帰納法をつかって法則性をあきらかにします。演繹法をつかって予測します。第5波がやってきます。
新型コロナウイルス感染症対策にかかわる緊急事態宣言が沖縄県をのぞく9都道府県で2021年6月20日をもって解除されました。しかし今日の状況は、「第4波」をまねいた前回の宣言解除時とよく似ており、感染の再拡大が不安視されています。
第1波から第4波までのうごきを、Yahoo! ニュースオリジナル「THE PAGE」がグラフにうまくまとめており参考になります(図1)。厚労省と東京都が発表した膨大なデータを集計しました。
緊急事態宣言はこれまで、第1波・第3波・第4波の感染拡大に対してだされ、不要不急の外出自粛、飲食店・商業施設などに対する休業要請・時短要請などがおこなわれ、いずれも効果があがり感染者数が減少に転じました。第2波のときは緊急事態宣言はだされませんでしたが不要不急の外出自粛などのおねがいがなされ、ある程度の効果がみられました。
ところが第1波と第3波のときにみられたように緊急事態宣言を解除したあとはふたたび感染が拡大しました。「リバウンド」がおこりました。
図1をみれば、緊急事態宣言を解除すると(対策をゆるめると)リバウンドがおこる(つぎの波がくる)という一般的傾向(法則性)があることがわかります。この法則性から、今回の第4波のあとにも「波」がくるだろうと予想され、これまでの波の傾向からみてそのピークは8月ごろになるだろうと予測できます。
現在、ワクチン接種が全国ですすんでいますが、2回接種をおえた人は全体の1割にもみたず、その効果があらわれるにはあと半年はかかるといわれています。
また第2波のときは、感染対策をしつつも「Go To トラベル」が実施され、「ブレーキとアクセルを同時にふんでいる」と政府を批判する声が各地であがり、実際、つぎの第3波をまねきました。この「Go To トラベル」に相当するものが今回は東京オリンピック・パラリンピックです。
さらに現在、「英国型(アルファ型)」の変異ウイルスよりも感染力がつよいとされる「インド型(デルタ型など)」の変異ウイルスが増加傾向にあり、おおくの国民がワクチンをうった英国でもインド型の影響により再拡大に転じたという報道があり、感染拡大が日本でも懸念されます。
このように、ワクチンの効果がでるのはまだ先であり、ビッグイベントが開催され、変異ウイルスが増加していることもふまえると、図1からよみとった法則性からの予測は確度がたかいといえます。
Yahoo! ニュースオリジナル「THE PAGE」が、厚労省と東京都が発表した膨大なデータを集計してとてもわかりやすいグラフをつくってくれました。膨大なデータをグラフにするのは統計学の基本であり、この方法は帰納法といえます。帰納法は、個別から一般にすすむ論理であり、法則性をあきらかにします。
そして法則性があきらかになると、こんどは、それにもとづいて未来が予測できます。これは、一般から個別にすすむ論理であり演繹法です。
こうして、帰納法をつかって法則性をあきらかにし、演繹法をつかって未来を予測します。予測ができれば対策がたてられます。そして予測がただしかったかどうかをあとでたしかめます。たしかめる作業は検証といってもよいでしょう。
新型ウイルス感染爆発のようなおおきな課題に対してはこのような冷静な論理がとくに必要です。
▼関連記事
新型コロナウイルスの感染拡大と〈仮説法→演繹法→帰納法〉
みえにくい感染症 - 新型コロナウイルス(Newton 2020.4-5号)-
論理の3段階モデル - 新型コロナウイルスの感染拡大 -
新型コロナウイルスの感染拡大がつづく -「基本再生産数」(Newton 2020.6号)-
コウモリ起源説 -「コロナウイルスはどこから来たのか」(日経サイエンス 2020.05号)-
長期的視野にたつ -「感染拡大に立ち向かう」(日経サイエンス 2020.06号)-
ウイルスにうまく対処する -「COVID-19 長期戦略の模索」(日経サイエンス 2020.07号)-
データを蓄積する - 新型コロナの「抗体検査」(Newton 2020.08号)-
緩衝帯をもうけてすみわける -「新型コロナが変えた生態系と地球環境」(Newton 2020.08号)-
仮説をたてて検証する -「ゲノム解析でウイルスの謎に挑む」(日経サイエンス 2020.08号)-
状況を把握する -「感染・増殖・防御の仕組み」(日経サイエンス 2020.08号)-
東京オリンピックにはまにあわない -「加速する新型コロナのワクチン開発」(Newton 2020.09号)-
世界各国の対策 -「COVID-19 終わらないパンデミック」(日経サイエンス 2020.09号)-
抗体検査 -「新型コロナウイルス 免疫系の戦い」(日経サイエンス 2020.10号)-
新型コロナワクチン -「冬こそ警戒 新型コロナ」(Newton 2021.1号)-
新型コロナ治療薬 -「冬こそ警戒 新型コロナ」(Newton 2021.1号)-
感染検査 -「冬こそ警戒 新型コロナ」(Newton 2021.1号)-
「新型コロナのワクチンがいよいよ実用化」(Newton 2021.2号)
短期的視点と長期的視点 -「新型コロナの変異種」(Newton 2021.3号)-
100分 de 名著:アルベール=カミュ『ペスト』(NHK・Eテレ)
往来拡大の歴史 - 池上彰・増田ユリヤ著『感染症対人類の世界史』-
感染症が歴史をかえる -「DNAが明かす疫病史」(日経サイエンス 2021.06号)-
▼ 参考文献
「【図解】東京など7都道府県が『宣言』から『重点措置』へ 要請内容はどう変わる?」Yahoo!ニュースオリジナル THE PAGE、2021年6月17日
「7月に「第5波」の恐れ、インド型を懸念『水面下で拡大中と考えた方がいい』」読売新聞オンライン、2021年6月20日
▼ 追記(2021年9月10日)
NHK 特設サイト「新型コロナウイルス」などによると8月中旬に第5波はピークをむかえました。
第1波から第4波までのうごきを、Yahoo! ニュースオリジナル「THE PAGE」がグラフにうまくまとめており参考になります(図1)。厚労省と東京都が発表した膨大なデータを集計しました。
図1 新型コロナ第1波から第4波までの動き(THE PAGE より引用)
緊急事態宣言はこれまで、第1波・第3波・第4波の感染拡大に対してだされ、不要不急の外出自粛、飲食店・商業施設などに対する休業要請・時短要請などがおこなわれ、いずれも効果があがり感染者数が減少に転じました。第2波のときは緊急事態宣言はだされませんでしたが不要不急の外出自粛などのおねがいがなされ、ある程度の効果がみられました。
ところが第1波と第3波のときにみられたように緊急事態宣言を解除したあとはふたたび感染が拡大しました。「リバウンド」がおこりました。
図1をみれば、緊急事態宣言を解除すると(対策をゆるめると)リバウンドがおこる(つぎの波がくる)という一般的傾向(法則性)があることがわかります。この法則性から、今回の第4波のあとにも「波」がくるだろうと予想され、これまでの波の傾向からみてそのピークは8月ごろになるだろうと予測できます。
現在、ワクチン接種が全国ですすんでいますが、2回接種をおえた人は全体の1割にもみたず、その効果があらわれるにはあと半年はかかるといわれています。
また第2波のときは、感染対策をしつつも「Go To トラベル」が実施され、「ブレーキとアクセルを同時にふんでいる」と政府を批判する声が各地であがり、実際、つぎの第3波をまねきました。この「Go To トラベル」に相当するものが今回は東京オリンピック・パラリンピックです。
さらに現在、「英国型(アルファ型)」の変異ウイルスよりも感染力がつよいとされる「インド型(デルタ型など)」の変異ウイルスが増加傾向にあり、おおくの国民がワクチンをうった英国でもインド型の影響により再拡大に転じたという報道があり、感染拡大が日本でも懸念されます。
このように、ワクチンの効果がでるのはまだ先であり、ビッグイベントが開催され、変異ウイルスが増加していることもふまえると、図1からよみとった法則性からの予測は確度がたかいといえます。
*
Yahoo! ニュースオリジナル「THE PAGE」が、厚労省と東京都が発表した膨大なデータを集計してとてもわかりやすいグラフをつくってくれました。膨大なデータをグラフにするのは統計学の基本であり、この方法は帰納法といえます。帰納法は、個別から一般にすすむ論理であり、法則性をあきらかにします。
そして法則性があきらかになると、こんどは、それにもとづいて未来が予測できます。これは、一般から個別にすすむ論理であり演繹法です。
こうして、帰納法をつかって法則性をあきらかにし、演繹法をつかって未来を予測します。予測ができれば対策がたてられます。そして予測がただしかったかどうかをあとでたしかめます。たしかめる作業は検証といってもよいでしょう。
新型ウイルス感染爆発のようなおおきな課題に対してはこのような冷静な論理がとくに必要です。
▼関連記事
新型コロナウイルスの感染拡大と〈仮説法→演繹法→帰納法〉
みえにくい感染症 - 新型コロナウイルス(Newton 2020.4-5号)-
論理の3段階モデル - 新型コロナウイルスの感染拡大 -
新型コロナウイルスの感染拡大がつづく -「基本再生産数」(Newton 2020.6号)-
コウモリ起源説 -「コロナウイルスはどこから来たのか」(日経サイエンス 2020.05号)-
長期的視野にたつ -「感染拡大に立ち向かう」(日経サイエンス 2020.06号)-
ウイルスにうまく対処する -「COVID-19 長期戦略の模索」(日経サイエンス 2020.07号)-
データを蓄積する - 新型コロナの「抗体検査」(Newton 2020.08号)-
緩衝帯をもうけてすみわける -「新型コロナが変えた生態系と地球環境」(Newton 2020.08号)-
仮説をたてて検証する -「ゲノム解析でウイルスの謎に挑む」(日経サイエンス 2020.08号)-
状況を把握する -「感染・増殖・防御の仕組み」(日経サイエンス 2020.08号)-
東京オリンピックにはまにあわない -「加速する新型コロナのワクチン開発」(Newton 2020.09号)-
世界各国の対策 -「COVID-19 終わらないパンデミック」(日経サイエンス 2020.09号)-
抗体検査 -「新型コロナウイルス 免疫系の戦い」(日経サイエンス 2020.10号)-
新型コロナワクチン -「冬こそ警戒 新型コロナ」(Newton 2021.1号)-
新型コロナ治療薬 -「冬こそ警戒 新型コロナ」(Newton 2021.1号)-
感染検査 -「冬こそ警戒 新型コロナ」(Newton 2021.1号)-
「新型コロナのワクチンがいよいよ実用化」(Newton 2021.2号)
短期的視点と長期的視点 -「新型コロナの変異種」(Newton 2021.3号)-
100分 de 名著:アルベール=カミュ『ペスト』(NHK・Eテレ)
往来拡大の歴史 - 池上彰・増田ユリヤ著『感染症対人類の世界史』-
感染症が歴史をかえる -「DNAが明かす疫病史」(日経サイエンス 2021.06号)-
▼ 参考文献
「【図解】東京など7都道府県が『宣言』から『重点措置』へ 要請内容はどう変わる?」Yahoo!ニュースオリジナル THE PAGE、2021年6月17日
「7月に「第5波」の恐れ、インド型を懸念『水面下で拡大中と考えた方がいい』」読売新聞オンライン、2021年6月20日
▼ 追記(2021年9月10日)
NHK 特設サイト「新型コロナウイルス」などによると8月中旬に第5波はピークをむかえました。