発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:取材法

グーグルが無料で提供するサービスのひとつ“Google Earth”画像を通して、自然を見る目、地球を見る目をやしなうための事例集です。

書名は『地球の歴史』となっていますが、地学の専門書でななく、一般向けのわかりやすい本です。Google Earth でとらえたそれぞれの画像に対してていねいな説明文がついていて、Google Earth 画像を見ながら理解をふかめられます。内容は次のとおりです。

1 自然をみる
2 災害をみる
3 地球史をみる

ドイツの町・ネルトリンゲンのクレーターやエジプト王家の谷も掲載されていて興味深いです。

このような「鳥瞰映像」を手に入れるためには、以前は、高い山に行くとか飛行機から見たりすることにかぎられていましたが、Google Earth が開発されたことによって「鳥瞰映像」が簡単に手に入るようになりました。 Google Earth をつかえば上空から擬似的に地球をながめられ、空中散歩が自由にできます

たとえば、書物を読んだり見たりしたとき、その場所を、Google Earth をつかって鳥瞰的にも確認すれば、理解がふかまるだけでなく記憶も鮮明に綿密になります。アイデアもでやすくなるでしょう。

かつて旅行などをして実体験をした場所についても、Google Earth によってより大きな視点から見なおし、とらえなおすことにより、体験をさらにふかめる効果が生じます。鳥瞰映像と実体験とをくみあわせることにより、中身のある全体像を構築することができるのです。

このようにして、Google Earth をくりかえしながめて、全体像を心のなかにいれていく作業をつづけていけば、やがて、地球全体が心のなかに入ってきます。

本書の事例を参考にして、Google Earth を折にふれてつかいこんでいくのがよいでしょう。


文献: 後藤 和久著『Google Earth でみる地球の歴史』(岩波科学ライブラリー149)岩波書店、2008年10月7日

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本書は、国立民族学博物館初代館長・梅棹忠夫が撮影した写真(一部スケッチ)と、彼が書いた文章とをくみあわせてフィールドワークのすすめかたの要点をつかむための事例集です。

本書を見れば、梅棹忠夫がのこした写真と言葉から、世界を知的にとらえるためのヒントを得ることができます。

本書は次の8章からなっています。

第1章 スケッチの時代
第2章 1955年 京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊
第3章 1957-58年 大阪市立大学第一次東南アジア学術調査隊、1961-62年第二次大阪市立大学第二次東南アジア学術調査隊
第4章 日本探検
第5章 1963-64年 京都大学アフリカ学術調査隊、1968年 京都大学 大サハラ学術探検隊
第6章 ヨーロッパ
第7章 中国とモンゴル
第8章 山をみる旅

梅棹忠夫は、「あるきながら、かんがえる」を実践したフィールドワーカーであり、彼が、世界をどのように見、どのような調査をしていたのか、それを視覚的・言語的に知ることができます。

本書の特色は、写真と文章とがそれぞれ1セットになっていて、イメージと言語とを統合させながら理解をすすめることができる点にあります。知性は、イメージ能力と言語能力の二本立てで健全にはたらきます

イメージ能力をつかわずに言語能力だけで情報処理をすすめていると効果があがりません。学校教育では言語能力を主としてもちいてきましたが、これはかなりかたよった方法であり、すべてを言語を通して処理しようとしていると、大量の情報が入ってきたときにすぐに頭がつまってしまいます。

そこでイメージ能力をきたえることにより、たくさんの情報がインプットでき情報処理がすすみます。そのような意味で、写真撮影はイメージ能力を高め、視覚空間をつかった情報処理能力を活性化させるために有効です

写真は、言語よりもはるかにたくさんの情報をたくわえることができます。たとえば写真を一分間見て、目を閉じて見たものをおもいだしてみてください。実にたくさんの情報を想起することができます。あとからでも写真をみてあらたな発見をすることもあります。

こうして、写真と言語の両方で記録をとっていると、イメージ能力と言語能力とを統合することで相乗効果が生じ、視覚空間と言語空間は融合していきます

現代では、ブログやフェイスブックやツイッターなどをつかって、写真と言語とをくみあわせてアウトプットすることが簡単にできます。旅行やフィールドワークに行って、ブログやフェイスブックなどにそのときの様子をアップするときには上記のことをつよく意識して、梅棹流の形式で表現してゆけばよいでしょう。


文献:梅棹忠夫著『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界のあるきかた』勉誠出版、2011年5月31日

この年表は、宇宙の誕生から現在までの138億年の歴史を、倍率のちがう10個の「レンズ」を通して理解するための資料です。

縮尺のことなる10本の年代軸を「レンズ」とよびそれぞれの時間スケールで見たときにあらわれる重要なイベントが10本の年表にしめされています

ポイントをピックアップします。
年表の年代軸は左から右に若くなり、いずれも右端が現在になる。

150億年、50億年、6億年、7000万年、600万年、100万年、20万年、2万年、2000年、200年と縮尺のことなる10本の年代軸(レンズ)を用意している。

1つの年表における右端の部分についてレンズを1つ拡大したものが、下の年表になっている。

いくつかの年表では、気温や酸素濃度、海水準などの変動曲線もあわせて示し、その時代にどのような環境変動があったのか、視覚的に理解できるようにしている。

この年表を活用して、「時空を自在に飛ぶ感覚を、ぜひ味わっていただけたらと思う

本書が、宇宙の誕生から現在までのシームレスな地球史を認識する手助けとなり、われわれ地球人が進む未来像を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。

慣れてきたら、ぜひレンズ11として「自分史・家族史」を作ってもらいたい。われわれの人生も地球の歴史の一部であり、そして、現在がこれからの未来へつながる位置にあることを実感できるはずである。


レンズ1:宇宙史(150億年前〜現在)
138億年前、無からの猛烈な体積膨張「インフレーション」で宇宙の歴史ははじまった。

レンズ2:地球史(50億年前〜現在)
45億5000万年前に地球の核ができる。最古の生物化石は35億年のものである。

レンズ3:顕生代(6億年前〜現在)
5億3000万年前におこった「カンブリア大爆発」により生物は大型化した。

レンズ4:新生代(7000万年前〜現在)
グリーンハウス(温室世界)からアイスハウス(氷室世界)へ徐々に気候が寒冷化する時代である。

レンズ5:人類時代(600万年前〜現在)
440万年前にラミダス猿人、350万年前に二足歩行、人類が進化する。

レンズ6: 氷河時代(100万年前〜現在)
地球規模の寒冷化が顕著になる。

レンズ7:最終氷期(20万年前〜現在)
19万5000年前、ホモ・サピエンスが出現する。

レンズ8:先史・文明時代(2万年前〜現在)
1万6500年前、縄文時代が始まる。

レンズ9:歴史時代(2000年前〜現在)
375年、大和政権が成立する。

レンズ10:近現代(200年前〜現在)
産業革命がおこる。2度の世界大戦がおこる。

この資料は、時間スケールのことなる10本の年表を同時に一覧できることに最大の特色があります。この「スーパー年表」を見ると、レンズ(時間スケール)のとり方によって、歴史の見え方ががらりとことなってくることがよくわかります。

これは、空間的な見方と対比するとおもしろいです。空間スケールのとり方によっても世界の見え方はかなりちがってきます。たとえば、地表から地上を見る、高い塔から地上を見る、高い山から見る、人工衛星から見る、月から地球を見るなど、空間的な視点を変えると見える範囲・精度は変わってきます。レンズの倍率によって見える世界はことなるわけです

このような、空間的な視点・スケールを変えて見ることは比較的やりやすかったのですが、一方の時間的なスケールを変えて見るという見方は今まではむずかしかったです。多くの人々の場合、上記のなかの「歴史時代」あるいは「近現代」ぐらいしか視野に入っていない状況ではないでしょうか。

そのような意味で、「空間レンズ」ならぬ「時間レンズ」を提供するこの「スーパー年表」は画期的であり、このような時間スケールごとに複数の年表を対比・一覧できる資料は今まではなかったです。

この「スーパー年表」を見ていると、人間の存在が、宇宙空間のなかで小さな存在であるばかりでなく、時間的歴史的にも小さな存在であることがとてもよくわかります。

まずは、この「スーパー年表」を活用して10種類の時間「レンズ」を身につけるのがよいでしょう。

そして、それぞれの「レンズ」(時間スケール)で歴史をとらえなおし、それぞれの「レンズ」を通して見える歴史イベントを想像(イメージ)してみるとよいでしょう。どこまで想像できるでしょうか。歴史とは想像するものです。よく想像できない場合は本書の解説書をみたり、インターネットで検索したりして理解をふかめることが大切です。

このようにして、時間を自在にとびながらイメージ訓練をしていると、今までの固定した見方から脱却でき、さまざまな観点からしかも重層的な見方ができるようになり、あらたな発想も生まれやすくなります。


文献:清川昌一・伊藤孝・池原実・尾上哲治著『地球全史スーパー年表』岩波書店、2014年2月18日



自分の行ったことのない世界、常識とはちがう異空間について知ることは、自分の心をひろげ、また、潜在意識にインパクトをあたえることができるのでとても意味のあることです。


この本を書いた趣旨には、ひとつ大切なものがある。野外における人間科学の研究法について、ひとつの伝統をつくりあげようという試みである

この本は、「遠征 その人間的記録」ともいうべきものである。あるいは、「ある探検隊の生態」なのである。

私たち隊員たちは何度も、テープレコーダーを前にして経験を語りあった。それらを、できるだけ編集したのが、この本である。

この探検隊の体験が基になり、『パーティー学』とう小著が生まれ、その縁で『チームワーク』『発想法』『続・発想法』が生まれ、「KJ法」が生まれ、「移動大学」という事業が生まれたのである。他方、この探検隊のご縁がヒマラヤの技術援助へと展開してきている。

出かけた地方は、ヒマラヤでもっとも山奥の、ドーラギリ(ダウラギリ)峰北方の高原であった。そこで私たちは、チベット人のなかでかなり長いあいだ暮らしたのである。これらのチベット人は、同じチベット人たちのなかでも、とりわけ未開な人びとだった。だた、これほど感銘の深かった日々を私たちは一生のうちに、そう何度も味わうことはできないだろう

ネパール北部のトルボ地方に学術探検をおこなう夢は、私が1953年に、マナスル登山隊の科学班の一員として中部ネパールを歩いてもどったころからである。前回の経験以来、私はチベット人の住む世界にひじょうな魅力を感じはじめていた。

ポカラ。この町が将来、世界屈指の山岳観光都市としてモダーンな発展をみるほど、ますます洗練した形で保存さるべきものだ。

もちろん技術援助は重要だ。けれど、各国が競争で、この国に技術援助や、資金援助をしているじゃないか。

タカリーはわずかに人口1万人にもみたないほどの少数民族である。しかも、こんなヒマラヤの大山奥に住む人々である。それだのに、彼らの身につけた文化は、すこし環境を改善するならば、西欧の近代的な資本主義社会のなかに投げこんでも、ちっとも不調和を感じさせないほどのものであろう。

ツァルカ村についた!

何ヵ月も準備し、二ヵ月も旅してたどりついた、その村だったのか。ポカラを出てから25日目、トゥクチェからでも2週間の旅であった。

ツァルカ村は、まるで大海のなかに浮かぶ一かけらの孤島のように思われた。

村は、海抜じつに4150メートルの高所にあった。全ヒマラヤを通じて、おそらく最高所の農耕地帯であった。こんな高度には、春まきオオムギの単作地帯のみが現れる。

チベット人たちは、生まれてから風呂にはいったこともなく、いわんや洗面などはしない。毎朝、村の下の支流まで降りていって、葉をみがいたり、顔を洗ったり、ヒゲをそったりするのは、われわれだけであった。

しかし、私たちがいるために、「文化変化」が起こりだしたのであった。
「すまないが、石鹸を一度使わせてくれない?」
「ヒゲをそりたいから安全カミソリを貸してくれ」

手はじめとして、彼らの家系図をつくる。詳細な村の地図をつくる。

家畜はヤク、羊、山羊だった。これらの家畜からバターやチーズをつくり、ヤクの毛や羊毛をつみ、皮を利用し、燃料を得る。また、増殖した家畜自体が商品ともなっている。

これに反して、畑はかぎられていて、村人の自給用の食物にもたりない。村は畜産を主とし、農耕をむしろ従とするのであった。

それから、チベット人のすべてに浸透している商業活動がある。
 
この村には共同体的結束がある。その反面、村人のあいだにはひじょうな個人主義がある。

鳥葬

死体を刻んで鳥にあたえる葬り方。こんな奇妙な風習が、チベット人のあいだにある

チベット人の葬り方に四種類あることをきいた。火葬、鳥葬、水葬、土葬である。水葬は、死体を川の中に投げこむものだ。

「人が死ぬと、魂はすぐ死体を去って、川のほとりや丘のうえなど、いたるところをさまようのです」

「土葬は、悪い病気で死んだときにおこなうものです。火葬をすると、天にいます神様がくさがるので、ふつうにはおこなわないのです」

刀で死体をバラバラにする。岩で頭蓋骨を砕く。鳥がたべやすいようにという積極的配慮は、この頭蓋骨の粉砕によって明白に証明された。

空を見上げると、いったいいつのまに集まったのであろう。ついさっきまでは一羽くらい飛んでいたような気もしたのだが、いまや十数羽の巨大なハゲワシが、大空をぐるぐると輪舞している。村人たちがチャングゥと呼んでいる鳥だ。

ハゲワシは、まるでジェット戦闘機を思わせるシュッというものすごい羽音とともに、一機また一機と地上に着陸してきた。

翌日。背骨ひとつを残して、そこにはなにもなかった


わたしは学生のころ本書をよんで鳥葬の存在を知ってとてもおどろきました。ヒマラヤには自分の知らない世界がある。是非いってみたいとおもいました。

本書は、現地で記録をとるとともに、帰国後に隊員に自由にかたってもらった結果をあわせて「KJ法」をつかって編集し文章化したものです。「KJ法」をつかうと総合力で一本の紀行が表現でき、 探検隊のメンバーが一体化して、あたかもそこに一人の人格や個性があるかのようになってきます。

また、現地ではあちこち移動しまくるよりも、一カ所になるべくながく滞在した方が体験がふかまることもおしえてくれています。

旅行やフィールドワークにみずから出かけることも大切ですが、このような紀行文を読むことによって、普段とはちがう異空間を自由に想像してみることも重要です。古今東西の紀行はこのような観点からも大いに活用していきたいものです。



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ネパール王国探検記―日本人世界の屋根を行く (1957年) (カッパ・ブックス)

ネパール王国探検記 (講談社文庫)

フィールドワークの記録をいかに書くか、『ネパール王国探検記』はそれを知るための原点となる非常に重要な本です。

1953年、ヒマラヤの巨峰マナスル登山隊の科学班の一員であった川喜田二郎は、ネパール王国に約半年間にわたって滞在し、ヒマラヤ山麓を踏査しました。本書はそのときの学術探検記です。おもに文化人類学的視点から当時のネパールの様子を詳細に記録しています。

川喜田が参加したのはマナスル第一次登山隊、この隊は、13名からなる登山班のほかに2名からなる科学班がつくられ、川喜田はこの科学班のメンバーでした。


ネパールの首府カトマンズはロマンチックな町だった。まず驚かされるのは、お寺の多いこと。まるでお寺で埋まっているかと思うばかりだ。見慣れないヒンズー教のもののほかに、日本の寺院建築から受ける印象と通じる木造のものが少なくない。

カトマンズを発って5日目のことだった。私たちのコースは、海抜1300メートル以上もある「ネパール谷」の盆地から、いったんは海抜2000メートル以上のカカニ丘を越え、それから一挙に亜熱帯の谷間へくだっていたのである。

われわれの歩んできた道、それはカトマンズとポカラとを結んで東西に走る、いわばネパールの東海道だ。

ヒンズー教の人生観が支配しているらしい亜熱帯では、同時にカースト制度の社会ができあがっているらしい。カースト制度というのは、インドの社会を支配する有名な階級制度である。それぞれの階級をなすカーストは、ほかのカーストとは絶対結婚しないといわれる。上級のカーストの者はとりわけ下級のカーストの者を不浄扱いし、ばあいによっては、体に触れることも厳禁する。各カーストには、それぞれ職分というものがあり、ほかの職業を自由にえらぶことができない。

カリ・ガンダキ。この大河は、はるかなチベット高原に源を発し、やがて、世界屈指の2巨峰 -ドーラギリとアンナプルナ- の間で大ヒマラヤを真っ二つに断ち割り、氷河の水をあつめつつさらに南へ、亜熱帯の世界へと休みない旅を続けている。

カリ・ガンダキ上流に位置するトゥクチェ。ここでくらすタカリー族の富裕階級は、高等教育を受けさせるために、自分の子弟ををインドの大学に送っていて、私が訪れた当時にはすでに、パナレス大学を卒業したマスター・オブ・アーツが一人生まれていた。

トゥクチェを過ぎると、峡谷はしだいに打ちひらけていく。いつのまにか私たちはすっかり様子のちがった世界に来ていたのだ。それは高原と砂漠の国である。たった数日行程のうちに、なんという変わりようだったろう。ここはチベット人の世界である。

チベット人の世界にふみこんでから、いちばん目につくもののひとつはおびただしいチョルテン(仏舎利塔)である。

チベット人がくらすカルチェ村にすみこんで。いたるところに牧場があった。耕作地がおしまいになっているところよりずっと上の方まで。

死体を粗末にするチベット人は、死体の霊魂のゆくえについては、どうやら非常に関心を抱いているらしい。この村では、人が死ぬとラマは彼の霊の死後の運命を占うのである。

愛することも厳しく、憎むことも徹底している。喜びにつけ悲しみにつけ、チベットの空のように鮮烈で深い。

純粋に遊牧的な生活をするチベット人にくらべて、半農半牧で定住生活をする農耕チベット人のほうに一妻多夫の割合が多いのは、定住生活のために財産をたくわえる見込みが多いためである。そのため、家産を分割すると不利になる事態が、いっそう頻繁に起こるからであろう。

熱帯の悪疫の流行する風土が教えた、衛生学的な経験の知恵と、それとむすびついて発展した心理的な物差しが、カースト社会の形成にたいして、ひとつの必要条件を与えてはいなであろうか。

私はまず、ノートに書き付けた記録を、片っ端から一枚ずつのカードに分解して書き写してゆく。カードの上端に、内容を一行で簡潔にあらわしたキャッチ・フレーズを書きこむ。

カードをバラバラ見ながら、思いつくままに、さらに小分けの項目を紙きれにひとつずつ書く。それから、そのメモを書きつけた紙きれを、机の上いっぱいに並べて、ああでもない、こうでもない、と思いながら順序だてる。それがすむと、それにしたがって、原稿を書き下ろすための第何章第何節というプログラムをつくる。そのプログラムどおりにカードを並べる。カードをくくりながら原稿書きにかかる

人間というものは、表現してみなければ知識が身につかないものである。

ヒマラヤに住む人びとの映像がだんだんはっきりした形をとってきた。

紀行の形を借りて説いたフィールドワークの方法論への執着は、ついにKJ法となり、『発想法』『続・発想法』という諸著作へと展開してきたのである。


本書は、今から61年前におこなわれたネパール王国のフィールドワークのようすを紀行として記録するとともに、最終章では、ヒンズー文化・チベット文化・漢文化について、比較しながらそれぞれを考察をしています。

本書には、体験記録と方法論の二重構造が存在します。ひとつは、当時のネパール王国を知る貴重な記録であり、もうひとつはフィールドワーク方法論です。

フィールドワークとKJ法、情報処理の仕方についてまなぶうえで、本書は大いに参考になります。


東京・上野では、毎年春に「東京春祭」(東京・春・音楽祭)が開催されていて今年で10周年をむかえました。

この音楽祭は、企画がおもしろくてプログラムが多彩であるばかりでなく、そのウェブサイトがとてもすぐれています。具体的には知りませんが、全体を企画・コーディネートしている人がすぐれていることが想像できます。

ウェブサイトをみて演奏会を選択できるだけではなく、それぞれの演奏会の楽曲や演奏者に関する豊富な情報が手に入ります。そこで、

 1)演奏会にいくまえに、ウェブサイトをざっとみて
 2)演奏会場で生演奏をき
 3)帰宅後、ウェブサイトを再度 視聴すると、

格段に味わいが増して理解がすすみ体験もふかまります。

高度情報化社会をむかえた今日、何らかのイベントを開催するときに、事前と事後にウェブサイトで適切な情報を聴衆・観衆につたえることが重要になりました。このような「ガイドサイト」の重要性が増してきています。 

よくできた「ガイドサイト」があれば、現場でのナマの体験とガイドでの解説とを組み合わせて理解をふかめることができます。

イベントは、その場でよいものを見せれればよいというだけではなく、よくできたウェブサイトをつくり、アウトラインや要点、トピックス、専門的な解説などの情報を適切に提供できるかどうかもその成否をわけるポイントになってきました。主催者には、イベントそのものを成功させるだけでなく、よくできた「ガイドサイト」をつくりだす能力ももとめられています。演奏会だけではなく展覧会などでも同様です。

▼東京春祭(東京・春・音楽祭)のウェブサイトはこちらです

本書では、取材法・取材学について解説しています。

取材法・取材学にとりくむにあたっても、取材活動の全体がひとつの情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)になっていることに気がつくことが重要です。ここに、取材法(フィールドワーク)を体系化する原理があります。

つまりつぎのとおりです。

 野外観察や聞き取り:インプット
 情報の選択・要約・編集など:プロセシング
 記録をつける:アウトプット

情報処理の観点から、取材法やフィールドワークをとらえなおすことには大きな意味があります。

本書の中心である、第2章「探検の方法」から「探検の五原則」と、第3章「野外観察とその記録法」から取材法の要点を書きだしておきます。

・探検の五原則
「探検の五原則」とは取材ネットの打ち方に関する原則である。テーマをめぐり、以下の原則にしたがってデータを集めよということである。
 
 (1)360度の視覚から
 (2)飛び石づたいに
 (3)ハプニングを逸せず
 (4)なんだか気にかかることを
 (5)定性的にとらえよ

・個体識別
 個々の現場に臨んだら、個体(もしくは個々のことがら)となるひとくぎりのものごとを発見する。これを「個体識別」とよぶ。ハッと思う個々のものごとにはなんでも注視の姿勢をとる。

・座標軸的知識
 個々のものごとのあいだにありそうな関係を枚挙してみる。その関係を観察したりたずねてみる。こうして「座標軸的知識」を構築する。

・点メモ
 観察した事柄について、点々と簡略化した記録をつけていく。これを「点メモ」とよぶ。この時点では完璧な記録をとる必要はまったくない。ハッと気づいたとき、すぐ「点メモ」するのが修業の根本である。

・ラクガキ
 簡単な絵にした方がわかりやすいときは絵をかいておく。これを「ラクガキ」とよぶ。

・その場の記録
「点メモ」と「ラクガキ」は野帳とかフィールドノートに記入する。これを「その場の記録」とよぶ。

・データカード(まとめの記録)
 永年保存ができ、しかも関係者で共有できるようにするために、今度は「データカード」に完全な文章としてデータを記入する。一単位のことがらにつき一枚の「データカード」にする。各カードに一行見出しをつける。

・データバンク
 データカードをファイルし「データバンク」をつくる。

情報処理の観点から上記を整理するとつぎのようになります。

 インプット:野外観察(個体識別など)。
 プロセシング:情報の選択、要約、座標軸的知識形成など。
 アウトプット:点メモ、ラクガキ、データカード、データバンク。

野外観察は、外部の情報を心のなかに入れることですからインプットに相当します。

インプットされた情報はその人の心の中で選択され、要約、編集されます。これはプロセシングです。

そして、「点メモ」などを書くことは、心の中にいったん入った情報をノートなどに書き出すことであり、これはアウトプットになります。

そもそも、何をメモするか、その時点で、情報を選択するという(あるいは情報を評価するという)、その人独自の情報処理がなされています。おなじものを見ても、メモをする事柄が人によってちがってくるのは、情報処理の仕方が人によってちがうからです。

本書で論じている取材法・取材学では、情報処理のプロセスの中で、観察・聞き取りなどインプットに重点がおかれています。一方、川喜田二郎が創案した「KJ法」はプロセシングに重点がおかれています。したがって、取材法(フィールドワーク)と「KJ法」は相互補完の関係にあります

また、情報処理の第3場面のアウトプットの典型は文章化であり、たとえば、本多勝一さんの「日本語の作文技術」などを練習すればアウトプットも強化され、情報処理の3場面がバランスよく実践できるようになります。

なお、「データカード」「データバンク」は、現代では、紙のファイルはつかわず、パソコンやブログをつかいます。たとえば、1件1記事の原則でブログ記事を書き、それぞれに見出しをつけて蓄積していけば、「データバンク」が自動的に形成され、検索も簡単にできるようになります。1記事がデータカードに相当します。ブログにはさまざまな機能が付属していて、情報活用のために大変便利です。あるいはフェイスブックやツイッターをつかうのもよいでしょう。


文献:川喜田二郎著『「知」の探検学』(講談社現代新書)講談社、1977年4月20日

 

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関連ブログ:
イメージ化により情報を処理する 〜川喜田二郎著『KJ法』〜
わかりやすい日本語を書くために 〜レビュー:本多勝一著『日本語の作文技術』〜
読点を完璧につかいこなす - 前著の応用・実戦編 - 〜レビュー:本多勝一著『実戦・日本語の作文技術』〜 

iCloud(アイクラウド)の機能を徹底的に解説した入門書です。iCloud をつかえば、iPhone や iPad を Mac や Windows と簡単に連携することができます。本書をよめば iCloud をすぐにつかいこなせるようになります。

iCloud をつかうと、写真や連絡先・メール・カレンダーなどの各種ファイル同期したり、iOS のバックアップが簡単にできます。Mac でも Windows でもつかえ、iPhone から iCloud の設定をおこなえばすぐに利用可能となります。

くわしくは本書をご覧いただければわかりますが、ここでは、「フォトストリーム」についてのみのべておきます。フォトストリームをつかうと ことなるデバイス間で撮影した写真を同期したり共有でき大変便利です。

いわゆる写真だけではなく、メモや書類を iPhone や iPad で撮影しておけば、自分は何もしなくても自動的にほかのデバイスでもすぐに利用できるようになります。Mac の iPhoto をつかっている方は写真やメモが自動的に保存され便利です。

「最速メモ」のようなメモアプリをつかえば、iPhone や iPad で書いた手書きメモが Mac に自動的に同期され活用できるになります。

iCloud にはほかにも役立つ機能が満載です。


文献:『iCloud徹底活用マニュアル』英和出版社、2013年12月25日
 
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問題解決にとりくむとき、ひとつの課題が決まったら、それに関して情報を収集し、認識をふかめなければなりません。そのときつぎの3段階を踏むと効果的です。

第1段階:大局( 全体)をみる
第2段階:局所( 部分)をほりさげる
第3段階:イメージをふくらませる


たとえばわたしは、地学の調査・研究を長年やっていて、そのときの基本的なやり方はつぎのとおりでした。

(1)平面的に、できるだけひろく地表を調査します。
(2)ここぞという地点を選択して、ボーリング調査をし、垂直方向のデータをあつめます。
(3)(1)と(2)のデータをくみあわせて、全体構造のイメージをふくらませます。

(1)では、幅広く全体的に調査し平面的なデータをあつめます

それに対して(2)では、狭く深く調査して垂直的なデータをあつめます。地学ではボーリングという手法が有効ですが、どこでボーリングをするか、その地点の選択が非常に重要です。あちこちでやみくもにボーリングをすることは物理的にも予算的にも不可能ですし意味もありません。ここぞという地点をいかにうまく選択するか、課題を追求するうえでの急所ともいうべき地点を選択するのが理想です。

(3)では、(1)と(2)の情報をくみあわせて、見えないところは想像してみます。立体空間のなかで構造をイメージしてみると、その地域をおおきな場として、空間的構造的に一気にとらえられるようになります。さらに、その場の歴史や原理までもわかってくることがあります。


また、たとえば、地球について理解をふかめようとおもったら、

(1)地球儀、Google Earth、インターネット、概説書などで地球の全体状況を見て、地球の大局をつかみます

(2)ここぞという地点を選択し、実際にそこに行ってみてしらべてみます

(3)(1)と(2)の情報をくみあわせて、地球に関するイメージをふくらませます

(2)において、ここぞという地点としてどこを選択するか、どこへ行くか、おなじ地球上にすんでいても、課題によって人によって大きくことなってきます。わたしの場合はヒマラヤを選択しました。この例では、(2)の行為は、旅行とかフィールドワークとよばれます。


以上のように、「大局局所想像」という三段階は、課題を追求し認識をふかめるためにとても有効です。とくに第2段階における局所の選択について意識してみるとよいでしょう。

本書は、「移動大学」という特殊な挑戦を通して、フィールドワークやチームワーク、さらに文明の改善についてのべています。

「移動大学」とは、テントでのキャンプ生活をしながら、フィールドワークと「KJ法」にとりくむ2週間のセッションです。わたしは2回参加しました。

「移動大学」の特色は、そのユニークなキャンパス編成にあります。

まず、6人があつまって1チームをつくります。つぎに、チームが6つあつまって1ユニットをつくります。1ユニットは36人になります。そして、ユニットが3つあつまって全キャンパスになり、その定員は108人になります。

このようにして、個人レベル小集団レベルシステムレベルという3つのレベルがキャンパス編成のなかにおりこまれています。

「移動大学」はどのような経緯ではじまったのでしょうか。要点はつぎのとおりです。

1968~69年、大学紛争が全国的に荒れ狂った。この問題にとりくんだ結果、これは大学問題というよりももっと根のふかい文明の体質の問題であることがわかり、それを根本的に解決しなければならないということになる。その問題とは、環境公害・精神公害・組織公害の3公害である。

文明の体質改善という問題に最も役立つような事業は何かという問いから「移動大学」という構想がうまれた。「移動大学」は、文明への根本的反省からスタートしたのである。そのキャッチフレーズは「参画社会を創れ」である。

2週間のセッションでは、フィールドワークと「KJ法」にとりくみます。「KJ法」とは、移動大学創始者の川喜田二郎が考案した総合的な問題解決手法です。

問題の現場に実際に行ってみることは重要なことである。フィールドワークは「探検の5原則」に基づいておこなう。

1)テーマをめぐって360度の角度から取材せよ
2)飛び石伝いに取材せよ
3)ハプニングを逸するな
4)なんだか気にかかることを
5)定性的に取材せよ

「探検の5原則」に基づき、「点メモ」→「花火日報」→「データカード」→「データバンク」といった技術をつかって、フィールドワークからデータの共同利用、チームワークを実践し、あつまったデータは「KJ法」でくみたて、問題解決に取り組む。

「移動大学」の実践から、川喜田はつぎのことを協調しています。

「移動大学」は、問題解決にとりくむひとつの広場であり、この広場の中で、いきいきとした人間らしさ、春暖のもえる姿をまのあたりにした。

現代社会では、「個人レベル」と「システムレベル」はあるのだが、生身の個性的な人間がヤリトリする「小集団レベル」が消滅している。今日、「小集団レベル」が生かされる広場が求められている。「移動大学」のように、ハードウェア・ソフトウェア・研修が三位一体的に活用されたとき、広場は立派に広場の用をなす。

こうして、仕組みさえきちんとつくれば、ひとつの「小集団」が一体になって問題を解決し、創造性を生みだすことは可能であるとかんがえているわけです。「小集団」がつくりだず場が「ひろば」です。

ここでは、その「ひろば」自体が、ひとつの場として、まるでひとつの生命であるかのように活動し、創造性を発揮し、創造をしていくのです。これは、創造という目的のために、創造のためのひろばをまずはつくってみようということではありません。その場それ自体に創造性が生じるのです。

本書の書名が「創造のひろば」ではなく、「ひろばの創造」となっている点に注目しなければなりません。


文献:川喜田二郎著『ひろばの創造 -移動大学の実験-』(中公新書)中央公論社、1977年5月25日
 

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国立科学博物館の企画展「ダーウィンフィンチ -ガラパゴス諸島で進化を続ける鳥-」をみました。

ダーウィンフィンチは、南米沖のガラパゴス諸島とその北方ココ島にのみに生息する小型の鳥類であり、そのクチバシのちがいが進化をしめす具体例として知られています。本展では、アメリカ自然史博物館からかりうけたダーウィンフィンチの貴重な研究用剥製を展示してそれを解説しています。チャールズ=ダーウィンはこの鳥から進化論の着想を得たといわれています。

ダーウィンフィンチ類は、ホオジロ類の仲間であるフウキンチョウ科の鳥が200〜300万年前にガラパゴス諸島にたどりつき、昆虫食・花蜜食・種子食・雑食の食性に適応して、クチバシの形状が大きく異なる15種もの多様な種に分化しました。

国立科学博物館の解説によりますと、15種のダーウィンフィンチは以下の7つのグループ(亜種)にわかれます。

1)サボテンフィンチ類:長いクチバシ
 サボテンの実や葉・花・花蜜をたべます。

2)種子食地上フィンチ類:がっしりとしたクチバシ
 花・花蜜や地面に落ちた種子をひろってたべます。

3)昆虫食樹上フィンチ類:太いクチバシ
 主に昆虫をたべます。

4)キツツキフィンチ類:頑丈でまっすぐなキツツキ型のクチバシ
 樹木に穴をあけカミキリムシの幼虫や樹皮の下にかくれた昆虫などをたべます。

5)ココスフィンチ:細長いクチバシ
 雑食で、フルーツや花蜜・昆虫・草の種子などをたべます。

6)植物食樹上フィンチ:オウムをおもわせるクチバシ
 葉や芽や木の実などをたべます。

7)ムシクイフィンチ:もっとも細いクチバシ
 木の葉などについた昆虫などをつまみとってたべます。

以上のようにダーウィンフィンチは、餌という環境条件に適応するために、特徴的なクチバシの形を進化させました。この例は、ただ一つの祖先種から多様な形質の子孫が短期間に出現するという適応放散の代表例です。

このような現場のデータにもとづく具体例をまなぶことは物事の理解を促進させます。具体例を知れば知るほど物事の理解はふかまります。具体例は、一般論では気がつくことができない盲点をおしえてくれこともあります。具体例を知ることにより安易な一般論から脱出することもできます。具体例をファイルしてたくさん蓄積するることにより理解がふかまるだけでなく選択肢も増えてきます。

企画展や展覧会などでの体験をうまく活用して、具体例の体験的なファイルを増やしていくことが重要です。


参考文献
日本ガラパゴスの会著『ガラパゴスのふしぎ』ソフトバンク クリエイティブ、2010年3月25日
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本書は、ダーウィン・進化論・生態系・不思議な生き物・環境保全などについて多数の写真とともに解説していて、ガラパゴスの入門書・ガイドブックとして有用です。21ページおよび124〜128ページに、ダーウィンフィンチのクチバシについて解説されています。ただし、本書におけるダーウィンフィンチの分類は、国立科学博物館の分類とは若干ことなっています。


ジョナサン・ワイナー著『フィンチの嘴 ガラパゴスで起きている種の変貌』(ハナカワ・ノンフィクション文庫)早川書房、2001年11月30日
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ダーウィンフィンチのクチバシについてさらにくわしく知りたい方はこちらをお読みください。エルニーニョや大干ばつなどによって変化する種子の大きさに合わせて、フィンチのクチバシの大きさも変化することなどが記述されています。

 

 
「野外科学」とは現場の科学のことであり、現場でいかに情報収集をして、どのようにそれらをまとめて発想していくかを論じています。
第I章では、「野外科学」の概念について解説しています。

「野外科学」の姿勢・方法は未解決の課題を追求する探検であり、未開拓の空白領域をうめていく行為です。それはあたかも、どんな魚が釣れるかしらずに出かけてゆく魚釣りのようなものです。既存の仮説を検証すればよいというのではなく、あらたに仮説を発想したり、アイデアをうみだすことをめざします。

第 II 章では、野外調査法と記録の仕方についてのべています。具体的にはつぎのようにします。

(1)観察とインターヴューによって現場で情報収集(取材)をし、その結果を、現場ノート(フィールドノート)に記録します。現場でとったノートや日記は非常に重要です。真の権威は現場のデータにあります。

(2)データのまとめのために「データカード」をつかいます。情報のひとかたまりごとに、1枚ずつのカードにしていきます。「データカード」の実例(77ページ)は参考になります。

(3)調査結果の組み立て、文章化とアイデアや仮説の発想のために、「データカード」を1枚ずつ見ながら、要点を「紙切れ」に書きだします。それらの「紙切れ」を平面的にひろげ、もっともすわりのよい位置に空間配置をします。この空間配置を見ながら文章化をすすめます。このとき、「データカード」をもういちど見直しながらその内容をおりこんでいきます。あらたにおもいついたアイデアや仮説も書きとめます。

第Ⅲ章と第Ⅳ章は、野外科学の実践事例としてネパール探検とチベット探検のことが具体的に記載されています。

本書はふるい本ですが、原理的には今でも大変有用であり、本書でのべられている方法を現代の情報技術をつかっておこなえばよいのです。

上記(1)では、紙のノートをつかってもよいですが、タブレットやパソコンが現代では有用でしょう。

上記(2)のためのはブログが有用です。情報のひとかたまり(1ユニット)ごとに記事を書き、その記事を要約した見出しを各記事の上部につけていきます。ブログ1件が1枚の「データカード」に相当します。

ここでは、複数の内容を1つの記事におしこまないことが重要です。内容が2つある場合は、記事も2つに分けます。1記事1項目主義です。このようにすると、記事の要点を適切にフレーズにして見出しをつけることができます。

上記(3)では、各ブログの見出しをポストイットやラベルに書きだし、これを空間配置し、それを見ながらワープロをつかって文章化します。そのとき、ブログの記事(本文)を参照しながら、その記事をおりこんでいきます。

ポストイットやラベルを空間配置をするときに、既存の分類項目にとらわれないようにすると、あたらしいアイデアや仮説がうまれやすいです。既存の分類項目にとらわれない空間配置からの方が発想がでてきます。

なお、空間配置や図解化のために役立つソフトとしては OmniGraffle があり、これをつかえばポストイットやラベルはいりません。

このような行為をくりかえすことにより、ひとつの課題(問題解決)に首尾一貫してとりくむことができるようになります。

文献:川喜田二郎著『野外科学の方法』(中公新書)中央公論社、1973年8月25日

ソフト:OmniGraffle
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立体視をしながら目をよくするための本です。立体視のやり方と立体視の効果の説明とともに、動物の3D写真が数多く掲載されています。

立体視のやり方は、36〜49ページにでています。まずは、ここを見て立体視の練習をはじめるとよいでしょう。

本書の要点はつぎのとおりです。
「眼力は「眼球(目)」と「脳」の2段階で成立しています。立体視訓練は、2対の画像を融合して一気にみる訓練であり、第1段階は眼球の訓練、第2段階は脳の訓練になっています。

立体視で生じる内面空間は「仮想現実の空間」(バーチャル・リアリティの空間)であり、これは、平面に表示された図や写真から、大脳の働きによってより高次の空間が仮想的に構築されることで生ずるものです。

立体視は、それができれば終わりというのではなく、それをスタート地点としてさまざまなヒーリング効果や能力開発効果を得ることを目標にしています。


66ページからは、たくさんの動物の3D写真が掲載されています。シンガポール動物園にはわたしも行ったことがあり、そのときの体験をたのしくおもいだしました。

立体視はすぐにできなくても、毎日練習しているうちに次第にできるようになります。立体視が一瞬できたとおもったら、しばらくの間それを保持するように努力してみてください。ずーっと見つめているとよりよく見えてきます。

また、動物をみながら、同時に、その周辺の様子も周辺視野をつかって立体的に見ることができるように努力していきます。

本書の3D写真を毎日すこしずつ見て、まずは、立体視になれるところからはじめるのがよいでしょう。

文献:栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本【動物編】』(王様文庫)三笠書房、2002年4月20日
 

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本書は、新聞(紙面)を読むことにより、次の7つの力をみがくことができると解説しています。

・書く力
・伝える力
・見せる力
・数字力
・ニュース力
・想像力
・コミュニケーション力
新聞の朝刊1部には、新書版の書籍2冊分の膨大な情報が詰まっていて、その紙面には、いろいろな工夫がなされています。たとえば、
・決められた紙面の中で、簡潔に分かりやすく伝える工夫
・忙しい人たちのために、見出しでパッと全体像をつかむ工夫
・文字だけでなく写真でも、記事内容を説明する工夫
これらのポイントを知るだけで、新聞は読みやすくなり、さまざまなスキルを磨く手助けになる

と著者はのべています。

新聞(紙面)を読む人は近年すくなくなってきているようですが、新聞は、情報処理あるいは速読の訓練のためにとても有用です。

新聞(紙面)がすぐれていることのひとつは一覧性です。大きな紙面、大きな空間に多種多様な情報が配置されています。ここではレイアウトも重要です。

その空間の中で情報をよみとり、そのレイアウト(構造)のなかで情報を記憶することができます。これは、空間を利用した情報処理の訓練になっているのです。しかも、書籍よりも紙面が圧倒的に大きいため、おおきな空間の中で情報処理にとりくむことができ効率がいいです。

情報は、ただ単に取得すればよいというものではなく、インプットの仕方を工夫しなければなりません。大きな空間をつかってまるごと一気にインプットすることはとても大切なことです。したがって、新聞は、読むのではなく、まず、「見る」ことが重要です

よくできたアウトプットをだすために、 空間的な情報処理訓練の教材・テキストとして新聞を活用していきたいものです。


文献:池上彰著『池上彰の新聞活用術』ダイヤモンド、2010年9月30日(電子版2012年7月1日)
 
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「モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」(国立西洋美術館)(注)を先日みました。

風景にそそがれたモネの「眼」の軌跡を、絵画空間の構成という観点から、他の作家の作品との比較しながらたどります。国内有数のモネ・コレクションをほこる国立西洋美術館とポーラ美術館の共同企画展です。

わたしはいつものように、館内をゆっくりあるきながら、まず、展示されているすべての作品を一気にみてしまいます。

そして次に、気に入った一枚の絵の前に行き、数分をかけてその絵を今度はじっくりとみつめます。そしてイメージトレーニングに入ります。今回は、クロード・モネ『セーヌ河の日没、冬』(1980年 ポーラ美術館蔵)を選択しました。

* 

目の前にひろがるその風景の全体をすっぽり心の中にいれたあと、夕日と夕焼け、それらがつくりだす陰影 、河・水・岸・対岸・木々、雲がつくりだす模様など、各要素の形と大きさをひとつひとつ丁寧にみていきます。

次に、今度は目を閉じて、今みた風景と各要素をありありとおもいだしてみます。自分自身の心の中で、モネの風景をイメージし、再現しとらえなおしてみるのです。

そして目を閉じたまま、今度は絵の世界の中へ入りこんでしまいます。わたしは、セーヌ河の河岸を自由にあるきまわり、そして空にまいあがります。上空からみると、みえなかったところも今度は自由に想像してみることができます。

東西南北からセーヌ河がうかびあがります。対岸の街並はどこまでもひろがっています。夕日はしだいにしずんでいき、夕焼け色のうつくしい世界がひろがります。その後、色彩感ゆたかな空間だけがのこり要素はなくなってしまいました。

そして、ふたたび美術館にもどってきます。

* 

このようなイメージトレーニングはとてもたのしい体験です。

対象の中に入りこみ、その世界を立体的にみて体験することにより、風景は、より鮮明に感動をともなってみえるようになります。 視野のひろがりのなかのそれぞれの場所でそれぞれの要素を記憶することもできます。

こうして、この日の美術展での体験は、一生に一度の、かけがえのない思い出となります。この日この場所をわすれることはもうありません。

このようなイメージトレーニングは、眼力の訓練でありますが、記憶法や能力開発の訓練にもなっています。


注:
「国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」
会期:2013年12月7日(土)~2014年3月9日(日)


▼ 参考文献:高橋明也監修『モネと画家たちの旅 -フランス風景画紀行-』西村書店、2010年1月15日

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旅をしながら内面世界をゆたかにする 〜『モネと画家たちの旅 -フランス風景画紀行-』〜
美術館でイメージトレーニングをする 〜「モネ、風景をみる眼」展 〜
イメージ訓練「拡大縮小法」にとりくむ - オルセー美術館展 -
色がまざって見える - 特別展「新印象派 光と色のドラマ」-
遠くからみて、近くでみて、離れてみる - 「モネ展」-
見る仕組みを知る - 藤田一郎著『「見る」とはどういうことか』-

 

新聞の紙面は、見出し・記事要約・記事本文から基本的になっています。つまり、まず見出しがあって、最下段に記事本文があり、両者の中間に要約が配置されています。

記事要約は記事本文を要約した文であり、見出しはその要約を圧縮したフレーズです。要約は記事を統合し、見出しは要約を統合しています。

構造的にみると、見出しはいちばん高い位置にあり、記事本文は底辺にあって、見出しは、より高い位置からこまかい情報を統合しています。

このように、新聞の上にのっている情報群から3次元空間をイメージすることが可能です。要約と圧縮表現をすることにより、情報は3次元の立体空間をつくりだすことになるのです。

新聞を読むときにこのような立体空間をイメージすると情報処理の効率は格段にあがってきます。

フィールドワークでは、現地あるいは現場の観察が必須であり、そのためには観察力を常日頃から強化しておくことが重要です。

観察とは、言語(書籍)からではなく、視覚情報を環境から吸収することであり、イメージで外界をとらえることです。つまり、言語を通さないで風景などをダイレクトに感じとり、言語をもちいないで映像としてその場をとらえることです。

そのためには視覚をするどくするとともに、イメージ訓練をするのがよいです。たとえば旅先で風景をみたら、目をつぶってそれを思い出す(想起する)訓練をします。時間があれば、風景をみないで思い出しながらその風景をノートにスケッチしてみます。風景を見ながらスケッチする(うつしとる)のではありません。あくまでも想起するところに訓練の基本があります。どこまで正確に想起してイメージをえがけるでしょうか。

このようなイメージ訓練をしながら、風景を構成する地形や川・建物さらに人に意識をくばるようにします。

このような観察はフィールドワークの入口として機能し、観察がよくできるとその後のフィールドワークを大きく展開させることができます。そして、環境や地域をよりよく知ることにつながってきます。

フィールドワークや旅行をするときに、Googleマップと Google Earth はとても役にたちます。

まず、フィールドワークや旅行にいく前に、Googleマップと Google Earth をつかって こらからいく場所のパノラマ的なイメージをえて、その場の全体を心の中にすっぽりいれてしまいます。これは、部分をつみあげて全体をつかもうとするのとはまったくちがい、全体を一気に見てしまう行為です。

そのうえで現地にいき、こんどは地上からそれぞれの場所の細部を詳細にみます。

そして帰宅後、もう一度 Googleマップと Google Earth を見直せば、前回以上に全体がよく見えてきます。さらに、よい発想がうまれたり本質が見えてくるかもしれません。

このような簡単な行為をくりかえしているだけでも、心の中に地図の記憶が生じ、心のあらたな空間を確立することができます。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、考察をおこなう際に論敵を想定して、彼らとの問答形式で議論を展開していたことが「レスター手稿」に記録されている。こうした問答形式による論証法は、ソクラテスやプラトン、アリストテレスなど、古代ギリシアの哲学者たちがすでにもちいていた方法であるという(注)。

問答形式を利用して議論を展開する方法は現代においても非常に有効である。つまり、何らかのプレゼンテーションをする際に、感想や意見・批判を参加者から積極的にあつめ、それにこたえる形で議論をすすめる。

ウェブサイトに「質問&回答集」をつくってもよい。自分の発表に対する反対意見や批判は一見するとマイナスのようであるが、このような問答形式を採用することにより、それらは重要な情報として機能し、あらたな情報を生みだしていく。問答形式は、聴衆や読者あるいは論敵との共同作業をすすめるようなものであり、これにより探求はさらにふかまっていくことになる。

このように、感想や意見・批判は重要な情報であるのだから、何かを発表するときには、周囲から意見などが出やすいようにあらかじめ工夫しておくことが大切だろう。たとえば、発表をする前に、感想や意見を記入する用紙をあらかじめくばっておくのがよい。



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近代科学の開拓者 レオナルド・ダ・ヴィンチ - 直筆ノート日本初公開(レオナルド・ダ・ヴィンチ展)-
問答形式で議論を展開する - レオナルド・ダ・ヴィンチ展 -
三次元を表現する -「レオナルド x ミケランジェロ」展(三菱一号館美術館)-
環境や背景・時代・場所をとらえる -「天才 その条件を探る」(ナショナル ジオグラフィック 2017.5号)-

▼ 注
裾分一弘・片桐頼継・A.ヴェッツォージ監修『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』(図録)、TBSビジョン・毎日新聞社発行、2005年


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