推理の方法がわかります。〈仮説→推論→検証〉とすすみます。何度みてもたのしめます。
NHK BS プレミアムで『刑事コロンボ』の再放送がはじまりました(注1)。

2021年9月18日の第1回は『殺人処方箋』が放送され、若々しいコロンボが高度な知能犯にいどんでいく様子がみごとにえがかれました。

わたしはかつて、「キーイメージ」「犯行の動機」「コロンボはいつどこでピンときたか」「犯行を裏付ける事実」「コロンボはいかにして決着をつけたか」の5つの観点から『刑事コロンボ』の分析をこころみ、それらを総合して、旧シリーズの全エピソードを解説しました(注2)。

なかでも、「コロンボはいつどこでピンときたか」はコロンボが仮説を発想した瞬間でありとても重要です。『殺人処方箋』では、精神科医のレイ=フレミングがアカプルコから自宅にもどってきてドアをあけたときに無言だったことをおもいだし、普通なら、「ただいま」などといって夫人をよぶはずだとコロンボはかんがえました。ここで、レイ=フレミングがあやしい(犯人ではないか)という仮説がたてられます。

そしてもし、レイ=フレミングが犯人であるとするとさまざまな推論ができ、その結果が実際に確認できれば仮説の蓋然性がたかまります。

さらに、このようなことをくりかえして仮説を検証しているとあたらしい事実がつぎつぎにみつかり、犯人が特定できるだけでなく、犯人の本性や人間関係、事件の背景までもがあきらかになります。当初 見当をつけた以上のことがわかってきます。

このように、〈仮説→推論→検証〉とすすむのが推理法であり、『刑事コロンボ』をみればこの方法がつぶさにわかります。これは、ややむずかしい用語でいうと〈仮説法→演繹法→帰納法〉といってもよく、このような3段階をふんで問題は解決されます。

『刑事コロンボ』を、この3段階を念頭においてみなおせばさらにふかく味わえるとおもいます。何度みてもたのしめるすぐれた作品です。



▼ 注1
NHK BS プレミアム『刑事コロンボ』
再放送情報 海外ドラマ『刑事コロンボ』BSプレミアム再放送


▼ 注2
田野倉達弘著『推理と対決 刑事コロンボ研究』Kindle 版、2020年
2021-09-24 19.24.11