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「太陽系」展示コーナー
国立科学博物館・地球館(地下3階)
(交差法で立体視ができます)
分化しつつ体系化します。法則がはたらき個性がうまれます。普遍性と多様性があります。
国立科学博物館・地球館の地下3階は「自然のしくみを探る」展示フロアであり、「太陽系」に関する展示・解説コーナーもあります(注1)。太陽系は、太陽と、そのまわりをまわる8個の惑星や多数の小惑星や彗星、それぞれの惑星のまわりをまわる衛星とからなりたちます。太陽は、みずから光をはなつ恒星ですが、ほかの天体は光をはなたず、太陽の光を反射してひかります。近年、天体望遠鏡や探査機による観測、地球にやってきた隕石の研究などから太陽系についてしだいにくわしくわかってきました。

ステレオ写真は交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -



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20cm屈折赤道儀(天体望遠鏡)



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南丹隕石
(小惑星から、1990年、中国で発見)



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ナクラ隕石
(火星から、1911年落下、エジプト)



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ダラールガーニ400隕石
(月から、1998年発見、リビア)



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北西アフリカ032隕石
(月から、1999年発見、モロッコ)



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アポロ11号が採集した月の石
(1969年)



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太陽の模型



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太陽の構造



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各惑星の解説






「20cm屈折赤道儀(天体望遠鏡)」は、1931年に、日本光学工業株式会社 (現:株式会社ニコン)が製作した日本で最初の本格的な天体望遠鏡であり、国立科学博物館(当時は東京科学博物館)の建物が上野にできてから2005年までの73年間にわたり、本館(現在の日本館)屋上の天文ドームで天体観望公開につかわれていました。1946年〜1991年には、9000枚にのぼる太陽黒点のスケッチ観測がおこなわれ、貴重な記録となりました。

「南丹隕石」は、アジア地域で最大規模の「隕石雨」のなかの最大級の隕石であり、中国のふるい文献に、「1516年に隕石雨が降った」という記録があります。ニッケルを7%ふくむ鉄との合金であり、表面はさびていますが、内部は、美しい金属光沢をもち、小惑星の内部が一旦とけ、金属があつまってできたのではないかという仮説がたてられています。隕石のおおくは小惑星のかけらです。

「ナクラ隕石」は、1911年に、エジプト・アレキサンドリアにふった隕石雨から回収されました。おもに緑色をした粗粒の普通輝石という鉱物でできた種類の隕石であり、地球の岩石に似ています。この隕石が結晶化した年代は約13億年前と非常にわかく、火成活動が最近まであった惑星でできたことを示唆し、またとりだされたガスの組成が、アメリカ・バイキング火星探査機が測定した火星大気のデータとよく一致することから、火星からきたのではないかという仮説がたてられます。

「ダラールガーニ400隕石」は、月からきた隕石であり、月の角礫岩です。月の高地の岩石は、しろい斜長岩質の角礫岩でおもにできています。斜長岩質や衝突溶融岩質のちいさな岩片がはいっており、月の表面の岩石が、隕石の衝突で破砕されてこまかい岩片となり、熱や圧力でふたたびかたまってできたのではないかという仮説がたてられています。

「北西アフリカ032隕石」は、月からきた隕石であり、月の玄武岩(火成岩)です。固化年代は約28億年であり、月では、20〜30億年前に、玄武岩質マグマが地下からながれだし、「月の海」ができました。玄武岩は、月の高地の岩石にくらべて色がくろいため、地球からみると海のようにみえます。

「アポロ11号が採集した月の石」は、人類初の有人月面着陸・探査をしたアポロ11号によって「静かの海」で採集され、日米親善のために日本におくられたものです。

「太陽」は、直径は140万kmで地球の109倍、質量は地球の33万倍、水素とヘリウムでほとんどができたガスの巨大なかたまりであり、中心の温度は1600万℃、圧力は2400億気圧、水素原子核からヘリウム原子核をつくる核融合反応がおきています。大気の最外層には高温のコロナがあり、太陽風のみなもとになっています。

「水星」は、太陽からの距離は約5800万km(0.39天文単位)と太陽に一番ちかく、直径は4900km(地球の約40%)の小型の惑星であり、太陽をまわる公転周期(水星の1年)は88日、自転周期は59日です。大気も海もないため、昼間の温度は赤道部分で最高430℃に達し、夜は、−190℃までひえこみます。表面には、おおくのクレーターがあり、たくさんの隕石がふりそそいだことをしめします。

「金星」は、太陽から0.72天文単位の距離にあり、直径は1万2000kmで地球とほぼおなじおおきさ、公転周期は225日、自転周期は243日です。90気圧もの大量の大気(地球の90倍)があり、その成分の95%以上が二酸化炭素であり、温室効果により表面温度は480℃の高温であり、大気の上層、約50〜70kmのあいだには濃硫酸の粒でできた雲があります。隕石起源のクレーターのほかに火山性のカルデラも存在し、地質活動がみられます。「宵の明星」「明けの明星」としてふるくから したしまれています。

「地球」は、太陽から約1億5000万km(1天文単位)の距離にあり、直径は1万2800km、質量は6兆トンの10億倍、中心から、鉄の核(内核と外核)・マントル・地殻という構造をもちます。1気圧の大気は約80%が窒素、約20%が酸素であり、地球全体の平均気温は15℃、表面の70%が海でおおわれています。最大の特徴は、人類をはじめとするさまざまな生物がいることであり、酸素は、植物がうまれて光合成をはじめたことにより生じました。

「火星」は、太陽からの距離は1.52天文単位、公転周期は1.88年、自転周期は約1日、直径は6800kmと地球の半分ほど、大気は、地球の100分の1以下と うすく、その95%は二酸化炭素であり、夏の表面気温は平均−60℃、冬は−120℃です。表面には、砂や岩の鉄さびのために赤褐色にみえる地域とややうすぐらい地域とがあり、前者が表面の7割をしめ、おおくのクレーターのほか、死火山群や大峡谷・河川跡などがみられ、太陽の水と大気が古代には存在したとかんがえられます。

「木星」は、太陽系最大の惑星であり、直径は地球の11倍、質量は地球の318倍であり、水素(90%)とヘリウム(10%)でできており、外側は気体ですが中心にちかづくにつれて液体そして液体金属状の水素になります。10時間というみじかい周期で自転し、赤道と平行に秒速100km以上の速さの風がふいているため縞模様がみえます。大赤斑は、この流れのなかにできた巨大な渦巻きです。

「土星」は、太陽系で2番目におおきな惑星であり、直径は地球の9.4倍、質量は地球の95倍、水素とヘリウムからおもにできたガス惑星(木星型惑星)です。環をもつことが特徴的であり、その半径は、あかるい部分で約14万km、幅は4万4000kmですが、その厚みは1km以下しかなく、数cmから数m程度のたくさんの氷や岩でできているとかんがえられます。

「天王星」は、太陽からの距離は19天文単位、直径は地球の4.0倍、質量は15倍、氷と岩でできた中心核とおもに水素の外層部とでできているとかんがえられます。自転軸と公転面の傾きは98度であり、ほとんど横だおしの状態で自転しているのが特徴的です。

「海王星」は、太陽からの距離は30天文単位、直径は地球の3.9倍、質量は17倍、公転周期は165年であり、天王星とよく似た惑星です。大気中のメタンが赤い光を吸収するために青くみえ、これは、表面温度が−200℃以下の超低温である天王星や海王星の特徴です。

「冥王星」は、9番目の惑星とされていましたが、月よりも直径がちいさく、地球の0.2%程度しか質量がなく、おなじような軌道をまわっている天体が多数あることから、惑星ではなく太陽系外縁天体のひとつとすることが2006年の国際天文学連合で決議されました。

このように、おなじ太陽系の天体であってもそれぞれに個性があり、惑星には、小型岩石惑星・大型ガス惑星・中型氷惑星といった多様性がみられます。このような多様性はどのようにしてうまれたのでしょうか?

  • 小型岩石惑星:水星、金星、地球、火星
  • 大型ガス惑星:木星、土星
  • 中型氷惑星 :天王星、海王星


銀河系内の宇宙空間には、「超新星爆発」や「赤色巨星」から放出された水素とヘリウムを主成分とする「星間雲」とよばれるガスの雲がただよっています。超新星爆発や赤色巨星は、恒星が進化して死をむかえるときに生じます。

その星間雲の一部は、それ自体の重力によって収縮し、星間雲の一部が回転していると遠心力がはたらき、「原始惑星系円盤」とよばれる円盤状の構造ができます。このなかにある塵のおおきさは当初は0.1マイクロメートル程度かそれ以下ですが、微粒子同士はぶつかりあい、くっついてしだいにおおきくなっていきます。そのかたまりのおおきさが1〜10kmよりもちいさいときは電気の力(ファン・デル・ワールス力など)がおもに作用しますが、それよりもおおきくなると重力が支配的な力となり、かたまりの合体・成長がつづき、惑星ができます。

このような惑星の成長は、太陽にちかい領域では、温度がたかく固体の氷が存在しえないために惑星の材料となる物質は岩石だけであり、比較的ちいさい質量の「原始惑星」が数十個まずうまれ、それらが「巨大衝突」をくりかえし、4個の小型岩石惑星に最終的におちつきました。

一方、太陽からはなれた領域では固体の氷が存在し、太陽にちかい領域よりも惑星をつくる材料がおおく、岩石成分よりも水のほうが質量で2〜3倍ほどおおきいため、氷を主成分とする大型惑星がうまれます。大型惑星は、周囲にあるガスを重力であつめ、ガスが付加するとさらに重力がつよまり、さらにガスがあつまり、こうした「暴走的過程」によって大型ガス惑星がうまれました。

そして太陽からさらにはなれた領域では、固体物質があつまって原始惑星ができるのはおなじですが、太陽からはなれた外側の軌道になるほど惑星の成長に時間がかかるため、それらが誕生したのは大型惑星よりももっとあとのことであり、そのころには、周囲にガスはのこっておらず、ガスをほとんどもたない氷惑星になりました。現在の氷惑星は、水素・ヘリウムガスを大型ガス惑星からとりのぞいた裸の姿とかんがえてよいでしょう。






このようにして、太陽にちかいところには小型岩石惑星が、その外側には大型ガス惑星が、もっともはなれたところには中型氷惑星が存在するという惑星の空間配置ができあがり、それには、氷が存在したかどうかが重要であり、それは、太陽からはなれるほど温度がさがるという単純な現象を反映しています。

こうして、原始惑星系円盤は8つの惑星に分化し、他方で、惑星の軌道と運動はケプラーの法則(注2)にしたがい、太陽と惑星は全体が体系化(システム化)されました。分化しつつ体系化したという歴史が太陽系にあります。

このような太陽系の歴史において、基本的にはたらいてきて今でもはたらいている力は重力(万有引力)であり、太陽系は重力がつかさどる体系だといってよいでしょう。すべての惑星が球形をしているのもコンパクトな形に重力がした結果です。

重力(万有引力)は、ニュートン(1643-1727)があきらかにし(注3)、彼は、みずからかんがえた万有引力の法則と運動の法則をつかってケプラーの法則がみちびきだせることをしめしました。

このように、太陽系の根本には法則があり、法則によって太陽系は成立しており、太陽系の普遍性をここにみとめることができます。ところが一方で、惑星にはそれぞれ個性があり、皆ことなり、太陽系には多様性もあります。

すなわち同一の法則がはたらいても条件(環境)によって個性がうまれるのであり、環境がさまざまである以上、個性がうまれるのは当然のなりゆきです。つまり宇宙には、法則的側面と個性的側面、普遍性と多様性という2つの側面があり、これらは、いっけん矛盾するようですが矛盾せず、したがって宇宙(世界)を認識するときには法則追究と個性把握という2つのアプローチが必要です。

わたしたち人間がいきる地球の世界を理解するときも、普遍性と多様性という2つの観点をもつとよいでしょう。地球物理学者は法則性をもっぱら追究し、地理学者や歴史学者は地域性(個性)をもっぱら追究するかもしれませんが、普遍性と多様性という二面性は地球にもあるのであり、どちらか一方でなりたっているわけではありません。地球も、分化しつつ体系化するひとつの場にほかなりません。





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▼ 注2
ケプラーの法則
  • 第1法則:惑星は太陽を一つの焦点とし、惑星によりそれぞれ決まった形と大きさの楕円軌道上を公転する。
  • 第2法則:太陽と惑星を結ぶ線分は、等しい時間には惑星ごとにそれぞれ等しい面積をおおいながら公転する。
  • 第3法則:惑星の太陽からの平均距離の3乗と公転周期の2乗との比は、惑星によらず一定である。
(「天文学事典」公益財団法人 日本天文学会)


▼ 注3
万有引力(重力)の法則
ニュートン(I. Newton)が発見した物体間にはたらく引力の法則です。質量をもつ2つの物体の質量の積に比例し、物体間の距離の2乗に反比例してはたらく引力を万有引力あるいは重力といいます。ただし地球上の物体にはたらく力を議論するときは、地球による万有引力と地球の自転による遠心力の合力が重力とよばれているので注意が必要です。
(「天文学事典」公益財団法人 日本天文学会)


▼ 参考文献
国立科学博物館編集『地球館ガイドブック』国立科学博物館、2016年
井田茂・中本泰史著『ここまでわかった新・太陽系』(サイエンス・アイ新書)、SBクリエイティブ、2009年
2021-06-30 17.55.10