標高が気温をきめます。森林限界をこえます。高地への適応がみられます。
咲くやこの花館の第4室は世界的にみてもめずらしいすぐれた「高山植物室」です。高山帯を擬似体験できます。
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
「メコノプシス」(ケシ科)は、「ヒマラヤの青いケシ」ともよばれ、アジアの高地(標高3500mあたりから上部)に約80種が分布、花色は、青のほか、紫・黄・赤・白などがあり、人々を魅了します。
「コマクサ」(ケシ科)は、「高山植物の女王」ともよばれ、日本の中部地方ではおもに標高2500m以上、北海道では1500m以上、サハリンでは数百m程度に生育します。自生地は、ほかの植物が生育できないような砂礫がうごくきびしい環境であり、地上部からは想像できない50〜100cmほどのながい根をはっています。北海道大雪山にのみ生育する天然記念物ウスバキチョウの幼虫はコマクサを食草とします。和名は、花の形が馬(駒)の顔に似ていることに由来します。
「クロユリ」(ユリ科)は、みた目はうつくしいですがにおいは強烈です。ハエが花粉をはこびます。
「ザンセツソウ」(キク科)は、コケのようにみえますがコケではなく、薄黄色のちいさな花を初夏にさかせます。ニュージーランドの高山の尾根に生育します。
「エーデルワイス」(キク科)は、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の挿入歌により世界にしられました。もともとはこの歌は、ドイツ陸軍山岳部隊の兵士らが第二次世界大戦中にうたった歌でした。しろい綿毛は苞葉(ほうよう)であり、花は中央の黄色い筒状の花序の部分です。ヨーロッパの登山家や観光客にとても したしまれています。
「ソルダネラ・アルピナ」(サクラソウ科)は、アルプスの高山帯で、6月頃の雪解けとともに開花します。フリルのついた愛らしい花と円形のちいさな葉をもつかわいい植物です。イワカガミダマシの名が日本ではあります。
「アヒナヒナ」(キク科)は、ハワイの高山植物であり、マウイ島・ハレアカラ山(標高3055m)の頂上付近のきびしい環境に生育し、十数年かけて花をさかせ、種子をのこして枯れます。
山をのぼっていくと、しだいに森林はまばらになり、森林限界をついにこえ、天空の世界が一気にひろがります。登山家やトレッカーの誰もが感動をおぼえます。こんなにうつくしい風景が山の上にあったとは。このような、樹木がそだたない高所地帯は高山帯とよばれ、そこにいきる植物が高山植物です。
山では、標高が100mたかくなるごとに気温が約0.6℃さがるため、たとえばヒマラヤ山脈では、山麓は亜熱帯ですが、標高がたかくなると温帯になり、さらにたかくなると高山帯になり、最上部は寒帯になります。つまり標高が気温をきめ、標高で気候が変化します。
植物は、気候によって生育が制限されるため、気候が変化するとことなる植物がみられ、植物の分布は垂直方向でいくつかにわけることができます(植物の垂直分布、図1)。
このような垂直分布は農作物と家畜にもみられ、たとえばアンデス高地では、カカオ・サトウキビ・トウモロコシ・コーヒー・コムギ・ジャガイモ・オオムギなどに垂直分布がみられます(図2)。
気温がさがると、空気中にふくまれる水蒸気量もへるため、高山地域では標高がたかくなるにつれて降水量がすくなくなる傾向もあります。また空気中のちりや水蒸気がすくないので地表にとどく太陽光(日射)がつよく、平地よりも紫外線がおおくふりそそぎます。このような環境に適応するために高山植物はさまざまな工夫をしています。高山植物の成長期間は年に3〜4ヵ月程度とみじかく、背丈のひくいものや毛のあるものがおおく、水をもとめて根をふかくはります。「防寒具」として雪を利用するものもあります。
なおヒマラヤなどの本格的な高山帯にいくときには高山病に気をつけなければなりません。高山では、気圧がひくく酸素がすくないために頭痛やだるさ・息ぐるしさなどの症状がおこり、おもくなると肺や脳に水がたまり、最悪の場合は死にいたります。山をのぼるときには時間をかけてゆっくり体をならしていくことがもとめられます。しかし日本人はとくに、比較的短期間の旅行日程できていることがおおく、「せっかく来たのだから」「帰国日がせまっている」などとかんがえ無理して先にすすんでしまい高山病になることがおおいです。高山病の症状があらわれても標高のひくいところへもどればなおるので余裕のある計画をたててでかけたほうがよいでしょう。
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▼ 注1
咲くやこの花館
咲くやこの花館【公式】動画チャンネル
▼ 注2
咲くやこの花館での撮影日:2020年10月7日
▼ 注3:参考文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる!自然環境〈4〉冷帯・高山気候』少年写真新聞社、2013年
▼ 参考文献
『咲くやこの花館ガイドブック』財団法人大阪市公園協会発行、1990年
村瀬哲史著『村瀬のゼロからわかる地理B 系統地理編』学研プラス、2018年
▼ 関連書籍
▼ 関連 DVD
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
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「メコノプシス」(ケシ科)は、「ヒマラヤの青いケシ」ともよばれ、アジアの高地(標高3500mあたりから上部)に約80種が分布、花色は、青のほか、紫・黄・赤・白などがあり、人々を魅了します。
「コマクサ」(ケシ科)は、「高山植物の女王」ともよばれ、日本の中部地方ではおもに標高2500m以上、北海道では1500m以上、サハリンでは数百m程度に生育します。自生地は、ほかの植物が生育できないような砂礫がうごくきびしい環境であり、地上部からは想像できない50〜100cmほどのながい根をはっています。北海道大雪山にのみ生育する天然記念物ウスバキチョウの幼虫はコマクサを食草とします。和名は、花の形が馬(駒)の顔に似ていることに由来します。
「クロユリ」(ユリ科)は、みた目はうつくしいですがにおいは強烈です。ハエが花粉をはこびます。
「ザンセツソウ」(キク科)は、コケのようにみえますがコケではなく、薄黄色のちいさな花を初夏にさかせます。ニュージーランドの高山の尾根に生育します。
「エーデルワイス」(キク科)は、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の挿入歌により世界にしられました。もともとはこの歌は、ドイツ陸軍山岳部隊の兵士らが第二次世界大戦中にうたった歌でした。しろい綿毛は苞葉(ほうよう)であり、花は中央の黄色い筒状の花序の部分です。ヨーロッパの登山家や観光客にとても したしまれています。
「ソルダネラ・アルピナ」(サクラソウ科)は、アルプスの高山帯で、6月頃の雪解けとともに開花します。フリルのついた愛らしい花と円形のちいさな葉をもつかわいい植物です。イワカガミダマシの名が日本ではあります。
「アヒナヒナ」(キク科)は、ハワイの高山植物であり、マウイ島・ハレアカラ山(標高3055m)の頂上付近のきびしい環境に生育し、十数年かけて花をさかせ、種子をのこして枯れます。
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山をのぼっていくと、しだいに森林はまばらになり、森林限界をついにこえ、天空の世界が一気にひろがります。登山家やトレッカーの誰もが感動をおぼえます。こんなにうつくしい風景が山の上にあったとは。このような、樹木がそだたない高所地帯は高山帯とよばれ、そこにいきる植物が高山植物です。
山では、標高が100mたかくなるごとに気温が約0.6℃さがるため、たとえばヒマラヤ山脈では、山麓は亜熱帯ですが、標高がたかくなると温帯になり、さらにたかくなると高山帯になり、最上部は寒帯になります。つまり標高が気温をきめ、標高で気候が変化します。
植物は、気候によって生育が制限されるため、気候が変化するとことなる植物がみられ、植物の分布は垂直方向でいくつかにわけることができます(植物の垂直分布、図1)。
このような垂直分布は農作物と家畜にもみられ、たとえばアンデス高地では、カカオ・サトウキビ・トウモロコシ・コーヒー・コムギ・ジャガイモ・オオムギなどに垂直分布がみられます(図2)。
気温がさがると、空気中にふくまれる水蒸気量もへるため、高山地域では標高がたかくなるにつれて降水量がすくなくなる傾向もあります。また空気中のちりや水蒸気がすくないので地表にとどく太陽光(日射)がつよく、平地よりも紫外線がおおくふりそそぎます。このような環境に適応するために高山植物はさまざまな工夫をしています。高山植物の成長期間は年に3〜4ヵ月程度とみじかく、背丈のひくいものや毛のあるものがおおく、水をもとめて根をふかくはります。「防寒具」として雪を利用するものもあります。
なおヒマラヤなどの本格的な高山帯にいくときには高山病に気をつけなければなりません。高山では、気圧がひくく酸素がすくないために頭痛やだるさ・息ぐるしさなどの症状がおこり、おもくなると肺や脳に水がたまり、最悪の場合は死にいたります。山をのぼるときには時間をかけてゆっくり体をならしていくことがもとめられます。しかし日本人はとくに、比較的短期間の旅行日程できていることがおおく、「せっかく来たのだから」「帰国日がせまっている」などとかんがえ無理して先にすすんでしまい高山病になることがおおいです。高山病の症状があらわれても標高のひくいところへもどればなおるので余裕のある計画をたててでかけたほうがよいでしょう。
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▼ 注1
咲くやこの花館
咲くやこの花館【公式】動画チャンネル
▼ 注2
咲くやこの花館での撮影日:2020年10月7日
▼ 注3:参考文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる!自然環境〈4〉冷帯・高山気候』少年写真新聞社、2013年
▼ 参考文献
『咲くやこの花館ガイドブック』財団法人大阪市公園協会発行、1990年
村瀬哲史著『村瀬のゼロからわかる地理B 系統地理編』学研プラス、2018年
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