかしこれからの時代にはお手本がありません。模倣ではないあたらしい生き方をみずから主体的に生みだしていかなければなりません。発想・独創・創造がもとめられているといえるでしょう(注5)。



▼ 注1
山本博文監修『日本の歴史』(角川まんが学習シリーズ 全15巻)KADOKAWA、2015年8月6日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全15巻定番セット 

▼ 注2
角川まんが学習シリーズ『日本の歴史 2 飛鳥朝廷と仏教 飛鳥〜奈良時代』KADOKAWA、2015年6月30日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 (2) 飛鳥朝廷と仏教 飛鳥~奈良時代

▼ 注3:「日本文明」という言葉はすわりがわるい
日本は文明国にはちがいないでしょうが、「日本文明」という言葉は何だかすわりがわるいと感じている人が多いとおもいます。たとえば「中国文明」「ヨーロッパ文明」「ヒンドゥー文明」「イスラム文明」などの諸文明が世界にはあります。これらは自己発展的に成長した独自な文明であり、オリジナリティーと強力な個性をもっています。それに対して「日本文明」は独自性がよわく、オリジナリティーと強力な個性があまり感じられません。日本は文明国ではありますが、その文明は上記のような重層文化を発展させたものであり、本当の独自性を生みだすまでにはいたりませんでした。「日本文明」は未成熟であったのであり、これが「日本文明」という言葉が若干しっくりこない理由だとおもいます。

▼ 注4:縄文文化に注目する
日本の重層文化において、もっとも下位にある基層文化は縄文文化であるといってよいでしょう。したがって日本史の中にオリジナリティーをもとめるとすれば縄文時代にある可能性が高いです。今こそ縄文時代に注目すべきです。

▼ 注5:情報処理のすすめ
あたらしい生き方をうみだすために、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をみずから主体的におこなうことを本ブログではすすめています。

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世界史を概観 → 特定の時期に注目 → 考察  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(9)-

全体をみて、部分をしらべると、現象の本質にせまれます。
 
たとえば植物学者はある植物を肉眼で観察したら、その植物の葉をとりだしてみて、顕微鏡を今度はつかって葉の細胞などをくわしくしらべていきます。

このような顕微鏡による観察は、肉眼での全体的な観察に対して分析的な観察、分析的研究になります。全体を見てから部分に入るという順序がここにはあります。同様なことは動物学者や地質学者でもやっているでしょう。

あるいは地理学者は地形を肉眼で観察してから、双眼鏡を今度はつかって特定の部分を詳細にしらべます。これも同様なことです。双眼鏡で見ることは顕微鏡で見ることに相当します。

部分あるいは局所をくわしくしらべるにあたって、すべての部分をくわしくしらべることは労力的に不可能ですし、そのようなことをしても意味がありません。いくつかの部分を選択して狙い打ちにしていくことになります。

それでは狙い打ちにする部分をどのようにして選択すればよいか。このために肉眼で全体を見たことが効いてきます。第1段階として肉眼でマクロにしっかり見たかどうかが重要であり、この段階ができていると第2段階でミクロに見ることが効果的になるのです。ただ単にミクロの世界を知ればよいということではありません。

このように全体的な観察と分析的調査とは相互補完の関係にあり、部分をしらべると全体のとらえなおしができます。さらに、肉眼の世界がいままで以上によく見えてきて、今までわからなかった現象の本質にせまることもできます(下図)。

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図 認識の3段階モデル






比較的おおきな書店のなかを全体的にあるいてみると、人類の知の体系と自分の興味のある分野を空間的・体験的にとらえなおすことができます。

わたしは先日、ジュンク堂書店・吉祥寺店のなかをぶらぶらとあるいていました。非常にたくさんの書籍がわかりやすく分類され、きれいに空間配置されていました。これは人類の知の分類体系です。

このような分類体系を言葉や理屈ではなく、歩行と視覚により空間的・体験的に実感できるのが大きな書店のいいところです。書店のフロアーマップは知の分類体系の見取り図であり、ここには、キーワード検索とはまったくことなる世界があります。 比較的おおきな書店がちかくにあれば、そのなかを全体的にあるいていみて分類体系をぜひ実感してみてください(注1)。

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図 ジュンク堂書店・吉祥寺店のフロアーマップ(注2)


書店のなかで、自分のすきな分野の場所にいることは本当にたのしいことです。興味のある分野のエリアには何時間いてもあきることはありません。しかし一方で興味のない分野の所にはあまり長居をしたくありません。

こうして自分の領域、つよい分野、よわい分野が空間的・体験的に再認識できます。あるいは、自分は本当はどの場所にいたいのか、自分の本来の領域を場所や歩行体験としてあらためてとらえなおすことができます。あるいはこれから何かにチャレンジしようとしている人にとっては、書店のなかで第一歩を実際にふみだしてみることができます。

これと同様なことは図書館でもできます。気に入った書店や図書館にはくりかえしかよって、そのなかを実際にあるきながら人類の知の体系を体験し、その体系のなかで自分の分野を位置づけ、あるいは見つけだすようにするとよいでしょう。


▼ 注1
さまざまな分野を場所でとらえるようにします。それぞれの分野が空間配置されていることをつかむのがポイントです。

▼ 注2
ジュンク堂書店 吉祥寺店 から引用


伊沢紘生著『新世界ザル アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』は、さまざまな種がすみわけることによって、多様性にみちあふれる生態系が維持されまた発達していくことをおしえてくれる本です。

著者の伊沢紘生さんはアマゾン川流域で以下のようなたくさんの種類のサルをしらべ、それぞれの種の固有な「生きざま」をあきらかにしました。

ホエザル
フサオマキザル
クモザル
ウーリーモンキー
ピグミーマーモセット
ゲルディモンキー
サキ
ウアカリ
セマダラタマリン
ヨザル
ダスキーティティ 


■ 種の多様性が増大する
アマゾンのこれらのサルたちは、それぞれの種に固有な生きざまをどのようにして獲得するにいたったのでしょうか?

アマゾンのサルたちは、その生きざまにおいて多様性をもっているという事実が観察されました。

ながい時間幅でみれば、動物のどの系統をとってみても、種の数が増加して、種の多様性が増大していったというのが生物進化の実態であり、アマゾンのサルたちもこのような進化の過程で多様化していったとかんがえられます。


■ 多様なサルたちがすみわけて共存している
それでは、なぜ、アマゾンというひとつの地域のなかで、これだけ多様なサルたちが共存できているのでしょうか?

現地調査によって、それぞれの種ごとに生きざまを異にして共存していることが観察されました。つまり、さまざまなサルたちは見事に「すみわけ」ていたのです。たとえば森の上部層と下部層とですみわけていました。果実をおもに食べるサルと葉をおもに食べるサルと昆虫をたべるサルといった「食いわけ」によるすみわけも観察されました。

このようにすみわけによってさまざまな種が共存し、一方で、すみわけを通してあたらしい種が誕生するというのが生態系の維持と発達の仕組みでした。このようにして多様性にみちあふれたアマゾンの生態系がなりたっていたのです。


■ 生態系は共存原理でなりたっている
生きざまを変更し、生活空間やもとめる生活資源を分割してすみわけをおこなうところには共存原理がみとめられます。サル類にかぎらず熱帯雨林に生息するいかなる動物もこのようにして生きているそうです。

これは、一方が勝利して生きのこり、一方は負けて滅びるという競争原理ではありません。熱帯雨林の生態系には競争原理は存在しません。


■ 局所と大局とをくみあわせて体系を認識する
このようなことは、アマゾンに生息するさまざまな種類のサルたちをすべてしらべて、その生きざまとともに空間的な分布やひろがりを研究し、そしてそれらを相互に比較したからこそ認識できたことです。

これがもし、一つの種だけを専門的に調査していたらこのようなことはわからなかったでしょう。たとえばホエザルだけを専門的に研究する、ワニだけを集中的に研究する、カブトムシだけを局所的に研究する、動物の細胞だけを実験的に研究するといった分析的研究では、生態系という大局の認識はできないわけです。

つまり個々の種をとらえる部分的な見方と生態系という全体的な見方の両者が必要です。

これからのグローバルな時代は、局所と大局とをくみあわせることによって、全体の体系(システム)を認識する方法が重要になってくるとおもいます。そのような意味でも伊沢さんの研究方法は非常に参考になります。



▼ 引用文献
伊沢紘生著『新世界ザル(上)アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』東京大学出版会、2014年11月25日
新世界ザル 上: アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う

伊沢紘生著『新世界ザル(下)アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』東京大学出版会、2014年11月25日
新世界ザル 下: アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う 
※「新世界ザルのすみわけと進化」については下巻の最終章でくわしくのべられています。


▼ 関連記事
アマゾンの多様性を大観する - 国立科学博物館「大アマゾン展」(1) -
アマゾンを歴史的時間的にとらえる - 国立科学博物館「大アマゾン展」(2) -
アマゾンの多様性をメモする - 国立科学博物館「大アマゾン展」(3) -
アマゾンのサルの多様性をみる - 国立科学博物館「大アマゾン展」(4) -
生態系の階層構造をとらえる -「大アマゾン展」(5) -
人類の本来の生き方を知る - 伊沢紘生著『アマゾン探検記』-
アマゾンの生態系に共存原理をみる - 伊沢紘生著『アマゾン動物記』-
自然環境と共生して生きている人々がいる - アマゾン展 -


 

ニール=マクレガー著『100のモノが語る世界の歴史』は「大英博物館展 ― 100のモノが語る世界の歴史」(注1)の関連解説書です。その第3巻は「近代への道」をテーマにしています。

ついに帝国は、膨張をつづけて外洋にのりだしました。文明の衝突と悲劇が世界各地でくりかえされるようになりました。奴隷貿易や世界の再分割がのこした傷跡はさまざまなモノが今も鮮明にしめしています。

そして産業革命をへて、世界は、グローバルな物と人の移動を基盤とした近代への道をあゆみはじめました。わたしたち人類がたどりついた近代とは何なのか。大英博物館とBBCによる世界史プロジェクトが完結します。

目 次
第14部 神々に出会う(1200~1500年)
 ホーリー・ソーン聖遺物箱
 「正教勝利」のイコン
 シヴァとパールヴァティー彫像
 ワステカの女神像
 イースター島のホア・ハカナナイア像

第15部 近代世界の黎明(1375~1550年)
 スレイマン大帝のトゥグラ
 明の紙幣
 インカ黄金のリャマ像
 ヒスイの龍の杯
 デューラーの「犀」

第16部 最初の世界経済(1450~1650年)
 ガレオン船からくり模型
 ベニン・プラーク - オバとヨーロッパ商人
 双頭の蛇
 柿右衛門の象
 ピース・オブ・エイト

第17部 寛容と不寛容(1550~1700年)
 シーア派の儀仗
 ムガルの王子の細密画
 ビーマの影絵人形
 メキシコの古地図
 宗教改革100周年記念パンフレット

第18部 探検、開拓、啓蒙(1680~1820年)
 アカンの太鼓
 ハワイの羽根の兜
 北米の鹿革製地図
 オーストラリアの樹皮製の楯
 ヒスイの壺

第19部 大量生産と大衆運動(1780~1914年)
 ビーグル号のクロノメーター
 初期ヴィクトリア朝ティーセット
 北斎「神奈川沖浪裏」
 スーダンの木鼓
 女性参政権を求めるペニー硬貨
 
第20部 現代がつくりだす物の世界(1914~2010年)
 ロシア革命の絵皿
 ホックニーの「退屈な村で」
 武器でつくられた王座
 クレジットカード
 ソーラーランプと充電器


第14部では、宗教が発達したことにより生みだされた、人間と神々との対話につかわれたさまざまなモノをみます。

第15部では、近代化がはじまる前の最後の時代の帝国成熟期のモノをみます。

第16部は、ヨーロッパ人が、とおくはなれた場所にのりだした時代についてのべています。海軍技術の発達によって海の帝国が実現し、最初のグローバル経済がもたらされました。

第17部では、宗教の改革と対立あるいは寛容がしめされ、あらたな宗教が従来の儀式とのおりあいをつけようと模索したことがわかります。

第18部は、ヨーロッパが帝国主義的な拡大をとげた時代であり、奴隷貿易が最盛期をむかえました。一方で、科学と哲学がさかんになった時代でもありました。

第19部では、産業革命がおこり、農業社会から工業社会へと大変貌をとげます。技術革新は物の大量生産へとつながり、国際貿易が発達しました。一方で、多くの国々で大衆運動がおこり、普通選挙権など政治・社会の改革をうったえるようになりました。

最後の第20部は、前例のない紛争と変化の時代です。技術革新によって、歴史上のどの時代よりも多くの物が生産されるようになり、物質社会がもたらされました。同時に資源問題や環境問題が生じてきました。


このように第3巻では、帝国の発達と巨大化、産業革命をへて近代化がはじまる様子をみることができます。帝国は、都市国家にくらべて非常に強大なものでしたが、現代の近代化でおこっていることはそれをはるかにうわまる規模の巨大化です。

このようなわたしたちの歴史は文明が発生し発達し巨大化していく過程でもありました。その将来の到達点はグローバル文明であることはあきらかでしょう。近代化とは結局はグローバル化であり、大局的にみて現代はそれが進行しつつある段階ととらえることができます。わたしたち人類は、今後、健全なグローバル文明を生みだすことができるのでしょうか。


▼ 引用文献
ニール=マクレガー著(東郷えりか訳)『100のモノが語る世界の歴史 3 近代への道』筑摩選書、2012年6月15日
100のモノが語る世界の歴史〈3〉近代への道 (筑摩選書)
※ この解説書は、別途発売されている図録(注2)とは別の本ですので混同しないように注意してください。

▼ 注1
「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」特設サイト
九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)

▼ 注2
図録『大英博物館展 - 100のモノが語る世界の歴史』筑摩書房、2015年3月25日
大英博物館展: 100のモノが語る世界の歴史 (単行本) 
図録は展覧会場でも買えますが一般書店でも販売しています。「100のモノが語る世界の歴史」をより簡潔に知るためにはこちらの図録をおすすめします。あるいは、この図録をまず見てから全3巻の解説書をよむとわかりやすいです。

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数字イメージにむすびつけて100のモノをおぼえる - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(1)-
作品の解説を音声できいて物語を想像する - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(2)-
人類史を概観する - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(3)-
建物の階層構造との類比により世界史をとらえなおす - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(4)-
文明のはじまりをみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第1巻〉文明の誕生』/ 大英博物館展(5)-
前近代文明の発達をみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第2巻〉帝国の興亡』/ 大英博物館展(6)-
近代化への道のりをみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第3巻〉近代への道』/ 大英博物館展(7)-
モノを通して世界史をとらえる - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(8)-
世界史を概観 → 特定の時期に注目 → 考察  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(9)-
文明と高等宗教について知る  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(10)-


ニール=マクレガー著『100のモノが語る世界の歴史』は「大英博物館展 ― 100のモノが語る世界の歴史」(注1)の関連解説書です。その第2巻は「帝国の興亡」をテーマにしています。

人類は定住生活から都市をきずき、そして文明を発展させ、帝国の時代をむかえます。強大な権力を手にした帝国のどの支配者たちも、ことなる民族やことなる宗教、ことなる文化をいかにして統治すればよいか、難題に直面していきます。

そこでカリスマ性をうみだし、権威を見せつけ、宗教にすがりました。彼らのうみおとしたモノから人類の苦闘と発展の歴史よみとることができます。

目  次
第7部 帝国の建設者たち(紀元前三〇〇~後一〇年)
 アレクサンドロスの顔が刻まれた硬貨
 アショーカの石柱
 ロゼッタ・ストーン
 漢代の中国の漆器
 アウグストゥスの頭部像

第8部 古代の快楽、近代の香辛料(一~五〇〇年)
 ウォレン・カップ
 北米のカワウソのパイプ
 球技に使われる儀式用ベルト
 女史箴図(じょししんず)
 ホクスンの銀製湖沼入れ

第9部 世界宗教の興隆(一〇〇~六〇〇年)
 ガンダーラの仏坐像
 クマーラグプタ一世の金貨
 シャープール二世の絵皿
 ヒントン・セントメアリーのモザイク画
 アラビアのブロンズの手

第10部 シルクロードとその先へ(四〇〇~八〇〇年)
 アブド・アルマリクの金貨
 サットン・フーの兜
 モチェの戦士の壺
 新羅の屋根瓦
 蚕種西漸図(さんしゅせいぜんず)

第11部 宮殿の内部ー宮廷内の秘密(七〇〇~九〇〇年)
 放血するマヤ王妃のレリーフ
 ハレム宮の壁画の断片
 ロタール・クリスタル
 ターラー像
 唐の副葬品

第12部 巡礼、侵略者、貿易商人たち(八〇〇~一三〇〇年)
 ヴァイキングのお宝
 ヘドウィグ・ビーカー
 日本の銅鏡
 ボロブドゥールの仏像頭部
 キルワの陶片

第13部 ステータスシンボルの時代(一一〇〇~一五〇〇年)
 ルイス島のチェス駒
 ヘブライのアストロラーベ
 イフェの頭像
 デイヴィッドの花瓶
 タイノ族儀式用の椅子


本書の第7部は、紀元前334年に、アレクサンドロス大王が〔アケメネス朝〕ペルシャ帝国を征服、それ機に壮大な帝国の時代が到来した話からはじまります。

第8部では、近代の快楽や娯楽の活動は古代の宗教に由来することを解説しています。

第9部では、仏教・ヒンドゥー教・ゾロアスター教・キリスト教・イスラームの興隆をしめしています。世界宗教あるいは高等宗教とよばれる大宗教がはたした役割がいかに大きかったを知ることができます。

第10部では、シルクロードについてのべています。中国から地中海までつづくシルクロードは、西暦500年から800年にかけて最盛期をむかえました。人々や物資だけでなくアイデアもひろがりました。

第11部では、世界各地の華麗な宮廷内の生活を垣間見ることができます。世界の支配者たちがみずからの権力を主張するために生みだした数々のモノがみられます。

第12部では、西暦800年以降も、戦士や巡礼者、商人たちが定期的に大陸を横断し、文化の交流がすすんだことをしめしています。


『100のモノが語る世界の歴史』第1巻では、文明のはじまりと都市国家の誕生をみました。都市国家の時代の後期には戦争がはじまったこともわかりました。

その結果出現してきたのが帝国です。都市国家は都市を中心とする小規模な国家でしたが、帝国は、都市国家とはちがい広域な領土をもつことが最大の特色であり、都市国家とはくらべものにならないほど巨大化しました。

領土を主張し拡大しようとすれば、他国との国境紛争がたえずおこるようになります。このことは現代までつづいています。


▼ 引用文献
ニール=マクレガー著(東郷えりか訳)『100のモノが語る世界の歴史 2 帝国の興亡』筑摩選書、2012年6月15日
100のモノが語る世界の歴史〈2〉帝国の興亡 (筑摩選書)
※ この解説書は、別途発売されている図録(注2)とは別の本ですので混同しないように注意してください。

▼ 注1
「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」特設サイト
九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)

▼ 注2
図録『大英博物館展 - 100のモノが語る世界の歴史』筑摩書房、2015年3月25日
大英博物館展: 100のモノが語る世界の歴史 (単行本) 
図録は展覧会場でも買えますが一般書店でも販売しています。「100のモノが語る世界の歴史」をより簡潔に知るためにはこちらの図録をおすすめします。あるいは、この図録をまず見てから全3巻の解説書をよむとわかりやすいです。

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アウトドア関連企業であるモンベルのスタイルに情報化時代のあたらしいビジネスモデルをみることができます。

モンベルは創業40周年を今年むかえたそうです(注1)。これを記念して限定商品を販売したり特別イベントを開催しています(注2)。

モンベルは、アウトドア用品の販売だけではなく、さまざまなイベントを全国各地でおこなったり、モンベルクラブという会員制度を運営したりしているところがおもしろいです。つまり、ハードソフトメンバー制度が三位一体になって運営されています。そしてこれらの中核として全国に展開するモンベルストア(直営店)が位置づけられています。

わたしもメンバーになっていて、季刊誌やカタログ・イベント案内などをおくってもらっています。年会費 1500円 はとても安いです。

こうしてモンベルは、アウトドアのあたらしいたのしみ方やアウトドアをとりこんだライフスタイルを提案しています。

これは不特定多数の人々に物を販売するという従来のビジネスのやり方とは大きくことなります。

このような点では、アップルのビジネスのやり方と似ているという見方もできます。アップルも、ソフト・ハード・登録制度・直営店といったスタイルをもっています。全体がシステム化されているのが特色です

モンベルのやり方も情報化時代のあたらしいビジネスモデルとして参考になります。情報化時代が本格化してきたことがここにもあらわれているとおもいます。


▼ 注1

▼ 注2


定額制音楽配信サービス「Apple Music」は、あたらしいサービスを音楽ファンに提供する仕組みであり、情報化時代のあたらしいビジネスモデルといえるでしょう。

Apple Music は、スタートしてまだ何日もたっていませんが音楽ファンにとってはうれしい衝撃になっています。今後、音楽をめぐるあらたなライフスタイルが創出されていくことになるとおもわれます。

* 

目玉ともいえるサービスは「For You」です。これは、機械的に単にはじきだしたリストとはちがい、各ジャンルの専門のキュレーター(選曲家)がアップルにはいて、「人の手によるキュレーション」がはいっているとのことです。ユーザーが曲を再生すればするほど提案の精度があがり、ユーザーがこのむとおもわれる選曲がよりなされるようになっていきます。あたらしい楽曲やアーティストとつぎつぎに出会える仕組みです。

まずは「For You」をたのしんでみるとよいでしょう。

わたしはクラシック音楽をおもにきいて、今まできいたことのなかった演奏家の演奏がつぎつぎにきけるようになりました。またおなじ曲をさまざまな演奏家でききくらべることも簡単にできるようになりました。今までは、このようなことはコストや労力の関係でできませんでした。音楽への入り口が大きくひろがったといった感じです。


Apple Music はただ単に音楽をきくための装置ではなく、音楽をめぐるあたらしいサービスを提供する仕組みになっています。「My Music」「For You」「New」「Connect」などのサービスが集約的にシステム化されていて、わたしたちユーザーはそのサービスを利用し、そのために利用料を支払うことになります(ただしトライアル期間の3ヵ月間は無料)。

これは、不特定多数の人々に物を販売するという従来のビジネスではなく、それぞれのユーザーにそれぞれに適したサービスを提供する情報産業です。サービスのなかに音楽や情報や提案やコネクトなどが総合的にふくまれているのです。そもそも音楽自体が人々の心をゆたかにするサービスであるととらえなおすこともできるでしょう。

Apple Music にみられるこのようなやり方はほかの分野にも波及するのではないでしょうか。情報化時代のあらたなビジネスモデルを Apple Music にみることができます。音楽以外の分野の人々にとっても非常に参考になるとおもいます。


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アップルの定額音楽配信サービス「Apple Music」がはじまったことは、情報処理技術のクラウド化が今後ますます すすむことをしめしています。

音楽は以前は、レコードあるいはCDをショップで買ってきてきくものでした。それが、iTunes などがでてきてダウンロード購入をしてきくものになり、そして今度はストリーミングとクラウドをつかってきく仕組みに発展しました。

 (1)レコードあるいはCDを買ってきてきく
 (2)ダウンロードしてきく
 (3)ストリーミングとクラウドをつかってきく

これと同様な流れはアプリについてもありました。

 (1)CD-ROM を買ってきてパソコンにインストールしてつかう
 (2)ダウンロードしてインストールしてつかう
 (3)クラウド・アプリを利用する

さまざまなアプリが今日ではクラウド化してきています。最近では、会計ソフトがつぎつぎにクラウド化して話題になりました。

クラウドは、データ(各種ファイル)をクラウドにおいておき、必要なときにアクセスしてつかうのが特色です。

このような観点からは、ウェブメールもそもそもクラウドだったわけです。あるいはつかい方にもよりますがツイッターやフェイスブックやブログもクラウドです。

こうしたクラウド化の流れからいうと書籍もいずれクラウド化するのではないでしょうか。

 (1)書店で本を買ってきて読む
 (2)電子書籍をダウンロード購入して読む
 (3)ストリーミングで読む

現在は(1)と(2)が混在している段階です。こまかい技術は別にして将来的には(3)がおこり、書籍も所有する必要がなくなるのではないでしょうか。書籍も物ではなくなり、情報処理のひとつの手段として位置づけられます。


このように、購入して所有するという仕組みから、必要なときに必要な情報(ファイル)にアクセスして利用するという仕組みに変化していくとかんがえられます。これは非常に大きな変化です。

そして物を得るということから情報処理をするということに主眼がおかれるようになります。こうした情報化の流れは今後ともつづき、物質社会から情報社会へと世の中は転換してくのでしょう。

したがってこれからはひとりひとりが情報処理能力をみにつけ、みずからが情報処理の主体になることがもとめられます。クラウドとそれにつながる各種デバイス(端末)はそのための道具です


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▼ 追記
アップルは、2015年4月に「写真」アプリを登場させて写真もクラウドに対応させました。撮影した写真のオリジナルはクラウドにおいておけばよいようになりました(ただし一般的には iCloud Drive の増量が必要です)。アップルの開発の流れをみているとクラウド化の様子がよくわかります。
「iCloud フォトライブラリ」と「iCloud Drive」をつかう - アップル「写真」アプリ(1)-




アップルの定額音楽配信サービス「Apple Music」がスタートしました。これで、ストリーミングとクラウドをつかって膨大な楽曲を手軽にたのしめるようになりました。


Apple Music をつかうためには iOS(iPhone/iPad/iPod)と iTunes(Mac/PC)を最新バージョンにアップデートしなければなりません。Android には現段階では対応していませんが今秋から対応するとのことです(注1)。


つぎに、iOS でしたら「ミュージック」アプリ、Mac あるいは PC でしたら iTunes をたちあげます。初期設定画面がでてきて Apple Music のトライアルメンバーに登録するかどうかきいてきます。

3ヵ月間は無料トライアルで利用できます。3ヵ月たつと自動的に下記の課金がはじまります。利用を継続しない場合は課金前に登録を解除することができます。

 個人メンバーシップ:980円/月
 ファミリーメンバーシップ(最大6人):1480円/月


メンバーシップに登録すると、「お気に入りジャンル」の初期設定画面になります。これはあとで、「アカウント設定」→「好きなアーティストを選択」で変更できますから、ふかくかんがえずにタップ(クリック)して先にすすみます。


あたらしい「ミュージック」アプリあるいは iTunes の画面になり、いくつかのタブがでてきます。

For You」:自分の検索や好みのアーティストを反映した楽曲やアルバムが自動的に表示されます。Apple Music をつかえばつかうほど「For You」の提案がよくなっていくとのことです。

New」:楽曲やアーティストをあらたに自分でみつけることができます。検索をつかっていろいろさがしてみるとよいでしょう。膨大な数の楽曲がでてきます。

あとはタップ(クリック)してきくだけです。これだけたくさんの曲が自由にきけるのというのは正直いっておどろきです。

Radio」:インターネットラジオをジャンル別できけます。BGM にはいいのではないでしょうか。

Connect」:自分がフォローしたアーティストから、日々の活動や新譜、ライブ情報、写真やビデオなどのアップデートがとどく仕組みで、すきなアーティスト専用のソーシャルメディアのような仕組みだそうです。アーティストのページには「Follow」ボタンがあり、これをクリックすると「Connect」に新規投稿が表示されるようになります。


プレイリストや楽曲には、「」ボタンと「ハート」ボタンが用意されていて、「+」ボタンをおすと、プレイリストや楽曲を「My Music」に追加できます。「ハート」ボタンは音楽の好みを Apple Music に記録する役割があります。

My Music の音楽は、オフラインできくためにデバイスにダウンロードすることもできます。インターネットにつながっていない場面でも音楽をたのしめます。iOS の場合は「三点リーダー」をタップしてオプションを表示させ「オフラインで再生可能にする」を選択します(各曲にマークがつきます)。iTunes の場合はクラウド・ボタンをクリックします。


「iTunes Store」はこれまでどおり のこっていて、1曲ごとにあるいはアルバムごとに購入できますが、1曲150円とかアルバム2000円とかで購入することは今後はなくなるのではないでしょうか。ひと月に1枚以上のアルバムを買っていた人にとっては Apple Music の方が割安です。

また「iTunes Match」は一般的には必要ないとおもいます。「使わない」をクリックするとタブそのものが消えます。

 
Apple Music の特色は、ストリーミングサービス音楽ライブラリーのクラウド化です。楽曲を買うという今までの仕組みからは大きく変化することになります。

米国では3700万曲(日本国内向けは数百万曲)ともいわれる膨大な楽曲に自由にアクセスできるようになり、また、自分のライブラリ全体が「iCloudミュージックライブラリ」に自動的にアップロードされ、同一の Apple ID をもつデバイスでいつでもどこでもきけるようになります(注2)。

Apple Music をつかって集約的に手軽に音楽がたのしめるようになったことは、クラウドの時代が本格化してきたことをしめす一例といえるでしょう。今後、クラウドをどうつかいこなし、クラウドとどうつきあっていけばよいのか、よくかんがえて準備をしておかなければならないとおもいます。


▼ 注1
2015年秋には、Android にくわえて Apple TV でも Apple Music がつかえるようになる予定です。

▼ 注2
iOS デバイスで Apple Music を利用するかしないかは「設定」で操作できます。「設定」→「ミュージック」にはいり、「Apple Music を表示」をオン、「iCloudミュージックライブラリ」をオンにすると利用できます。利用しない場合はオフにします。

なお「iCloudミュージックライブラリ」は「iCloud Drive」とは別物でありリンクはしていません。

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ニール=マクレガー著『100のモノが語る世界の歴史』は「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」(注1)の関連解説書です。展覧会のショップなどで売られている図録(注2)よりもはるかにくわしく各作品について解説しています。「大英博物館展」での体験を言語をつかって確認し、認識をさらにふかめたいという人におすすめします。

「大英博物館展」は人類史を体験的に概観できるまたとない機会になっています。具体的なモノを通して理屈ではなく視覚的にまなべるのが大きなポイントです。

『100のモノが語る世界の歴史』(解説書)は、第1巻『文明の誕生』・第2巻『帝国の興亡』・第3巻『近代への道』という全3巻構成になっていて、「100のモノ」すべてについてきれいなカラー写真とくわしい解説が掲載されています。

第1巻『文明の誕生』では、200万年前の簡素な道具を出発点にしてヒトがいかに人になり、文明を誕生させたかをみることができます(注3)。

目 次
第1部 何がわれわれを人間にしたのか(二〇〇万年前~紀元前九〇〇〇年)
 ホルネジュイテフのミイラ
 オルドゥヴァイの石のチョッピング・トゥール
 オルドゥヴァイの手斧
 泳ぐトナカイ
 クローヴィス尖頭器
 
第2部 氷河期後 ー 食べものとセックス(紀元前九〇〇〇~前三五〇〇年)
 鳥をかたどった乳棒
 アイン・サクリの恋人たちの小像
 エジプトの牛の粘土模型
 マヤ族に伝わるトウモロコシの神の像
 縄文の壺
 
第3部 最初の都市と国家(紀元前四〇〇〇~前二〇〇〇年)
 デン王のサンダル・ラベル
 ウルのスタンダード
 インダスの印章
 ヒスイの斧
 初期の書字板
 
第4部 科学と文学の始まり(紀元前二〇〇〇~前七〇〇年)
 フラッド・タブレット - 洪水を語る粘土板
 リンド数学パピルス
 ミノアの雄牛跳び
 モールドの黄金のケープ
 ラムセス二世像
 
第5部 旧世界、新興勢力(紀元前一一〇〇~前三〇〇年)
 ラキシュのレリーフ
 タハルコのスフィンクス
 中国の周の祭器
 パラカスの布
 クロイソスの金貨
 
第6部 孔子の時代の世界(紀元前五〇〇~前三〇〇年)
 オクソスの二輪馬車の模型
 パルテノンの彫刻 - ケンタウロスとラピテース族
 バス - ユッツのフラゴン
 オルメカの石の仮面
 中国の銅鈴


1 道具がわれわれを人間にした
人類はアフリカで誕生しました。わたしたちの祖先はそこで最初の石器つまり道具をつくり、肉や骨や木をきざみました。わたしたち人類は物をつくることによって、ほかのすべての動物とはことなる存在になり、さまざまな環境に適応し、世界各地へと居住範囲をひろげていきました。

オルドゥヴァイの石のチョッピング・トゥール」(タンザニア)は人類が意識的につくった最古の物の一つであり、これが、すべてのはじまりです。


2 狩猟採集の生活から農耕定住の生活へ
1万年前の最終氷河期のおわりに、世界のすくなくとも7つの場所で農耕が発達しました。それまでの狩猟採集の生活から、作物をそだて、動物を家畜化したことにより、大勢の人々が一緒にすめるだけの余剰食糧が生みだされ、人類は定住生活をするようになりました。

こうしてわたしたちは、均衡のとれた生態系の一部としてのくらしからはなれて、環境に手をくわえ、自然を支配しようとこころみはじめました。

エジプトの牛の粘土模型」は、人々が野生の牛をどうにか飼いならす方法をみつけたことをしめしています。食料を手に入れるために一頭一頭を追いかける必要はなくなりました。


3 都市と国家が誕生する
5000年前から6000年前には世界で最初の都市と国家が北アフリカとアジアの河川流域に出現しました。支配者が登場し、富の不平等が生じてきました。増大する人口を管理するための手段として文字も開発されました。

都市が象徴する富や権力を維持するためには、それらをねらう人々から守ろうとしなければなりません。いったん裕福になると裕福でありつづけるために戦いつづけなければならなくなりました。

ウルのスタンダード」(イラク南部)は、都市をゆたかにする権力が戦争で勝つ権力とむすびついていたことをしめしています。古代メソポタミアの都市のうちもっとも有名なのはシュメールの都市ウルでした。

ウルのスタンダードをのこした人々は、最古の筆記の一例「初期の書字板」(イラク南部)ものこしました。内容はビールと官僚制度についてです。うまいビールをのむことをたのしみにして働く人々は当時すでに出現していました。都市を統治しようとした支配者は、文字によって民を統制しようとしました。


4 数学や科学、文学が生まれる
都市と国家が出現し、文字が生まれたことによって、科学や数学、高度な技術を要する物、また文学が生まれました。そこには権力を誇示する目的もありました。

リンド数学パピルス」(エジプト)は、古代エジプト人が数をどのようにかんがえていたかをしめしています。行政の実務で遭遇する課題を解決するために、さまざまな場面でつかわれたであろう計算がしめされています。全部で84の問題が掲載されています。


5 大規模な戦争がはじまる
紀元前1000年ごろ、世界のいくつかの地域に新興勢力が生まれ、既存の都市国家をほろぼしました。戦争は、まったくあらたな規模でおこなわれるようになりました。

紀元前700年には、イラク北部を拠点としたアッシリアの支配者がイランからエジプトまでにまたがる帝国をきずいていました。これは桁外れの軍事力の成果でした。

ラキシュのレリーフ」(イラク北部)をみると、最初の場面は侵略軍が行軍する様子、つづいて包囲された町での血みどろの戦闘場面となり、やがて死者と負傷者および無抵抗の避難民の列へとうつります。最後には、勝利した王が占領地を勝ちほこって支配する様子がみられます。アッシリアの軍事作戦が圧倒的な勝利であったことは、この浅浮き彫りの彫刻をみればあきらかです。


6 精神の国家 - 精神文化が発達 -
ソクラテスはアテネの人々にどう異議をとなえるかを説きました。孔子は中国で和の政治哲学を提唱しました。ペルシャ人は広大な帝国内でことなる民族が共存するための方法をみいだしました。中米では、オルメカ人が歴・宗教・芸術をうみだしました。

中国の銅鈴」がつたえる主たるメッセージは所有者の権力だったにちがいありませんが、それはまた社会と秩序に関する見解もあらわしていました。


本書は、「大英博物館展」を実際にみてから読むととてもわかりやすく、世界史を一層ふかく理解することができます。展覧会の会場での歩行や視覚などの実体験を本書をつかって言語(文字)で確認するという手順をふむとよいでしょう。言語は確認の道具として非常に有用です



▼ 引用文献
ニール=マクレガー著(東郷えりか訳)『100のモノが語る世界の歴史 1 文明の誕生』筑摩選書、2012年4月
100のモノが語る世界の歴史〈1〉文明の誕生 (筑摩選書)
※ この解説書は、別途発売されている図録(注2)とは別の本ですので混同しないように注意してください。

▼ 注1
「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」特設サイト
九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)

▼ 注2
図録『大英博物館展 - 100のモノが語る世界の歴史』筑摩書房、2015年3月25日
大英博物館展: 100のモノが語る世界の歴史 (単行本) 
図録は展覧会場でも買えますが一般書店でも販売しています。「100のモノが語る世界の歴史」をより簡潔に知るためにはこちらの図録をおすすめします。あるいは、この図録をまず見てから全3巻の解説書をよむとわかりやすいです。

▼ 注3
全3巻の解説書に掲載されている「100のモノ」は、日本の展覧会場で展示されている「100のモノ」とは完全には一致せず一部いれかわっていますが、大局的にはおなじであり問題はありません。どれが入れかわっているか、気がつくかどうかためしてみるのもおもしろいとおもいます。

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MacBook
新しい MacBook(アップルのサイトより)

ヨドバシカメラのアップル・コーナーに行って 新しい MacBook(注1)をためしてみました。

その薄さ軽さにはびっくりです。キーボードもかなり薄くなりましたがつかい勝手がわるいとはおもいませんでした。またあらたに搭載された感圧タッチトラックパッド(Force Touch トラックパッド)(注2)ではさまざまな「小技」が体験できおもしろかったです。これの15インチモデルが将来でたら買いたいとおもいました。

感圧タッチトラックパッドは従来のトラックパッドとはちがい指でおしても下にしずみません。指のおす力を感圧センサーが感知し、リニアアクチュエータでパッド面を微妙に動かすことで指先にクリック感をあたえます。

またトラックパッドにふれる指の圧力のちがいをよみとることができるため、「軽いタッチ」や「強めのクリック」といった圧力の違いによる操作の区別が可能になりました

強めのクリック」ではつぎのような小技ができるようになりました。

  • フォルダやファイルの名称を変更する。
  • ファイルの中身をプレビューする。
  • 単語(テキスト)を「強めのクリック」により意味を表示させる。
  • 「Safari」で、リンク先のページをプレビューする。
  • 「プレビュー」で、筆圧を変えてのお絵描きをする。
  • 「カレンダー」でイベントの詳細をプレビューする。
  • 日付を「強めのクリック」で、「カレンダー」にイベントを追加する。
  • 「マップ」の特定の位置にピンをドロップする。
  • 「マップ」の縮尺を変更する。
  • 動画の早送り、巻き戻し、再生速度を変更する。
  • 使用中のアプリケーションのすべてのウィンドウを表示する。
  • 「Dock」のアイコンの「強めのクリック」は右クリックと同じ効果。
  • 「連絡先」の詳細を編集する。
  • 電話番号やメールアドレスを「強めのクリック」で「連絡先」にカードを追加する。
  • 「メッセージ」で「おやすみモード」の設定画面を表示する。

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感圧タッチトラックパッドの環境設定画面


感圧タッチトラックパッドは、次期 iPhone にも搭載されると予想されています。この機能により端末の操作方法が豊富になり、iPhone のつかい勝手も一段と向上するといわれています。

今後のアップル製品の動向を予想するためにも感圧タッチトラックパッドを店頭でためしてみる価値はあるでしょう。


▼ 注1
新しいMacBook は現在12インチのモデルのみです。

▼ 注2
感圧タッチトラックパッドは、13インチおよび15インチ MacBook Pro にも現在では搭載されています。


米アップルは、ストリーミングを利用した新サービス「アップルミュージック」(注1)を6月30日からはじめると発表しました。月9.99ドル(約1200円、最初の3ヶ月は無料)で3000万曲がきき放題になるそうです。

6月8日(日本時間の9日未明)、アップルが自社製品に対応するソフトウェアやサービスなどの開発者向けに発表するWWDC(ワールドワイド・デベロッパー・カンファレンス)が開催され基調講演がありました。

あたらしい「アップルミュージック」は定額制の音楽配信サービスであり今度の方式はストリーミング方式になるのが最大の特徴です。これはダウンロード方式(スマートフォンやパソコンなどのデバイスにいろいろな楽曲を購入して保存する方式)とはことなり、ききたい音楽をサーバーから受信しながら逐次再生する仕組みです。

楽曲やアルバムを購入して自分のライブラリ(ストレージ)に追加していく必要はなくなり、毎月の加入料を支払うことで、音楽配信サービスに登録されているすべての楽曲を自由にたのしめるようになります。「アップルミュージック」は加入型音楽配信サービスです。


このような加入型音楽配信サービスが出現してきた背景にはクラウドの発展があります。クラウドでは、データはストレージにではなくクラウドにおいておき、インターネットをつかっていつでもデータにアクセスすることがきます。

そもそも、アップルの音楽ダウンロードサービスの iTunes music は売上を落としつつありました。ダウンロード型サービスにかわってストリーミングの加入型サービスが台頭するのは時代の潮流でしょう(注2)。

「アップルミュージック」をみてもクラウドが本格化しつつあることがわかります。


▼ 注1

▼ 注2
ストリーミング型の音楽配信サービスということでは、アップルの iTunes でもインターネットラジオがすでにありました。インターネットにつながっていれば、iTunes でインターネットラジオを無料で利用できます。

非常に多数のラジオ局があり、あらゆる分野の膨大な楽曲が放送されています。作曲家別・楽器別の放送もたくさんあります。Mac の場合は iTunes をたちあげてインターネットラジオのアイコンをクリックすればすぐに利用できます。iPhone や iPad の場合でしたら、インターネットラジオ・アプリを App Store から入手(無料)すればきくことができます。ただしあくまでも放送ですから一方的に楽曲がながれてきます。バックグラウンドミュージック用にはいいのではないでしょうか。

今度の「アップルミュージック」は有料ですからインターネットラジオよりもつかい勝手がよくなり、これまでよりも音楽がたのしみやすくなるのだとおもいます。

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