発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:心象法

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東京都美術館

東京・上野の東京都美術館で開催されている特別展「新印象派 光と色のドラマ」を見ました(会期:2015年3月29日まで、注1)。20世紀へつながる絵画の革新をおしすすめた「新印象派」の誕生からの約20年間のながれを時間軸にそって紹介していました。

「新印象派」は「点描技法」という技法をつかって絵をえがきました。特別展図録のなかでつぎのように説明しています。

スーラは、パレット上で絵具を混ぜずに、画面に純色の小さな筆触を並べ、鑑賞者の網膜上で色彩が混ざるように制作を行った。(図録41ページ)

つまり「新印象派」の画家たちは、絵の具を画家が直接まぜて色をつくりだすのではなく、絵の具そのままの色を小さな点としてカンバスにひたすらおいていき、絵を見る人(鑑賞者)の視覚のなかで色がまざるようにしました(注2)。

目に見えた世界をカンバス上にそのまま再現したのではないため点描画はそれ自体では完成しておらず、展覧会場で鑑賞者が見たときに生じるイメージとして、鑑賞者の意識のなかで絵が完成することになるともいえます。おもしろいです。

情報処理の観点からこのことを整理すると、まず、鑑賞者が点描画に目をむけると絵に反射した光が目のなかに入ってきます。これはインプットです。そして目の中の網膜から脳へと情報が伝達され処理されて鑑賞者の内部でイメージが生じます。これはプロセシングです(図1)。プロセシングにより色は点ではなくなりイメージとして融合されます。絵のイメージはあくまでもわたしたち鑑賞者の内面に生じていることに注目してください。

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図1 色の点々がまざってあらたな色彩が生じる

展覧会場にいけばこのようなことを実体験することができます。絵にちかづいて見ると点描であることがわかり、絵からはなれてみると色がまざって風景画なり人物画として鑑賞できます(注3)。遠近によって見え方はまるでちがいます。今回の特別展は、視覚あるいは眼力に関するみずからの情報処理の様子を実験できる絶好の機会でした

このように絵は、ちかくで見ているだけだと意味がありませんので、ある程度はなれてじっくり味わうのがよいでしょう。そのためにはなるべくならすいている午前中のはやい時間に会場に行ったほうがよいとおもいます。


▼ 注1
東京都美術館・特別展「新印象派 光と色のドラマ」

▼ 注2
下記サイトでは、茂木健一郎さんらが視覚と脳の仕組みから点描技法に関してわかりやすく解説しています。

▼ 注3
会場には、色のブロックでつくった絵が展示されていました(これのみ撮影可でした)。ちかくで見ると色の点の集合であることがわかります(図2)。はなれて見ると色がまざって絵として認識できます(図3)。

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図2

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図3


▼ 参考文献
 


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ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)組曲《展覧会の絵》をききました(アレクサンドル=ラザレフ指揮、日本フィハーモニー交響楽団、杉並公会堂、2015年3月15日)。

ロシアの作曲家・ムソルグスキーは、友人・ハルトマンの遺作絵画展でみた10枚の絵の印象を音楽にしました。

ムソルグスキーは、絵(イメージ)をみてそれを音楽にしましたが、わたしたち聴衆はそれとは逆に音楽をきいて絵(イメージ)をおもいうかべます。これは「耳でたのしむ展覧会」であり、同時にとても効果的なイメージ訓練です。

10枚の絵がそれぞれ曲になっていて表題がついています。会場で配布されたプログラムノートから表題と解説を引用しておきます(注)。ただし、音楽をききながらイメージをするときには言葉にはあまりとらわれずに自由に想像をふくらませてかまいません。

第1曲:こびと
北欧神話の精霊・ノームがグロテスクに描かれる。

第2曲:古い城
中世の城にこだまする吟遊詩人の歌をエキゾチックに歌いあげる。

第3曲:チュイルリー宮殿の前庭
庭園での子どもたちのはしゃいだ姿が表情豊かに描かれる。

第4曲:ビドウォ
「ビドウォ」とはポーランド語で牛の群れのこと。重々しい牛車の響きの中に、ロシア帝国時代の暗くみじめな農奴の生活が浮かぶ。

第5曲:からを付けたひよこの踊り
元気いっぱいのひよこたちがあっちこっちと飛び跳ねる。

第6曲:サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュレ
かたや威張った金持ち、かたや卑屈な貧乏人という、対照的なユダヤ人のおしゃべり。

第7曲:リモージュの市場
リモージュはフランス中部の町。おかみさんたちの威勢の良いおしゃべりが市場を縦横無尽に飛び交う。

第8曲:カタコンブ(地下墓地)
古代ローマ時代、迫害されたキリスト教徒たちの墓。こここでムソルグスキーは「死者とともに死者の言葉で」という表題で“プロムナード”を挿入し、亡き親友春とマンの追憶に浸る。

第9曲:鶏の足の上に建つ小屋
ロシア民謡の魔女バーバ・ヤガーの家。中空を自在に飛び回るような豪快さと、怪しげな呪文を思わせる昼間部が鮮やかなコントラストを描き出す。

第10曲:キエフの大きな門
ハルトマンが設計したキエフ市の門の重厚な印象。

こうして《展覧会の絵》は堂々とクライマックスをむかえ、わたしたちは光の世界へといざなわれます。


今回の方法は、音楽をインプットして絵(イメージ)を想像するというやり方でした。情報処理の観点からみると、イメージ訓練あるいは想像することはプロセシングのなかでもとくに重要な方法といえるでしょう(図1)。
150315 音楽と心象法
図1 音楽をきくことはインプット、想像することはプロセシング
(<インプット→プロセシング→アウトプット>は情報のながれ)


何かをアウトプットしようとおもったら、先にイメージをえがいて、イメージをおもいうかべながらアウトプットしたほうがうまくいくとおもいます。



▼ おすすめの音源
Amazon デジタルミュージック:展覧会の絵
こちらは 辻井伸行さんの演奏によるピアノ(オリジナル)版です。

▼ 注
曲のはじまりと各曲(各絵)の間には「プロムナード」というみじかい前奏曲あるいは間奏曲が演奏されます。この「プロムナード」はムソルグスキー自身が絵と絵のあいだをあるいている姿を表現しているといわれています。


▼ 参考文献

150311 MacBook
「新しいMacBook」は3色(アップルのサイトから引用)

2015年3月9日(米国現地時間)アップルは、「ノートブックを再発明」とうたう新設計の12型ノートブック「新しいMacBook」を発表しました。重量は2ポンド(920g)、薄さは13.1mm、Mac 史上最薄最軽量を実現、カラー(仕上げ)は、シルバー・ゴールド・スペースグレイの3色です。2015年4月10日発売予定で、価格は148,800円からです(注1)。

数多くのレビューがインターネット上にすでにでていますので、ここでは、アップルのいう「ワイヤレスな世界のために完全装備」について強調しておきたいとおもいます。「新しいMacBook」は、ワイヤレス化がますますすすむ世界に対応できるように設計されています。

「新しいMacBook」には、ヘッドホン端子以外ではたった一つのポートしかありません。それは「USB-C ポート」とよばれるもので、充電・外部ディスプレイの接続・USB 3 速度によるデータ転送ができます。

このポートには従来の周辺機器は直接はつなげないのでアダプタを別途かわなければなりません(注2)。


これについては、「非常に不便であり、消費者のニーズを無視した進化」と批判する人もいます。

しかしアップルは、消費者の都合を“無視する”かのように数々の新製品をこれまでも開発してきました。たとえば、フロッピードライブの廃止、シリアルポートの廃止、ファイアワイアの廃止、CD-ROMドライブの廃止、ブルーレイにいたっては完全に無視しています。

したがって今回の「USB-C ポート」の件についてもおどろきではありません。むしろ当然の流れということでしょう(注3)。


アップルは、ワイヤレス・インターネットでつながれたクラウド(iCloud)をユーザーがつかうことを想定しています。クラウドのビジョンがまず先にあって、それにもとづいて商品を開発しています。つまりアップルは未来を先取りして技術革新をつづけているのです

ビジョンがなくて現状を維持しようとする人にとっては「消費者のニーズを無視した進化」という批判になるでしょうが、ビジョンがみえている人にとっては、なるべく効率的にあたらしい世界にすすんでいこうということになります(注4)。


クラウドのビジョンによれば、デバイスはすべてクラウドでつながるようになり、データもクラウドにおいておくようになります。あたらしいクラウドの時代に人類はこれから本格的に突入していきます

クラウドは機能的にはインターネットをつかうワイヤレスであり、このようなビジョンであればデバイスにおいて最後にのこるポートは電源のみということになります。その電源とても将来のいつかはケーブルがいらなくなるでしょう。たとえばソーラーパネルを搭載するなどして。

そして、クラウド・システムにおける情報処理の主体はあくまでも自分(人間)であって Mac や iPhone や iPad などのデバイスではありません。デバイスは情報処理をするときに役立つ単なる道具にすぎません。道具をつかいこなして一人一人が情報処理をすすめていくことがこれからはもとめらます。デバイスにただ依存していても情報処理はできません。わたしたちはクラウドに適応して主体性を発揮しながら情報処理をすすめていかなければなりません。


アップルの商品開発の歴史は、ビジョンをえがくことがいかに重要かを物語っているとおもいます。まずビジョンがあって、そして物が顕在化してきます。
 



注1:新しいMacBook >>
 
注3:MacBook Air の Retina ディスプレイ化を非常に多くのユーザーはまちのぞんでいましたし、それが消費者のニーズでした。しかしというか やはりというかアップルは、既存の製品のディスプレイをとりかえて現在のニーズにこたえるだけという陳腐なことはせず、未来を先取りした商品をまたしても投入してきました。「新しいMacBook」はこれからの MacBook ラインナップ開発の方向性をしめすものであり、現状の MacBook Pro が今後どのよにうに変更されるのかを予告する内容になっているとかんがえられます。

注4:近年の日本では「生きのこりをかけて!」という言葉がよくさけばれます。これは、過去の実績をなんとか維持してみがきをかけて、きびしい競争を生きのころうとするかんがえであり、そこには過去をみつめる視点があります。しかしアップルは過去にはとらわれず、そして現在のニーズも切りすて、未来のユーザーのニーズにこたえる新商品を開発しています。


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日本の過去の優良企業はイノベーションのジレンマにおちいっている
顧客の暮らしを豊かにする -アップルのビジョン-
ソニーからグーグルへ - 情報産業のステージへ転換 - 〜辻野晃一郎著『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』〜
ビジョンをえがき、全体をデザインし、自分らしいライフスタイルを生みだす - 映画『スティーブ・ジョブズ』-



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東京国立博物館本館

東京国立博物館で開催中の特別展「みちのくの仏像」を見ました(本館・特別5室、会期は 2015年4月5日まで)。

仏像をとおして東北の魅力にふれることで、東日本大震災からの復興の一助にする企画です。本展の収益の一部は、被災した文化財の修復に役立てられるそうです。

特別展「みちのくの仏像」 >>
特設サイト >>

「東北の三大薬師」と称される、黒石寺(岩手県)、勝常寺(福島県)、双林寺(宮城県)の薬師如来像をはじめ、東北各県を代表する仏像と対面することができました。

「東北の三大薬師」は、会場の奥に、かこむようにならべられていました。むかって右から順に、双林寺(宮城県)の《薬師如来坐像》と《二天立像(持国天・増長天)》、勝常寺(福島県)の《薬師如来坐像および両脇侍立像》(国宝)、黒石寺(岩手県)の《薬師如来坐像》と《日光菩薩立像・月光菩薩立像》であり、とても印象にのこりました。

また、天台寺(岩手県)の《聖観音菩薩立像》 は、像の表面に荒々しいノミ目をあえてのこしながら、木の質感を可能なかぎり生かした鉈彫(なたぼり)像で、樹木の中から仏像が出現してくることを想像することができました。

そのほかで印象にのこったのは、給分浜観音堂(宮城県)の《十一面観音菩薩立像》でした。牡鹿半島の給分浜の高台にまつられているそうです。

「みちのくの仏像」は、美を追求するというよりも、素朴さのなかの力強さや生命力を感じとることができました。

また、本展とあわせて、特別展「3.11大津波と文化財の再生」も開催されていました。東日本大震災による大津波は文化財にも甚大な被害をもたらしました。東京国立博物館は被災文化財の再生にもとりくんできたそうです。これまでの約4年にわたる成果を知ることができました。


▼ 関連記事
東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)



 

国立民族学博物館の展示は、文化的にひとまとまりのある地域を単位にしていて、とてもわかりやすい展示になっています。具体的には、つぎの地域の展示を順番に見ることができます。オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、南アジア、東南アジア、中央・北アジア、東アジア(朝鮮半島、中国地域、アイヌ、日本)。それぞれの展示(地域)が情報のひとまとまり、つまりファイルになっています。

わたしは、これらの展示を見ることにより、世界一周の「圧縮体験」をすることができました。これはこれで思い出にのこる貴重な体験でした。

しかしその後、この体験をふりかえっていて、今度は、環太平洋地域が見えてきました。

国立民族学博物館には、環太平洋地域という展示はありません。そこで、オセアニア、東南アジア、台湾、日本、アイヌ、アメリカの各展示のイメージを接続して、環太平洋地域のイメージをえがいてみました。

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オセアニア


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台湾原住民族


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沖縄の海のくらし


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アイヌの家


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アメリカの農作物


環太平洋地域は、自然環境の観点からは、大地震・火山噴火・津波・台風などがある大きな変動帯としての共通点があります。特に近年は大災害が増えています。一方、経済的政治的には、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が進行中であり、あらたな経済圏が形成されつつあります。環太平洋という、ひとまとまりのある あたらしい地域(単位)ができつつあるのです。環太平洋地域は、世界的に見ても目がはなせない地域になってきました。

既存の展示を見て理解し記憶するだけではなく、このように、いくつかの展示イメージをピックアップして、イメージ空間のなかでそれらを自由に接続し、あらたなイメージをえがいてみることはとてもたのしいことであり、イメージ訓練(心象法)としても意味があります。このような方法は博物館の発展的な利用法であり、一歩ふみこんだ博物館の「応用編」と言ってもよいでしょう。


国立民族学博物館 >>


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パンにバターをぬって食べる人を想像する - 国立民族学博物館のヨーロッパ展示 -
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行動しながら情報処理をすすめる - 博物館での体験 -
多様性を大観する - 国立民族学博物館のアメリカ展示 -
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「地球時代」をとらえる 〜梅棹忠夫著『地球時代の日本人』〜
情報の検索システムをつくる 〜梅棹忠夫著『メディアとしての博物館』〜
未知なるものへのあこがれ -『梅棹忠夫 語る』(6)-

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オセアニアの地図(展示ガイドから引用

国立民族学博物館のオセアニア展示は、展示空間が大きく、非常に充実しています。ここでは、地球上のほかの地域とはあきらかにちがう、海洋地域への人類の移動と拡散の歴史を想像することができます。

海がほとんどの面積を占めるオセアニアには、大小数万をこえる島々が点在しています。ここでは、発達した航海術をもち、根栽農耕をいとなむ人々がくらしてきました。

人々の移動と拡散についてはつぎのように説明していました。

今から5万年前は、海面が今よりも低く、多くの地域が陸つづきになっていて、東南アジアからの移動がしやすかった。

ラピタ土器が見つかる島々をたどると、人々がメラネシアを通ってポリネシアへ移動したことがわかる。

高度な航海術(スターナビゲーション)をつかって移動することができた。

つまり、海面低下・土器の分布・航海術の証拠から、東南アジアからこの広大な海洋地域に、人類が移動・拡散したことが想像できるというわけです。


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人々の移動と拡散


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ラピタ土器
 

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チェチェメニ号
(航海や漁撈につかわれるカヌー。3000キロメートルの航海記録をもつ)


オーストラリアやニューギニアでは4〜5万年前から人々が住みはじめ、また、今から3300年前ごろには、根栽農耕文化をもつアジア系の人々がオセアニア全域の島々にひろがり定住したそうです。

このようなことを想像するだけでも、オセアニアが、大陸地域とは基本的にちがう異色な地域であることがよくわかります。地球上の多様性を知るためにも、オセアニアは重要な位置を占めるのではないでしょうか。

なお、オセアニアの人々がどこから来たかについて、東南アジア起源説ではなく、南米起源説をとなえた学者もかつてはいたそうですが、現在では否定されているそうです。

国立民族学博物館の展示は、日本展示も非常に充実しています。
 
世界各地の展示室を一通りみおわってから日本の展示室に到達すると、日本を、世界のなかに位置づけて相対化してとらえなおすことができます。

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稲作の道具展示(日本展示)

日本展示では、日本の農業は稲作農業が中心であり、これが、日本文化の形成に非常に大きな役割をはたしてきたことがよく表現されています。

しかし、稲作および稲作文化に関する展示とともに、一方で、漁業(漁撈)に関する展示にもかなりのスペースをとっています。

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漁業(漁撈)に関する展示(日本展示)

これらの展示を見ていると、日本は、〔稲作+漁撈〕の半農半漁の地域だということがうかびあがってきます。これが、炊いた飯の上に魚をのせてたべる、寿司の食文化をつくりあげたことがわかります。日本食の代表が寿司であることは言うまでもありません。

このことは、ヨーロッパ展示と対比させると一層鮮明に想像できます。ヨーロッパは〔麦作+酪農〕の半農半牧であり、ヨーロッパ人はパンにバターをぬって食べます。それに対し、日本は〔稲作+漁撈〕の半農半漁であり、日本人は、米の上に魚をのせて食べるのです。

このように、博物館の各展示を空間的に対比させて見ると、おもしろいことがわかってきます。そのことは、直接みえる形で展示されているとはかぎりません。展示を見ているうちに想像できたということでよいのです。

建物のなかで、各展示物を空間的にとらえて想像をふくらませることは、博物館のなかをあるくたのしみのひとつです。


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パンにバターをぬって食べる人を想像する - 国立民族学博物館のヨーロッパ展示 -

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ヨーロッパのパンの数々(国立民族学博物館、ヨーロッパ展示)

国立民族学博物館のヨーロッパ展示でパンを見つけました。とてもおいしそうでした。もちろん模型ですが。

パンは、麦作を生業の中心としてきたヨーロッパではもっとも基本的な食べ物の一つです。

* 


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酪農にかかわる道具の数々(国立民族学博物館、ヨーロッパ展示)

その裏側にまわってみたら、酪農に関係する道具の展示がありました。

酪農(牧畜)は、ヨーロッパの農業の重要な一部分をなしています。牛・羊・豚を中心に、その乳と肉が利用され、特に乳は、バターやチーズに加工され、人々の日常的な食物のひとつになっています。

* 

これらのパンと酪農の展示から、ヨーロッパの農業は〔麦作+牧畜〕つまり半農半牧であること、そして、麦作農業からパンが生まれ、牧畜(酪農)からバターとチーズが生まれることを、展示物にむすびつけて理解し記憶できました。

そして、パンに、バターをぬってたべているヨーロッパ人の姿を、リアルに想像することができました。

具体的な物にむすびつけて理解し記憶し、そして、そこでは見ることはできないことでも想像してみることは大切なことです。博物館のなかをあるくたのしみのひとつは、自由に、想像をふくらませることができる点にあります。

東京、練馬区美術館で開催された「見つめて、シェイクスピア!」展を先日みました。

本年が、16世紀のイングランドを代表する劇作家で詩人、ウィリアム=シェイクスピアの生誕450年にあたることを記念して企画された展覧会でした。

シェイクスピアの作品に主題をえた絵画作品や挿絵が多数展示されていて、シェイクスピアを短時間で圧縮体験することができました。

フランス・ロマン主義の旗手、ウジェーヌ=ドラクロワによる版画《ハムレット》や、エコール・ド・パリの画家、マルク=シャガールの版画による挿絵本《テンペスト》、イギリスの挿絵画家アーサー=ラッカムやアーツ・アンド・クラフツのメンバーでもあったウォルター=クレインによる挿絵本などを見ました。

静止画をみて、物語をおもいだいし、とらえなおすという体験をすることができました。『オセロー』の第5幕第2場は印象的でした。

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ジョシュア=ボイデル:「オセロー」より、「第五幕第二場 眠るデスデモーナ」(図録より引用)


それぞれの絵は、物語の一場面をきりとったものですが、その前後を想像してみるのはたのしいものです。また、画家は、どうしてこの場面を選択したのかを想像してみるのもよいです。

それぞれの絵は、ストーリーの目印として利用できます。題名と絵をセットにしておぼえておけば、そのストーリーをおもいだしやすくなります。わたしは、図録を買ってきましたので、この図録に掲載されている絵は、ストーリーのインデックス(想起のための手段)としてつかえます。つまり、絵は「アイコン」の役割をはたします。

あるいは、印象的な絵を見て、原作にあたってみるという逆コースもおもしろいです。

こうして、イメージと言語を自由に往復しながらたのしめる展覧会でした。

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▼ 文献
「見つめて、シェイクスピア!」展(図録)、マンゴスティン制作・発行、2014年


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情報は要約してアウトプットする 〜 河合祥一郎著『あらすじで読むシェイクスピア全作品』〜 


▼ 関連書籍 

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悪魔の歌声が大きな波動になる - ヴェルディ作曲『オテロ』(METライブビューイング)-
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情報は要約してアウトプットする 〜 河合祥一郎著『あらすじで読むシェイクスピア全作品』〜
シェイクスピアの四大悲劇のひとつをオペラ化した - トマ作曲『ハムレット』(METライブビューイング)-
あらすじを予習してから鑑賞する - オペラになったシェイクスピア《テンペスト》-
感情が意識をゆさぶる グノー作曲『ロメオとジュリエット』-
音楽と演技が融合して一本のストーリーになる - ヴェルディ作曲『マクベス』-
絵の前後を想像する -「見つめて、シェイクスピア!」展 -
「自分が見えていない」をキーワードにして - シェイクスピア -

自分のアウトプットを見直して、自分で自分を見る




一川誠著『錯覚学 知覚の謎を解く』(集英社新書)は、錯覚の実験をしながら、知覚の謎をときあかしていく本です。図もたくさん掲載されていますが、図版集というよりも理論書です。

錯覚の本がおもしろいのは、自分で実際に錯覚の実験をしながら読みすすめることができることです。同時に、自分の知覚の不思議さにも気づかされます。

第3章「二次元の網膜画像が三次元に見える理由」では、どのようにして奥行きや距離といった三次元の知覚を成立させているのか、図をつかって説明しています。両眼視差によって奥行きを知覚するステレオグラム(立体視図)は興味ぶかいです。

また、二次元動画で、簡単に、奥行きを強化するには単眼で見ればよいとのべています。

通常の2Dテレビの観察から強い立体的な知覚を成立させる方法がある。単眼観察するのである。特に、画素が微細なハイビジョンのディスプレーを単眼で観察すると、強い奥行きを感じる。片眼を閉じることにより、画像が平坦であることを示す両眼視差の他係がなくなり、多くの単眼的手がかりが示す奥行が見えやすくなるためだ。

第4章「地平線の月はなぜ大きく見えるのか」では、わたしたちの光の処理システムについてのべています。

眼に飛び込んできた光の一部の波長が網膜上の視細胞に当たり、それが神経の興奮を引き起こすことで知覚システムの処理が始まる。

第5章「アニメからオフサイドまで - 運動の錯視」では、テニスやサッカーでなぜ誤審がおきやすいのかを、錯視の観点から説明していて、非常におもしろいです。

第7章「生き残るための錯覚学」では、「進化の過程で錯覚・錯誤が発現」したことがのべられています。つまり、生物の環境への適応戦略のなかで知覚や錯覚、あるいは情報処理についてとらえることができるということです。

錯覚の研究は、このような観点から、危険回避や娯楽のあらたな可能性、あらたな表現手段の開発、生活の質の向上などに役立ちます。

知覚や錯覚は、情報処理の観点からみるとインプットとプロセシングです。これらにもとづいてわたしたちは行動していきますので、行動は、アウトプットととらえることができます。環境に適応するように行動するにはどのようにすればよいか、適応の観点から錯覚をとらえなおすという点はとても興味ぶかいです。


▼ 文献
一川誠著『錯覚学 知覚の謎を解く』(集英社新書)集英社、2012年10月22日
錯覚学─知覚の謎を解く (集英社新書)


▼ 関連記事
錯視や錯覚を実験する -『錯視と錯覚の科学』- 

 

東京郊外にある御岳山の登山地図です。御岳山およびその周辺にもおもしろい登山ルートがあります。わたしは、御岳山から奥多摩駅あるいは五日市駅まであるいたことがあります。ケーブルカーが山腹まではしっていますから、初心者でも十分たのしめます。

山をあるくときには、地図をみながら、自分のいる空間をイメージするとよいです。特に、垂直方向(高さ)の感覚をつかむようにします。

あるきながら三次元空間をイメージし、また、帰宅後にもイメージします。そのときに、このシンプルな地図を手がかりにすることができます。必要最小限の情報だけがでていて、よけいな情報がでていないので、イメージトレーニングのために有用です。

スマートフォンにこの地図をダウンロードしてから、出かけるとよいでしょう。 

なお、楽天 Kobo の場合は、パソコンでも見ることができます。
楽天 Kobo >>

Amazon Kindle の日本のアカウントの場合は、まだ、パソコンには対応していないようです。

人が情報処理をおこなうとき、自分の意識(心)のなかに環境から情報をインプットすると、意識のなかでプロセシングがおこり、そしてその結果は環境にアウトプットされます(図)。

141105 自分と環境

図 自分と環境との「協働作業」により情報処理ができる。

ここでいう環境とは自分をとりまく周囲の空間であり、自分の体の外側の領域です。

〔インプット→プロセシング→アウトプット〕からなる情報処理は自分単独ではできず、環境がかならず必要です。環境があってこそ情報処理は可能です。ここでは、自分と環境との「協働作業」とも言うべきことがおこっています。

したがって、情報処理をおこなうときには自分だけを意識するのではなく、自分と環境の全体を意識した方がよく、自分と環境の全体が情報処理の場であり意識の場であるとかんがえた方がよいでしょう。

このような情報処理の観点から見ると、意識あるいは意識の場をもつ自分という存在は、環境にむかって大きくひろがっているとイメージした方がよさそうです。

 

東京都渋谷区広尾にある山種美術館の展覧会「水の音 - 広重から千住博まで -」をみました(会期:2014年7月19日~9月15日)。

山種美術館「水の音 - 広重から千住博まで -」 >
 
本展は、画面から感じられる「水の音」に焦点をあて、川、海、滝、雨の主題に沿って厳選した山種美術館の所蔵品を通して、近世から現代までの画家たちの試みをふりかえるという企画でした。

水は、その形態を多様に変化させ、決まった形をもたないからこそ画家たちのインスピレーションを刺激したとかんがえられ、形のない対象をいかにして描くかという課題は、多くの画家が挑戦した重要なテーマでした。

わたしは、美術館のなかをあるきながら一枚一枚の絵に接し、水の視覚的な造形美を見ながら、川の音、波の音、滝の音、水面の音、雨の音をおもいおこしていきました。音をきいて映像(イメージ)を想像するということはよくおこなっていますが、絵をみて音を「想像」するという、普段はあまりしないおもしろい体験を集中的にすることができました。自分の意識のなかで音をひびかせながら絵をみているとその場の体験は一層ふかまり、記憶にのこります。

江戸時代から現代にいたるまでのたくさんの水の絵画を通して、さまざまな形に変化する水は環境の指標でもあることを再認識し、水をとらえなおすことによりわたしたちの世界の変動と成りたちがよく見えてくることを実感できました。

個人的には、奥田元宗の「奥入瀬(秋)」が印象にのこりました。わたしは奥入瀬をおとずれたことがあり、そのときの実体験と絵画と音のひびきが共鳴して心ゆたかなひとときをすごすことができました。

千葉市、幕張メッセ・国際展示場で開催されている「宇宙博2014」を見ました(会期:2014年9月23日まで)。宇宙開発の技術博覧会であり、人類の宇宙開発の歴史を模型(一部実物)を通して知ることができした。

会場は、「人類の冒険」「NASA」「JAXA・日本の宇宙開発」「火星探査」「未来の宇宙開発」などのエリアにわかれ、約9千平方メートルの広大なフロアに約500点が展示されていて迫力がありました。

140909 宇宙博2014
会場マップ&音声ガイドリスト


人類の宇宙開発の歴史の概要はつぎのとおりです。

 1957年 世界初の人工衛星・スプートニク1号うちあげ(旧ソ連)
 1959年 ルナ2号、初の月面到達(旧ソ連)
 1961年 ガガーリンがボストーク1号で大気圏外へ(旧ソ連)
 1969年 アポロ11号が月面着陸。アームストロング船長が初の月面第一歩(米国)
 1976年 火星探査機バイキングが火星到着(1975年うちあげ、米国)
 1977年 探査機ボイジャー1号、2号うちあげ(米国)
 1981年 スペースシャトル・コロンビア初うちあげ(米国)
 1998年 国際宇宙ステーション建設開始(2011年完成)
 2005年 はやぶさがイトカワ到着(2003年うちあげ、2010年帰還、日本)
 2012年 火星探査機キュリオシティが火星到着(2011年うちあげ、米国)
 2012年 ボイジャー1号が太陽系を脱出(米国)


IMG_1347アポロ月着陸船
アポロ月着陸船


IMG_1343アポロ月面車
アポロ月面車


IMG_1354司令船
アポロ司令船と帰還時につかったパラシュート


IMG_1351月から見た地球
月から見た地球(地球も天体の一つにすぎない)


IMG_1361火星
火星探査機キュリオシティ


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未来の宇宙船ドリームチェイサー


■ 月面への第一歩
宇宙開発のなかで最大の偉業は1969年7月20日人類の月到達です。月着陸船は、重量を軽くし、安全性を高めるために何度も改良されました。最初の課題は、コックピットの窓と座席の重量でした。最終的には宇宙飛行士は立ったまま飛行し、小さな三角形の窓で視界を確保することにしました。また、月着陸船をささえる脚の数にも変更がかさねられました。3本がもっとも軽い形状ですが、1本が破損すると安定性がうしなわれ、5本だと安定しますが重量が大きくなります。結局、4本で決着しました。


■ 歴史的転換をもたらす
人類による宇宙開発の歴史は人類が宇宙へと活動領域をひろげていく過程であり、人類が活動空間を大きくひろげて宇宙へ進出したことは、人類の歴史的な転換となりました

一方で人類は、地球も、宇宙のなかの天体のひとつにすぎないことを認識し、地球は小さな存在になりました。地球が小さくなることによってグローバル化(全球化)がもたらされました。宇宙開発の歴史は、グローバル化の歴史でもあったのです

会場には、月から見た地球の写真も展示されていました。この情景に、人類の歴史的な転換が圧縮されています。人類は、月に到着したことによりひとつの「分水嶺」をこえたのです


■ イメージ体験をする
宇宙にでて、みずからの空間を一気にひろげて、一瞬にして全体を見てしまい、対象を小さくしてしまう。技術革新は人の世界観も転換していきます。宇宙博を利用すればこのようなイメージ体験をすることができます。これは、山を一歩一歩のぼっていくような、情報をひとつひとつつみあげて認識していく作業とは根本的にことなる体験です。

なお、スペースショップに行くと公式ガイドブック(2200円)を売っています。はじめに、スペースショップに行って、公式ガイドブックの見本を見て概要をつかんでから各展示を見た方が効率よく理解がすすむとおもいます。



▼ 参考書
立花隆著『宇宙からの帰還』中公文庫、1985年7月1日

今回は、『記憶力がいままでの10倍よくなる法』から「線形法」の 31 から 60 までの「数字・イメージ・ファイル」(87ページ)を語呂合わせで記憶してみたいとおもいます。

イメージ訓練や記憶法では、言葉からイメージしたり、イメージから言葉をひきだして、言葉とイメージを相互にむすびつけることが大切であり、これは、情報処理における言語領域と視覚領域とを融合させて活用することになり、発想法にも役立ちます。

140815 言葉とイメージ
図1 言葉とイメージをむすびつける


これを拡張して、今度は、数字とイメージをむすびつけてしまいます。数字をみてイメージをおもいうかべ、イメージをおもいだして数字にします。数字をイメージ化し、イメージを数字化するのです

140829 数字とイメージ
図2 数字とイメージをむすびつける


以下に、「数字・イメージ・ファイル」から、31〜 60 までを引用して記憶します。

31 ─ サイ(犀)
32 ─ サジ(匙)
33 ─ ミミ(耳)
34 ─ ミシン
35 ─ サンゴ(珊瑚)
36 ─ サル(猿、6は中国語でルー)
37 ─ ミチ(道、7は中国語でチー)
38 ─ サンバ(産婆)
39 ─ サク(柵)
40 ─ シマ(島、0はマ(丸)とも読める)
41 ─ シイ(椎)
42 ─ シンブン(新聞、ブはヒフミのフ)
43 ─ シミ(染み)
44 ─ シシ(獅子)
45 ─ シンゴウ(信号)
46 ─ シロ(城)
47 ─ シナ(支那)
48 ─ シバ(芝)
49 ─ シックイ(漆喰)
50 ─ コマ(駒)
51 ─ コイ(鯉)
52 ─ コップ
53 ─ ゴミ(塵)
54 ─ コシ(腰)
55 ─ ココア
56 ─ ゴム
57 ─ コナ(粉)
58 ─ ゴハン(御飯)
59 ─ コック
60 ─ ロマン


数字だけを見てイメージがすぐにうかぶように、一方で、イメージを見てすぐに数字がうかぶように日頃から練習するとよいでしょう。

 
▼ 文献
栗田昌裕著『記憶力がいままでの10倍よくなる法』三笠書房、2002年5月


▼ 参考ブログ
「数字イメージ」を記憶する(その1)
情報処理の一環として記憶法を実践する 〜 栗田昌裕著『記憶力がいままでの10倍よくなる法』〜 

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国立新美術館


東京・六本木の国立新美術館で開催中の「オルセー美術館展 印象派の誕生 - 描くことの自由 -」を見ました。“印象派の殿堂” として知られるパリ・オルセー美術館から珠玉の絵画86点が来日しました(会期:2014年10月20日まで)。

▼ オルセー美術館展 印象派の誕生 - 描くことの自由 -
http://orsay2014.jp

今回は、アルフレッド・シスレー《洪水のなかの小舟、ポール=マルリー》が印象にのこりました。

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「セーヌ河畔の地を転々としたシスレーは、モネと同じく水辺を愛し、画業の大半をセーヌの風景画に捧げました。本作は、1876年のセーヌ川増水に際して描かれた6枚の作品のうちの1点」(注1)です。

イメージ訓練「拡大法」(注2)をおこないました。
 

ボートにのって家のちかくまでいってみます。すると家はどんどん小さくなっていきます。手のひらにのってしまいました。洪水のなかでも水びたしにはなりませんでした。今度は、家がどんどん大きくなってきました。見上げるように大きくなります。 わたしは小人のようです。洪水の増水など些細なことです。


物事をイメージして拡大縮小すればあたらしい見方が生まれます。たとえば、いやなことがあったら、そのイメージをどんどん小さく縮小していき消滅させてしまいます。願望があったら、それをイメージして拡大し、夢を大きくふくらませます。これは発想法としてもつかえます。



▼ 参考文献
注1:『オルセー美術館展 印象派の誕生 - 描くことの自由 -』(ミニ図録)読売新聞東京本社、2014年
出品全作品の図版と主要21作品のミニ解説を収録。展覧会の魅力がつまった1冊です。国立新美術館のミュージアムショップで買うことができます。ミニサイ(155×131mm)、全210ページ。1300円(税込)。
 
注2:栗田昌裕著『心と体に効く驚異のイメージ訓練法』廣済堂出版、1993年8月1日 

▼ 関連記事
旅をしながら内面世界をゆたかにする 〜『モネと画家たちの旅 -フランス風景画紀行-』〜
美術館でイメージトレーニングをする 〜「モネ、風景をみる眼」展 〜
イメージ訓練「拡大縮小法」にとりくむ - オルセー美術館展 -
色がまざって見える - 特別展「新印象派 光と色のドラマ」-
遠くからみて、近くでみて、離れてみる - 「モネ展」-
見る仕組みを知る - 藤田一郎著『「見る」とはどういうことか』-


先日、新宿御苑を散歩していたときに KIRIN 缶コーヒー を買ったらつぎのことが缶に書いてありました。

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= 新しい飲み方 =

 
パッケージを目の前に持ってきて、
青い空間へ意識を集めます。
 

 
ゆっくり、ゆっくりと
やさしい香りを取り込み、
澄んだ味に身をゆだねます。


 
この青い空間で、
やさしいそよ風に吹かれ、
心休まる静かな時を
過ごしてきてください。
 


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これは一種のイメージ訓練(心象法)です。イメージの世界で「青い空間」に行ってかえってくる。そこで「心休まる静かな時」をすごすのです。

コーヒーをきっかけにして、コーヒーを通してイメージ訓練にとりくみ、心の世界をとりもどす。その提案をしています。 コーヒーという飲料(物質)をただ単に摂取して眠気をさませばよいというのではありません。

これまでの工業社会の時代では、飲食物は物質でありエネルギー源としてとらえていましたが、今日、あたらしい情報産業の時代にかわって、物質とエネルギーに価値の基準をおくのではなく、それにかわって心や情報、あるいは心の情報処理の方に価値を見いだすように変わってきました。缶コーヒー1本をとっても、工業社会から情報産業社会への転換を読みとることができます

物質とエネルギーを基礎としつつも、その先にひろがる広大な心の世界に注目し、心のつかいかたやライフスタイルを提案する。情報産業社会で成功している企業はみな、あたらしいライフスタイルを提案しています

イメージ訓練(心象法)は新宿御苑を散歩しなくても、ちょっとした休憩時間があればオフィスでもどこでもできます。「心休まる静かな時」を心のなかにもつことはとても大切なことです


人類が、地球をどのようにイメージしてきたかを歴史的におしえてくれる図版集です。さまざまな時代の、いろいろな国の人々がえがいた地球のイメージをわかりやすく紹介しています。子供むけの本ですが大人が見ても十分たのしめます。

目次はつぎのとおりです。

第1章 島みたいな地球
 あぶなっかしくバランスをとっているのだ
 大地の下には、べつの世界があるの?
 地球の下にあるもの
 
第2章 多角形の地球
 四角い地球
 正方形の地球
 多角形の地球
 三角形の地球
 
第3章 円形の地球
 盾のようなかたち
 円形の地図
 だ円形の地図
 円形で、山がある
 円形で、ふくらんでいる地球
 
第4章 球のかたちをした大地
 完全な球形
 小さな地球
 洋梨のような地球
 地球の中は・・・・・
 まんまるじゃないよ!
 地球のかたちについて論争が起きた!
 地球の中が空洞だって?

第5章 現在の地球
 想像上の実験
 地球の中への旅 

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図 インド・紀元前5世紀の地球の想像図
(世界の創造に参加したヘビのうえにカメがのり、そのうえに大地をささえるゾウがのっていて、大地には空までとどく大きな山がある)
 

本書を見ると、人類が、地球の形をさぐる探究、世界を認識する旅をしてきたということがよくわかります。

また、その時代のあるいはその地域の抽象的な世界観と、実際に観察された事実(データ)とをくみあわせてイメージをえがいてきたということもわかります。

わたしたちは今では、地球の形はほぼ球形であることを知っていますが、地球の内部については今でも想像するしかありません。

地球や世界を認識するときの基本的な行為はイメージングあるいは想像(イマジネーション)であり、このことは昔も今もかわりません

イメージをえがいたり想像したりすることは、人類の意識のはたらき、心のなかの情報処理のもっとも基本的な行為であるといってよく、本書は、人類の心の歴史の一面をおしえているともとらえられます。

自分がくらしている世界、わたしたちが存在する空間を適切にイメージしたり想像したりすることは非常に重要なことであり、そのために本書はとても参考になります。


文献:ギヨーム・デュプラ文・絵(博多かおる訳)『地球のかたちを哲学する』西村書店、2010年6月20日

心のなかを整理しようとおもったら、これまでに自分で撮影してきた数々の写真を活用するとよいです。具体的にはつぎの手順をふみます。

 1.写真を見なおす
 2.印象的な写真を厳選する
 3.フェイスブックなどにアップロードする
 4.写真を見なおし体験をとらえなおす


1.写真を見なおす(インプット)
これまでに自分で撮影した写真はたくさんあるとおもいます。これらを、あまり時間をかけずに一通り見なおします。


2.印象的な写真を厳選する(プロセシング)
写真のなかから、特に思い出にのこっている写真や特に印象的な写真を厳選します。あれもこれもというのではなくて特別重要な写真のみを選択することが大切です。


3.フェイスブックなどにアップロードする(アウトプット)
厳選した写真を、簡単な見出し(言葉)をつけてフェイスブックなどにアップロードします。フィルム写真の場合はスキャニング、デジタル化してアップロードします。なんでもかんでもアップロードするのではなく、印象的な思い出の写真のみをアウトプットするようにします。(注:フェイスブックは公開・非公開の設定ができます。)
 

4.写真を見なおし体験をとらえなおす
アウトプットした写真は折にふれて見なおし、写真を撮影したときの空間・出来事・体験などをしっかり想起します。

そのときの出来事に、空間的・時間的なひろがりをさらにくわえて印象を強化します。また、よい感情をこめてこの作業をおこない、感情の味つけをして思い出をさらにみがきます。記憶をチェックして未整理な点があれば整理しなおします。

こうして、たのしかった思い出を再利用していけば気分がよくなり、過去にさかのぼって心の内面を快適に整理することができます。


■ 写真をアイコンとして活用する
アップロードした写真は、それを撮影したときの空間や体験の標識(目印)であり、アイコンの役割をはたします。

140704 写真 体験

図1 写真は体験のアイコン(標識)である


 140704 アイコン 情報

図2 アイコンは情報の表面構造である



写真はアイコン(標識)であり、情報の本体は体験であり記憶です。アイコンは表面構造、体験や記憶は情報の本体です。情報は、記憶として心のなかに保持されています。

この作業は、コンピュータにたとえてみれば、ストレージ(記憶装置)にデータバンクを構築していくのと似ています。写真(アイコン)を見て記憶を想起することは、コンピュータでいうと情報の検索に相当します。

写真をアイコンとして活用すれば、体験の情報ファイルを心のなかに再構築することができます。これは、写真そのものを分類整理する作業ではなく、心のなかの整理です。よくできたファイルをつくり、 心の中にしっかりファイルしなおせば、心はととのい、情報の活用もできるようになります。


■ 体験を俯瞰し、未来を展望する
上記の手順1〜4をくりかえしていると、これまでの体験を一瞬で俯瞰し、過去の記憶を心の内面世界で一望できるようになり、自分の人生を風景のようにながめられるようになります

過去の意味を再発見できれば、未来に対するアイデアがでやすくなり、展望が生じてきます。


▼ 参考ブログ
ラベル法により心の中を整理する

わたしたちは、いやな音や人工音ばかりを聞きつづけていると気分がわるくなりストレスがたまります。

こんなときに自然の音を聞くと心がリセットされストレスから解放され、心がかるくなります

自然の音をただ聞くだけでも効果はありますが、もし余裕があったら、音を聞きながら、かつておとずれた所のなかで、そういう音を聞いた場所をおもいだしイメージしてみてください。このとき、爽快で心地よい感情とともにその風景をイメージするのです。自然の音とイメージと感情とをしっかり共鳴させます

音は、感情に直接はたらきかけるので、潜在意識にもよい影響をあたえます。

過去の体験記憶を想起して、ここちよい感情でそれに味つけをし、そしてそれを、もう一度記憶の倉庫にもどすようにすれば、心をととのえることができ気分がよくなります。


▼関連サイト
amazon:自然の音


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