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文明史の観点から情報産業についてのべた先見の書です。

目次はつぎのとおりです。

放送人の誕生と生長
情報産業論
精神産業時代への予察
情報産業論への補論
四半世紀のながれのなかで

情報産業論再論
人類の文明史的展望にたって
感覚情報の開発
『朝日放送』は死んだ
実践的情報産業論
情報経済学のすすめ

情報の文明学
情報の考現学


要点を書きだしてみます。

人類の産業史は、いわば有機体としての人間の諸機能の段階的拡充の歴史であり、生命の自己実現の過程であるということがわかる。

第一の段階にあっては、人間はたべることに追われる。産業としていえば、主として農業による食料生産の時代である。第二期は、主として工業による物質およびエネルギー生産の時代である。第三期の特徴は、脳および神経系を中心とする外胚葉性諸器官の機能の産業化が起動にのる時代である。

五感の産業化
人間の感覚にうったえかける情報を、感覚情報と名づけるならば、それを産業化したものは、感覚情報産業とよぶことができるであろう。

総合的な感覚情報のことを体験情報とよんでみてはどうであろうか。人間は体験情報をもとめている。

人びとは疑似体験をこえて、なまの体験をのぞんでいるのである。

「情報」が相対的にたかい価値をもって、「物質」や「エネルギー」の価値がひくくなる社会へしだいに移行しつつあるのが現代であり、そのむかいつつある状態が情報社会だというわけなのです。

「情報産業論」のまえに「文明の生態史観」というのをかきまして、世界の諸文明の空間論、その地理的展望をこころみました。それに対して、この「情報産業論」は人類文明の歴史的展望といったかたちでかんがえてみたわけです。このふたつは横軸と縦軸で、両方かさねるととわたしの文明論の骨格ができる仕くみになっているのです。

地球上のすべての地域は情報場となった。

情報の時代には、情報の批評家ないしは解説者が不可欠である。情報氾濫の時代になればなるほど、情報の情報が要求されるのである。

流体のうごきを流体力学がとらえるように、情報のうごきをとらえる情報力学をかんがえることができるかもしれない。

文明とは、人間と人間をとりまく装置群とでつくる、ひとつの系である。システムである。装置群とは、具体的な器物や構築物のほかに、諸制度あるいは組織をもふくめることができるであろう。

文明系における装置群の発展と蓄積によって、人間はついに、この一連の過程における最後の段階に達しようとしているのである。

あたらしい時代において、情報は人間の装置、制度、組織に、いっそう根本的な変革をもたらすであろう。人間はそのときにこそ、根本的な価値の大転換を経験することになるであろう。


■ 未来を予想する方法は類推である
本書のなかの「情報産業論」を 梅棹忠夫がはじめて発表したのは1963年、今から51年も前のことです。1960年代に日本人が工業化をよろこびあっていたときに、情報産業の時代が到来することをすでに予言していたわけであり、みごとな未来予知でした。今日において、梅棹が発想した仮説は実証されました。

梅棹は、「農業の時代→工業の時代→情報産業の時代」という文明の発展をわたしたちの身体をモデルにして類推しました。これは、植物→動物→人類という進化論からも類推できるのではないかともおもわれます。

本書は、未来をどのように予想したらよいか、その基本的な方法は類推であることをおしえてくれています。未来予想のサンプルとしてとても有用な本です。


■ 文明系の発展における最後の段階
梅棹は、文明の発展の観点から情報産業を歴史的にとらえています。わたしたちが立っている時代の歴史的な位置づけを知ることはとても意味のあることです。

情報化の背景には、グローバル化という巨大な潮流の出現があります。今日のわたしたちは、この潮流の変化、大転換期のまっただなかにいます。

梅棹は、「文明系の発展における最後の段階」に入ったとのべています。わたしたちは、「グローバル文明」というまったくあたらしい文明の構築をはじめました。これが人類最後の文明になるのでしょうか。わたしたちは人類進化の最終段階に入ったのでしょうか。


■ 心の充実がもとめられる
今日、物質の時代から精神(あるいは心)の時代へと転換しました。これからは心の働きが重視される心の時代です。

その意味で、「モノづくりニッポン」にいつまでもとらわれているとかならず行きづまります。モノは情報をはこんだり、メッセージをつたえるための手段になり、情報やメッセージの方が重要になりました。発想の転換が必要です。

工業の時代と情報産業の時代とでは価値の決め方がことなります。これからは、心の充実や生きがいがもとめられます。そのためには、個人としても組織としても、情報処理能力を高めることがもっとも重要な課題である時代に入ったことはあきらかです。


■「体験情報」の処理をすすめよう
情報処理は、〔インプット→プロセシング→アウトプット〕という三場面からなります。

たとえば、わたしたちは、テレビを見たり、本を読んだり、話を聞いたり、食事をしたりすることにより、視角、聴覚、味覚など個別の感覚体験によってえられる感覚情報を処理しながら生きています。個別の感覚情報を処理するのは情報処理の第一歩です。

それに対して、体験を通して、あらゆる感覚をつかってえられる総合的な情報を「体験情報」と梅棹はよんでいます。

たとえば、観光旅行に出かけていって、行動を通して五感を総動員して総合的にえられる情報は「体験情報」です。ここでえられる情報は、テレビを見たり、本を読んだりすることよりも高度な情報群となります。情報処理ではこの「体験情報」がとても重要です。

観光旅行などで「体験情報」をえること(取得すること)は情報処理でいうインプットの場面です。この段階では、観光旅行に行ってたのしかったということでよいでしょう。

しかし、旅行をつみかさえているとそれだけではあきたらなくなります。そこで、体験情報を心のなかで整理したり編集したりします。これは、体験情報を心のなかにしっかりファイルし、情報を処理する場面です。情報処理の第2場面、プロセシングです。

そしてその結果を、フェイスブックやツイッターやブログなどにアップロードします。これは第3場面のアウトプットです。

このように、初歩的な個別の感覚情報の処理になれてきたら、さらに一歩すすんで総合的な「体験情報」の処理にトライするのがよいです。そのためには行動することです。出かけることです。「体験情報」の処理は心の充実のためのキーポイントになるでしょう。



▼ 文献
梅棹忠夫著『情報の文明学』(中公文庫)中央公論新社、1999年4月
情報の文明学 (中公文庫)


▼ 関連書
梅棹忠夫著『情報と文明』(梅棹忠夫著作集 第14巻)中央公論社、1991年8月20日
梅棹忠夫著作集 (第14巻)

梅棹忠夫著『文明の生態史観』(中公文庫)
文明の生態史観 (中公文庫)


▼ 参考ブログ
世界モデルを見て文明の全体像をつかむ 〜 梅棹忠夫著『文明の生態史観』〜


ソニーという日本の世界企業から、グーグルというアメリカの世界企業へ転職しためずらしい人物の体験談です。2つのことなる大企業の対比をとおして、時代の大きな転換を読みとることができます。

目次はつぎのとおりです。

第一章 さらばソニー
第二章 グーグルに出会う
第三章 ソニーからキャリアを始めた理由
第四章 アメリカ留学
第五章 VAIO創業
第六章 コクーンとスゴ録のチャレンジ
第七章 ウォークマンがiPodに負けた日
第八章 グーグルの何が凄いのか
第九章 クラウド時代のワークスタイル
第十章 グーグルでの日々
第十一章 グローバル時代のビジネスマインドと日本の役割

要点を書きだしてみます。

一九九五年、社長が大賀さんから井出伸之さんに代わった。

社長も、前年、二〇〇〇年六月に出井さんから安藤さんに代わっていた。新設されたカンパニーのプレジデントには何人かの若手が抜擢されたが、私もその中の一人だった。

ソニーは、トリニトロンというソニーの歴史を作り上げて来た優れたCRT技術で圧倒的に強いテレビ事業を継続して来た。CRT時代の終焉は、まさに死活問題であった。

ビジネスの常、世の常であるが、あまりにも強いポジションを確保し過ぎると、逆にそれが大きな足枷になって次の勝負で大敗を喫する事例は枚挙にいとまがない。

本質的に私が問題だと感じたのは、結局テレビグループでは、テレビの定義があくまでも「受像機」ということであり、それ以上の発想がないように思えたことだ。

「ソニーショック」二〇〇三年四月の決算発表で、ソニーの想定外の業績悪化が明らかになった。

二〇〇五年六月、出井さんや安藤さんなど、当時の執行部が一斉に退陣した。

ソニーを変える、という自分の強い思いを実らせることは、残念ながら遂に出来なかった。

二〇〇六年三月三一日に、私は、二二年間勤めたソニーを辞めた。

二〇〇七年四月一六日、グーグルに入社した。

グーグルはすべてが新鮮であった。ソニー時代にさんざん苦労したネットの中に新しい収益源を見つけ出す、というテーマは、グーグルにあってはごくごく日常の話でもあり、ソニー時代にあんなに苦労したことがまったく嘘のようだった。

二〇%ルールというものがある。これは、持ち時間の二〇%は本業以外のテーマに使うことを奨励するものである。

グーグルの全容を表現しようとすれば、「クラウド・コンピューティングの世界を構築する会社」と定義するのが最もふさわしいと思う。

ウェブの世界では、まずやってみることが大事。それでユーザーが支持してくれればそれでよく、ダメならばすぐに撤退すればいい。大事なのはスピードである。そのためには、カジュアルさが不可欠なのだ。

インターネットの世界では、スピードが最も重要で、やるリスクよりやらないリスクのほうが高い。

楽しみながら仕事をする術を知っている人が強い。


■ 工業化から情報化へ転換した
本書でのべられている、ソニーからグーグルへという流れは、著者の転身であると同時に、製造業(工業)から情報産業への時代の転換もあらわしています。ソニーは製造業の企業ですが、グーグルは情報産業の企業です。本書のなかにでてくるアップルも情報産業の企業です。
 
この意味では、商品競争とか勝負とかいうまえに、ソニーとグーグルとでは、そもそものっている「土俵」がちがったのです。時代は、高度情報化へとすでに大きく転換しました。

この高度情報化という大転換の背景にはグローバル化という世界の潮流があります

グローバル化は、まず、工業のステージ(工業化)が先行し、 それに、情報産業のステージ(情報化)がつづきました。1990年代に、情報化への主要な大転換がおこったとかんがえてよいでしょう。したがって、ソニーとグーグルはそれぞれことなる2つのステージの見本とみなせます。

140725 工業化情報化

ちかごろ、近年のソニーの経営陣らのことをわるくいう評論家がいますが、時代の潮流の大きな転換があった以上、誰がやってもむずかしかったのではないでしょうか。ふるい骨格がのこったまま改革するのは困難でしょう。

本書は、観念的・抽象的にではなく、ご自身の具体的な実体験をとおして時代の大転換についておしえてくれます。実際の仕事をしていない評論家の単なる論評とはちがいます。


■ 情報はまずスピードである
グーグルに転職して著者は重大な発見をしました。「大事なのはスピードである」とのべています。

情報化時代における仕事(情報処理)は、まず第一にスピード、すなわちできるだけ速くやることが重要です。質の高さを求めるのは二の次です。完璧を期して着実にゆっくりやるのではなく、7〜8割のできでも速くやった方がよいのです。そのためには常にカジュアルでなければなりません。
 
本書のなかで著者ものべているように、このような面で、日本人の完璧主義は大きな欠点となっています。たとえば、ハイビジョンとかハイファイの開発といった質の高さを追求する仕事はあとまわしにすべきなのです。発想の転換が必要です。 

情報化社会における仕事(情報処理)は速くやる(速くアウトプットする)ことを最優先にしなければなりません。非常な重大な指摘を著者はしています。


▼ 文献
辻野晃一郎著『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』新潮社、2011年5月27日




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本書は、地球上における民族紛争や対立などの、いわゆる民族問題をとりあつかい、民族の分布をカギにして世界をとらえなおすことについてのべています。

目次はつぎのとおりです。

緒論 民族とはなにか
二一世紀の人類像
国際紛争の理解のために
あらたなるバベルの塔の時代
もう一枚の文化地図がみえる
国家と民族と言語
多民族国家の論理
新聞解読のための民族学
日本のなきどころ

要点を引用しておきます。

民族というのは、文化を共有する人間集団のことである。文化とは、その人間集団が共有するところの価値の体系である。民族が他の民族に接触するとき、その価値体系が露出する。おおくの場合、人々はその価値の体系の差に冷静に対処することができない。そして、軽蔑と不信がうかびあがる。文化とは、その意味では多民族に対する不信の体系である。

民族間の差異ににもとづく細分化と、政治的・経済的利害関係にもとづく統合とのあいだで、どのようにバランスがとられるのか、それが二一世紀初頭の人類の課題であろう。

いままでそれぞれ孤立した文化、孤立して存在した社会は、全地球社会というひとつの巨大システムのなかの部分システムとして、あらためて定義された、あるいは再編成されたということです。わたしは、これを「地球時代の到来」とよびたいのです。

地球時代というのは、けっして国際的ということではないのです。問題はすでに、国と国との関係、インターナショナルな関係で解決できなくなっている。

今日、地球上のどこかでなにかがおこれば、ただちにその影響が全世界に波及する。各地に発生したさまざまな矛盾や問題点が、局地的に解決できる余地がしだいになくなってきている。

地球の一体化という現象も、人類史上一〇〇万年の歴史のなかで、まったくはじめてあらわれてきた現象です。

今日においては、地球全体がひとつのネットワークに編成された。

第一次世界大戦後、はっきりうちだされてきた思想が民族自決ということです。

民族というのはかんたんにいうと言語集団のことです。民族と言語集団とはほとんど一致します。

二一世紀前半は、文化も民族も実質的な民族国家への分裂の時代へはいるであろう。きわめて複雑なことになってゆくでしょう。

分裂また分裂、あらたなるバベルの塔の時代がくるのだということです。

民族的エントロピーは不可逆的に増大し、無秩序性をくわえてゆくわけです。

われわれ民族学者がみますと、新聞の地図のしたに、もう一枚、べつの地図がすけてみえています。それは国境線を重視する政治的地図ではなくて、民族の分布を中心とする文化的な地図であります。政治的な地図と文化的な地図とでは、まったく様相がちがうのです。民族という概念を事件の解釈のカギとしてつかうことによって、国際的な事件の認識が、ふかく、かつ立体的になってくるのであります。


現代は、帝国の時代がおわり「地球時代」へ移行しつつある過渡期であるとかんがえることができます

帝国の時代(領土国家の時代)は、強国と強国のはなしあい、あるいは戦争という手段にうったえて決着をつけていました。

しかし、グローバル化がすすみ「地球時代」になってくると、民族集団の分離・独立という現象が表面化し、これは、領土国家の弱体化をひきおします。

現代は、グローバル化がすすめばすすむほど、一方で、地球各地の民族集団が前面にでてくるという矛盾した現象がおこっています。グローバル化がすすめばすすむほど、民族は、「オレがオレが」と自己主張するようになり、世界中で民族同士が衝突し、世界各地で民族紛争が多発します

最近、「アメリカ合衆国は『世界の警察』からおりた。オバマ大統領は弱腰外交だ」という報道がありますが、グローバル化が進行し、帝国の力がよわまって、民族集団が台頭して民族紛争が激化するという現代の潮流をみるかぎり、アメリカ合衆国の弱体化も時代の趨勢であり、誰が大統領になってもそれを止めることはできないという見方ができるわけです。

今後、人類は、民族紛争をのりこえることができるのでしょうか? 地球社会と民族主義は両立できるのでしょうか?

以上の観点から、まずは、地球社会を認識する方法として、世界の民族分布を知ることが重要なことはあきらかです。国境線に注目して国家の分布をとらえるだけではなく、民族集団の分布を地理的にとらえる必要があります。民族は現代をとらえる重要なカギです


▼文献
梅棹忠夫著『二十一世紀の人類像をさぐる -民族問題をかんがえる-』(講談社学術文庫)講談社 、1991年9月
梅棹忠夫著『地球時代に生きる』(梅棹忠夫著作集第13巻)中央公論社、1991年10月20日
amazon:地球時代に生きる (梅棹忠夫著作集)
楽天市場:【中古】 地球時代に生きる 梅棹忠夫著作集第13巻/梅棹忠夫【著】 【中古】afb


▼関連書


▼関連ブログ
「地球時代」をとらえる 〜梅棹忠夫著『地球時代の日本人』〜 

本書は、「地球時代」の歴史的な意味とそのなかにおける日本の位置づけについておしえてくれます。

目次はつぎのとおりです。

経済開発と人類学
日本万国博覧会の意義
海外旅行入門
日本の近代と文明史曲線
学術の国際交流について
人の心と物の世界
日本経済の文化的背景
国際交流と日本文明

印象にのこったところを引用しておきます。

地球全体が、ひとつのあたらしい秩序にむかって、再編成されようとしている。

文化がちがうということは、価値体系がちがうということなのです。

世界の諸民族や諸文化についての、情報センターをつくらなければいけない。そこに、さまざまな情報をあつめ、蓄積するのです。

時代はすでに、工業の時代から情報産業の時代へと、着実に変化しつつあるといえるのです。

海外旅行をするときの秘訣ですけどね、ぐるぐると十何ヵ国まわりましょうというふうにまずかんがえないで、「ねらいうち」でやられたほうがいい。そういう旅行のほうが、実のある旅行ができる。ひとつひとつそうして往復運動をしたほうがいい。

近代日本は化政期にはじまって、いままでにほぼ150年たった。今日のいわゆる「経済大国」の状況も、突然に、外国の影響でこうなったというのではなくて、なるべくしてなったのだ、ということであります。

140721 文明史曲線


日本の近代化は、明治の革命よりずっとまえから進行していた。

西ヨーロッパ諸国には、歴史的にみて、社会的条件が日本に似ているとかんがえられる国がいくつもあります。パラレルな現象をいくつも指摘できるでしょう。


本書は、「地球時代」について最初に論じた先見の書です。「地球時代」とは、領土国家の時代のつぎにくる時代のことです。

現代は、領土国家の時代から、「地球時代」(グローバル社会の時代)へとうつりかわりつつある過渡期です。まだ、本格的なグローバル社会には到達していません。この過渡期の現象がいわゆる「近代化」であり、本書の梅棹説ではそれは江戸時代の化政期にはじまったということになります。

この「近代化」は、こまかくみると「工業の時代」(工業化)が先行し、「情報産業の時代」(情報化)がそのあとにつづくという2つのステージがあります。このように、わたしたちの文明は、大局的にみると、ハードからソフトへむかって発展していて、最終的には、価値観の大転換がおこると予想されます。

本書のなかでのべられた、世界の諸民族や諸文化についての情報センターは、国立民族学博物館としてそのご実現しました。ここは、世界の諸民族や諸文化に関する膨大な情報を蓄積し、それらが利用できるようになっています。 

この国立民族学博物館がおこなっているように、情報は、第一に蓄積が必要です。これは、言いかえると情報とは第一に量であるということです。質ではなくて。量があってこそ情報のポテンシャル(潜在能力)は大きくなり、情報処理もすすみやすくなります。

たとえば、ダム湖の水位が高くなって水圧が高まりエネルギーが大きくなるように、情報の蓄積量が大きくなればなるほどポテンシャルは大きくなり、情報処理もすすみやすくなります。ポテンシャルが低い状態ではものごとはうまくいきません。このような意味では、いわゆる記憶も第一に量が必要であり、ある課題に関する情報をたくさん記憶した方が心のポテンシャルが大きくなり、情報処理がすすみやすくなります。情報の質は第二とかんがえた方がよいでしょう。

こうして、「地球時代」をとらえるために本書を参考にし、世界の情勢を認識するために国立民族学博物館のポテンシャルを大いに利用していくのがよいでしょう。


文献:
梅棹忠夫著『地球時代の日本人』(中公文庫)1980年6月10日、中央公論社
梅棹忠夫著『地球時代に生きる』(『梅棹忠夫著作集』第13巻)1991年10月20日、中央公論社


世界モデルを見て文明の全体像をつかむ 〜 梅棹忠夫著『文明の生態史観』〜

『素朴と文明』第三部では、現代は漂流していることを指摘し、文明の問題点をあきらかにしたうえで、その解決の鍵は「創造」と「参画」にあることをのべています。

第三部の目次はつぎのとおりです。

第三部 地図と針路
 1 文明の岐路
 2 カギは創造性と参画にある

第三部の要点を書きだしてみます。

現代は漂流しているのである。その現代が荒海を航海するには、まずもって地図を試作しなければならない。

文明はもともと素朴から生まれてきたものだ。それなのに、その文明は素朴を食い殺しつつあり、それによって文明自体が亡ぶ。そういう危惧が多分にあるということである。

私の意味する生態史的パターンでは、高度に洗練された精神文化や社会制度までそれに含めているのである。例えばアジアの前近代的文明においても、これらの文明を文明たらしめている中核には、ぶ厚い伝統をなして流れている「生きる姿勢」の伝統がある。これはまた「創造の姿勢」につながっているのだ。それは、特に高等宗教に象徴化されて現れてくる。

解決の鍵は「創造」にあると思う。

第一段階 渾沌。
第二段階 主客の分離と矛盾葛藤。
第三段階 本然(ほんねん)。
これはひとつの問題解決のプロセスなのであるが、それはまた私が強調してきた創造のプロセスでもある。

今日の最大の災厄は、自然と人間の間に断層が深まり、同時に伝統と近代化の間に断層の深まりつつあることなのである。これを乗りこえ、調和の道へと逆転させるしか活路はない。そうしてその鍵は「創造性」を踏まえた「参画」に存すると確信する。


以上を踏まえ、以下に、わたしの考察をくわえたいとおもいます。

1.生態系とは〔人間-文化-環境〕系のことである
著者は、文化の発展段階をとらえるために生態史的アプローチを採用しています。生態史の基盤となるのは生態系であり、それは、主体である人間と、人間をとりまく自然環境とからなっているシステムのことです(図1)。

140713 人間-文化-自然環境系

図1 人間-自然環境系


このシステムにおいて、人間と自然環境とは、やりとりをしながら相互に影響しあい、両者の相互作用のなかから文化(生活様式)を生みだします。この文化には、人間と自然環境とを媒介する役割が基本的にあり、文化は、自然環境と人間の境界領域に発達し、その結果、人間-文化-自然環境系が生まれます(図2)。

140713b 人間-文化-自然環境系

図2 人間-文化-自然環境系




2.文化には構造がある
この 人間-文化-自然環境系における文化をこまかくみていくと、文化には、技術的側面、産業的側面、制度的側面、精神的側面が存在し、これらが文化の構造をつくりあげます(図3)。

140713 文化の構造
図3 文化の構造


図3において、技術的な文化は自然環境に直接し、精神的な文化は人間に直接しています。自然環境にちかいほどハードな文化であり、人間にちかいほどソフトな文化ともいえます。

文化のそれぞれの側面が発達するにつれて、たとえばつぎのような専門家が生まれてきます。

 技術的側面:技術者など
 産業的側面:経営者など
 制度的側面:政治家など
 精神的側面:宗教者など



3.現代の文化は、グローバル社会をめざして発展している
著者が発想した「文化発展の三段階二コース」説とはつぎのとおりでした。

〔素朴文化〕→〔亜文明あるいは重層文化〕→〔前近代的文明→近代化〕


この説において、「亜文明」とはいいかえれば都市国家の時代のことであり、「前近代的文明」とは領土国家の時代のことです。したがってつぎのように整理することもできます。

〔素朴社会〕→〔都市国家の時代〕→〔領土国家の時代〕


そして、現在進行している「近代化」とはいいかえればグローバル化のことであり、領土国家の時代からグローバル社会の時代へと移行しつつある過程のことです。

〔素朴社会〕→〔都市国家〕→〔領土国家〕→〔グローバル社会〕


つまり現代は、領土国家の時代からグローバル社会の時代へ移行する過渡期にあたっているわけです。

なお、都市国家の時代から領土国家の時代へ移行したことにより都市が消滅したわけではなく、領土国家は都市を内包しています。それと同様に、グローバル社会に移行しても領土国家が消滅するということではなく、グローバル社会は領土国家を内包します。ただし国境は、今よりもはるかに弱い存在になります。

以上を総合すると、次の世界史モデルをイメージすることができます。

140716c 世界史モデル
図4 世界史モデル



4.文化は、ハードからソフトへむかって変革する
上記の発展段階(文化史)において、前の段階から次の段階へ移行するとき、大局的にみると、まず「技術革命」がおこり、つづいて産業の変革、そして社会制度の変革、精神文化の変革へとすすみます。つまり文化は、ハードからソフトへむかって順次変革していきます(図3)

たとえば、都市国家の時代から領土国家の時代に移行したときは、鉄器革命という技術革命からはじまり、産業の変革、社会制度の変革へとすすみ、最終的に、精神文化の変革により いわゆる高等宗教が出現・発達しました。

この「ハードからソフトへ文化は変革する」という仮説を採用した場合、グローバル社会へとむかう現代の変革(グローバル化)の道筋はどのように類推できるでしょうか。

それはまず工業化が先行しました。その後、いま現在は情報化がすすんでいて、情報技術がいちじるしく発達、つまり情報技術革命が伸展しています。それにともなって産業の変革・再編がおこっています。しかし、法整備などの社会制度の変革はそれにまだおいついておらず、これから急速に整備されていくものとかんがえられます。

そして、変革の最後にはあらたな精神文化の構築がおこると予想されます。グローバル社会の精神文化は、領土国家の時代の いわゆる高等宗教の応用で対応できるといったものではなく、人類がはじめて経験するグローバル文明に適応する、あたらしい精神文化がもとめられてくるでしょう



5.生きがいをもとめて - 創造と参画 -
あたらしい精神文化の構築において「創造」と「参画」が鍵になると著者はのべています。

グローバル化の重要な柱が高度情報化であることを踏まえると、創造とは、すぐれた情報処理ができるようになることであり、よくできたアウトプットがだせるようになることです。そのためには、人間は情報処理をする存在であるととらえなおし、人間そのものの情報処理能力を開発することがもとめられます。

また、参画とは社会に参画することであり、社会の役にたつこと、社会のニーズにこたえる存在になることです。具体的には、お金をもらうことを目的としないボランティア活動などがこれにあたります。

情報処理能力の開発とボランティア活動は、近年急速に人々のあいだにひろまりつつある現象です。

したがって、第一に、みずからの情報処理能力を高め、第二に、自分の得意分野で社会の役にたつことが重要であり、これらによって、生きがいも得られるということになります。そこには、解き放たれた ありのままの自分になりたいという願望がふくまれています。

このように、来たるグローバル社会では、精神文化としては生きがいがもとめられるようになり、「生きがいの文化」ともいえる文化が成立してくるでしょうこれは価値観の転換を意味します

領土国家の時代は、領土あるいは領域の拡大を目的にしていたので、そこでは、戦いに勝つ、勝つことを目的にする、生き残りをかけるといったことを基軸にした「戦いの文化」がありました。たとえば、国境紛争、経済戦争、受験戦争、自分との戦い、コンクールで勝つ、戦略が重要だ、成功体験・・・

しかし、来たるグローバル社会の文化は、領土国家の時代のそれとはちがい、原理が根本的にことなります。

情報処理能力を高めるためには、まず、自分の本当にすきな分野、心底興味のある分野の学習からはじめることが重要です。すると、すきな分野はおのずと得意分野になります。そして、その得意分野で社会の役にたつ、ニーズにこたえることをかんがえていくのがよいでしょう。


文献:川喜田二郎著『素朴と文明』(講談社学術文庫)講談社、1989年4月10日

人類が、地球をどのようにイメージしてきたかを歴史的におしえてくれる図版集です。さまざまな時代の、いろいろな国の人々がえがいた地球のイメージをわかりやすく紹介しています。子供むけの本ですが大人が見ても十分たのしめます。

目次はつぎのとおりです。

第1章 島みたいな地球
 あぶなっかしくバランスをとっているのだ
 大地の下には、べつの世界があるの?
 地球の下にあるもの
 
第2章 多角形の地球
 四角い地球
 正方形の地球
 多角形の地球
 三角形の地球
 
第3章 円形の地球
 盾のようなかたち
 円形の地図
 だ円形の地図
 円形で、山がある
 円形で、ふくらんでいる地球
 
第4章 球のかたちをした大地
 完全な球形
 小さな地球
 洋梨のような地球
 地球の中は・・・・・
 まんまるじゃないよ!
 地球のかたちについて論争が起きた!
 地球の中が空洞だって?

第5章 現在の地球
 想像上の実験
 地球の中への旅 

IMG_1279b

図 インド・紀元前5世紀の地球の想像図
(世界の創造に参加したヘビのうえにカメがのり、そのうえに大地をささえるゾウがのっていて、大地には空までとどく大きな山がある)
 

本書を見ると、人類が、地球の形をさぐる探究、世界を認識する旅をしてきたということがよくわかります。

また、その時代のあるいはその地域の抽象的な世界観と、実際に観察された事実(データ)とをくみあわせてイメージをえがいてきたということもわかります。

わたしたちは今では、地球の形はほぼ球形であることを知っていますが、地球の内部については今でも想像するしかありません。

地球や世界を認識するときの基本的な行為はイメージングあるいは想像(イマジネーション)であり、このことは昔も今もかわりません

イメージをえがいたり想像したりすることは、人類の意識のはたらき、心のなかの情報処理のもっとも基本的な行為であるといってよく、本書は、人類の心の歴史の一面をおしえているともとらえられます。

自分がくらしている世界、わたしたちが存在する空間を適切にイメージしたり想像したりすることは非常に重要なことであり、そのために本書はとても参考になります。


文献:ギヨーム・デュプラ文・絵(博多かおる訳)『地球のかたちを哲学する』西村書店、2010年6月20日

世界遺産の基本をまなぶためのテキストです。

日本の世界遺産が17件、似たような特徴をもつ世界の遺産17件、代表的な世界の遺産10件の合計44件をわかりやすく解説しています。

記憶法の観点、特に、情報をファイルするという観点から見て本書はとても参考になりますのでここに紹介します。

本書の12ページには、日本の世界遺産17件の検索地図がでています。

IMG_1272

写真1 日本の世界遺産の検索地図


検索地図には、それぞれの世界遺産の場所とともに、目印となる写真と遺産の名称がしめされています。 

IMG_1274

写真2 目印写真&遺産名がしめされている


そして、それぞれの〔目印写真&遺産名〕の下にしめされているページにとぶと、それぞれの遺産のくわしい解説を見ることができます。

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写真3 解説ページの例


上記の検索地図上の〔目印写真&遺産名〕は、コンピュータ・ファイルにおける〔アイコン&ファイル名〕に似ています。ここにひとつのアナロジー(類似性)を見ることができます。

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図1 コンピュータ・ファイルの構造

コンピュータ・ファイルは、それぞれの情報(データ)に対して一つのアイコンとファイル名がつけられフォルダにファイルされます。〔アイコン&ファイル名〕は情報の表面構造(上部構造)であり、その下に情報の本体が下部構造として存在します。〔アイコン&ファイル名〕は情報のラベル(標識)の役割をになっており、わたしたちは、アイコンあるいはファイル名をダブルクリックすることにより情報の本体を見ることができます

これと似ていて、本書の検索地図上の〔目印写真&遺産名〕は〔アイコン&ファイル名〕(ラベル)の役割をはたし、指定されたページへとぶと、その世界遺産の解説、つまり情報の本体を見ることができます。ユーザーは、アイコンをダブルクリックするようにして解説ページをひらくことができるわけです。


 ■ 記憶法を実践する
記憶法の訓練としては次のようにします。

1.インプットする
本書をじっくり見て、各ページを心のなかにインプットします。

2.解説ページをイメージとして想起する
検索地図上の〔目印写真&遺産名〕を順番に見て、各遺産の解説ページを、イメージ(画像)としておもいだす訓練をします。 まず、各ページのレイアウト(構造)をおもいだし、つぎに、レイアウトのなかで、どのような情報(要素)がどこに配置されていたかをおもいだすようにします。

3.再確認する
よくおもいだせなかったところはページをひらいて再確認します。

ここでは想起訓練が大事です。〔目印写真&遺産名〕をみて、その中身(解説ページ)を想起することは情報の本体をよびおこすことであり、コンピュータでいうと、アイコンをダブルクリックして情報をひらくことに相当します。ダブルクリックでファイルがひらけるように、迅速に情報が想起できるように練習します。

このとき、心のなかに適切に情報がファイルされていれば想起もしやすいです。一方で、こような訓練をくりかえすことにより、さまざまな情報を心のなかによりよくファイルできるようになります。


■ 旅行ファイルをつくる - 応用例 -
たとえば旅行にでかけたら、見たり聞いたりした体験のひとまとまりごとに、印象的な1枚の目印写真を用意します。そして、それぞれの写真に見出し(言葉)をつけてフェイスブックにアップロードします。

この〔写真&見出し〕は〔アイコン&ファイル名〕の役割をはたすことになります。そして、〔写真&見出し〕を折にふれて見なおしながら、その下部構造である旅行体験を想起します。

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図2 旅行の体験ファイルの構造(写真&見出しのみがフェイスブックにあわわれる)
 
重要なことは、おもいつきでやみくもに写真をアップロードするのではなく、 体験のひとかたまりを意識してつくることです。体験のひとかたまりを心のなかにしっかりファイルするようにします。そのためには、元来は連続していた旅行体験を、要所要所で区切って、よくできた情報のユニットをつくることがもとめられます。

旅行体験をファイルしていくことは、大きな旅行ファイルを心のなかにつくることになり、このようにしておけばそのファイルはのちのち活用しやすくなります。

このようなファイリングの行為に世界遺産の知識もくわえていけば、旅行はいままで以上にたのしい体験になるでしょう。
 

文献:世界遺産検定事務局『きほんを知る世界遺産44 - 世界遺産検定4級公式テキスト -』世界遺産アカデミー、2014年4月8日

本書で著者は、文明の発展史をふまえ、「無の哲学」にもとづく「野外科学」の方法によって現代社会の問題を解決する道をしめし、危機にたつ人類の可能性について探究しています。

目次はつぎのとおりです。

第一部
1 激増期人口をどうするか
2 移民制限こそ最大の壁
3 真の文化大革命

第二部
1 宗教はどうなるか
2 技術革命と人間革命
3 組織と人間
4 いかにして人をつくるか
5 野外科学の方法
6 世界文化への道
7 おわりに - 全人類の前途はその創造性に -

著者は、人類の文明史について大局的に、素朴社会から都市国家に移行し、都市国家が崩壊して領土国家が生まれたととらえています。つまり、素朴社会の時代から都市国家の時代をへて領土国家の時代へと移行したと見ています。

素朴社会 → 都市国家 → 領土国家

このなかで、都市国家が崩壊して領土国家へ移行したときには、まず「技術革命」がおこり、つぎに「社会革命」がおこり、最後に「人間革命」がおこったとかんがえています。つまり、ハードからソフトへむかって変革がおきたと見ています。そして、ここでの「人間革命」にともなっていわゆる高等宗教が生まれてきたと指摘しています。

技術革命 → 社会革命 → 人間革命

さらに、人類の前途は、人類が創造性を発揮できるかどうかにかかっていると予想し、そのためには、「無の哲学」にもとづいた「野外科学」の方法が必要だと主張しています。「野外科学」(フィールドサイエンス/場の科学)とは、希望的観測や固定観念にとらわれずに、おのれを空しくして現場の情報を処理する科学のことです。

このように、文明の発展史のなかに位置づけて方法論を提示していのが本書の特色です。

本書を、現代の(今日の)高度情報化の観点からとらえなおして考察してみると、現代は、領土国家の時代からグローバル社会の時代への移行期であるとかんがえられます。つまり、つぎのような歴史になります。

素朴社会 → 都市国家 → 領土国家 → グローバル社会

そして、人類の大きな移行期には、「技術革命→社会革命→人間革命」(ハードからソフトへ)という順序で変革がおこるという仮説を採用すると、領土国家の時代からグローバル社会の時代への移行期である現代は、まだ、「技術革命」がおこっている段階であり、インフラ整備や情報技術開発をおこなっている段階ということになります。

したがって、社会制度の本格的な改革などの「社会革命」はこれからであり「人間革命」はさらに先になることが予想されます。上記の仮説がもしただしいとするならば、現代の移行期における「人間革命」は、既存の宗教では対応しきれないということになり、あらたな精神的バックボーンがもとめられてくるということになります。

たとえば、現代の高度情報化社会では、人を、情報処理をする存在であるととらえなおし、人生は情報の流れであるとする あたらしい考え方が出現してきています。これが「野外科学」とむすびついてきます。そして、人間の主体的な情報処理力を強化し、人類と地球の能力を開発しようする行為は上記の方向を示唆しているとおもわれます。

本書は47年も前の論考ですが、副題が「地球学の構想」となっているのは、グローバル化へむかう未来予測を反映したものであり、人類と地球の未来を予想するために、川喜田がのこしたメッセージは大いに参考になるとおもいます


川喜田二郎著『可能性の探検 -地球学の構想-』(講談社現代新書)講談社、1967年4月16日

世界を変えた本を10冊えらんでわかりやすく解説しています。いずれも現代を読み解くうえで要となる著作です。

それぞれの著作をとりだして独立に解説しているのではなく、全体として本書一冊がストーリーになっていて、グローバルな現代社会がかかえる問題について理解をふかめることができます。

以下の著作について解説しています。

第1章 アンネの日記
第2章 聖書
第3章 コーラン
第4章 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
第5章 資本論
第6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」
第7章 沈黙の春
第8章 種の起源
第9章 雇用、利子および貨幣の一般理論
第10章 資本主義と自由

著者の池上さんは次のようにのべています。

本には、とてつもない強さがあることも事実です。一冊の本の存在が、世界を動かし、世界史を作り上げたことが、たびたびあるからです。

たとえば、 第6章 イスラーム原理主義の「道しるべ」では次のようにのべています。『イスラーム原理主義の「道しるべ」』についてはわたしは読んだことがなかったので勉強になりました。

かつてマルクスが書いた『資本論』や『共産党宣言』によって、世界で共産主義運動の旋風が起きたように、『道標』によって、イスラム原理主義の嵐が巻き起こる。書籍の持つ力というべきか、恐ろしさというべきが。この書も、明らかに世界を変えた本のひとつなのです。


複雑な現代社会を理解するためには、ものごとを大局からとらえる能力、つまり大観力が必要です

大観ができると、次に、どこをくわしく見ればよいかがおのずとあきらかになります。

大観により見通しがよくなるので、関連事項の理解がしやすくなり、ものわかりがよくなり、その結果、決断がしやすくなり、行動もしやすくなって仕事の効率もあがります。大局がとらえられると最適な判断ができ、行動の道筋も見えてくるというわけです。

また大観することにより、グローバルで複雑な現代と、自分自身の局所的で独自な人生とをどうつなげていけばよいかのヒントもえられます。

このような大観の方法は、あまり時間をかけずに、全体的な状況のすべてを一気にインプットするのがよく、 そのためには、みずからの心のうつわを大きくひろげておくことがのぞまれます。

本書は、世界を読み解き、現代を大観するための第一歩として役にたつでしょう。


文献:池上彰著『世界を変えた10冊の本』文藝春秋、2011年8月10日

グーグルが無料で提供するサービスのひとつ“Google Earth”画像を通して、自然を見る目、地球を見る目をやしなうための事例集です。

書名は『地球の歴史』となっていますが、地学の専門書でななく、一般向けのわかりやすい本です。Google Earth でとらえたそれぞれの画像に対してていねいな説明文がついていて、Google Earth 画像を見ながら理解をふかめられます。内容は次のとおりです。

1 自然をみる
2 災害をみる
3 地球史をみる

ドイツの町・ネルトリンゲンのクレーターやエジプト王家の谷も掲載されていて興味深いです。

このような「鳥瞰映像」を手に入れるためには、以前は、高い山に行くとか飛行機から見たりすることにかぎられていましたが、Google Earth が開発されたことによって「鳥瞰映像」が簡単に手に入るようになりました。 Google Earth をつかえば上空から擬似的に地球をながめられ、空中散歩が自由にできます

たとえば、書物を読んだり見たりしたとき、その場所を、Google Earth をつかって鳥瞰的にも確認すれば、理解がふかまるだけでなく記憶も鮮明に綿密になります。アイデアもでやすくなるでしょう。

かつて旅行などをして実体験をした場所についても、Google Earth によってより大きな視点から見なおし、とらえなおすことにより、体験をさらにふかめる効果が生じます。鳥瞰映像と実体験とをくみあわせることにより、中身のある全体像を構築することができるのです。

このようにして、Google Earth をくりかえしながめて、全体像を心のなかにいれていく作業をつづけていけば、やがて、地球全体が心のなかに入ってきます。

本書の事例を参考にして、Google Earth を折にふれてつかいこんでいくのがよいでしょう。


文献: 後藤 和久著『Google Earth でみる地球の歴史』(岩波科学ライブラリー149)岩波書店、2008年10月7日

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この年表は、宇宙の誕生から現在までの138億年の歴史を、倍率のちがう10個の「レンズ」を通して理解するための資料です。

縮尺のことなる10本の年代軸を「レンズ」とよびそれぞれの時間スケールで見たときにあらわれる重要なイベントが10本の年表にしめされています

ポイントをピックアップします。
年表の年代軸は左から右に若くなり、いずれも右端が現在になる。

150億年、50億年、6億年、7000万年、600万年、100万年、20万年、2万年、2000年、200年と縮尺のことなる10本の年代軸(レンズ)を用意している。

1つの年表における右端の部分についてレンズを1つ拡大したものが、下の年表になっている。

いくつかの年表では、気温や酸素濃度、海水準などの変動曲線もあわせて示し、その時代にどのような環境変動があったのか、視覚的に理解できるようにしている。

この年表を活用して、「時空を自在に飛ぶ感覚を、ぜひ味わっていただけたらと思う

本書が、宇宙の誕生から現在までのシームレスな地球史を認識する手助けとなり、われわれ地球人が進む未来像を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。

慣れてきたら、ぜひレンズ11として「自分史・家族史」を作ってもらいたい。われわれの人生も地球の歴史の一部であり、そして、現在がこれからの未来へつながる位置にあることを実感できるはずである。


レンズ1:宇宙史(150億年前〜現在)
138億年前、無からの猛烈な体積膨張「インフレーション」で宇宙の歴史ははじまった。

レンズ2:地球史(50億年前〜現在)
45億5000万年前に地球の核ができる。最古の生物化石は35億年のものである。

レンズ3:顕生代(6億年前〜現在)
5億3000万年前におこった「カンブリア大爆発」により生物は大型化した。

レンズ4:新生代(7000万年前〜現在)
グリーンハウス(温室世界)からアイスハウス(氷室世界)へ徐々に気候が寒冷化する時代である。

レンズ5:人類時代(600万年前〜現在)
440万年前にラミダス猿人、350万年前に二足歩行、人類が進化する。

レンズ6: 氷河時代(100万年前〜現在)
地球規模の寒冷化が顕著になる。

レンズ7:最終氷期(20万年前〜現在)
19万5000年前、ホモ・サピエンスが出現する。

レンズ8:先史・文明時代(2万年前〜現在)
1万6500年前、縄文時代が始まる。

レンズ9:歴史時代(2000年前〜現在)
375年、大和政権が成立する。

レンズ10:近現代(200年前〜現在)
産業革命がおこる。2度の世界大戦がおこる。

この資料は、時間スケールのことなる10本の年表を同時に一覧できることに最大の特色があります。この「スーパー年表」を見ると、レンズ(時間スケール)のとり方によって、歴史の見え方ががらりとことなってくることがよくわかります。

これは、空間的な見方と対比するとおもしろいです。空間スケールのとり方によっても世界の見え方はかなりちがってきます。たとえば、地表から地上を見る、高い塔から地上を見る、高い山から見る、人工衛星から見る、月から地球を見るなど、空間的な視点を変えると見える範囲・精度は変わってきます。レンズの倍率によって見える世界はことなるわけです

このような、空間的な視点・スケールを変えて見ることは比較的やりやすかったのですが、一方の時間的なスケールを変えて見るという見方は今まではむずかしかったです。多くの人々の場合、上記のなかの「歴史時代」あるいは「近現代」ぐらいしか視野に入っていない状況ではないでしょうか。

そのような意味で、「空間レンズ」ならぬ「時間レンズ」を提供するこの「スーパー年表」は画期的であり、このような時間スケールごとに複数の年表を対比・一覧できる資料は今まではなかったです。

この「スーパー年表」を見ていると、人間の存在が、宇宙空間のなかで小さな存在であるばかりでなく、時間的歴史的にも小さな存在であることがとてもよくわかります。

まずは、この「スーパー年表」を活用して10種類の時間「レンズ」を身につけるのがよいでしょう。

そして、それぞれの「レンズ」(時間スケール)で歴史をとらえなおし、それぞれの「レンズ」を通して見える歴史イベントを想像(イメージ)してみるとよいでしょう。どこまで想像できるでしょうか。歴史とは想像するものです。よく想像できない場合は本書の解説書をみたり、インターネットで検索したりして理解をふかめることが大切です。

このようにして、時間を自在にとびながらイメージ訓練をしていると、今までの固定した見方から脱却でき、さまざまな観点からしかも重層的な見方ができるようになり、あらたな発想も生まれやすくなります。


文献:清川昌一・伊藤孝・池原実・尾上哲治著『地球全史スーパー年表』岩波書店、2014年2月18日


文化発展に関する仮説を提唱している本です。川喜田二郎がしてきた仕事を時系列でたどりながら、仮説を形成していく過程をよみとることができます。

KJ法にとりくんだことがことがある方で、川喜田の半生の概要をてっとりばやく知りたい方にもおすすめできる本です。

川喜田は、パターンとして生きざまとして確立した文明としてつぎの7つの文明をあげています。
中国文明、ヒンドゥー文明、チベット文明、イスラーム文明、ビザンチン文明、ラテン文明、西欧文明があります。これら7つの文明は気候帯とほぼ一致します。また、独自の大宗教(高等宗教)と結びついているのが特色です。

こうして、まず、環境と人間と文明に関して大観し、地球の大局をつかんでいます。

これを踏まえて、つぎに、フィールドワークとアクションリサーチに入ります。具体的な地域としては、日本の東北地方(北上山地)とヒマラヤ山村を選択しています。ここで、KJ法をつかって情報収集とそのまとめをおこない、地域性について理解していきます。

そして最後に、文明と地域の両者を踏まえて、「文化発展の3段階2コース説」という仮説を提唱しています。これは、文化は、素朴から文明へと発展するものであり、「素朴→亜文明→文明」と「素朴→重層文化→文明」という2コースがあるとする説です。

詳細につきましては本書をご覧いただきたいとおもいますが、ここでは、仮説形成には3つのステップがあることを協調しておきたいとおもいます。

(1)グローバルにとらえる
(2)地域を研究する
(3)仮説を立てる

(1)では、地球を大観し大局をつかみます。これが、仮説形成のための前提になります。

(2)では、具体的な地域を個別に調査・研究し、データをあつめ、現場の事実をおさえます。

(3)前提と事実を踏まえ、仮説を発想します。

このように、前提→事実→仮説という3つのステップを踏んで仮説は形成されます。

ひとつのおなじ前提に立っていても事実がちがえば仮説もことなります。また、事実がおなじでも前提がことなれば仮説もことなってきます。たとえは、おなじ事実を目の前にしても、世界観(前提)がことなるために、仮説もことなるというのはよくあることです。

他人の仮説をみるときも、自分が仮説をたてるときも、前提と事実をしっかりおさえなければなりません。


文献:川喜田二郎著『環境と人間と文明と』古今書院、1999年6月3日
 
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問題解決にとりくむとき、ひとつの課題が決まったら、それに関して情報を収集し、認識をふかめなければなりません。そのときつぎの3段階を踏むと効果的です。

第1段階:大局( 全体)をみる
第2段階:局所( 部分)をほりさげる
第3段階:イメージをふくらませる


たとえばわたしは、地学の調査・研究を長年やっていて、そのときの基本的なやり方はつぎのとおりでした。

(1)平面的に、できるだけひろく地表を調査します。
(2)ここぞという地点を選択して、ボーリング調査をし、垂直方向のデータをあつめます。
(3)(1)と(2)のデータをくみあわせて、全体構造のイメージをふくらませます。

(1)では、幅広く全体的に調査し平面的なデータをあつめます

それに対して(2)では、狭く深く調査して垂直的なデータをあつめます。地学ではボーリングという手法が有効ですが、どこでボーリングをするか、その地点の選択が非常に重要です。あちこちでやみくもにボーリングをすることは物理的にも予算的にも不可能ですし意味もありません。ここぞという地点をいかにうまく選択するか、課題を追求するうえでの急所ともいうべき地点を選択するのが理想です。

(3)では、(1)と(2)の情報をくみあわせて、見えないところは想像してみます。立体空間のなかで構造をイメージしてみると、その地域をおおきな場として、空間的構造的に一気にとらえられるようになります。さらに、その場の歴史や原理までもわかってくることがあります。


また、たとえば、地球について理解をふかめようとおもったら、

(1)地球儀、Google Earth、インターネット、概説書などで地球の全体状況を見て、地球の大局をつかみます

(2)ここぞという地点を選択し、実際にそこに行ってみてしらべてみます

(3)(1)と(2)の情報をくみあわせて、地球に関するイメージをふくらませます

(2)において、ここぞという地点としてどこを選択するか、どこへ行くか、おなじ地球上にすんでいても、課題によって人によって大きくことなってきます。わたしの場合はヒマラヤを選択しました。この例では、(2)の行為は、旅行とかフィールドワークとよばれます。


以上のように、「大局局所想像」という三段階は、課題を追求し認識をふかめるためにとても有効です。とくに第2段階における局所の選択について意識してみるとよいでしょう。

国立科学博物館の企画展「ダーウィンフィンチ -ガラパゴス諸島で進化を続ける鳥-」をみました。

ダーウィンフィンチは、南米沖のガラパゴス諸島とその北方ココ島にのみに生息する小型の鳥類であり、そのクチバシのちがいが進化をしめす具体例として知られています。本展では、アメリカ自然史博物館からかりうけたダーウィンフィンチの貴重な研究用剥製を展示してそれを解説しています。チャールズ=ダーウィンはこの鳥から進化論の着想を得たといわれています。

ダーウィンフィンチ類は、ホオジロ類の仲間であるフウキンチョウ科の鳥が200〜300万年前にガラパゴス諸島にたどりつき、昆虫食・花蜜食・種子食・雑食の食性に適応して、クチバシの形状が大きく異なる15種もの多様な種に分化しました。

国立科学博物館の解説によりますと、15種のダーウィンフィンチは以下の7つのグループ(亜種)にわかれます。

1)サボテンフィンチ類:長いクチバシ
 サボテンの実や葉・花・花蜜をたべます。

2)種子食地上フィンチ類:がっしりとしたクチバシ
 花・花蜜や地面に落ちた種子をひろってたべます。

3)昆虫食樹上フィンチ類:太いクチバシ
 主に昆虫をたべます。

4)キツツキフィンチ類:頑丈でまっすぐなキツツキ型のクチバシ
 樹木に穴をあけカミキリムシの幼虫や樹皮の下にかくれた昆虫などをたべます。

5)ココスフィンチ:細長いクチバシ
 雑食で、フルーツや花蜜・昆虫・草の種子などをたべます。

6)植物食樹上フィンチ:オウムをおもわせるクチバシ
 葉や芽や木の実などをたべます。

7)ムシクイフィンチ:もっとも細いクチバシ
 木の葉などについた昆虫などをつまみとってたべます。

以上のようにダーウィンフィンチは、餌という環境条件に適応するために、特徴的なクチバシの形を進化させました。この例は、ただ一つの祖先種から多様な形質の子孫が短期間に出現するという適応放散の代表例です。

このような現場のデータにもとづく具体例をまなぶことは物事の理解を促進させます。具体例を知れば知るほど物事の理解はふかまります。具体例は、一般論では気がつくことができない盲点をおしえてくれこともあります。具体例を知ることにより安易な一般論から脱出することもできます。具体例をファイルしてたくさん蓄積するることにより理解がふかまるだけでなく選択肢も増えてきます。

企画展や展覧会などでの体験をうまく活用して、具体例の体験的なファイルを増やしていくことが重要です。


▼ 関連記事
3D 国立科学博物館(記事リンク集)

▼ 参考文献
日本ガラパゴスの会著『ガラパゴスのふしぎ』ソフトバンク クリエイティブ、2010年3月25日
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本書は、ダーウィン・進化論・生態系・不思議な生き物・環境保全などについて多数の写真とともに解説していて、ガラパゴスの入門書・ガイドブックとして有用です。21ページおよび124〜128ページに、ダーウィンフィンチのクチバシについて解説されています。ただし、本書におけるダーウィンフィンチの分類は、国立科学博物館の分類とは若干ことなっています。


ジョナサン・ワイナー著『フィンチの嘴 ガラパゴスで起きている種の変貌』(ハナカワ・ノンフィクション文庫)早川書房、2001年11月30日
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ダーウィンフィンチのクチバシについてさらにくわしく知りたい方はこちらをお読みください。エルニーニョや大干ばつなどによって変化する種子の大きさに合わせて、フィンチのクチバシの大きさも変化することなどが記述されています。

 

 
近年急速に発達してきた「クラウド」に関する解説書です。

今後のITの進歩を予測するうえで、もっとも注目しなければならないのは「クラウド」であるといってよいでしょう。「クラウド」は、私たちのワークスタイルを着実にかえていきます。

本書の要点を以下にまとめておきます。
「クラウド」(雲)とはインターネットのこと指し、「クラウドコンピューティング」とは、グーグルやアマゾンがおこなっているサービスのことです。この用語は、グーグルCEOであるエリック・シュミットが2006年に講演した際に初めて使ったと言われています。

「クラウドコンピューティング」は、自分のコンピューターでデータを処理するこれまでの仕組みとはちがい、インターネットでつながれた外部のコンピューターに膨大なデータ処理をおこなわせるシステムです。グーグルやアマゾンなどは、個人のパソコンのかわりにデータ処理をおこない、その結果をインターネット経由でユーザーに提供してくれます。

クラウドが発達してくると高機能パソコンは必要なくなり、どんなデバイスを使うかは問題ではなくなります。いずれ、クラウドに特化したクラウドデバイスが登場するでしょう。

クラウドを活用したワークスタイルやビジネスとして、「ライフログ」と「クラウドソーシング」がトレンドです。

「ライフログ」は、私たちの日常生活における行動の記録(Web閲覧履歴、ブログ、写真投稿、改札の通過記録、携帯の位置情報など)です。これらの情報を処理して、個々人にメリットのあるサービスを提供することができます。

「クラウドソーシング」とは、ネットワークを通じてさまざまな人々とコラボレーションしながらひとつの物事をつくりあげていくことです。

これからは、データや知識を個人が独り占めするのではなく、クラウド上でデータと知識を共有し、それらを相互に活用して知的アウトプットをする時代になります。ここでは、どんな知識を持っているのかではなく、知識を活用して、どんな行動をとるのかが重要になります

以上のように、「クラウド」は私たちの世界を着実にかえつつあります。今日、地球規模の巨大な情報の「雲」が形成され、大きくうごきはじめたといってもいいでしょう。

これまでは、「情報量がおおすぎて、情報があふれかえっている」と多くの人々が形容していました。しかし、情報があふれかえってこまったというのではなく、巨大な情報の「雲」が形成され、それが運動をはじめたのです。これは、大げさにいえば人類と地球の進化です。

このような「クラウド時代」にあっては、「どんな行動をとるのか」が重要だと著者はのべています。

つまり、クラウドのもとで自分は何をしたいのか、自分自身の主体性がもとめられるのです。クラウドが何かをしてくれるということではありません。そのためには、クラウドを活用しながら、情報処理能力や問題解決能力を個々人が身につけなければならないでしょう。速読法・記憶法・速書法・発想法などの能力を身につけることが重要だとかんがえる理由がここにもあるのです。


八子知礼著『図解 クラウド早わかり』(kindle版)、KADOKAWA、2013年12月17日デジタル版初版発行
 

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関連ブログ:iCloudのシステムを主体的につかいこなす

111225 Himalaya

多くの人々にとって、地球は大きくてつかみどころがないように見えます。そこでたとえば、世界最高峰エベレストをもつヒマラヤを中心にして地球をとらえなおしてみましょう。ここは、北極・南極につぐ地球第三の極ともよばれます。

ヒマラヤのふもとにはインドやチベットが、そしてユーラシア大陸がひろがり、そして地球があります。その背後には宇宙がひろがっています。Google Earth をつかえばこのようなバーチャルツアーが手軽にできます。ヒマラヤを、地球のシンボルあるいは「塔」のようにとらえてみてください。

地球を全体的にまずながめたら、つぎには何かを中心にして、そこをポイントにしてもういちど全体を見直すと今まで以上に全体がよく見えてくるものです。ピントがあうといった感じもしてきます。
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