発想法 - 情報処理と問題解決 -

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タグ:地球

宇宙から地球を撮影した写真集や人工衛星の観測によってえられた画像を見れば地球を簡単に大観することができます。


米国 NASA のアポロ計画のころより、宇宙から地球を見ることができるようになりました。

しかしアポロ計画がはじまる以前でも地球の認識はすすんでいました。科学者たちは、観測と計算とによって地球の大きさや形状・諸現象などを理解し想像してきました。学校教育の理科でもそのような計算の方法をおしえて地球を理解させようとしています。

しかし現代では、宇宙から地球を撮影した写真集や地球観測衛星によってえられた画像がたくさんあります。Google Earth などの無料でつかえるサービスもあります。

要するに現代では、計算しているよりも写真や画像を見た方がはやいのです。写真や画像を見れば地球の大局や諸現象を理屈ではなく直観的に短時間で理解できます。

つまりまずは写真や画像を見た方がよいのです。そしてその次の第2段階目で計算をすればよいでしょう。さらに余裕があれば第3段階目で考察をするとなおよいです。これが地球や世界を認識する方法です。理科教育でも写真や画像をもっとふんだんにとりいれるべきです。

160126 写真
図 地球を認識する3段階


問題解決の第1段階目では視覚的・直観的に大局をつかむことがポイントです。まずは大観するのです。



▼ 参考文献
岡本典明(原稿・構成)『アポロ月面着陸 ダイジェスト写真集』ブックブライト、2014年6月9日

▼ 関連記事
地球の一体性を認識する -『アポロ月面着陸 ダイジェスト写真集』(ブックブライト)-


▼ 参考写真集(Kindle 版)
ハリケーンの巨大な渦が印象的です。
オーロラがうつくしいです。
夕暮れ、夜景、夜光雲と月、オーロラ、夜明け、
地球と宇宙がうみだす光の芸術。





人口問題は、地球上のあらゆる問題にからんでいます。

『まもなくやってくる100億人時代』(ニュートンプレス)によると、世界の人口は今日70億に達しました。ここ数百年の人口増加はまさに爆発的でした。国連は、2083年に世界の人口は100億を突破すると予測しています。
 
世界の人口の約6割はアジアに集中しています。

一方、人口増加率はアフリカと中東が非常に高くなっています。経済発展が一段落した国々では人口増加が止まるあるいは減少しているのですが、これから経済発展がすすもうとしている国々では人口が非常に急増しています。

先進国では「人口転換」はおわりましたが、アフリカや中東の国々では「多産少死」がおきていて人口が増えているのです。「多産多死」→「多産少死」→「少産少死」という一連のうつりかわりを「人口転換」といいます。とくにアフリカでは、今後ともいちじるしく人口が増えつづけます。アフリカが人口増加の鍵をにぎっているといってよいでしょう。

人類は、地球の人口の "定員" ギリギリのところでこれまでも人口を増しやしてきました。今後とも、農業生産性の向上と新しいエネルギー源の開発が人口を "やしなう" ために大きな課題になります。




以上のように、人口急増は人類および地球の大問題になっています。

しかし現状では人口増加はくいとめることはできません。したがってわたしたち人類は、人口が増加することはそのままうけいれ、 農業生産性の向上とあたしいエネルギー源の開発によって大問題をのりきろうとしているのです。

このような事態になり地球環境は今後どうなるのでしょうか? 環境破壊はさらにすすみ、地球はバランスをくずすことがかんがえられます。想定できないこと、たとえば大災害などがおこるかもしれません。

人口問題は、地球上のあらゆる問題にからんでいます。人口が増えたために各地で紛争がおきやすくなっているともいえるでしょう。わたしたちは人口問題にしっかりむきあっていかなければなりません。


▼ 引用文献
『まもなくやってくる100億人時代』ニュートンプレス、2015年11月19日
Newton まもなくやってくる 100億人時代: 「食糧」「エネルギー」「長寿命化」

『Newton 2015年7月号』では「地球と生命 46億年をさかのぼる」を特集しています。普通の地球史とはちがい、さながらタイムマシンにのって現在から過去へさかのぼって旅をすることができます。

つぎのような光景がつぎつぎに目に入ってきます。

6600万年前 小惑星の衝突
1億500万年前 超大陸の分裂
2億5200万年前 史上最大の絶滅
3億年前 陸地に大森林が広がる
5億2000万年前 カンブリア大爆発
6億5000万年前 全球凍結
9億年前 超大陸ロディニアの出現
9億年前〜22億年前 陸地が増加
22億年前 全球凍結
38億年前 海や地球磁場が誕生
45億3300万年前 ジャイアントインパクト
45億5000万年前 マグマオーシャン
45億6000万年前 原始惑星の成長
45億6700万年前 微惑星の衝突


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地球と生命の歴史には想像を絶する変動がありました。とくに全球凍結が2回もあったというのはおどろきです。また海と陸の誕生、カンブリア大爆発(生物の急激な多様化)なども印象にのこります。

地球は、時代をさかのぼるにつれて多様性に次第にとぼしくなり単純になっていきます。いいかえると現在の地球は多様性にみちあふれています。地球は、みずからのシステムを維持しつつ分化してきたのだということがよくわかります。

また PART 2 では、つぎのキーワードについてくわしく解説しています。

大陸移動
マントルの運動
大絶滅
全球凍結
酸素の増加
生命の系統樹
 

本書中の「パノラマ生物の進化史」と「パノラマ地球史」のイラストは、地球と生命の進化を大観し、全体を一気に一望できる貴重なイメージになっています。

大観とは、分析や要約とは方向がことなる認識の方法です。大きな情報のひとかたまりを丸ごと一気に自分の内面にインプットしてしまうのが大観です。情報のひとかたまりは "ファイル"とよんでもよいです。

まず地球史を大観し、つぎに興味ある時代や現象に入りこんで、今度は部分をくわしく見るという方法がよいとおもいます。そして考察をくわえればなおよいでしょう(下図)。

151226 大観
図 認識の3段階モデル


 




地球全史のなかでそれぞれの出来事をとらえると出来事の意義がわかってきます。

地球史は「冥王代→太古代→原生代→顕生代」という時代区分になっていて、それぞれの年代はつぎのようになっています。
 
顕生代:5億4200万年前〜現在
原生代:25億年前〜5億4200万年前
太古代:40億年前〜25億年前
冥王代:46億年前〜40億年前

顕生代は、情報量が非常に多いのでさらにこまかく区分されています。それは後でみていけばよいでしょう。


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■ 冥王代:46億年前〜40億年前
  • 46億年前に、無数の微惑星が衝突・集合して地球は形成されました。(写真2)
  • 天体の衝突によって地球の表面にはクレーターがたくさんできました。(写真6)

■ 太古代:40億年前〜25億年前
  • 地球最古の化石は34.5億年前の地層から発見されました。その化石は最古の生命の痕跡のひとつとされています。(写真14、15)
  • 27億年前のシアノバクテリアは、酸素のとぼしかった海に大量の酸素を供給しました。(写真19)

■ 原生代:25億年前〜5億4200万年前
  • アフリカ大陸とその周辺では小大陸同士の衝突が3回あり、次第に大きな大陸が成長しました。(写真26)
  • 5.7億年前にエディアカラ動物群が出現しました。エディアカラ動物群は軟体部からのみなり、かたい殻や骨格がなく平べったいものが多かったです。(写真33、34)

■ 顕生代:5億4200万年前〜現在
  • 顕生代になると、生物種の多様化が急激にすすみました。「カンブリア爆発」とよばれます。カナダのバージェス頁岩はそのことをあきらかにした重要な地層です。(写真36、37、38)
  • 南アフリカには350万年前の人類化石遺跡があります。またタンザニア・オルドバイ峡谷(200万年前)で、猿人アウストラロピテクス・ボイセイと原人ホモ・ハビリスの化石が発見されています。現代は人類の時代です。(写真79、80)



46億年前に、宇宙の物質があつまって地球が形成されて冥王代がはじまりました。太古代になると生物が誕生しました。原生代には大陸の成長と移動がおこりました。顕生代になると生物は一気に多様化し、最終的には人類が出現してきまた。

このような地球全史において、最初の生物がどのようにして誕生したのかはまだわかっていません。また注目すべきは、顕生代はじめの「カンブリア爆発」、そして人類の出現です。人類の人口は現在 約70億人、ひとつの種がこれほどまでに繁栄?した時代は今までにはありませんでした。地球は今、人類の時代になっています。


地球に記録されたさまざまな痕跡から地球の全歴史をまなぶことは、一方で、地球全史をふまえてそれぞれの出来事の意義をとらえなおすことにもなります。それぞれの出来事の意義はそれ自体で単独に決まるのではなく、全体状況や背景のなかこそ決まってくるものです。

たとえばローマの古代遺跡をただ見ているだけだと何もわからなかったことが、世界史を勉強し、世界史のなかで(世界史を背景にして)遺跡をとらえなおしてみると、世界史におけるローマの位置づけができ、その価値や意義がわかってきます。これと同じことです。

今後たとえば、世界自然遺産を見たり旅したりするときに、地球全史をふまえてそれぞれの自然をとらえれば、それらの価値や意義がわかって見方が非常にふかまってくることでしょう。


151221 地球全史
図 地球全史のなかでそれぞれの自然をとらえると、価値や意義がわかってくる

 

▼ 引用文献
白尾元理(写真)・清川昌一(解説) 『地球全史 写真が語る46億年の奇跡』岩波書店、2012年1月27日
地球全史――写真が語る46億年の奇跡 

▼ 参考記事
時間スケールを変えて歴史を見る 〜『地球全史スーパー年表』〜
鳥瞰映像と実体験をくみあわせて理解をふかめる 〜後藤和久著『Google Earth でみる地球の歴史』〜
哺乳類の進化と絶滅をまなぶ -太古の哺乳類展-
イメージでとらえ、言葉をつかって確認する - 松井孝典(文)・柏木佐和子(絵)『親子で読もう 地球の歴史』-
進化における生命の大躍進をみる - 特別展「生命大躍進」(1)-
地球史を旅する -『地球全史 写真が語る46億年の奇跡』岩波書店(1)-

▼ 関連記事
進化における生命の大躍進をみる -「生命大躍進」(1)-(2015年12月)
生命進化の物語がはじまる -「生命大躍進」(2)-(2016年6月)
眼をつかって情報をとりこむ -「生命大躍進」(3)-(2016年6月)
空白領域に進出する -「生命大躍進」(4)-(2016年6月)
眼と手をつかいこなす -「生命大躍進」(5)-(2016年6月)
段階的に発展する -「生命大躍進」(6)-(2016年6月)
眼をつかいこなして多種多量な情報をうけとる -「生命大躍進」(7)-(2016年8月)
眼でみて認知し、行動して確認する -「生命大躍進」(8)-(2016年8月)
手をつかいこなしてアウトプットする -「生命大躍進」(9)-(2016年8月)
情報処理能力を高め、空白領域にチャレンジする -「生命大躍進」(まとめ&リンク)-(2016年8月)

 

白尾元理(写真)・清川昌一(解説) 『地球全史 写真が語る46億年の奇跡』(岩波書店)は、地球の歴史を旅するすばらしい写真集です。このような写真集を待望していました。
 

目 次
第1章 冥王代
第2章 太古代
第3章 原生代
第4章 古生代
第5章 三畳紀・ジュラ紀(中生代前期)
第6章 白亜紀(中生代後期)
第7章 古第三紀・新第三紀(新生代前期)
第8章 第四紀(新生代後期)
解説


それぞれの写真を見ながら、どの時代に自分が今いるのかを確認します。そのためには本書に掲載されている地質年代表(柱状図)をたえず参照するとよいです。


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冥王代・太古代・原生代・顕生代
という4つの大きな年代区分をまずはおぼえておきます。大昔ほど情報量が少なく、現代にちかづくほど情報量が多くなることは一目瞭然です。

本書は、一本の時間軸にそって写真をならべているので、写真を見ながら地球史の旅をすることができます。空間的な旅ではなくてこれは時間の旅です。時間軸をもつことで地球に関する物差しが一本ふえることになり、地球の見方が一層ふかまります

地球の歴史は理屈で理解しようとしてもむずかしいので、このような写真集をつかってまずはイメージでとらえて、そのあとで言語で確認するという順序をふむとよいとおもいます。

このようなすばらしい写真集は今までにはなかったです。手元においておいてくりかえし見直す価値のある真面目で立派な写真集だとおもいます。


▼ 引用文献
白尾元理(写真)・清川昌一(解説) 『地球全史 写真が語る46億年の奇跡』岩波書店、2012年1月27日
地球全史――写真が語る46億年の奇跡

▼ 参考記事
時間スケールを変えて歴史を見る 〜『地球全史スーパー年表』〜
鳥瞰映像と実体験をくみあわせて理解をふかめる 〜後藤和久著『Google Earth でみる地球の歴史』〜
哺乳類の進化と絶滅をまなぶ -太古の哺乳類展-
イメージでとらえ、言葉をつかって確認する - 松井孝典(文)・柏木佐和子(絵)『親子で読もう 地球の歴史』-
進化における生命の大躍進をみる - 特別展「生命大躍進」(1)-

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空白領域に進出する -「生命大躍進」(4)-(2016年6月)
眼と手をつかいこなす -「生命大躍進」(5)-(2016年6月)
段階的に発展する -「生命大躍進」(6)-(2016年6月)
眼をつかいこなして多種多量な情報をうけとる -「生命大躍進」(7)-(2016年8月)
眼でみて認知し、行動して確認する -「生命大躍進」(8)-(2016年8月)
手をつかいこなしてアウトプットする -「生命大躍進」(9)-(2016年8月)
情報処理能力を高め、空白領域にチャレンジする -「生命大躍進」(まとめ&リンク)-(2016年8月)




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特別展「生命大躍進」(国立科学博物館)


特別展「生命大躍進」は、生命の進化の過程にはあるときに大躍進(飛躍)があったことをおしえてくれます。

「生命大躍進」は全国各地で巡回展が開催されています。今後の巡回予定はつぎのとおりです。

  • 愛媛県美術館:2016年1月16日(土)~ 4月3日(日)
  • 大阪市立自然史博物館:2016年4月16日(土)~ 6月19日(日)
  • 岡山シティミュージアム:2016年7月15日(金)~ 9月4日(日)

今回の企画では、世界各地の研究機関の協力により、生命進化の各時代を代表する実物化石が奇跡的に一堂に会することになりました。


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アノマロカリス(交差法で立体視ができます)


生命は、およそ40億年という進化の歴史をもっています。その間、飛躍的な進化をもたらした「生命の大躍進」ともいうべき重要な出来事がありました。「目の獲得」「海からの上陸」「胎盤の獲得」などです。

たとえばアノマロカリスは、それ以前の先カンブリア紀には知られていない眼を発達させて「大躍進」しました。

「大躍進」とは、小進化に対して大進化といってもよいでしょう。生命の進化は、ダラダラとつづく坂をのぼっていくようなものではなくて階段状の坂をのぼっていくようなことであり、ガクンガクンと変化していきます。生命には飛躍があるわけです。

今回の特別展は、地球史のあるときに生命力が爆発するような瞬間があることを知り、またそのエネルギーを感じることができる企画でした。このような感覚は理屈ではなかなか体得できません。会場に行ってみる価値があるとおもいます。


▼ 関連記事
進化における生命の大躍進をみる -「生命大躍進」(1)-(2015年12月)
生命進化の物語がはじまる -「生命大躍進」(2)-(2016年6月)
眼をつかって情報をとりこむ -「生命大躍進」(3)-(2016年6月)
空白領域に進出する -「生命大躍進」(4)-(2016年6月)
眼と手をつかいこなす -「生命大躍進」(5)-(2016年6月)
段階的に発展する -「生命大躍進」(6)-(2016年6月)
眼をつかいこなして多種多量な情報をうけとる -「生命大躍進」(7)-(2016年8月)
眼でみて認知し、行動して確認する -「生命大躍進」(8)-(2016年8月)
手をつかいこなしてアウトプットする -「生命大躍進」(9)-(2016年8月)
情報処理能力を高め、空白領域にチャレンジする -「生命大躍進」(まとめ&リンク)-(2016年8月) 


▼ 特別展「生命大躍進」
「生命大躍進」公式サイト
NHK「生命大躍進」
 

▼ 国立科学博物館の会場マップ
150709 生命大躍進 のコピー


▼ 参考図書

▼ 交差法(クロス法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。



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グローバリゼーションをまずは概観して、グローバリゼーションをふまえて個々の仕事を実施し、そして検証するという3段階をふんで問題解決をすすめるとよいです。

グローバリゼーションの影響を誰もがさけられない今日、グローバリゼーションを考慮して個々の仕事を誰もがおこなわなければならなくなりました。どのような課題にとりくむにせよどのような事業をするにせよグローバリゼーションをふまえることなく実施できない時代になりました。

たとえばボランティア活動をおこなうにしても、どこで何をすべきなのか、難民支援がいいのか、教育支援がいいのか、経済開発、貧困撲滅、医療、環境保全、公害対策、国際理解・・・、世界情勢をよくみたうえで判断しなければなりません。やみくもにつきすすんだり、何だかよさそうだということだけで行動するのはよくありません(注)。

そしてひと仕事がおわったら自分の仕事がどうであったのかを検証してみるとよいでしょう。行動をふりかえってチェックし反省します。情報処理にエラーはなかったかどうか。その結果にもとづいて今後の計画をたてなおします。

このような検証も、グローバリゼーションを背景にしておこなうことが重要です(下図)。
 

151208 グローバリゼーション
図 グローバリゼーションをふまえた問題解決の3段階モデル


現代はグローバリゼーションの時代です。グローバル化は刻々とすすんでいます。『グローバリゼーション事典』が出版されること自体がグローバル化のいちじるしい進行を物語っています。

『グローバリゼーション事典』などをつかってグローバリゼーションを概観したら、つぎには個々の仕事にそれぞれとりくんでいく、そして検証していくことを心がけるとよいでしょう。
 

▼ 注
開発途上国に人々にお金と物をホイホイとあたえてしまう人をみたことがありますが、そのような人も一旦たちどまって、グローバリゼーションのもとで自分の活動をとらえなおし、検証してみるのがよいでしょう。

▼ 引用文献
アンドリュー・ジョーンズ 著(佐々木てる監訳)『グローバリゼーション事典 地球社会を読み解く手引き』明石書店、2012年11月10日
グローバリゼーション事典

▼ 関連記事
グローバリゼーションをとらえる - アンドリュー・ジョーンズ著『グローバリゼーション事典』(1)-
グローバリゼーションの流れを知る -『グローバリゼーション事典』明石書店(2)-
グローバリゼーションをふまえて個々の仕事をおこなう - アンドリュー・ジョーンズ 著『グローバリゼーション事典』明石書店(3)-

 

グローバリゼーションを理解するにはその歴史的な流れを大局的にとらえるとよいです。

今日、グローバリゼーション(グローバル化)は急速に進展しています。グローバリゼーションは日常生活のいたるところで存在するようになりました。わたしたちはその発展速度の速さに注意しなければなりません。

グローバリゼーションをめぐる諸断片はおたがいにむすびつきあっています。従来は、それぞれの専門家がそれぞれ立場で専門分野を論じていればよかったのですが、現代では、グローバリゼーションという文脈のなかで専門分野をとらえなおさなければならなくなりました。

それぞれの分野の価値や意義は、それをとりまく全体的状況のなかでこそ決まってくるのであって、全体状況が変われば価値や意義もことなってくることをグローバリゼーションはおしえています。


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1950年代から1960年代においては、経済は、国家を基盤とした企業によって発達しまたが、現在は、多国籍で国際的な企業が成長し経済活動はグローバル化しています。グローバル経済は国民国家そして地域貿易ブロックもこえてうごいています。

たとえばマクドナルド化という現象があります。効率性・計算可能性・予測可能性・管理の合理化が現代社会のあらゆる次元で生じているということで、このファーストフードレストランの原理が様々な分野で主流となりつつあります。マクドナルドは、経済のグローバリゼーションとトランスナショナルな企業の典型的なシンボルとなりました。

またインターネットの出現によって、世界中の人々が以前には想像できなかった方法でむすびつけられるようになりました。インターネットは地球全体を網羅する情報の網であり、情報化社会の発展の特徴といえるでしょう。
 
そしてもっとも大きな問題は戦争のグローバル化です。

そもそも第一次世界大戦は、それまでに生じたもののなかで人類史上もっともグローバルにひろがった戦争でした。

その後の戦争の経緯は本書を参照していただくとして、現代において決定的だったのは「2001年9月11日の同時多発テロ」であり、これは、グローバルテロリズムというあたしい時代の到来をつげる結果になりました。本書が「9/11」の解説からはじまっているのをみても、グローバリゼーションのシンボリック的な事象にこれがなったことは残念ながらあきらかです。

戦争は、国家間の紛争からテロリスト集団との紛争へ転換し、「戦争の再編成」というあたらしい事態になってきました。

そしてまた、現代は移民難民の時代でもあります。移民と難民は戦争の結果の人の移動であって、グローバリゼーションのなかでももっともよくみかける現象です。

しかし一方で、国家・政府の枠組みをこえて地球上の問題解決にとりくんでいこうと立ちあがる市民がでてきました。国境をこえた、ボランティア・NGO・ロビー・学術団体・人権団体・・・、非政府の市民活動が活発になり、グローバル市民社会が形成されつつあります。


今日、グロバーリゼーションの影響から誰もがのがれられなくなっています。グローバリゼーションがうみだす「地球社会」の未来は現在のところは決してあかるくないですが、問題を解決しようとする動きもでてきています。



▼ 引用文献
アンドリュー・ジョーンズ 著(佐々木てる監訳)『グローバリゼーション事典 地球社会を読み解く手引き』明石書店、2012年11月10日
グローバリゼーション事典

▼ 関連記事
グローバリゼーションをとらえる - アンドリュー・ジョーンズ著『グローバリゼーション事典』(1)-
グローバリゼーションの流れを知る -『グローバリゼーション事典』明石書店(2)-
グローバリゼーションをふまえて個々の仕事をおこなう - アンドリュー・ジョーンズ 著『グローバリゼーション事典』明石書店(3)-

▼ 追記
わたしは世界史を極度に単純化して以下の模式図(モデル)でとらえています。グローバリゼーションは下記のように位置づけられます。

151210 グローバリゼーション
図 世界史モデルにおけるグローバリゼーションの位置づけ







今日、非常に多くの事象が連動しながらグローバリゼーションがすすみ、地球社会が形成されつつあります。

アンドリュー・ジョーンズ著『グローバリゼーション事典 地球社会を読み解く手引き』(明石書店)は、重要な機構・組織、概念・現象、思想家など217項目を網羅的にとりあげて、グローバリゼーションについて解説しています。キーワードだけでなくキーパーソンについても説明しているのが特色です。

本書は事典ということになっていますが、むしろ読み物として最後まで一気に全部よんだ方がグローバリゼーションについて理解がふかまります。

掲載項目(日本語)は以下の通りです。本書中では、五十音順ではなくABC順に掲載されています。


ア行
悪の枢軸
アジア太平洋経済協力
アッシュ・アミン
アマルティア・セン
アムネスティ・インターナショナル
アラン・シップマン
アラン・ラグマン
アル・ジャジーラ
アルジュン・アパデュライ
アルンダティ・ロイ
アレックス・カリニコス
アンソニー・ギデンズ
アンソニー・マッグルー
アントニオ・ネグリ
一国主義
イマニュエル・ウォーラスティン
移民
インターネット
インターポール
インテルサット
ヴァンダナ・シヴァ
ウィル・ハットン
ウェストファリア・モデル
ウォールデン・ベロー
ウルリッヒ・ベック
援助
欧州安全保障協力機構
欧州連合
大前研一

カ行
カール・マルクス
海外直接投資
開発/発展
環境
カンクン
北大西洋条約機構
9月11日
京都議定書
金融のグローバリゼーション
グリーンピース
クリストファー・ラッシュ
グレアム・トンプソン
グレンイーグルズ
グローカリゼーション
グローバリズム
グローバリゼーション
グローバリゼーションに関する国際フォーラム
グローバルガバナンス
グローバリゼーション理論
グローバルアパルトヘイト
グローバル企業
グローバルコミュニケーション
グローバルコモンズ
グローバルシステム
グローバルシティ
グローバル市民社会
グローバル社会民主主義
グローバル生産ネットワーク
グローバルテロリズム
グローバルな金融の統合
グローバルな商品連鎖
グローバルネットワーク
グローバルノース
グローバル文化
軍事のグローバリゼーション
軍備管理
経済協力開発機構
経済成長
経済のグローバリゼーション
ゲーテッドコミュニティ/塀で囲まれたコミュニティ
ケビン・ロビンス
国際刑事裁判所
国際決済銀行
国際債務
国際司法裁判所
国際自由労働組合連合
国際通貨基金
国際電気通信連合
国際法
国際貿易
国際連合
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)
国際連合人権委員会
国際連合難民高等弁務官事務所
国際連盟
国際労働機関
国民国家
国連事務総長
コスモポリタン民主主義
コリン・ハンズ

サ行

サービスの貿易に関する一般協定
最恵国待遇
サスキア・サッセン
サパティスタ
サミール・アミン
サミュエル・ハンチントン
シアトル
CNN
ジェームス・ローズノウ
ジェフリー・ウィリアムソン
ジェリー・マンダー
時空間の距離化
ジグムント・バウマン
持続可能な開発
ジャスティン・ローゼンバーグ
ジャン・ショルテ
宗教
自由貿易
主権
主要国首脳会議
ジョージ・ソロス
ジョージ・モンビオ
ジョージ・リッツァ
ジョセフ・スティグリッツ
ジョン・アーリ
ジョン・キーン
ジョン・グレイ
ジョン・トムリンソン
地雷禁止
人権
新世界秩序
スーザン・ジョージ
政治のグローバリゼーション
生物多様性
世界銀行
世界システム分析
世界社会フォーラム
世界貿易機関
世界保健機関
戦争
組織のグローバリゼーション

タ行
第一次世界大戦
第三世界
大西洋自由貿易地域
第二次世界大戦
ダグラス・ケルナー
多国間主義
多国間投資協定
多国籍企業
脱国民化
脱領土化
ダニ・ロドリック
地球温暖化
地政学
知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
チャールズ・カーナガン
チャールズ・リードビーター
ディアスポラ共同体
帝国
帝国主義
デヴィッド・コーテン
デヴィッド・ハーヴェイ
デヴィッド・ヘルド
デヴィッド・モーレー
東南アジア諸国連合
ドーハ開発ラウンド
トービン税
トニー・ブレア
トム・ネアン
トランスナショナリズム
トランスナショナルな企業
トランスナショナルな資本家階級
ドリーン・マッシー

ナ行
ナオミ・クライン
難民
ネオコロニアリズム
ネオリベラリズム/新自由主義
農業
ノーム・チョムスキー

ハ行
バーバラ・エーレンライク
ハーマン・デイリー
ハロルド・ジェームス
反グローバリゼーション
反グローバリゼーション運動
ピーター・ディッケン
比較優位
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)/エイズ(AIDS: 後天性免疫不全症候群)
フィリップ・レッグレイン
フランシス・フクヤマ
ブレトンウッズ機関
文化帝国主義
文化のグローバリゼーション
分業
ポール・ハースト
北米自由貿易協定
保護貿易主義
ポップミュージック
ホロコースト

マ行
マーティン・オルブロウ
マーティン・コー
マーティン・ショウ
マイクロソフト
マクドナルド
マクドナルド化
マニュエル・カステル
マルコス副司令
ミレニアム・チャレンジ・アカウント
民主化
メアリー・カルドー
メルコスール(南米南部共同市場)
もう一つのグローバリゼーション

ヤ行
薬物取引
ユーロ

ラ行
ライブ8
リチャード・フォーク
冷戦
レスリ・スクレア
ローカリゼーション
ローマ・クラブ
ロジャー・スクルートン
ロバート・ウエント
ロバート・コックス
ロバート・コヘイン
ロビン・ブラックバーン

ワ行
ワールドシティ/世界都市
ワールドミュージック
ワシントン・コンセンサス
湾岸協力会議

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グローバリゼーションについて理解するときには用語理解にとどまることなく個々の事象を具体的にみた方がよいでしょう。

用語(キーワード)は個々の事象をシンボル化した "ラベル" であり、事象こそが情報の本体であるというとらえ方が大切です(下図)。

151210 事象とラベル
図 事象は情報の本体、キーワードは情報をシンボル化したラベル


これらの個々の事象はそれぞれ独立しておこっているようでもありますが一方で連動していることに気づかされます。個々の現象が連動して有機的な「地球社会」(グローバル社会)(注)が形成されつつあるといえるでしょう。

個々の現象を「個」、グローバリゼーションを「全」とするならば、個が先にあって全が生じるのでもなく、全が先にあって個が生じるのでもありません。個と全は同時に機能して「地球社会」という大きなシステムが形成されつつあるのです。個即全、全即個といったとらえ方が本質的に重要でしょう。

グローバリゼーションがすすんでいるのはたしかにわかるがとらえどころがないといった感じもします。そのようなときには本書を読んで参考にしてみるとよいでしょう。
 

▼ 引用文献
アンドリュー・ジョーンズ 著(佐々木てる監訳)『グローバリゼーション事典 地球社会を読み解く手引き』明石書店、2012年11月10日
グローバリゼーション事典

▼ 注
本書では「地球社会」と記載され一般的にもそういわれますが、グローバリゼーションを重視するならば「全球社会」とよんだ方が正解でしょう。現在のところ「全球社会」は、大きな問題と困難をはらみながら成長しています。

▼ 関連記事
グローバリゼーションをとらえる - アンドリュー・ジョーンズ著『グローバリゼーション事典』(1)-
グローバリゼーションの流れを知る -『グローバリゼーション事典』明石書店(2)-
グローバリゼーションをふまえて個々の仕事をおこなう - アンドリュー・ジョーンズ 著『グローバリゼーション事典』明石書店(3)-


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東京国立博物館・企画展示「伊能忠敬の日本図」


江戸時代の伊能忠敬は、ボトムアップの方法で日本地図をつくりましたが、現代は、トップダウンの方法で日本の全体像を見ることができます。

東京国立博物館の企画展示室で「伊能忠敬の日本図」が展示されています(注1)。

伊能忠敬(1745~1818)は、江戸時代、56歳から17年かけて日本全国を測量してあるき、実測による日本地図をはじめて完成させました。忠敬は正確に距離をはかるため、おなじ歩幅であるく訓練をつねにしていたといいます。その結果できあがった地図は、現在の衛星写真にも引けをとらないほど精緻なものです。

日本全国を測量する際に忠敬がもちいたのは、二点間の距離と方角を竿や縄とコンパスで精密にはかることをくりかえしてゆく「導線法」(どうせんほう)とよばれる方法でした。さらに、とおくに見える山頂や岬などを目標物の方角を道中で確認し、夜には北極星の高度など天体を観測して測量の誤差を修正しました。

実際に地図を見てみるとその正確さには本当におどろかされます。

伊能忠敬は、天文・地理・数学などの学問をこのんで、50歳で隠退すると江戸にでて幕府天文方の高橋至時(たかはしよしとき)に師事し、本格的に天文学や測量術をまなんだそうです。


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伊能忠敬に対して現代はどうかというと、人工衛星が観測したデータや航空機が撮影した空中写真をつかって地図をつくることができます。現代のわたしたちは、グーグルマップとグーグルアースをつかって日本の地図や衛星画像を簡単に見ることができます。まったく時代は変わりました。

伊能忠敬の方法は、現場のひとつひとつデータをつみあげていってようやく最後に全体像がわかるというボトムアップの方法でした。それに対して現代は、空からあるいは宇宙から見るというトップダウンの方法がつかえるようになったわけです。トップダウンをつかうと短時間で一気に全体をつかむことができます。

ボトムアップとトップダウン、方法が180度転換したことに気がつくことは重要なことです。日本列島あるいは地球の全体像をつかむためにはトップダウンの方法をもちいる時代に転換したということです。トップダウンは何かを大観するときにもっとも基本となる方法です。


東京国立博物館企画室の展示とともに、同東洋館地下1階のミュージアムシアターでビデオ作品が上映されています(注2)。展示とあわせてビデオを見ると「伊能忠敬の日本図」の理解が一層すすむでしょう。



▼ 注1:企画展「伊能忠敬の日本図」
2015年10月14日(水) ~ 2015年12月23日(水)
東京国立博物館・平成館 ・企画展示室

▼ 注2:ミュージアムシアター「伊能忠敬の日本図」
2015年10月14日(水) ~ 2015年12月23日(水)
東京国立博物館・東洋館地下1階 TNM&TOPPAN ミュージアムシアター



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何かを理解しようとおもったら、イメージでまず先にとらえ、そのつぎに言葉で確認するという順序をふむとよいです。

松井孝典(文)・柏木佐和子(絵)『親子で読もう 地球の歴史』(岩波書店)は、親子の対話という形式を通して地球の歴史について理解していくための本です。


目 次
1 地球大気と海底探査
2 太陽系のはてから地球を見る
3 第2の地球はあるか
4 地球の進化と未来


わたしがもっともおもしろいとおもったのは第4章の「ぼくたちの未来」というところであり、地球の寿命はあと50億年くらいで、今は、地球の歴史の折り返し点にきているというところです。
 

地球は(中略)後50億年くらいだけど,太陽が明るくなるにつれて,生物圏という箱がなくなり,ついで海とか陸とかいう箱がなくなり,最後にはちきゅうもまたどろどろに溶けてガスになる.今はちょうど地球の歴史の折り返し点で,これまでの歴史を逆にたどるのが地球の未来ということなんだ.


つまり地球の一生はその半分がおわり、人類という特殊な生物はその中間点で出現してきたということです。

また「これまでの歴史を逆にたどるのが地球の未来ということ」であるとのべ、過去の過程と未来の過程とのあいだには対応関係があると説明しています。これは、未来を予想するうえでとても参考になる仮説です。


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著者の松井孝典さんは日本を代表する地球惑星科学者であり、本書の内容は十分に信頼できる立派なものです。松井さんご自身の学説ものべられていて非常に興味ぶかいです。

ただし一般の読者にとってはややレベルが高くむずかしく感じるかもしれません。言語を通して理解していく対話形式も本書を若干むずかしく感じさせる要因になっています。

そこでまず先に、本書に掲載されている多数の絵を最後までじっくりすべて見てしまい、そのあとで本文を読むようにするとよいです。よくできた絵が本書にはたくさん掲載されています。最初から言葉や理屈でとらえようとすると理解がおそくなります。

地球の歴史にかぎらず何かを理解しようとおもったら、イメージでまず先にとらえて、そのつぎに言葉で確認するという順序をふんだほうがよいです。


イメージでとらえる → 言葉で確認する


言葉は、確認のためのもっとも基本的な道具です。言葉で確認するとイメージもそれまで以上に鮮明になってきます。



▼ 引用文献
松井孝典(文)・柏木佐和子(絵)『親子で読もう 地球の歴史』岩波書店、2012年8月7日
親子で読もう 地球の歴史

▼ 地球の歴史をイメージでとらえるための参考文献
田近英一監修『地球・生命の大進化 46億年の物語』(新生出版社)


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プレートテクトニクスはこれからも継続的に機能するため、大地震や火山噴火はわたしたちをくりかえしくりかえしおそってきます。

是永淳著『絵でわかるプレートテクトニクス 地球進化の謎に挑む』(講談社)は大地震や火山噴火をひきおこすプレートテクトニクスについて解説しています。本書の副題にもあるように、プレートテクトニクスを地球進化の観点からとらえている点が興味ぶかいです。

目 次
第1章 地球はどんな構造をしているのか
第2章 プレートテクトニクスの発見
第3章 プレートテクトニクスはどのような現象か
第4章 プレートテクトニクスはいつはじまったのか
第5章 地球以外の惑星にもプレートテクトニクスはあるのか
第6章 プレートテクトニクスと生命環境
第7章 プレートテクトニクスはいつか終わるのか
第8章 プレートテクトニクス理論のこれから

プレートテクトニクスが地球史においていつはじまったのかということはまだよくわかっていませんが、「冥王代とよばれる今から46億から40億年前にすでにはじまっていた」という説があります。

一方、プレートテクトニクスはいつ終わるのかという疑問に対しては10億年後と説明しています。

プレート運動がおこるためには、地下数十 km の深さまで海水がしみこんで地表近くのマントルがやわらかくなる必要があります。水がしみこむことによりマントルとプレートの粘性が十分に低くなり地球内部で対流がおこりプレートテクトニクスが成立するということです。

ところで星の進化により太陽は輝き(光度)を次第に増していきます。太陽の光度が上がると地球の気温は上昇して、海水は蒸発していずれなくなってしまいます。それが計算によると10億年後ということになります。

したがって10億年後にはプレートテクトニクスは機能しなくなり、大地震もなくなります。

しかしこれは、人類にとってはとてつもなく非常に長い時間です。人類にとっては、プレートテクトニクスはなくなることはなく今後とも機能しつづけ、大地震や大津波や火山噴火はくりかえしくりかえしこれからもおそってきます。

地震活動や火山噴火は継続して今後ともなくならない以上、わたしたちは後世の人々のことまでかんがえて対策をたてなければなりません。自分が生きているあいだは何とかなるだろうということではいけません。原子力発電所などはできるだけはやく廃止する必要があります。


本書の記述はやや専門的でむずかしいです。木村学・大木勇人著『図解 プレートテクトニクス入門』(講談社)を読んでみて、プレートテクトニクスについてくわしくさらにまなびたいとおもったら読んでみるとよいでしょう。


▼ 引用文献
是永淳著『絵でわかるプレートテクトニクス 地球進化の謎に挑む』講談社、2014年5月30日
絵でわかるプレートテクトニクス 地球進化の謎に挑む (KS絵でわかるシリーズ)

▼ 参考文献
木村学・大木勇人著『図解 プレートテクトニクス入門』(ブルーバックス)講談社、2013年9月20日
図解 プレートテクトニクス入門 なぜ動くのか? 原理から学ぶ地球のからくり (ブルーバックス)

▼ 関連記事
モデルをつかって理解する -『図解 プレートテクトニクス入門』-
グローバルな観点をもって課題にとりくむ
日本列島とその周辺域を俯瞰する -『海の底にも山がある! 日本列島、水をとったら?』-


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日本列島とその周辺域を俯瞰(大観)すると自分がくらしている地域をそのなかでとらえなおすことができます。

加藤茂・伊藤等 監修『海の底にも山がある! 日本列島、水をとったら?』(徳間書店)は、日本列島およびその周辺域のさまざまな視点からえがいた非常にすぐれた俯瞰図を多数掲載しています。本書にでている俯瞰図により日本列島とその周辺を簡単に一望することができます。

もくじ
第1章 海の中を探る
 地球のでこぼこはどうしてできる?
 長さ3850 km の深い溝
 (千島・カムチャッカ海溝〜日本海溝〜伊豆・小笠原海溝)
 巨大な海底山脈(伊豆・小笠原弧)
 深く平らな海底の盆地(北大西洋海盆)
 海溝に飲み込まれていく山(鹿島海山・襟裳海山)
 引きさかれた山脈
 (伊豆・小笠原弧/九州・パラオ海嶺/四国海盆)
 でこぼこだらけの高いがけ(南海トラフ)
 日本海は大昔は湖だった
 浅い海の細長いくぼみ(東シナ海)
 海水がこおる浅い海(オホーツク海)
 入り組んだ浅い海(瀬戸内海)
 浅くて入り口のせまい湾(東京湾)
 日本一深い湾(駿河湾・相模湾)
 たくさんの谷がきざまれた深い湾(富山湾)
 火山が爆発して広がった湾(鹿児島湾)

第2章 海のひみつ
 海の広さと深さ
 海には陸上の10倍以上の生き物がいる!?
 波と潮(目に見える海の動き)
 海の水は流れている
 海流と日本の気候
 日本に地震が多いのはなぜ?
 地震がおこす津波
 海を調べる技術
 海の水がふえないわけ(地球をめぐる水)

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本書をみると、日本列島周辺の海底地形から連続的に日本列島を俯瞰することができ、地球の変動帯に日本が位置していることがよくわかり、巨大地震や火山噴火からわたしたちは決してのがれることはできないことがよく理解できます。

またこのような俯瞰図をみると、自分の居住地域が変動帯のなかのどこに位置しているかを確認することができます。変動帯でおこる自然災害は巨大地震以外にも、火山噴火・津波・洪水・土砂災害などそれぞれの地域ごとにおこりやすいものがあります。つまり自然災害には地域性があります。地域性をつかむためにも俯瞰図(鳥瞰図)をまずは見ることがもとめられます。

日本とその周辺域を俯瞰し、自分がすんでいる地域をとらえなおし、そして防災・減災のための対策をたて準備をするとよいでしょう(下図)。


15112 俯瞰

図 俯瞰し、地域をとらえなおして対策をたて準備をすすめる


▼ 引用文献
加藤茂・伊藤等 監修『海の底にも山がある! 日本列島、水をとったら?』(ビジュアル地形案内1 海底地形)徳間書店、2015年2月28日
海の底にも山がある!: 日本列島、水をとったら? ビジュアル地形案内 海底地形 (日本列島、水をとったら?―ビジュアル地形案内)


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グローバル化の時代をむかえた今日、どのような課題にとりくむ場合でもグローバルな観点をもつ必要があります。

現代はグローバル化の時代であることはあきらかです。どのような課題にとりくむにしてもグローバルな観点をもってグローバルな情勢をとらえることなしには前にすすめません。

それではどのようにしてグローバルな観点をもてばよいでしょうか。ひとつには地球科学とよばれる分野に注目するという方法があります。防災や環境問題などにとりくむ場合には地球科学について特に知っておく必要があります。

地球科学の基本を理解するためにはプレートテクトニクスについて知るのが手っ取りばやいです。プレートテクトニクスについて知ることは体系的に地球を認識することになり、グローバルな視点をもつことを容易にします(注)。

このようなグローバルな認識はあまり時間をかけずにできるだけ短時間でおこなわなければなりません。いそがしい日々のなかで時間がとれないという実際上の制約もあるでしょうが、それよりも、時間をかけずに短時間で一気に対象をとらえた方が全体像が見えやすい、その方が大観ができるということに気がつくことが重要です。時間をかければかけるほど細部はよく見えてきますが全体像は見えにくくなります。

このようにグローバルな観点をふまえてローカルに実践するのというのが現代のスタイルです。そしてローカルな実践をふまえて課題をめぐる本質にアプローチできればなおよいでしょう。そのためにはグローバルな情勢判断を前提にしてローカルにえられた情報を要約するようにします。

 
151028 グローバル

図 グローバルな観点をふまえて実践する


このような3段階は仕事や問題解決をすすめるためのモデルとしてつかえます。



▼ 注:参考文献
木村学・大木勇人著『図解 プレートテクトニクス入門』(ブルーバックス)講談社、2013年9月20日


▼ 関連記事
世界を読み解き、現代を大観する 〜 池上彰著『世界を変えた10冊の本』〜
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プレートテクトニクスのモデルをつかうと地球の様々な自然現象を短時間で統一的に理解することができます。

木村学・大木勇人著『プレートテクトニクス入門』(講談社)は、地球科学の基本モデルであるプレートテクトニクスについて一般の人むけに解説した入門書です。地球科学が発展してきた歴史を順をおって説明しているので読み物としてもおもしろいです。
 

目 次
1章 大陸移動説の成り立ち
2章 海洋底拡大説からプレートテクトニクスへ
3章 地球をつくる岩石のひみつ
4章 海嶺と海洋プレートのしくみ
5章 なぜ動くのか? マントル対流とスラブ
6章 沈み込み帯で陸ができるしくみ
7章 衝突する島弧と大陸のしくみ
8章 プレートテクトニクスと地震


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最近は、巨大地震や火山噴火の仕組みがテレビや新聞などで解説されるときに「プレート」という用語がかならずでてきます。

地球の表層は、硬い岩石の板がジグソーパズルのピースのように分かれて覆っており、その一つ一つをプレートとよぶ。

「テクトニクス」とは一般には構造を意味し、地球科学では地質構造や地殻変動のことをあらわします。

プレートテクトニクスは、大陸の移動、海洋底の拡大、岩石の形成、海溝や陸や高い山ができる仕組み、巨大地震、火山噴火などの実にさまざまな自然現象を統一的に説明することを可能にします。

またプレートはなぜうごくのかという疑問に対しては「プレートとマントルが全体として対流する」からであるとかんがえられています。

地球は内部に熱源をもち、表面にプレートという冷却システムをもつ一種のエンジンのように見立てることができる。

地球の内部から表層までを全体的にダイナミックにとらえることが重要です。

プレートテクトニクスは方法論的にいうと基本仮説でありモデルです。モデルは多種多量な情報を統合し、複雑な現象の本質を体系的に理解することを可能にします

体系的・直観的に物事を理解したり、ある分野を高速で学習するためにモデルが役立ちます。地球科学にかぎらずどの分野でもよくできたモデルがあるとおもいます。何かをまなぼうとおもったらよくできたモデルをさがしだして活用するとよいです。


▼ 引用文献
木村学・大木勇人著『図解 プレートテクトニクス入門』(ブルーバックス)講談社、2013年9月20日
図解 プレートテクトニクス入門 なぜ動くのか? 原理から学ぶ地球のからくり (ブルーバックス)


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自然をシステムとしてとらえると自然の構成と進化が理解できます。

F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(NHK出版)は、「自然・人類・文明」という壮大なテーマについて西洋の視点と東洋の視点から対論の形式で論じています。

目 次
I 自然
II 人類
III 文明
附論1 人間的価値の三つの起源
附論2 進化と突然変異
附論3 経済発展と日本文化

この世界というものは秩序のある世界である。(今西錦司)

地球上のすべての生物に社会をみとめることができます。生物的自然というのはそうした社会のつみかさなりであり、全体でひとつの「生物全体社会」、一つのまとまりのある構築物をつくっています。いいかえるならば生物的自然は一つのシステムであるということです。

この生物的自然は個体と種とから構成され、これら二つはいずれも実在して世界の構造に参加しています。

西洋人は、種の起源や進化をかんがえるときに、個体がもとになってそれから種というものができていくという見方をしますが、実際にはそうではなくて個体と種とは最初から同時に成立していて、どちらが先でもどちらが後でもありません。個体と種とは二にして一のものです。

また西洋人は、生存競争と適者生存つまり自然淘汰によって新種ができるとかんがえますが、種と種(種の社会と種の社会)とはおたがいに棲み分けていて、ほかのものの縄張りをおかしません。生物の進化は自然淘汰によっておこるのではなくて、進化とは変わるべくして変わるものであり、ひとつの歴史であるととらえることができます。進化は要因論で割りきれるものではありません。

本書は、1978年に京都でおこなわれた対論を収録したものです。西洋人のかんがえ方と比較しながら今西錦司あるいは東洋のかんがえ方を理解できる好著です。

今西錦司は「自然の進化は遺伝子や遺伝学だけで解けるようなものではない」と主張し、生物の行動をもっと追跡しろと指導しています。つまりフィールドワークをするようにということです。


▼ 引用文献
F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(NHKブックス)NHK出版、2014年11月25日
自然・人類・文明 (NHKブックス No.1224)

▼ 関連記事
自然をシステムとしてとらえる - F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(1)-
進化論的に人類をとらえなおす - F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(2)-
人類進化のモデルをつかって自然・人類・文明について理解をすすめる


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世界地図帳をつかうことによって、世界を概観したり地球を大観することが容易になります。

『世界の地図の歴史図鑑』(柊風舎)で解説している『世界の舞台』と『アトラス』の出版は地図の歴史における非常に大きな転換点となりました。わたしたち人類のグローバルな認識は『世界の舞台』と『アトラス』からはじまったといってよいでしょう。

ルネサンス時代の地図製作で注目すべき業績の1つは、世界地図帳であった。表紙をめくると世界が広がり、概観されていた。(122ページ)

1570年、アブラハム=オルテリウスは『世界の舞台』を出版しました。これは1冊の本のなかに世界を網羅した世界最初の世界地図帳であり、地球を容易に概観できる内容でした。

オルテリウスは地図の画家であり、水彩絵の具をつかって彩色をした地図をえがいていました。最初は、羊皮紙の巻物にえがいていたので、数点の地図を見くらべたいときには巻物をひらいて文鎮でおさえなければならずとても不便でした。そこで巻いたり ひらいたりといった問題を解消するために多数の地図を1冊の本に集大成しました。

この地図帳は大成功をおさめ、1724年までに89版以上、7300冊ほどが印刷され、地図の歴史における革命となりました。今でも2000冊が現存しています。


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一方1595年になると、メルカトルの『アトラス』が出版されました。

1569年、ゲラルドゥス=メルカトルは、あたらしい投影図法(今日メルカトル図法として知られている)をつかって世界図をつくりだしました。

メルカトルは1594年に死去しましたが、息子のルモルドが、彼の地図すべてを1巻にまとめて『アトラス』として出版しました。

『アトラス』は、オルテリウスの『世界の舞台』のような仰々しい美的装飾はほとんどなく、事実に即した地理的データを展示したような内容になっていました。この本も非常に大きな反響があり、数多くの版をかさねました。17世紀のオランダ人の「大アトラス」のひな型にもなりました。「アトラス」という書名は地図帳一般をさすようになったのでした。そして今日にいたるまで「アトラス」は、より正確により精密な地図帳へと発展していくことになります。


現代のわたしたちは、世界あるいは地球の全体象を容易にみることができます。そして今日、グローバル化はいちじるしくすすみ、どのような分野においてもグローバルな情勢をとらえることなしに問題を解決することはできなくなっています。グローバルな認識は問題を解決するための第1段階として必要です。

グローバルに課題をとらえるにはどうすればよいか。いかに地球を大観すればよいか。そのようなときに地図がとても役立ちます。


▼ 引用文献
ジョン=レニー=ショート著『世界の地図の歴史図鑑 岩に刻まれた地図からデジタルマップまで』柊風舎、2010年11月15日
ビジュアル版 世界の地図の歴史図鑑―岩に刻まれた地図からデジタルマップまで


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古今東西の地図の歴史をみると、空間あるいは地球の認識をどのように人類が拡大してきたかがわかります。

ジョン=レニー=ショート著『世界の地図の歴史図鑑 - 岩に刻まれた地図からデジタルマップまで』(柊風舎)は、先史時代の岩に刻まれた最古の地図から今日のデジタルマップまで古今東西の地図をあつめた地図の図鑑です。

地図は、文字の発明以前から人間社会にかかせない情報の伝達や記録の手段でした。アボリジニの砂絵、イスラーム世界の天文学的な地図、中世ヨーロッパの絵画のように美しい地図、戦争中の征服地図や戦略図、そして今日のデジタル地図にいたるまで、時代をうつしだすさまざまな地図を多数の図版とともにわかりやすく解説しています。

目 次
第1部 序
 1 地図のはじまり
 2 最古の地図

第2部 古代
 3 古代世界
 4 古典時代の地図

第3部 中世
 5 中世ヨーロッパの地図
 6 イスラームの地図
 7 中国と極東

第4部 探検時代のはじまり
 8 新世界における地図学の伝統
 9 新世界の地図
 10 ヨーロッパのルネサンス時代の地図
 11 国家の地図
 12 地図帳の作製者たち

第5部 植民地時代の地図製作
 13 大英帝国の地図製作
 14 地図作製をを鼓舞する啓蒙運動
 15 新国家の地図化
 16 地図学との出会い
 17 万国共通の地図化

第6部 現代世界の地図化
 18 主題図
 19 地図と権力
 20 現代社会の地図学


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最古の地図は岩にきざんだ地図でした。

実用のための地図づくりは、農業革命を人類がおこしたころからはじまりました。それは文明のはじまりでもありました。地図は、農地や灌漑システムの管理のために重要な道具であり、土地を統制することに役立ちました。

やがて帝国が台頭してくるとともに測量技術が発達し、帝国を管理するために地図は不可欠なものとなりました。

大航海時代になると、新大陸の探検と発見においても地図は重要な役割を演じました。地球上の空白地域を調査し記載するための道具として地図が必要でした。

ヨーロッパ人が海外の領土を占領するための不可欠な要素と地図はなりました。ヨーロッパ人に新世界は従属させられ、新世界の地図ができました。あたらしい帝国は支配する領土の地図をえがき、権利を主張しました。

そして世界地図ができあがりました。

そのご世界地図は精密化がすすみ、また地図の世界でも専門分化がおこってきて、現代では、さまざまな主題図がつくられるようになりました。地質図・気候図・天気図・路線図、そのた多数の主題図が作製されています。

今日は、人工衛星による観測によるマッピング、コンピューター・マッピング、地理情報システムの時代になり、地図の歴史もまったくあたらしい段階にはいりました。


本書の特色は、古今東西の地図を大量にあつめて図鑑にしたところにあります。それぞれの言語による解説は若干わかりにくい面もありますが、さまざまな地図をたくさん見ることに大きな意義があります。

私たち人類は地図をつくりながら世界あるいは地球の認識を拡大し、意識の空間(広がり)を大きくしてきました。本書でその歴史をふりかえってみると、わたしたちは今日、グローバル化・高度情報化への歴史的な大転換期に生きていることがよくわかります。


▼ 引用文献
ジョン=レニー=ショート著『世界の地図の歴史図鑑 岩に刻まれた地図からデジタルマップまで』柊風舎、2010年11月15日
ビジュアル版 世界の地図の歴史図鑑―岩に刻まれた地図からデジタルマップまで


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日本地質学会・構造地質部会編『日本の地質構造100選』(朝倉書店)は、日本国内の重要な露頭(岩石や地層が地表に露出している部分)のカラー写真集です。くわしい解説と正確な地図もでているので調査旅行ガイドとして有用です。

目 次
第1章 断層
第2章 活断層
第3章 断層岩
第4章 褶曲
第5章 小構造
第6章 メランジュなど

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地質構造は、きわめてゆっくりした大地の運動により数百万年から数千年かけて岩石が変形して形成されます。本書をみていると悠久の時のながれを感じることができます。

地学ファンや理科教師とくに地質学に興味のある人にとっては必見の書です。

本書の写真をみて興味のある露頭をみつけたら、そこに実際に行ってみるとよいでしょう。露頭の場所が地図上にしめされているので確実にたどりつけます。地学の旅をたのしむためのすぐれた案内書です。


▼ 引用文献
日本地質学会・構造地質部会編『日本の地質構造100選』朝倉書店、2012年5月20日
日本の地質構造100選



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生命は、自分の体の内と外とのあいだで物質やエネルギーなどのやりとりをしながら生きています。

『やさしくわかる生命の科学』(Newton別冊/ニュートンプレス)は「生命とは何か?」という大きなな課題に現代の科学者がどのようにいどみ、何をかんがえているかをわかりやすく解説しています。過去の『Newton』誌上に掲載された記事をまとめたものです。

生命は、多くの謎に今なおつつまれています。生命についてはわからないことがまだたくさんあります。生命と非生命の境界についてさえも科学者のあいだで見解がわかれています。

目 次
プロローグ 生命をめぐる疑問
1 生命の共通点
2 ウィルス
3 生命の誕生
4 生物の進化
5 “生きている”とは何か
6 生命の最先端研究
7 地球外生命
エピローグ 研究者が語る“生命とは何か”


地球上の生物はつぎの3つのグループ(ドメイン)にわけられます。これらは共通の祖先から分化しました。
 
(1)細菌
(2)古細菌
(3)真核生物
   ・原生生物(ゾウリムシやアメーバなどの単細胞生物)
   ・菌類(カビやキノコの仲間)
   ・植物
   ・動物


これらの生物に共通する特徴としては以下のことがあります。
  • 刺激に応答する。
  • 外から栄養をとる。
  • 内と外との区別がある。
  • 自分と同じ姿をしたものがふえる。

周囲の刺激に応答しながら生きていることはすべての生物に共通する特徴です。またすべての生物は生きるために外から栄養をとりいれ、エネルギーを体内でつくったり体を構成する材料にしています。このような体内における一連の化学反応のことを「代謝」とよびます。そして、不要な物質は外に排出しています。

このような生物のすべては細胞を基本単位としてできています。生物の体内では細胞の誕生と死がたえずおきていて、細胞の誕生と死のバランスによって生命体は維持されています(注1)。

地球上における最初の生命の誕生に関しては、「生命は RNA からはじまった?」と「生命はタンパク質かがらはじまった?」という仮説が紹介されています。「RNA」(リボザイム)は化学反応を促進する装置としてはたらくものです。

また進化とは、分子レベルでみれば、生命の設計図であるゲノムが世代をへるにつれて書きかえられていくことです。

生命は、外部とのあいだにエネルギーや物質のやりとりをもっているので、その秩序だった構造を維持することができています。逆にやりとりがない場合には、エントロピー増大の法則にしたがって時間とともに秩序だった構造は崩壊していくことになります。

以上の生命の特徴を模式的にあらわすと下図のようになります。

151031 生命
図 生命のモデル
 
 
生命がおこなっている内と外とのあいだのやりとりに注目することはとても大事なことです(注2)。本書は読み物としてもとてもおもしろいです。類書の『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊、注3)とあわせて読むと生命科学についての理解が一段とすすむでしょう。



▼ 引用文献
『やさしくわかる生命の科学』(Newton別冊)ニュートンプレス、2014年8月15日
やさしくわかる生命の科学―生命と非生命の境界,最初の生命,進化,生命創生など (ニュートンムック Newton別冊)

▼ 注1
あたらしい細胞をつくる方法は「細胞分裂」です。一方、細胞が死ぬしくみは「アポトーシス」(自死)と「ネクローシス」(事故死や病死)です。「ネクローシス」とは、やけどや酸素不足、病原体によるダメージによって細胞が死ぬことです。

▼ 注2
刺激・物質・エネルギーが生命の内部に外からはいってきます。刺激は情報といいかえてもよいです。生命の内部では情報の処理と代謝がおこります。そして生命は運動や行動、不要物質の排出をします。人類の場合は話したり書いたりもします。これは応答するということです。

このようなプロセスは、<インプット→プロセシング→アウトプット>といってもよいです。整理するとつぎのようになります。
 インプット:刺激・物質・エネルギーが生命の中にはいってくる。
 プロセシング:情報処理・代謝。
 アウトプット:運動・行動・排出する。

▼ 注3
田沼靖一(監修・執筆)『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊)、ニュートンプレス、2013年7月15日

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