世界遺産の基本をまなぶためのテキストです。

日本の世界遺産が17件、似たような特徴をもつ世界の遺産17件、代表的な世界の遺産10件の合計44件をわかりやすく解説しています。

記憶法の観点、特に、情報をファイルするという観点から見て本書はとても参考になりますのでここに紹介します。

本書の12ページには、日本の世界遺産17件の検索地図がでています。

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写真1 日本の世界遺産の検索地図


検索地図には、それぞれの世界遺産の場所とともに、目印となる写真と遺産の名称がしめされています。 

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写真2 目印写真&遺産名がしめされている


そして、それぞれの〔目印写真&遺産名〕の下にしめされているページにとぶと、それぞれの遺産のくわしい解説を見ることができます。

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写真3 解説ページの例


上記の検索地図上の〔目印写真&遺産名〕は、コンピュータ・ファイルにおける〔アイコン&ファイル名〕に似ています。ここにひとつのアナロジー(類似性)を見ることができます。

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図1 コンピュータ・ファイルの構造

コンピュータ・ファイルは、それぞれの情報(データ)に対して一つのアイコンとファイル名がつけられフォルダにファイルされます。〔アイコン&ファイル名〕は情報の表面構造(上部構造)であり、その下に情報の本体が下部構造として存在します。〔アイコン&ファイル名〕は情報のラベル(標識)の役割をになっており、わたしたちは、アイコンあるいはファイル名をダブルクリックすることにより情報の本体を見ることができます

これと似ていて、本書の検索地図上の〔目印写真&遺産名〕は〔アイコン&ファイル名〕(ラベル)の役割をはたし、指定されたページへとぶと、その世界遺産の解説、つまり情報の本体を見ることができます。ユーザーは、アイコンをダブルクリックするようにして解説ページをひらくことができるわけです。


 ■ 記憶法を実践する
記憶法の訓練としては次のようにします。

1.インプットする
本書をじっくり見て、各ページを心のなかにインプットします。

2.解説ページをイメージとして想起する
検索地図上の〔目印写真&遺産名〕を順番に見て、各遺産の解説ページを、イメージ(画像)としておもいだす訓練をします。 まず、各ページのレイアウト(構造)をおもいだし、つぎに、レイアウトのなかで、どのような情報(要素)がどこに配置されていたかをおもいだすようにします。

3.再確認する
よくおもいだせなかったところはページをひらいて再確認します。

ここでは想起訓練が大事です。〔目印写真&遺産名〕をみて、その中身(解説ページ)を想起することは情報の本体をよびおこすことであり、コンピュータでいうと、アイコンをダブルクリックして情報をひらくことに相当します。ダブルクリックでファイルがひらけるように、迅速に情報が想起できるように練習します。

このとき、心のなかに適切に情報がファイルされていれば想起もしやすいです。一方で、こような訓練をくりかえすことにより、さまざまな情報を心のなかによりよくファイルできるようになります。


■ 旅行ファイルをつくる - 応用例 -
たとえば旅行にでかけたら、見たり聞いたりした体験のひとまとまりごとに、印象的な1枚の目印写真を用意します。そして、それぞれの写真に見出し(言葉)をつけてフェイスブックにアップロードします。

この〔写真&見出し〕は〔アイコン&ファイル名〕の役割をはたすことになります。そして、〔写真&見出し〕を折にふれて見なおしながら、その下部構造である旅行体験を想起します。

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図2 旅行の体験ファイルの構造(写真&見出しのみがフェイスブックにあわわれる)
 
重要なことは、おもいつきでやみくもに写真をアップロードするのではなく、 体験のひとかたまりを意識してつくることです。体験のひとかたまりを心のなかにしっかりファイルするようにします。そのためには、元来は連続していた旅行体験を、要所要所で区切って、よくできた情報のユニットをつくることがもとめられます。

旅行体験をファイルしていくことは、大きな旅行ファイルを心のなかにつくることになり、このようにしておけばそのファイルはのちのち活用しやすくなります。

このようなファイリングの行為に世界遺産の知識もくわえていけば、旅行はいままで以上にたのしい体験になるでしょう。
 

文献:世界遺産検定事務局『きほんを知る世界遺産44 - 世界遺産検定4級公式テキスト -』世界遺産アカデミー、2014年4月8日