能力開発の観点から記憶法について解説したハンドブックです。

目次はつぎのとおりです。

第1章 記憶のメカニズムを知ろう
第2章 記憶力の強化で人生を有意義に過ごそう
第3章 栗田式脳を活性化する記憶法のポイント
第4章 これを実践すればあなたの記憶力は5倍アップ

ポイントをピックアップしてみます。

まず自分の好きな体系の内容をきちんと学んで記憶しておくことが勧められる。テーマや素材を好きな分野に限定して記憶の訓練をするとよい。

「嫌なことは忘れやすく、楽しいことは覚えやすい」という単純な原理を最大限に活用して、記憶のレパートリーを増やしていってほしい。


健常人の場合には記憶が「完全に消滅してしまう」のではなく「思い出しにくい状態になってしまう」ことの方が多いと考えられる。その根拠は、実際に記憶の一部をなす「想起する力」を磨くと、「忘れた」と思っていたことがありありと蘇ってくるという体験が少なからず生ずるからである。


何が重要な情報であるかを考え、圧縮整理した形で残すようにすると、想起もしやすいし、利用もしやすい。

図鑑の記載の記録は私の体験を集約する「ラベル」の役割を果たしており、ラベルをきちんと思い出すことで、過去の素晴らしい自然体験が追体験できるのだ。


動機は記憶の根を形成し、目的は記憶を統合する役割がある。


「身の回りのものを見ることが、そのまま自然に過去の出来事を思い出すことに通ずる」ようにしておけば、過去の体験ファイルが自動的に活性化された状態になる。想起力を高めて生活することが「人生の味つけ」に役立つのである。

過去のいろいろな体験をさまざまな形にリメイクしていくことは、実は記憶を活用する方法であり、しかもイメージング能力を最大限に発揮する方法でもある。記憶法と心象法の二つを活用することで、能力の基礎を形成し、それに速読法を加えることで、能力は格段に進歩する。


記憶する内容に応じて、特定の構造を持つ場所や建築物をあらかじめ覚えておき、その各部分に記憶すべき内容を結合していくのである。その場所を、情報を書き込むための「ファイル」と見なすことができる。

記憶で一番問題になるのは、心の中のファイルをどう作って、どう操作するのか、ということである。すなわち記憶法の基本は、良いファイルを作成し、それに情報を次々に結合していく方法論にある。


そして、具体的な記憶テクニックとして本書後半ではつぎの方法を解説しています。

類比法、誇張法、体験法、線形法、注入法、空間法、絵画法、造園法、想起法、結合法、変質法、夢想法、高速法


■ 情報をファイルする
今回は、本書のなかの記憶の「ファイル」について特に強調しておきたいとおもいます。 この「ファイル」の方法論を理解することにより、本書前半の記憶の理論を、本書後半で紹介している「記憶テクニック」の実践にスムーズにむすびつけることができます。

記憶するということは、たとえば、コンピュータのストレージ(記憶装置)にデータをインプットし、ファイルしていくことに似ています。データを保存するときには名称をつけて、フォルダに整理します。そして、必要なときに必要なファイルを検索できるシステムを構築します。データはファイルするだけでは意味がなく、必要に応じて迅速にとりだし、アウトプットのためにつかえるようにしておかなければなりません。

これと似ていて、記憶するとは、心のなかにインプットされた情報を、心のなかのある領域に書きこむことであり、それは情報を「ファイル」するようなことです

そしてこの記憶情報は、よく整理されたファイルとして心のなかで保持されなければなりません。また、記憶を想起するということは情報を検索することであり、迅速な想起があってこそ、アウトプットのために情報がつかえるようになるわけです。

「ファイル」については本書の74〜76ページに解説されています。


■ 絵画法をまず実践する
本書後半で解説されている「記憶テクニック」のなかでは「絵画法」をまず実践し、徐々に、ほかのテクニックにもひろげてとりくんでいくのがよいでしょう。

「絵画法」とは「絵の中に情報を埋め込むテクニック」であり、あらかじめ絵あるいは写真を用意し、そのなかにどれくらいの場所があるかをさがします。それぞれの場所に情報を結びつけ埋めこんでいくことは、情報を「ファイル」していくということであり、1枚の絵あるいは写真は1個の「ベースファイル」あるいは「フォルダ」の役割をはたします。

「絵画法」については113~122ページに写真つきで解説されています。


まずは、「ファイル」の方法論を理解し、自分のすきな写真を用意して「絵画法」にとりくんでみるとよいでしょう。


文献: 栗田昌裕著『栗田式記憶法ハンドブック』PHP研究所、1997年6月4日