生物と環境に原始地球は分化しました。生物-環境系に地球はなりました。遺伝的変異と環境変動が同時化して大進化がおこります。
なぜ、地球という星には生物そして人間がいるのでしょうか? その謎をとく鍵は地球のあゆみにあります。丸山茂徳監修『地球のあゆみ えほん 46億年のれきし』(PHP研究所)が参考になります。




地球には、菌類、植物、動物、人間など、190万種類以上の生き物がくらしています。まだみつかっていないものをいれると1億種類をこえるとかんがえられ、地球という星の最大の特色はこのような生物がいることです。


46億年前に太陽が生まれたあと、わたしたちがすむ星、地球が生まれました。
できたての小さな星だった地球は、近くにあったほかの小さな星と
ぶつかりあい、くっつきあって、少しずつ大きくなり、今の大きさになりました。
星どうしがぶつかりあうときのエネルギーは、すさまじいものでした。
岩はとけてドロドロのマグマとなり、地球にはマグマの海が広がっていきました。

地球の表面がさめると、うすい「陸」が生まれました。
ところが、そのあと隕石が2億年もふりつづき、地球の表面はまたマグマの海となったのです。
隕石はガスや水分をもたらし、それがぶつかりあい雲となって、
太陽の光が地球の表面にとどかなくなりました。
ふたたび地球がさめると、雲から雨がふりはじめました。
大量の雨は、川や湖、海になって地球の表面をおおいはじめました。
やがて、雨がやみ、雲が消えて空が晴れわたると、
えいようゆたかな水場では、生きものの「もと」ができました。

41〜42億年ほど前、生きものの「もと」は、
生きるためのエネルギーをつくり出し、自分をそっくりコピーできるようになりました。


最初の生物は「原核生物」であり、原核生物とは核膜にかこまれた核をもたない細胞(原核細胞)からなる生物で、「古細菌(アーキア)」と「真正細菌(バクテリア)」の2種類が最終的にいきのびました。

原始地球の原始大気の主成分は二酸化炭素であり、酸素はまだありませんでした。原始海洋は強酸性・高塩分・高濃度重金属で、生物にとっては猛毒であったことから、生物の「もと」は陸の水場でうまれたのではないかという仮説がたてられます。

最初の生命がうまれて12億年ほどあと、今から29億年ほど前までに光合成をおこなう細菌「シアノバクテリア」が登場し、あさい水辺にひろがり、大気中に酸素をふやしていきます。シアノバクテリアの集団が石灰成分を粘液でかためてつくった層状の岩石を「ストロマトライト」といい、オーストラリアなどで今もみることができます。シアノバクテリアの登場により、酸素を利用する生物への進化の道がひらかれます。

一方、28〜27億年前、地球の中心部の鉄でできた「コア」が熱対流をはじめて電流がうまれ、地球磁場が発生し、生物にとって有害な「高エネルギー放射線(宇宙線)」をふせげるようになります。

23〜21億年前になると、シアノバクテリアによって酸素が爆発的にふえ、やがて、酸素からできる「オゾン層」が地球をつつみはじめ、生物にとって有害な「紫外線」をよわめ、生物が陸上へひろがる道がひらかれます。

おなじころ、地球のほとんどがこおりつく「全球凍結」がおきます。地球には、さむい氷期と温暖な間氷期をくりかえすおおきな環境変動があり、このような大変動が生物の進化をうながします。

全球凍結がおわると「真核生物」がうまれます。核膜でつつまれた核をもつ細胞を「真核細胞」といい、真核細胞で体ができている生物を真核生物といい、今日みられる菌類・植物・動物などはみな真核生物です。真核生物は、古細菌(アーキア)や真正細菌(バクテリア)が細胞内共生し誕生したとかんがえられ、最初の真核生物はひとつの細胞だけでできていましたが、たくさんの細胞でひとつの体をつくる生物へやがて進化します。

19億年前には、「超大陸ヌーナ」が地殻変動により形成され、その後、いくつかの大陸にわかれます。しかし10億年前には、ちいさな大陸がまたあつまって「超大陸ロディニア」ができます。このような、大陸があつまったりはなれたりする大規模な地殻変動は3〜4億年かけてすすみます。

7億年ほど前には全球凍結がふたたびおこります。

その全球凍結がおわると、おおきな生物があさい海にはじめてうまれ、それは骨のないやわらかいうすい生物であり、なかでも、クラゲの仲間からたくさんの種類がうまれます。

5億4300万年ほど前になると、超大陸ロディニアでマグマが大規模に噴火し、大陸がさけはじめます。さけ目は「大陸リフト」とよばれ、そのマグマは、ウランなどの放射性物質をふくんでおり、生物を絶滅においこむ一方で、突然変異による生物進化を加速させたとかんがえられます。

5億4100万年ほど前には、かたい「殻」を体にもつ生物があらわれます。最初に目をもった「三葉虫」はとくにさかえ、やがて、ほかの生物をたべる「肉食動物」や、はじめて背骨をもった「アゴのない魚」があらわれます。今の南極点を中心にして「超大陸ゴンドワナ」が形成され、太陽光や陸の栄養がとどくあさい海がそのまわりにひろがったために爆発的に生物がふえたとかんがえられます。この時代の生物の多様化を「カンブリア爆発」といいます。

3億年ほど前になると、両生類の仲間から進化した「単弓類」があらわれ、それがやがて、哺乳類へ進化していきます。

2.5億年前(古生代末期)になると、大陸がさけるほどの大噴火がおき、寒冷化がすすみ、酸素をつくる植物がへり、大量絶滅がおこります。

大量絶滅のあと、あたたかい気候にふたたびなり、爬虫類のなかから最初の「恐竜」が登場します。

6550万年前(中生代末)、直径 10 km の隕石が今のメキシコにおち、たくさんの塵が空をおおってさむい気候にふたたびなります。そのころ恐竜は、鳥類へ進化したものをのぞき、すでに衰退しており、隕石衝突が、おおくの恐竜の絶滅へのとどめをさします。

その後、哺乳類が進化し生息域を一気にひろげます。最初のサルもあらわれ、鼻先のとがった「原猿」と、鼻の穴が横むきの「新世界ザル」、下むきの「旧世界ザル」にわかれ、旧世界ザルはさらに、「類人猿」と「人類」の祖先にわかれていきます。

700万年前になると、最初の人類「猿人」がアフリカで出現します。サルと人類のちがいは、尻尾がなく足でたってあるけることです。猿人の学名にはサルを意味する「ピテクス」がつき、代表的な猿人として「アウストラロピテクス」がいます。

約240万年前になると「原人」があらわれ、約30万年前には「旧人」がわらわれ、約20万年前には、「人間(新人、ヒト、ホモ・サピエンス)」があらわれます。人間は、精巧な道具をつくり、彫刻や壁画をのこし、動植物をそだて、言葉を発達させ、科学・技術をうみだし、宇宙へとこぎだします。地球は、文明の星になりました。






以上の事象からどんな仮説がたてられるでしょうか?

生物の大量絶滅と生物の大進化は密接にかかわっており、大量絶滅のすぐあとに大進化がおこります。たとえば先カンブリア時代末期に大量絶滅がおこるとカンブリア爆発がおこり、古生代末期に大量絶滅がおこると爬虫類が進化し、中生代末期に大量絶滅がおこると哺乳類が進化しました。大量絶滅がおこると、あらたに生じた空白領域をうめるように大進化がおこるのであり、大量絶滅と大進化は連続しています。

またこのことと関連して、地球の環境は大変動をくりかえしており、それにともなって大量絶滅と大進化がおこります。たとえば酸素の発生・増減、磁場の形成・変動、氷期・間氷期のサイクル、大陸の離合集散、大規模噴火活動、隕石の衝突など、わたしたちがこれまでかんがえてきたよりもはるかにおおきな変動が地球にはたくさんありました。

一方で、生物の進化には、遺伝的な変異がかかわっていることがよくしられています。

これらのことから、遺伝的変異と環境変動の同時化(シンクロナイズ、同調)によって大進化がおこるのではないかという仮説がたてられます。大進化は、遺伝的変異だけでおこるのではなく(遺伝的変異だけが原因ではなく)、環境変動だけによっておこるのでもなく(環境変動だけが原因ではなく)、両者が相まっておこるのであり、一原因一結果といった単純思考では理解できません。

最初の生物は、約41億年前に発生したとかんがえられ、このときに原始地球は、生物と環境に分化し、生物-環境系(生物と環境がつくるひとつの体系(システム))が成立しました(図)。生物-環境系では、環境が生物に作用する(影響する)だろうということはすぐにわかりますが、他方で、植物が酸素をうみだすなど、生物も環境に作用します。環境が生物をかえるだけでなく、生物も環境をかえます。環境が生物に作用し、生物が環境に作用し、環境が生物を限定し、生物が環境を限定し、環境が主で生物が従でもなければ、生物が主で環境が従でもなく、環境が先で生物が後でもなければ、生物が先で環境が後でもなく、生物と環境は同等・相即、環境即生物・生物即環境であり、両者が一体になって体系をつくります。


201230 単純モデル
図 生物-環境系のモデル


こうして、環境が生物を選択することだけによって大進化がおこるのでもなく、生物の遺伝的変異だけでで大進化がおこるのでもなく、生物の変異と環境の変動が同時化して大進化がおこるのだとかんがえられます。生物と環境の共鳴によって大進化がおこるといってもよいでしょう。このような仮説がただしいとすると従来の弱肉強食説・生存競争説は否定されます。

したがって生物-環境系それ自体のおおきな変化が大進化であり、すなわちそれが地球の進化です。

このようにして地球は、火星や金星など、ほかの星とはまったくことなる星になりました。

そしてさらに重要なことは、約20万年前に、人間(ホモ・サピエンス)が出現したことです。人間は、技術を発明し、農業をおこし、国家を形成し、宗教・学問・芸術を創造しました。つまり文明をうみだしました。人間とは文明人です。

地球にとって文明の発生は、最初の生物が誕生したときに匹敵するおおきな出来事です。地球のあゆみは、まったくあたらしい段階にはいりました。人間は、科学・技術を発展させ、生物-環境系から逸脱し、独自の世界をつくりつつあります。それは「文明系」といってもよいでしょう。地球は今、生物-環境系から文明系に移行しつつあります。

以上のことから、地球のあゆみはつぎの3段階にまとめることができます。地球進化における大変革期をわたしたち現代人はいきています。


原始地球 → 生物-環境系 → 文明系






丸山茂徳監修『地球のあゆみ えほん 46億年のれきし』(PHP研究所)は、丸山茂徳著『地球と生命の誕生と進化』(清水書院)および丸山茂徳著『全地球史アトラス』(YouTube)の姉妹編であり、地球進化の全体像を短時間でつかむために最適です。絵本ですが科学的な手続きをふまえたた立派な本です。

絵本や図鑑などの児童書は、その分野の概要と要点をつかむために有用です。とくに、自分にとってはあたらしい未知な分野を修得したいときに、まず、図書館や書店の子供コーナーにいくとよいでしょう。初学者にとっては専門的な書籍はわかりにくく、またウェブサイトをみているだけだと断片的な知識しかえられません。 児童書をみれば全体がすぐにわかるので学習や情報処理を一気に加速することができます。速読法の練習にもなります。その分野の歴史的人物・重要人物の伝記などもたいへん参考になります。




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▼ 参考文献
丸山茂徳・監修/山下美樹・文/いとうみちろ・絵『地球のあゆみ えほん 46億年のれきし』PHP研究所、2017年
丸山茂徳著『地球と生命の誕生と進化』(GEOペディア)、清水書院、2020年6月5日
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