世界地図をつかって、国際問題について理解するための本です。地図の読み方、使い方が具体的に解説されていて勉強になります。地図をつかうと、言語を基盤にするのではなく、イメージをつかってグラフィックに対象を理解できます。
池上さんは地図が大好きで、世界各地に取材に行くたびに、その国で発行されている世界地図を購入してくるそうで、つぎのようにのべています。
世界地図からは、まず全体像が把握できます。さらに地図をよく読みこんでいくと、問題の背景にあるさまざまな状況までもが、透けて見えてきます。紛争の当事国の事情や思惑・・・・。国際情勢は世界地図から読み解けるのです。
まず、全体像をつかむことが、地図の使用法の基本でしょう。
本書には、実にさまざまな地図が掲載されています。たとえば、「日本海」がない韓国の地図、北方領土が日本の領土になっている中国の地図、上下がさかさまのオーストラリアの地図、ユーラシア大陸た二つに割れたアメリカの地図、国名が書かれていないヨルダンの地図、フィクションが盛りこまれた地図などです。
これらを見ているだけでも固定観念から脱出できます。
これらを見ているだけでも固定観念から脱出できます。
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なかでも印象的だったのは「北極中心の世界地図」です。
アメリカとロシアはむかいあっていて、ごく近いお隣だったことがわかりました。
アメリカとロシアはむかいあっていて、ごく近いお隣だったことがわかりました。
また、地球温暖化がすすんできて、北極の氷がどんどん溶けてきた結果、北極航路の運用が現実味をおびてきました。そうなると、世界の海運に大きな変化がもたらされることがわかりました。
さらに、これまでは氷に閉ざされていて開発できなかった北極の豊富な埋蔵資源をめぐって、あらたな紛争が起きようとしていることも知りました。
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海外旅行をする場合は、本書を参考にして、世界地図を見て下しらべをしてから、その国に行ってみるとよいでしょう。
地図から想像力を働かせることこそ、面白いのです。「地図ではこうなっているけれども、その国は、本当のところ、どうなのだろうか」という視点を持って、その国を訪れてください。
固定的な見方をやめて、自分の目でたしかめることの大切さ、おもしろさをおしえてくれた一冊でした。
▼ 文献
池上彰著『国際問題がわかる! 世界地図の読み方』小学館、2010年12月4日
池上彰 国際問題がわかる! 世界地図の読み方