発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

カテゴリ: アウトプット

特別展「医は仁術」(会場:国立科学博物館) (注) を先日みました。

本展では、江戸時代の希少な解剖図などの史料、医療道具などを通して、中国からきた漢方と西洋からきた蘭方が、日本で独自に発展して人々をいかにすくってきたかを展示・解説していました。

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図 会場案内図


わたしの印象にのこったのは「飲食養生鑑」(いんしょくようじょうかがみ)です。

これは、江戸時代後期の浮世絵であり、体内の構造と働きを見せた戯画です。見ておもしろいため庶民の間でとても評判になり、養生の知識を庶民にひろめるために役立ったそうです。 

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写真1 飲食養生鑑


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写真2 拡大図


人の絵とともに、医学的知識が言語で解説されている図であり、絵(イメージ)の中に言語がうめこまれていて、イメージと言語がむすびついているところに大きな特色があります。

イメージの中に言語をうめこみ、イメージと言語とが統合された世界を表現することは、情報処理の観点からみても意義のあることであり、「図解法」を実践するうえで特に参考になります


注: 特別展「医は仁術」
会期:2014年3月15日(土)~6月15日(日)
主催:国立科学博物館、TBS、朝日新聞

文章化(情報のアウトプット)をするためには、国語辞典や類語辞典に常日頃からなじんでおくのがよいです。

そのためにおすすめできるのが「速めくり」訓練です。

たとえば、角川書店の『類語国語辞典』の全ページを、できるだけ速くめくりながら最後まで一気に見てしまいます。読むのではなくて見るのです

これにより、この辞典の構造(構成)を空間的物理的につかむことができます。この辞典には、よくできた分類語彙表があり、これをつかってこの辞典がつくる語彙分類体系(全体像)をイメージすることもできます。

それに対して、今回の「速めくり」は、ページがつくりだす物理的な構造を実際に見て、全体像をつかむのです。

こうして、語彙分類体系のイメージにくわえて「速めくり」訓練をして辞典の全体構造をつかんでおけば、単語を検索したときに(普通に辞書をひいたときに)、構造の中に単語を位置づけて理解することができます。つまり、単語(要素)の空間配置がわかるようになるわけです。辞典のなかに掲載されている単語は構造(入れ物)のなかの要素に相当します。

これは、単語の言語的理解に空間的理解もくわえることになり、結果的に、意味とは、空間的な位置関係で決まってくることもわかってきます。

この「速めくり」訓練は類語辞典のみならず、一般の書籍にも応用することができます。たとえば、「速めくり」をしてその本の大局的な構造を空間的にまずつかみ、読書あるいは記憶法によって、本のなかのいくつかのキーワードを記憶すれば、全体構造のなかにキーワードを位置づけて理解することができ、記憶が定着し、キーワードが活用できるようになります。


参考文献:栗田昌裕著『頭がよくなる速読術』

地形という視点から日本史をとらえなおすことをおしえてくれる本です。

特別対談と次の5章から構成されています。

特別対談 竹村公太郎X荒俣宏 地形をみることで歴史の本質を理解する!
第一章 徳川家康幕府260年の礎となる都市計画
第二章 織田信長・豊臣秀吉 天下人の都市計画
第三章 日本の都市と地形の秘密
第四章 外交・合戦の地形の秘密
第五章 時代の移り変わりの戦いと地形の秘密

たとえば第一章を見ると、一面の湿地帯だった関東平野を肥沃な土地へと変えた徳川家康が、関東平野の地形を非常によく理解していたことがわかります。現在の日本の中心地がいかにして形成されたかについて、地形というあたらしい観点からとらえなおすことができてとてもおもしろいです。

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そもそも歴史とは時間的な流れであり、年表や物語で本来は理解するものですが、本書は、地形という空間をつかって理解しようとしています。

情報処理の観点からいうと、歴史とは時間的(時系列的)に認識されることであり、一方の地形は空間的に認識されるものであり、本書では、それら両者を見事にむすびつけて理解をふかめています。

地形を見て歴史を読むということは、空間を見て時間的な流れを読むということであり、地形(空間)は、様々な情報を並列的にとらえることを可能にし、歴史(時間)は情報を一本の流れに統合する役割を果たします

ここに、空間を利用した情報の並列処理と、時間を利用した情報の統合的アウトプットの一例を見ることができます。

 空間(地形) :並列的なプロセシング
 時間(歴史) :統合的なアウトプット

このように、地形(空間)と歴史(時間)は情報処理の観点からとらえなおすことができるわけです。従来の地理学と歴史学も、このような観点からとらえなおし、両者をくみあわせていくことにより、日本に関する認識をさらにふかめるために活用できるでしょう。


文献:『地形から読み解く日本の歴史』(別冊宝島)宝島社、2014年5月10日

間違いやすい日本語について、分野別に解説したガイドブックです。文章化や口頭発表をするときに(アウトプットのために)とても役立ちます。

全体は19のセクションに分かれていて、 難読の漢字、誤用・誤読しがちな言葉3300語を収録しています。ユニークなレイアウトがとてもわかりやすいです。

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写真 「ラベル」形式のレイアウトがわかりやすい


情報処理の観点からは次の手順をふむとよいです。


1.間違いやすい日本語をチェックする
間違いやすい日本語をチェックしながら本書を一通り読みます。自分の興味のある分野については特に重点的にチェックをするとよいでしょう。
 

2.単語は、情報の「ラベル」であることを理解する
本書はレイアウトがとてもよくできていて、各ページの左側に「ラベル」形式で単語が掲載され、その右側にその説明が記載されています。

左側の単語は、情報のひとかたまりの「ラベル」(標識)であるとかんがえてください。

そもそも単語とは、あるひろがりをもった情報を単位化して、そのひとかたまりを圧縮・単純化して標識にしてあらわしたものです。

「ラベル」(単語=標識)は情報のひとかたまりの上部構造であり、その下に、情報の本体が下部構造として存在しています。

140515 ラベル

図 情報の基本構造


情報の基本構造を理解することは、情報処理の第一歩としてとても大事なことです。
 

3.想起の訓練(記憶法の訓練)をする
興味のあるセクションについては、本書の各ページ左側の「ラベル」(単語=標識)だけを見て、その右側にでている説明(情報の本体)をおもいだす訓練をします。「ラベル」だけをパッパッと見て、瞬時に、その内容を想起できるようにします

くりかえしくりかえし本書を読んでインプットだけをしているよりも、想起訓練をした方がはるかに効果があがり、記憶が定着します

このように、本書の「ラベル」形式のレイアウトをうまく利用して、日本語の間違いをチェックするだけでなく、情報の構造に関する理解をすすめたり、記憶法の訓練をおこなうとよいです。そのための教材(テキスト)として本書はすぐれているおもいます。


NHKアナウンス室編『NHK 間違いやすい日本語ハンドブック』NHK出版、2013年5月25日


▼ 参考ブログ(ラベル法)についてはこちらです
取材→情報を選択→単文につづる -「ラベルづくり」の方法(ラベル法)の解説-

「発想をうながすKJ法」から文章化の方法(作文法)について再度解説します。

▼「発想をうながすKJ法」に関する解説はこちらです

▼ 文章化に関する基本的な解説はこちらです
文章化の方法 -「発想をうながすKJ法」の解説(その3)-


「図解法」における「図解をつくる」もアウトプットのひとつですが、図解だけを他人に見せても何を意味しているのかわかってもらえないことが多いです。やはり、メッセージを相手につたえるためには言語をつかうのがもっとも基本的なやり方です。

文章化の方法(作文法)の手順は次の通りです。

〔図解をみる〕→〔構想をねる〕→〔文章をかく〕


■ 課題(テーマ)を確認する
まず、課題(テーマ)を再確認します。課題(テーマ)がしっかりしていると、統一的なトーンを文章に生みだすことができます。


1.図解をみる
図解にあらわれた構造を見なおします。 樹木でいえば樹形がわかるように 、ぱっと見て全体像をすみやかにつかむようにします。

図解がつくりだす全体的な構造(場)と、個々のラベルがつくる要素との両者を見ることが大切です。


2.構想をねる
どの「島」から書きおこし、どの「島」を結論にするか、全体の流れを構想します。出発点と到達点(目標)を決めます。


3.文章をかく
図解を視覚的に見て、それを言語に変換していきます。 図解から文章をひきだすわけです。

図解上の「表札」や「ラベル」にあらわれた単文は、「音韻言語」とはちがい、いわば「視覚言語」としてとらえることができます。「視覚言語」能力を身につけることにより情報処理の効率はあがります。

「表札」の下には「元ラベル」があり、「元ラベル」の下には体験(情報の本体)があります。体験は下部構造として潜在しています。体験を想起して書きくわえてもよいです。

図解は空間的構造的な存在ですが、それに流れをみいだし文章化します。文章化は時間的な行為です。

たとえてみれば、図解は「ダム湖」のような存在です。堰を切って水が流れでるように言語をアウトプットできるとよいです。

そういう意味では、図解の「元ラベル」の枚数が多いほど(情報量が多いほど)、「ダム湖」の水量は多くなるのでポテンシャルが高くなり(水圧がつよくなり)、とうとうと川が流れるように文章が流れでやすくなります。したがって図解には、質よりも量といった側面があるのです。

書いている途中で、ひらめきやアイデアがしばしば得られます。これらも文章化します。

文章化をくりかえしていると、情報を統合する能力がどんどん高まります。アウトプットの本質は情報を統合することにります。

どうしても文章がでにくい場合は、図解をながめてから、一旦ねるとよいです。潜在意識のはたらきにより、おきてみると書きやすくなっています。


文献:川喜田二郎著『発想法』(中公新書)中央公論社、1967年6月26日

「発想をうながすKJ法」から図解法(図解化)について再度解説します。

図解とは、情報を形(イメージ)にしてアウトプットしたものです。図解法は次のとおりです。

図解法:〔表札をよむ〕→〔空間配置する〕→〔図解をつくる〕


図解法の前段階として「ラベル法」(ラベルづくり)→「編成法」(グループ編成)があります。

ラベル法:〔取材する〕→〔情報を選択する〕→〔単文につづる〕
編成法:〔ラベルをよむ〕→〔ラベルをあつめる〕→〔表札をつける〕


図解法では、まず、「大表札」(最終表札)をA3用紙上に空間配置し、 検索図解(全体図解)をつくります。

次に、細部図解用のA3用紙を用意します。たとえば「大表札」が7枚ある場合は、7枚の用紙を準備します。そして、それぞれの用紙に、各「大表札」の中身を展開して配置し、「島どり」をします。これが細部図解になります。

このように図解法では、検索図解(全体図解)と細部図解の2種類の図解をつくっるところに決定的なポイントがあります。検索図解は上部構造、細部図解は下部構造をつくり、全体として3次元の体系になっていることをイメージしてください。

つまり、3次元空間(立体空間)をつかってアウトプットをすすめます。情報処理は、1次元よりも2次元、2次元よりも3次元の方が効率がよく、加速されます。次元を高めると、今までできなかったことができるようにもなります。

なお、「図解法」の前段階の「編成法」を省略して、

〔ラベル法〕→〔図解法〕

とする方法もあります。

この場合は、検索図解(全体図解)と細部図解の区別はなく、2次元(平面上)の図解となります(注)。


▼「発想をうながすKJ法」に関する解説はこちらです

▼「編成法」(グループ編成)と「図解法」(図解化)に関する基本的な解説はこちらです
グループ編成→図解化(イメージ化)の方法 -「発想をうながすKJ法」の解説(その2)- 

▼ 次元についてはこちらです
情報処理の次元を高める 〜『次元とは何か 0次元の世界から高次元宇宙まで』(Newton別冊)〜


文献:川喜田二郎著『発想法』(中公新書)中央公論社、1967年6月26日

注:KJ法関係者が、「探検ネット」とか「花火」とよんでいるのはこの2次元図解です。

今回は、「発想をうながすKJ法」のなかの第2場面(その1)「グループ編成」から「表札をつける」について解説します。

「グループ編成」の方法(編成法)の手順は次の通りです。

〔ラベルをよむ〕→〔ラベルをあつめる〕→〔表札をつける〕


▼「発想をうながすKJ法」に関する解説はこちらです
発想をうながすKJ法(まとめ) 

▼「グループ編成」(編成法)に関する基本的な解説はこちらです
グループ編成→図解化(イメージ化)の方法 -「発想をうながすKJ法」の解説(その2)-


■ 情報を要約・統合する
たとえば、「ラベルをあつめる」で3枚のラベルがあつまったとします。それら3枚に記されている文をすべて読んで、エッセンスを要約し、あたらしい「ラベル」に単文として書きだします。

そして、3枚の「元ラベル」のセットの一番上にかさねます。あたらしいこの「ラベル」が「表札」です。一番の表の「ラベル」(札)という意味です。
 

■ キーワードをまず書きだす
要約がつくりにくいときは次のようにします。

メモ用紙を用意します。「元ラベル」がたとえば3枚の場合、それぞれの「ラベル」について、1語ずつ、キーワードを書きだします。つまり、3語のキーワードをだします。文中の単語をつかってもよいし、あらたな単語をかんがえてもよいです。

次に、キーワードだけを見て(「元ラベル」は見ないで)、それらを統合したらどういう単文になるかかんがえ、みじかい1文を書きだします。なるべく、キーワードの足し算にならないようにします。やや抽象的な言葉をおもいうかべます。

そして、「元ラベル」を見なおして、いま書きだした単文を補足・修正し、あたらしい「ラベル」に書きなおします。

要点を整理し無駄をすて本質を把握することが大切です。 重要な事柄は高めて、どうでもよいことがらはしずめます。的確に簡潔に見通しよく記述します。まわりくどい冗長な記述はさけます。
 

■課題(テーマ)を明確にする
要約を書くにあたっては、課題(テーマ)を再確認し、課題(テーマ)を前提にして要約をつくることが重要です。前提を決めないで要約をしようとしてもうまくいきません。
 

■「表札」(要約)はあたらしい上部構造となる
「ラベル」は情報のひとかたまりの「標識」であり、情報の上部構造です。情報の本体は下部構造として常に潜在しています。

「表札」も、情報のひとかたまりの上部構造であり、情報の本体が下部構造として常に潜在しています。


■「ラベルをあつめる」は情報の並列処理である
「編成法」の「ラベルをあつめる」では、「ラベル」を空間的に縦横に配置して「ラベル」の並列操作をおこないました。つまり、前から後ろへ直列的に(一次元で)情報をとらえるのではなく、全体を一気に見て空間的に(二次元で)処理したのです。ラベルがよくできていると並列処理が可能になり、並列処理は情報処理を加速させます。

「ラベル」がきちんとできていると、情報が無意識のうちに連携をはじめ、情報同士が自然につながってきます。そして情報の合併が生まれ、情報の再編成がおこります。まるで情報自体が生き物であるかのようです。情報が自動的に再編成する現象をとらえることが大事です。

ここでは、言葉と言葉がつながるのではなく、情報と情報がつながるということに注意してください。 内面では情報はすべてつながっています。


■要約は、統合的アウトプットである
「表札」つくること、要約を書くことは情報を統合してアウトプットすることです。「編成法」(グループ編成の方法)では、「表札」として要約文がアウトプットされます。要約は、アウトプットの基本的な方法です。

要約すると情報は圧縮されます。圧縮すると、ファイルのメモリーが小さくなるように情報はかるくなり、情報処理を加速することができます。「表札」は、ある一群のファイルを圧縮したものであり、これによりファイルの連携が綿密になります。そして、要約の集合は体系を形成し、全体を単純化します。

このように「グループ編成」は、情報の群れを再構築する作業であり、要約により、背後にある情報をむすびつけることです。情報を断片のまま放置せず、「圧縮ファイル」をどんどんつくっていくことが大切です。


■要約にもレベルがある
「編成法」では、グループごとにくりかえし要約をつくっていきます。「グループ編成」の段階に応じて要約にもレベルがあります。

小グループ(小チーム)の要約は下層レベルの要約であり、こまかい要約です。大グループ(大チーム)の要約は上層レベルの要約であり、おおまかな要約となり大観的になります。

大グループ(上層レベル)の要約ほど、元情報からずれやすくなるので注意が必要です。下層からまっすぐつみあがっていく構造をイメージしてください。

こうして、多段階の要約をしながら情報を洗練していきます。


■要約はビジョンを生みだす
要約は知性をみがく知的な作業であり、 体験のなかに価値を見いだし、仮説や見識を生みだします。

よくできた要約は大観をとらえ本質をあらわします。要約はあらたな価値をうみだし、ビジョンをもたらします。ビジョンは未来をひらき、行動を生みだします。


文献:川喜田二郎著『発想法』(中公新書)中央公論社、1967年6月26日

情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の第3場面はアウトプットであり、情報処理の結果は文として書きだされることが多いです。 

このとき、国語辞典とともに有用なのが類語辞典です。いくつもの情報を圧縮・統合して要約文をつくるとき、おなじ単語のくりかえしをさけるとき、適切な単語がおもいうかばないときなどにとても役だちます。

類語辞典とは、似た意味をもつ言葉をまとめた辞典であり「類義語辞典」ともいわれます。

わたしは何冊かの類語辞典をつかっていますが、それらのなかから今回は、角川書店の『類語国語辞典』を紹介します。この辞典の特色は、分類体系表をつかって構造的に類語をとらえ、空間の中に位置づけて単語を理解できる点にあります。

本辞典の「序」からポイントを引用します。

語が体系をなすと言ったのは現代言語学の開拓者ソシュールである。

彼は単語について二つの関係に気づいていた。一つは、実際に使われる語の意味が、文脈の中の数々の語の相互の関係で決まることである。いま一つは、選ばれて文脈の中で使われる語は、実は文脈の上では使われなかった単語との間の潜在的な関係において制約されながら使われているということである。

一つの単語の「意味」を知るとは、その単語と潜在的な関係を保っている単語群の中にその単語を置き、その単語の位置を知ること。

全語彙を、意味の群れによって分類して「類語の群」を設定し、その中で細かい意味を記述することによって、単語相互の潜在的意味関係を明確に浮き上がらせ、本当の「意味記述」をなそうと努めた。

語彙が豊富であるとは、一つの単語と潜在的関係を保っている単語を、数多く思い浮かべることができるということである。

語彙を豊かにするとは、個々の語を、ばらばらに数多く記憶することではなく、群れとしての単語を豊富に持ち、それを場に応じて的確に使用できることである。

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上記の目的を実現するために、本辞典では、「類語の群」が体系化され、「語彙分類体系表」(上の表)によってそれらが明確にしめされています

この「 語彙分類体系表」は、情報処理の観点から非常に重要な役割をはたします。

この体系表は、大分類として「自然」「人事」「文化」の3つにわけられ、それらを、表のように、「0自然、1性状、2変動、3行動、4心情、5人物、6性向、7社会、8学芸、9物品」という10項目(大項目)にわけてコード化しています。

そして、これらのそれぞれの項目(大項目)を、また、10項目(中項目)にわけてコード化しています。たとえば「0自然」については、「00天文、01暦日、02気象、03地勢、04景観、05植物、06動物、07生理、08物質、09物象」となっています。

そしてまた、これらのそれぞれを10項目(小項目)にわけてコード化しています。たとえば「00天文」については、「000天文、001宇宙、002空、003天体、004太陽、005月、006星、007地球、008朝夕、009昼夜」としています。

こうして、 大項目X中項目X小項目が、 10X10X10( 10が100に、100が1000に)と細分化されています。つまり、十進法にもとづいて、類語が群れになって体系表のなかにおさまっているのです

似ている情報が編成されて、大項目・中項目・小項目というような立方体の多重構造になっていることがイメージできるでしょうか。

こうして「体系表」は、インデックスチャート(検索図解)として機能し、類語の空間配置をあきらかにします。たとえばある単語が、「体系表」の右上のやや下にあるとか、左の真ん中にあるとかというように位置を認識できます。

このような構造をしめす明快な「体系表」がついていることが本辞典の最大の特色であり、見出し語(キーワード)検索をして類語がわかるだけでなく、自分がさがしている単語やつおうとしている単語が、この体系の構造の中のどこにあるのかを位置情報として認識できる、つまり座標を特定できるのです。

ここに、言葉を言語領域だけでとらえるのではなく、イメージ領域(視覚領域)でもとらえる方法があります

上の表をイメージとして記憶しておけば、単語だけを記憶するのとはちがい、イメージと言語とをむすびつけながら情報処理をすすめることができます。こうして、情報処理の視覚空間領域と言語領域とを同時に活性化し、両者を統合的に運用する道がひらかれます。

自分の心のなかにイメージができあがると、言葉の世界の見通しもよくなり、適切な単語がうかびあがりやすくなりります。また、イメージは全体像を明確にするので、全体の場のなかの要素として各単語をとらえなおすことができ、場と要素の認識から連想もはたらきやすくなります。こうして、言葉の「ジャングル」でまよわなくてすむようになります

このように、情報のアウトプットのために類語辞典はとても有用であり、大いに利用していく価値があります。


大野晋・浜西正人著『類語国語辞典』角川書店、1985年1月30日

 

ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』から管弦楽の部分をピックアップして編曲した作品です

編曲と指揮をしたロリン=マゼールによると、「ワーグナーの書いた音譜以外、いっさい追加しておらず、各曲はオペラの順番どおりにつなげてある」そうです。この作品は、重要な曲を単に抜粋したのではなく、いくつもの曲が切れ目なくつづき、まるで一曲の壮大な管弦楽曲のようにたのしむことができることが特色です。

以下の楽曲がピックアップされています。

『ラインの黄金』より
  「かくてラインの「緑色のたそがれ」が始まる」
  「ヴァルハラ城への神々の入城」
  「地下の国ニーベルハイムのこびとたち」
  「雷神ドンナーが岩山を登り、力強く槌を打つ」
『ワルキューレ』より
  「われらは彼の愛の目印を見る」
  「戦い」
  「ヴォータンの怒り」
  「ワルキューレの騎行」
  「ヴォータンと愛する娘ブリュンヒルデとの別れ」
『ジークフリート』より
  「ミーメの恐れ」
  「魔法の剣を鍛えるジークフリート」
  「森をさまようジークフリート」
  「大蛇退治」
  「大蛇の悲嘆」
『神々の黄昏』より
  「ジークフリートとブリュンヒルデを包む愛の光」
  「ジークフリートのラインへの旅」
  「ハーゲンの呼びかけ」
  「ジークフリートとラインの娘たち」
  「ジークフリートの死と葬送行進曲」
  「ブリュンヒルデの自己犠牲」

実際にきいてみると実にうまくつながっていて時間がたつのもわれてしまいます。

マゼールは、ワーグナーのエッセンスをみごとにうかびあがらせています。すでに、『ニーベルングの指輪』を見たことがある人にとっては、楽劇(オペラ)の場面をおもいうかべながらきくことができます。一方、ワーグナーをこれからきいてみようという方にとっては『ニーベルングの指環』入門として有用です。

『ニーベルングの指輪』といえば、西洋音楽史上空前絶後の超大作であり、全作上演には実に約15時間を要します。マゼールはこれを約70分に圧縮し総集編をつくったわけです。どの曲をピックアップし統合して一本の楽曲にすればよいか、このためには高度な能力が要求されます。

音楽を演奏する(表現する)ということは、情報処理の観点からいうとアウトプットをするということです。アウトプットする場合、多種多量の情報のすべてをアウトプットすることには意味はなく、多種多量の情報を何らかの方法で統合してアウトプットすることになります。アウトプットの本質は情報の統合にあります

情報を統合する場合、いくつかの情報を融合・変化・発展させ圧縮して表現するという方法もありますが、マゼールは、もとの情報にはまったく手をくわえず、重要な部分をピックアップするという方法をもちいました。重要な箇所をピックアップして、それをもって全体を代表させるという方法であり、 いわば「代表選手」にすべてをたくすといったやり方です。音楽や映画の総集編をつくるときにつかわれる方法です。

ピックアップという方法は簡単そうでどうってことないように見えますが、実は、そこにはとても奥深い世界がひろがっています。 マゼールは実によくできたピックアップをしました。さすがです。

総集編のつくり方を参考にして、情報のアウトプットのために、ピックアップという方法を意識してつかっていくと仕事の効率・効果は高くなります


Blu-ray : “Ring Without Words” Richard Wagner, Lorin Maazel, Berlin Philharmonic, 2012
CD: Ring Without Words” Richard Wagner, Lorin Maazel, Berlin Philharmonic, 2005
(ロリン=マゼール指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、リヒャルト=ワーグナー『言葉のない指輪』)



最新バージョンである HTML5 とスタイルシート(CSS3)をつかって、最新のウェブサイト制作手法をマスターするための入門書です。

HTMLとスタイルシートを習得すれば、ウェブサイト制作に特別なソフトは必要ありません。Mac や Windows に付属のソフトですぐにつくりはじめることができます。

これからウェブサイトを制作される方は、最新バージョン(HTML5)でつくのがよいです。

しかし、最新バージョンをつかった良書は現時点では非常にすくなく、最新のHTML5 を銘打っている書籍であっても、文書型宣言が <!DOCTYPE html> になっているだけで、HTML5タグをつかっておらず、<div>要素をつかうなどして、ふるいバージョン(従来のつくりかた)で解説している本がほとんどです。

その点、本書は、最新バージョンをつかっていて、しかも、初心者にもわかるようにわかりやすく解説されているので、わたしも安心して学習をすすめることができました。

本書の例題と解説をよんで、ステップ・バイ・ステップでウェブサイトを実際につくっていけば、最新のノウハウを身につけることができます。応用テクニックやその仕組み、さらに踏み込んだ各種の情報や秘訣も理解することができます。

HTML5 と CSS3 をつかってウェブサイトをつくってみようという方に、現時点でもっともおすすめできる入門書です。

文献:エビスコム著『HTML5 & CSS3 レッスンブック』ソシム、2013年5月24日
 

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山田洋次監督作品『小さいおうち』(注)を先日みました。

日本映画界の巨匠・山田洋次が、直木賞受賞のベストセラー小説を映画化、東京郊外の “小さいおうち” でおこったちいさな恋愛事件の真実を、昭和と平成の2つの時代を通してえがきだします。

物語は、昭和10年から終戦直後と、平成12年〜21年頃という2つの時代が交差しながらすすみます。昭和の回想パートと現代の平成パートが、昭和の風景と平成の風景とを対比させます。

そして、
「あっ、・・・・・のか」

2つの物語が意外な展開のもとで最後に一気にシンクロナイズします。2つの情報が統合されて話は収束します

注:
原作:中島京子(文春文庫刊)、脚本:山田洋次・平松恵美子、音楽:久石譲
制作・配給:松竹株式会社、2014年

 
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川喜田二郎著『発想法』は本ブログの原典であり、私の仕事の原点です。私は、学生時代にこの本を読みとても大きな感銘をうけました。

『発想法』はふるい本ですがいま読んでも啓発されることが多く、何といっても情報処理と問題解決の元祖であり、温故知新といった意味でも重要な書です。

『発想法』には、技術(技法)と考え方(思想)の2つの側面があります。第2章「野外科学の方法と条件」と第3章「発想をうながすKJ法」はおもに技術について説明しています。それに対して、第1章「野外科学 -現場の科学-」、第4章「創造体験と自己変革」、第5章「KJ法の応用とその効果」、第6章「むすび」はおもに考え方(思想)についてのべています。

まずは、 第2章「野外科学の方法と条件」と第3章「発想をうながすKJ法」にとりくんでみるのがよいでしょう。

現代の情報化の観点からこれらをとらえなおすと、多種多様な情報をいかにまとめるかということについてのべています。つまり情報処理と文章化のやり方がテーマです。第2章はどちらかというと あらい情報処理、第3章はよりすすんだ情報処理のすすめ方についてのべていて、中核となるのは第3章の「KJ法」です。

これらのポイントをひとことでいうと空間をつかうことです。情報処理はこれにつきます。アタマの中で時系列にかんがえていたり、ワープロをつかって時系列に入力していたりするのは、情報が前から後へながれているだけで一次元です。

そこで空間をつかうことにより、情報処理の場を一次元からから二次元へ、さらに三次元へと高めていくことができます。これにより、直列ではない並列的な情報処理ができるようになります。

手持ちの情報をまずは、ポストイットやラベルやカードに書き出し、平面的に配置してみてください。これだけでも情報処理の効率は格段にによくなり、文章化がすすみます。最初の一歩をバカにしてはいけません。空間をつかうことは誰にでもできることですが一方で情報処理の究極でもあります。


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情報処理の第3場面「アウトプット」の基本は情報を統合することです。よくできたアウトプットをするためには情報を要約する訓練を日頃からしておくのがよいです。

たとえば、ブログの記事一本を書くことは情報の要約にほかなりません。各記事に見出しをつけるのはさらなる要約であり情報の圧縮表現です。ブログを書くこと自体が情報処理の訓練になります。

情報を要約・圧縮するためには要点を整理し無駄をすて本質を把握しなければなりません。このような要約や圧縮は情報の統合的アウトプットとなります。また、情報を圧縮することにより情報処理は加速されます。情報を圧縮できる人は情報をふくらませることもできます。

このようなことがわかってくると、ある課題についてまなぼうとおもったら、適切に要約された書籍や資料をさがしだし最大限に活用するのがよいこともわかってきます。

情報処理の第2場面「プロセシング」では情報の編集作業をおこないます。そのための補助手段として図解をつかうのがよいです。図解は空間的にひろがっているため、情報を空間的・並列的に配置することができ、情報の処理速度をはやくすることができます。

一方、編集作業がおわったらメッセージをアウトプットしなければなりません。メッセージの表現は一般的には文章をつかいます。文章は前から後ろへ直列的にながれていくものです。

つまり、情報の編集は空間的・並列的に、メッセージの表現は時系列的・直列的におこなうことになります。ここに、情報処理は、並列的なプロセシングから直列的なアウトプットという一般原理をみることができます。

本書は、気鋭のシェイクスピア研究者が、シェイクスピア全作品についてあらすじと解説をまとめたものです。手っとりばやく筋をたしかめたり、登場人物や人間関係をしらべたりできるコンパクトで便利な本です。シェイクスピア入門としても有用です。

本書を一気によみおえてしまい、シェイクスピアの全体像をまずつかんでしまうのがよいでしょう。 全作品の要約が一気に読めるところにポイントがあります。

そもそも情報処理は、インプット→プロセシング→アウトプットという手順になっていて、最終場面はアウトプットです。そのアウトプットにはかならず要約という作業がはいります。情報処理の結果をすべて記述することはまったく不可能ですから、著者の主観によって重要なポイントを要約し、整理・統合してアウトプットすることになります。

本書は、このような情報の統合的アウトプットのすぐれた事例として活用することができます。


文献:河合祥一郎著『あらすじで読むシェイクスピア全作品』祥伝社、2013年


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自分のアウトプットを見直して、自分で自分を見る



 
著者は、100万人以上をブラインドタッチにしてきた「増田式! PCキーボードの学校」の校長先生です。学生時代に私も「増田式!」で練習して適切なブラインドタッチになれました。

情報処理の最終場面「アウトプット」では、文章化をその手段としてつかう人が圧倒的に多いとおもいます。文章化あるいは速書にはブラインドタッチは必須です。ブラインドタッチでしたら「増田式!」を絶対におすすめします。

なお、増田さんもKJ法をつかって研究開発をしておられます。

情報処理は、情報のインプット→プロセシング→アウトプットという3つの場面からなっています。本書でとりあつかっている「速書法」は、これら3場面の中のアウトプットの技法のひとつです

アウトプットには文を書く以外に、絵や図を描いたり、音や声を出したり、ジェスチャーや行動でしめしたりというように様々な方法がありますが、アウトプットの中でもっとも基本的な方法は文を書くことであり、ツイッターやブログ・フェイスブックなどが発達してきたことを見ても、書くことによってアウトプットをするケースはとても多いとおもわれます。このような状況下で、いかに速く書くかということは多くの人々にとっての関心事になってきています。

本書の内容は以下のとおりです。
第1章 第1歩は「質より量」の戦略で
第2章 身近なことを書くこと
第3章 学習で知的感動を引き起こせ!
第4章 頭を整理してスピードアップ
第5章 潜在意識で想像力を高める
第6章 8原理で文章を構築する
第7章 6段階で高速文章出力
第8章 見識力で速書法のレベルアップ
第9章 ニュースを活かして速書力強化
第10章 3原則で速書力衰退を救う
第11章 6側面で文章を点検する
第12章 文章を豊かにする想像力訓練

著者は、「2段階方式」で書くことをすすめています。ひとまず大ざっぱなアイデアにしたがって下書きをしておき、意識化(潜在意識)でそれらを熟成させます。そして、別なチャンスに編集して完成させます。最初から一気に完成させようとして意気込んで取りかかるより、2段階方式でおこなう方が全体としての作業時間は短縮でき、結果的に「速書」になります。

私の場合は、データやアイデアをまず箇条書きで書き出して、その日は寝ます。そして、次の日に一気に文章化します。寝ている間に潜在意識が情報を処理・整理してくれるのでとても効率的です。著者によれば、「潜在意識による並列的な編集」→「速書による直列的な表現」ということです。 ここでも、インプット→プロセシング→アウトプットという情報処理の3場面を意識した方がよいです。

このようにして、書くことにより様々な情報が統合され、体験がひとかたまりにまとまります。内面体験もまとまり心が整理されます。また内容を、1〜2行で表現することを「圧縮表現」とよび、「圧縮表現」をしていると「見識ファイル」が整理されます。たとえばブログの本文を書くのに対して、見出しをつけるのは「圧縮表現」です。

そもそも、書くということはメッセージをつたえることです。言葉はメッセージをつたえる手段です。文字にする以前にもっていたメッセージを言葉にのせて相手に伝達しているのです。つたえたいメッセージを短時間で明確に相手につたえることが「速書法」の目標であり、したがって速く書きだすだけではなく、適切な「圧縮表現」ができることが重要になってきます。

速書は、「通常の範囲の意識(表面意識)ではない潜在意識の活性化と運用によって扉がひらく」と著者はいいます。潜在意識の活性化は「速読法」にもつながります。「速読法」は情報処理におけるインプット、「速書法」は情報処理におけるアウトプットに相当し、「速読法」と「速書法」とをあわせて訓練することにより相乗効果が生まれるとかんがえられれます。栗田博士の「速読法」をまなんだうえで本書に再度とりくむと効果が一層あがるでしょう。
 

文献:栗田昌裕著『栗田式驚異の速書法ドリル』住宅新報社、2007.1.21発行。
栗田式驚異の速書法ドリル (能力開発シリーズ)

ヴェルディ作曲のオペラ『ファルスタッフ』(METライブビューイング)をみました。このオペラは、シェイクスピア作『ウィンザーの陽気な女房たち』(The Merry Wives of Windsor)をオペラ化したものです。

ジュゼッペ=ヴェルディは19世紀を代表するイタリアの大作曲家であり、おもにオペラを作曲しました。ヴェルディの作品はオペラ界に変革をもたらし、西洋音楽史上もっとも重要な作曲家の一人です。

一方、ウィリアム=シェイクスピアはイングランドの劇作家・詩人であり、16世紀のイギリス・ルネサンス演劇を代表する人物です。

今回の『ファルスタッフ』は音楽と演劇、劇と曲を統合してできた作品です。ここに、音楽と演劇ということなる二つの分野、ことなる情報の統合作業という仕事をみることができます。統合というやり方は、様々な素材を編集し作品化する(アウトプットする)ための本質的な作業です。情報の統合こそがアウトプットの本質です。オペラ化されたシェイクスピア作品は統合出力の典型的な事例としてとても参考になります。

なお、ヴェルディがオペラにしたシェイクスピアの作品としては『オテロ』『マクベス』もあります。


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前著『日本語の作文技術』(朝日文庫)の続編として出版された本です。前著を読んだ人が作文技術の復習をしたり、応用や実践・実戦をするための参考になります。

「わかりやすい」ための作文技術の初歩的かつ中心的部分は「語順」と「句読点」にあり、これらの中でもさらに核心となるのは「読点」です。

■ 日本語の語順の基本原則は以下の通りです。
1. 述部(動詞・形容詞・形容動詞)が最後にきます。
2. 形容する詞句が先にきます。
3. 長い修飾語ほど先に。
4. 句を先に。

■ テンの二大原則は以下の通りです。
1. 長い修飾語の原則:長い修飾語が二つ以上あるときその境界にテンをうちます。
2. 逆順の原則:語順が逆になったときにテンをうちます。

■ 思想のテン:思想の最小単位をしめすときにテンをうちます。

これらがつかいこなせるようになるだけで、ともかく一定レベル以上の文章になります。

応用編として参考になるのが事実の記述の仕方です。たとえば「ABCDEの五つの事実があったとすると、一番おもしろい事実(たとえばD)をくわしく具体的に書きます。のこったABCEの四つについては、Dを補強する形でつかいます」。全体で100の説明をするとしたら、その内容の80は一つのことだけを書き、のこりの20で四つのものを軽く書きます。

また書き出しの工夫として、「読者をひきつけるためには途中の説明はしないで、興味のある部分をいきなり書く、すぐに現場に入る」のがよいと述べています。

本多勝一さんの作文技術には、わかりやすい日本語を書くための正しい原則が単純明快にしめされているので、ほかの著者の関連著書よりも、まず第一に、この作文技術あるいは原則を徹底的に勉強し訓練するのがよいでしょう。


▼ 文献
本多勝一著『実戦・日本語の作文技術』朝日新聞社、1994年
実戦・日本語の作文技術 (朝日文庫)


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読む側にとってわかりやすい文章を書くための本です。これは作文の「技術」である以上、訓練をすれば誰でもできるようになるというものです。約30年間にわたってわたしはつかっています。

以下に、日本語の作文技術の原則をレベル別に整理しました。

■ 日本語の作文技術の基本原則(初級レベル)は以下の通りです。
1. 修飾する言葉とされる言葉がはなれすぎない。
2. 句を先に、詞をあとに。
3. 長い修飾語は前に、短いほど後に。
4. 大状況・重要な言葉ほど前に。
5. 親和度(なじみ)の強弱による配置転換。
6. テン
 6-1. 長い修飾語長い修飾語が2つ以上あるとき、その境界にうつ。
 6-2. 逆順ある語を強調するため、修飾語の語順が原則の逆順になる場合にうつ。


■ 表記法の原則(中級レベル)は以下の通りです。
1. ナカテン:並列や同格の語のあいだにつかう。
2. 二重ハイフン:力夕カナの固有名詞などを列挙するときにつかう。
3. 力ギカッコ
 3-1. 引用は、あくまで原文や発言のままカギカッコの中にしめす。
 3-2. 自分達ではつかわないが相手側がつかう言葉をそのままつかう場合にはカギ力ッコに入れる。
4. ヒゲカッコ:「本当はそうではない」ときとか、「いわゆる」つきのときにつかう。
5. テン
 5-1. 状況により、筆者の考えをテンにたくす場合として、思想の最小単位をしめす自由なテンをうつ。
 5-2. 構文上高次元のテン(文のテン)を生かすためには低次元のテン(句のテン)はのぞく。
6. マル:思想の最小単位を組みあわせた最初の「思想のまとまり」をしめす。文が終わったら必ずマルをつける。
7. 段落:かなりまとまった思想表現の単位であり、足でいえば、各部分の境の関節が改行である。
8. :人体にたとえれば、足・腹・頭といった大きな部分であり、人体という全思想を形成するための大きな構想である。
9. 送りがな:語尾変化可能な部分以下をすべて送りがなにする。
10. 外国語のカナ表記
 10-1. 実際にそのカナを発音してみて、どれが言語により近いかをかんがえる。
 10-2. 日本人にとって発音しやすい(視覚的にもわかりやすい)方をとる。
11. 文をわかりやすくする工夫:カナばかり続いて読みにくいところができてしまったら、まず漢字、次いで傍点や力夕カナを考え、それでもダメ な場合には分かち書きをする。

さらに上級レベルとしては無神経でない文章、リズムと文体、取材法などがありますが、これらは本書をご覧ください。

初級レベルをまずは実践し、わかりやすい日本語そして達意の文書が書けるように訓練をつんでいきたいものです。なお初級・中級・上級のレベル分けはわたしがしたものです。


▼ 文献
本多勝一著『日本語の作文技術』(朝日文庫)、朝日新聞出版、1982年
日本語の作文技術 (朝日文庫)


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