少数の原則で日本語も運用できます。原則をつかうとリズムがうまれます。意図があり感情をこめるときには語順を逆にします。
日本語の原則(注)にしたがって以下の例文を修正します。
構造化します。
語順の原則にもとづいて再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。
題目語「分科会は」を強調するために冒頭に配置すると、テンの原則「逆順」によってテンがいります。
例文66では、「3週間程度集中して」において「3週間程」のあとにテンをうっていますが、これは、漢字がつづいてよみづらいためにうったテンであり、うってはならないテンです。漢字がつづいてよみづらいときには漢字とカナの原則にしたがってたとえば、「3週間ほど集中して」とします。
例文66はテンに問題がありました。
構造化します。
語順の原則にしたがって再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。テンがなくても文が書けます。
「菅首相は」を強調するために冒頭にもってきます。
例文67は、「GoToトラベル」についてのべているのですから前にもってきて強調します。
例文67はテンがおおすぎました。テンがおおすぎると何を強調したいのかがわからなくなります。たくさんテンをうてばわかりやすい文になるというわけではありません。
なお例文67は、「GoToトラベル」についてのべているのですから、「菅首相」をかならずしも強調する必要はないでしょう。題目(主題)は「GoToトラベル」であり、「菅首相」ではないのであれば題目語をいれかえます。
「〜は」とすると題目をしめせます。
構造化します。
「グスタフ国王が」の配置が不適切です。語順の原則にしたがって再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。
例文68は、「〜は」と「〜が」があり、“主語” というかんがえにとらわれると “主語” が2語あるようで理解できません。日本語には “主語” はなく題目語があり、例文68においては「対策は」が題目語です。
また「スウェーデンでは」の「は」は「スウェーデンで」を強調し、対照をあらわします。たとえばイギリスやドイツなどのほかの国よりもスウェーデンのほうが感染が急速にひろがっていることをしめします。
構造化します。
語順の原則にしたがって再構造化します。
書きなおします。
「ポルトガルで」を強調します。テンがいります。
構造化します。
語順の原則にしたがって再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。比較的ながい文ですがテンがなくてもなりたちます。文は、みじかいほうがわかりやすいというわけではありません。
もしテンをうつなら1ヵ所うてばよいでしょう。
日本語も、非常に少数の原則で運用できます。むずかしいことはありません。
文を構造化(図式化)すると原則がよくわかります。上記のように、原則にしたがって再構造化すると、右下方向へ左上からながれるという一定のパターンがみられ、このパターンにしたがって文を書けばおのずとリズムがうまれます。リズムのある文はよみやすくわかりやすいです。
しかし語順を、原則の逆順にする場合はテンをうちます。ある語句を強調するなど、何らかの意図があるときや、どこかに感情をこめるときなどには語順をかえてリズムをあえてくずします。以下の例もみてください。
原則にしたがったリズムのよい文ですが、演目を強調してしめしたければ、
夢にまでみた「NHKホール」を強調したければ、
感情がこもります。あるいは、
とうとうやりましたといった感情がつたわります。
このように、逆順になったときにはいずれの場合もテンが必要です。
文を書くときにはメッセージをはっきりさせなければなりません。何をつたえたいのか、メッセージが明確であれば「逆順」も効果的につかえます。言葉とは、言葉になる前に心のなかに生じたことを外面にあらわしたものですから、人間主体の情報処理の観点からいうとアウトプットの前のプロセシングが重要です。
▼ 注
日本語の作文法 − 日本語の原則 −
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栗田昌裕著『「速く・わかりやすく」書く技術』(ベスト新書)ベストセラーズ、2005年
例文66)
分科会は11月以降に再び急増した感染者数を抑えるため、感染拡大地域では3週間程度、集中して対策するよう求めてきた。(朝日新聞 DIGITAL, 2020.12.10)
例文67)
菅首相は、「GoToトラベル」について、東京都など4つの自治体を対象に、12月27日まで一時停止したうえで、28日から1月11日まで、全国一斉に一時停止する方針を表明した。(FNN プライムオンライン, 2020.12.14)
例文68)
新型コロナウイルスの感染対策として比較的緩やかな独自の取り組みを続けてきた北欧のスウェーデンでは、感染が急速に広がっていて、グスタフ国王が対策は失敗だったという考えを示しました。(NHK NEWS WEB, 2020.12.18)
例文69)
ポルトガルで医療関係者の41歳の女性が新型コロナウイルスのワクチンを接種した2日後に死亡しました。(テレ朝 news, 2021.1.06)
例文70)
全国から集まってワシントンDCのホテルなどに陣取っていたデモ隊は、前日から不穏な動きを見せていたようですが、メディアの関心はジョージア州の上院議員選決戦投票に向けられていたため、「ノーマーク」の中での事件となりました。(ニューズウィーク日本版, 2021.1.7)
例文66)
分科会は11月以降に再び急増した感染者数を抑えるため、感染拡大地域では3週間程度、集中して対策するよう求めてきた。
構造化します。
語順の原則にもとづいて再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。
- 11月以降に再び急増した感染者数を抑えるため感染拡大地域では3週間程度集中して対策するよう分科会は求めてきた。
題目語「分科会は」を強調するために冒頭に配置すると、テンの原則「逆順」によってテンがいります。
- 分科会は、11月以降に再び急増した感染者数を抑えるため感染拡大地域では3週間程度集中して対策するよう求めてきた。
例文66では、「3週間程度集中して」において「3週間程」のあとにテンをうっていますが、これは、漢字がつづいてよみづらいためにうったテンであり、うってはならないテンです。漢字がつづいてよみづらいときには漢字とカナの原則にしたがってたとえば、「3週間ほど集中して」とします。
- 分科会は、11月以降に再び急増した感染者数を抑えるため感染拡大地域では3週間ほど集中して対策するよう求めてきた。
例文66はテンに問題がありました。
例文67)
菅首相は、「GoToトラベル」について、東京都など4つの自治体を対象に、12月27日まで一時停止したうえで、28日から1月11日まで、全国一斉に一時停止する方針を表明した。
構造化します。
語順の原則にしたがって再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。テンがなくても文が書けます。
- 東京都など4つの自治体を対象に12月27日まで一時停止したうえで28日から1月11日まで全国一斉に一時停止する方針を「GoToトラベル」について菅首相は表明した。
「菅首相は」を強調するために冒頭にもってきます。
- 菅首相は、東京都など4つの自治体を対象に12月27日まで一時停止したうえで28日から1月11日まで全国一斉に一時停止する方針を「GoToトラベル」について表明した。
例文67は、「GoToトラベル」についてのべているのですから前にもってきて強調します。
- 「GoToトラベル」について菅首相は、東京都など4つの自治体を対象に12月27日まで一時停止したうえで28日から1月11日まで全国一斉に一時停止する方針を表明した。
例文67はテンがおおすぎました。テンがおおすぎると何を強調したいのかがわからなくなります。たくさんテンをうてばわかりやすい文になるというわけではありません。
なお例文67は、「GoToトラベル」についてのべているのですから、「菅首相」をかならずしも強調する必要はないでしょう。題目(主題)は「GoToトラベル」であり、「菅首相」ではないのであれば題目語をいれかえます。
「GoToトラベル」について →「GoToトラベル」は
菅首相は → 菅首相が
菅首相は → 菅首相が
- 「GoToトラベル」は、東京都など4つの自治体を対象に12月27日まで一時停止したうえで28日から1月11日まで全国一斉に一時停止する方針を菅首相が表明した。
「〜は」とすると題目をしめせます。
例文68)
新型コロナウイルスの感染対策として比較的緩やかな独自の取り組みを続けてきた北欧のスウェーデンでは、感染が急速に広がっていて、グスタフ国王が対策は失敗だったという考えを示しました。
構造化します。
「グスタフ国王が」の配置が不適切です。語順の原則にしたがって再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。
- 新型コロナウイルスの感染対策として比較的緩やかな独自の取り組みを続けてきた北欧のスウェーデンでは感染が急速に広がっていて対策は失敗だったという考えをグスタフ国王が示しました。
例文68は、「〜は」と「〜が」があり、“主語” というかんがえにとらわれると “主語” が2語あるようで理解できません。日本語には “主語” はなく題目語があり、例文68においては「対策は」が題目語です。
また「スウェーデンでは」の「は」は「スウェーデンで」を強調し、対照をあらわします。たとえばイギリスやドイツなどのほかの国よりもスウェーデンのほうが感染が急速にひろがっていることをしめします。
例文69)
ポルトガルで医療関係者の41歳の女性が新型コロナウイルスのワクチンを接種した2日後に死亡しました。
構造化します。
語順の原則にしたがって再構造化します。
書きなおします。
- 新型コロナウイルスのワクチンを接種した2日後に医療関係者の41歳の女性がポルトガルで死亡しました。
「ポルトガルで」を強調します。テンがいります。
- ポルトガルで、新型コロナウイルスのワクチンを接種した2日後に医療関係者の41歳の女性が死亡しました。
例文70)
全国から集まってワシントンDCのホテルなどに陣取っていたデモ隊は、前日から不穏な動きを見せていたようですが、メディアの関心はジョージア州の上院議員選決戦投票に向けられていたため、「ノーマーク」の中での事件となりました。
構造化します。
語順の原則にしたがって再構造化します。
語順の原則にしたがって書きなおします。比較的ながい文ですがテンがなくてもなりたちます。文は、みじかいほうがわかりやすいというわけではありません。
- ワシントンDCのホテルなどに全国から集まって陣取っていたデモ隊は不穏な動きを前日から見せていたようですがジョージア州の上院議員選決戦投票にメディアの関心は向けられていたため「ノーマーク」の中での事件となりました。
もしテンをうつなら1ヵ所うてばよいでしょう。
- ワシントンDCのホテルなどに全国から集まって陣取っていたデモ隊は不穏な動きを前日から見せていたようですが、ジョージア州の上院議員選決戦投票にメディアの関心は向けられていたため「ノーマーク」の中での事件となりました。
*
日本語も、非常に少数の原則で運用できます。むずかしいことはありません。
文を構造化(図式化)すると原則がよくわかります。上記のように、原則にしたがって再構造化すると、右下方向へ左上からながれるという一定のパターンがみられ、このパターンにしたがって文を書けばおのずとリズムがうまれます。リズムのある文はよみやすくわかりやすいです。
しかし語順を、原則の逆順にする場合はテンをうちます。ある語句を強調するなど、何らかの意図があるときや、どこかに感情をこめるときなどには語順をかえてリズムをあえてくずします。以下の例もみてください。
- 劇団スライドフューチャーはNHKホールでマクベスを上演しました。
原則にしたがったリズムのよい文ですが、演目を強調してしめしたければ、
- マクベスを、劇団スライドフューチャーはNHKホールで上演しました。
夢にまでみた「NHKホール」を強調したければ、
- NHKホールで、劇団スライドフューチャーはマクベスを上演しました。
感情がこもります。あるいは、
- 上演しました、劇団スライドモンスターはNHKホールでマクベスを。
とうとうやりましたといった感情がつたわります。
このように、逆順になったときにはいずれの場合もテンが必要です。
文を書くときにはメッセージをはっきりさせなければなりません。何をつたえたいのか、メッセージが明確であれば「逆順」も効果的につかえます。言葉とは、言葉になる前に心のなかに生じたことを外面にあらわしたものですから、人間主体の情報処理の観点からいうとアウトプットの前のプロセシングが重要です。
▼ 注
日本語の作文法 − 日本語の原則 −
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