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ホロファグス・ペニキラトゥス
(シーラカンス目、中生代ジュラ紀後期、
1.57億〜1.45億年前、ドイツ)
(平行法で立体視ができます)
〈生物-環境〉系を歴史的に検証できます。生物は、海から水辺へ、陸へ、空へと生活の場をひろげました。分化しつつ階層構造化します。
生命の星・地球博物館の第2展示室のテーマは「生命を考える」です。ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます(注2)。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -



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ユーステノプテロン・フォーディ
(オステオレピス目、古生代デボン紀、
3.9億〜3.6億年前、カナダ)



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スカウメナキア・クルタ
(ポロレピス目、古生代デボン紀、
3.9億〜3.6億年前、カナダ)



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ディスコサウリスクスの一種
(アントラコサウルス目、古生代ペルム紀、
2.99億〜2.52億年前、旧チェコスロバキア)



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メソサウルス
(中竜目、古生代ペルム紀、
2.99億〜2.52億年前、ブラジル)



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パレイアサウルスの一種
(プロコロフォン形目、古生代ペルム紀後期、
2.6億〜2.52億年前、ロシア・キーロフ)



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カマラサウルス(頭)
(竜盤目、中生代ジュラ紀後期、
1.64億〜1.45億年前、北アメリカ)



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ディプロドクス・カーネギイ
(竜盤目、中生代ジュラ紀後期、
1.64億〜1.45億年前、アメリカ合衆国)



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ティラノサウルス・レックス
(竜盤目、中生代白亜紀後期、
7000万〜6600万年前、カナダ・アメリカ合衆国)



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プテラノドン・ロンギケプス
(翼竜目、中生代白亜紀後期、
およそ8500万年前、アメリカ合衆国)



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さまざまな鳥たち



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コロンビアマンモス
(新生代第四紀完新世、
1万年前、アメリカ合衆国)



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プシロフィトン
(最初の陸上植物、古生マツバラン類、
古生代デボン紀前期、4.19億〜3.9億年前、ドイツ)



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マツバラン
(マツバラン類、現世)



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コームパッシア・エクセルサ(マメ科)の板根



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生命の樹



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「生命を考える」展示室






最初の生物が誕生して以来、生物進化の舞台は海のなかでした。

今から約5億年前の古生代カンブリア紀に魚類があらわれます。魚類は最初の脊椎動物であり、今では世界中に分布し、3万4千種以上がしられています。

古生代オルドビス紀にはいると植物の上陸がはじまり、古生代デボン紀になると脊椎動物の進化の舞台が陸上にうつります。シアノバクテリアがつくりだした酸素がオゾン層を形成したことにより、陸上にふりそそぐ紫外線の量がすくなくなり、生物が陸上で生活できるようになりました。

脊椎動物のなかで4本の脚をもつ動物を「四肢動物」といい、両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類がこれにふくまれ、四肢動物は、肺魚やシーラカンス類をふくむ「肉鰭類(にくきるい)」のなかから進化しました。後期デボン紀の地層からみつかっている「ユーステノプテロン」は四肢動物にちかい肉鰭類のひとつであり、わたしたちの腕の骨とおなじ要素(上腕骨・橈骨・尺骨)で構成された頑丈なヒレをパタパタと前後にうごかして水底をけっておよいだとかんがえられます。

古生代石炭紀にはいると四肢動物の多様化がはじまります。陸上へ進出する過程で「羊膜(ようまく)」とよばれる特殊な膜を獲得し、卵のなかで成長する赤ちゃん(胚)が羊膜でおおわれることで水分をたもち、陸上でも干からびることなく孵化できるようになります。四肢動物のなかで羊膜をもつものを「羊膜類」とよび、「単弓類」(哺乳類につづく系統)と「爬虫類」がこれにふくまれます。一方、羊膜をもたない四肢動物(無羊膜類)の生き残りが現生の「両生類」(カエル・サンショウウオなど)です。

古生代石炭紀後期からペルム紀にかけて湿潤気候から乾燥気候へきりかわるとともに陸上生活に適応した羊膜類が繁栄します。原始的な爬虫類「側爬虫類(そくはちゅうるい)」である「メソサウルス」や「パレイアサウルス」はこの時代を代表する生物です。

古生代ペルム紀のおわりには生物の大量絶滅がおこり、おおくの単弓類が姿をけすと、より進化した爬虫類である「双弓類(そうきゅうるい)」の時代がはじまります。陸上・空・海へと生活圏を拡大する過程でその姿や体のおおきさも多様化します。

中生代三畳紀おわりごろ(約2億3000年前)から爬虫類が多様化しはじめ、陸上には「恐竜」が、空には、おおきな翼をひろげてとぶ「翼竜」があらわれます。また海のなかには、魚竜や首長竜や海トカゲなどがおよぎます。これらの爬虫類は、中生代がおわるまでのおよそ1億6000万年ものあいだ繁栄します。

中生代白亜紀末(約6600万年前)には大量絶滅がふたたびおこり、爬虫類のおおくは絶滅しましたが、中生代ジュラ紀に恐竜の一部から進化した「鳥類」はこの時期をのりこえ、その後、新生代にはいってから多様化します。

一方、「哺乳類」は、約2億年前、単弓類のひとつのグループから進化し、中生代白亜紀末(約6600万年前)に恐竜が絶滅するとさまざまな環境に急速に適応してひろがります。

約6000万年前には、「ゾウ」の仲間があらわれます。ゾウは、草原で植物をたべることに適応し、陸上にすむ動物のなかでもっともおおきな体をもつようになりました。

ところで最初の陸上植物は、「プシロフィトン」や「リニア」という「古生マツバラン類」であり、およそ4億年前の古生代デボン紀のはじめの植物です。これは、現在のマツバランに似た葉のない植物で、横にはう地下茎から茎が真上にのび、Y字状に枝わかれして、その先に胞子のう(胞子のはいった袋)をつけていました。

古生代デボン紀中期になると、原始的な種子(胚珠)をもつ初期の「裸子植物」が出現します。デボン紀後期には、休眠機構が種子にそなわり、種子散布がおこなわれるようになります。

古生代石炭紀には、たかさ40mにもなる「リンボク」や「ロボク」などの巨木の森が水辺にひろがります。現在みられるヒカゲノカズラ・ミズニラ・トクサなどの植物は、古生代の巨木にちかい仲間の子孫だとかんがえられます。

中生代白亜紀になると「被子植物」が出現します。これは、胚珠が子房につつまれ、重複受精をおこない、受精により胚乳をつくり、また道管をもつこともおおくの被子植物の特徴です。さらに花粉をはこぶ動物をひきよせるために花が発達し、動物とのかかわりを通じて多様化しました。種子や果実は、動物にたべられたり、くっついたりしてはなれた場所であらたに芽ばえるための役割ももちます。






以上みてきたように、約46億年前に原始地球が誕生し、約35年よりも前(約38億年前あるいは約40億年前とする仮説がある)に最初の生物(核膜や種々の細胞小器官をもたない「原核生物」)がうまれました。

その後、シアノバクテリアが出現し、それが、海中の泥などの粒子を吸着して層状になったものがストロマトライトであり、27〜29億年前に形成されたストロマトライトの化石が大量にみつかっていることから、シアノバクテリアは29億年前までにはおそくとも出現していたとかんがえられます。シアノバクテリアは光合成をおこない酸素を発生し、生じた酸素のおおくは水中にとけていた鉄の酸化につかわれて酸化鉄をつくり、縞状鉄鉱層が形成されます。やがて、水中や空気中にも酸素が蓄積しはじめ、この酸素を利用して有機物を分解する生物、つまり呼吸をおこなう生物が出現します。

その後、約20億年前に「真核生物」が、約10億年前には「多細胞生物」が出現したとかんがえられます。オーストラリアの約6億年前の地層から、「エディアカラ動物群」とよばれるさまざまな海産の多細胞生物の化石がみつかっており、現在のクラゲのような仲間もこのなかにはいたようです。これらの生物のおおくはかたい殻をもっておらず、動物食性の動物はいなかったのではないかとかんがえられます。

なお今から約5億4200万年前までの地質時代は「先カンブリア時代」といい、先カンブリア時代よりあとの地質時代は「古生代」「中生代」「新生代」に区分されます。
 

古生代(約5億4200万年前〜2億5100万年前)
以下の6つの時代(紀)にわけられます。

カンブリア紀(約5.42億年前〜4.88億年前)
動物の種類が爆発的に増加します。この時代の多様な生物の出現は「カンブリア大爆発」といい、現在の動物のほとんどのグループ(門)がこの時代に出現します。脊椎動物の魚類もあらわれます。

オルドビス紀(4.88億年前〜4.44億年前)
空気中の酸素濃度の増加にともないオゾン層が上空に形成されはじめ、生物にとって有害な紫外線をそれが吸収したため、生物が陸上へ進出する環境条件がととのいはじめます。オルドビス紀末期になると、海水面の低下により海岸付近に湿地帯がひろがり、そこで、緑藻の仲間から、原始的なコケ植物が出現したとかんがえられ、いよいよ生物が上陸をはじめます。

シルル紀(4.44億年前〜4.16億年前)
「シダ植物」が出現します。

デボン紀(4.16億年前〜3.59億年前)
シダ植物から、「シダ種子植物(ソテツシダ)」が出現します。これは、シダ植物のような葉をもちながらその先端に種子をつけており、シダ植物と種子植物(裸子植物)の中間的な特徴をもちます。

脊椎動物では、「有顎魚類(ゆうがくぎょるい)」のなかから「軟骨魚」と「硬骨魚」が進化し、さらに硬骨魚の一部から、発達した鰭をつかって浅瀬をはいまわったり、消化管の一部が変化して生じた肺で呼吸したりするものなどがあらわれ、原始的な「両生類」へ進化します。湿地の浅瀬をはいまわっていた「ユーステノプテロン」の一種が原始的な両生類である「イクチオステガ」に進化したとかんがえられます。

またサソリやムカデの仲間などの「節足動物」も陸上進出し、「昆虫類」へ進化します。最初の昆虫は、翅をもたないトビムシのような仲間だったとかんがえられます。

石炭紀(3.59億年前〜2.99億年前)
温暖湿潤気候下で大形のシダ類がさかえ、「木生シダ」(樹木状になるシダ植物)の大森林が形成されます。両生類と大型の昆虫類も繁栄します。

ペルム紀(2.99億年前〜2.51億年前)
それまでさかえていたおおくの生物が絶滅します。三葉虫も絶滅します。木生シダも衰退します。


中生代(約2億5100万年前〜6600万年前)
3つの時代(紀)にわけられます。

三畳紀(約2.51億年前〜2.00億年前)
古生代石炭紀に出現した爬虫類が繁栄します。これは、胚膜を発達させたために陸上での発生が可能になりました。また哺乳類が出現します。

ジュラ紀(2.00億年前〜1.46億年前)
デボン紀に出現した裸子植物が、それまでさかえていた木生シダにとってかわって繁栄します。また爬虫類、なかでも恐竜類の全盛期となります。さらに鳥類が出現します。「シソチョウ(始祖鳥)」の化石が発見されており、恐竜類の一種から鳥類は進化したといわれます。

白亜紀(1.46億年前〜0.66億年前)
被子植物が出現します。これは、花の蜜をすう昆虫など、ほかの生物と共生しながら進化します。ことなる種の生物どうしが影響しあいながら進化することを「共進化」といいます。哺乳類では、胎盤を発達させた「有胎盤類」が出現します。一方、白亜紀末期には、恐竜類や「アンモナイト」などが絶滅します。


新生代(6600万年前〜現在)
「第三紀」と「第四紀」にわけられます。地質学者はかつて、古生代を「第一紀」、中生代を「第二紀」、それにつづく時代を第三紀、第四紀とよんでいたので、その名残がみられます。

第三紀(6600万年前〜260万年前)
第三紀は、「古第三紀」と「新第三紀」にわけられ、古第三紀には、それまで爬虫類がしめていた「生態的地位(ニッチ)」を鳥類と哺乳類がしめるようになり、さまざまな環境に適応して繁栄します。

また南極大陸とオーストラリア大陸が分離し、南極大陸の周囲につめたい海流がながれ、地球の寒冷化がすすみます。

新第三紀は、約700万年前に人類の祖先である「サヘラントロプス」が出現し、約200万年前に「原人(ホモ属)」が出現します。

第四紀(260万年前〜現在)
約20万年前に、現生人類の祖先がアフリカで出現し、約12万年前から、アフリカから世界に分布をひろげていきます。一方、約1万年前には、マンモスなどの大形哺乳類が絶滅します。


以上のような化石のデータ(証拠)から「生命の樹」(系統樹)をえがくことができ、生物は、もと一つのものから分化・生成・発展したことがわかります。もと一つのものから分化・生成・発展したということはそもそも宇宙がそうであり、宇宙は、ビッグバンからはじまって分化・生成・発展したのであり、そのことが生物や地球の進化にもあらわれています。

このように生物は分化し多様化しますが、しかし他方で、地球の各所に生態系が成立し、一定の秩序をたもちます。地球の世界は、複雑怪奇で収拾がつかない渾沌とした状態にはなっておらず、構造化されています。すなわち分化しながら構造化もおこるのであり、分化しつつ構造化するのが地球の本質です。分化しつつ構造化するというのはそもそも宇宙がそうであり、宇宙は、ビッグバンからはじまって分化しましたが、銀河系・太陽系など、構造もつくりました。したがって分化しつつ構造化するということは宇宙の原理(法則)であり、地球にもそれがはたらいているという仮説がたてられます。

約46億年前、原始地球が誕生し、約38億年前あるいは約40億年前に最初の生物が出現し、このときに原始地球は、生物と環境に分化し、他方で、生物と環境は構造化され、〈生物-環境〉系が成立しました。原始地球は、〈生物-環境〉系、つまり「生命の星」に進化しました。

化石のデータからは、生物は、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類などに分化したことがわかり、岩石のデータからは、環境は、海、陸、大気などに分化したことがわかり、魚類は海に適応し、両生類は水辺に適応し、爬虫類と哺乳類は陸に適応し、鳥類は空に適応し、地球の空間を棲み分けるように生物は分化し、地球のことなる環境にことなる生物が適応し、地球の各所に、さまざまな〈生物-環境〉系が成立しました。つまり、地球全体の一つの体系のなかにややちいさな〈生物-環境〉系がサブシステムとして成立しました。

最初の〈生物-環境〉系が分化してサブシステムができたということは〈生物-環境〉系が階層構造になったということであり、このような、分化しつつ階層構造化するのが生命の星の進化だといえます。

このような、階層構造になった〈生物-環境〉系において、「生物」は、個体であっても集団であっても種であっても人間であっても生物全体であってもよいです。個体や集団や種や人間や生物全体などをまとめて「主体」とよぶならば、より一般的に、〈生物-環境〉系は〈主体-環境〉系とよぶことができます(図)。〈主体-環境〉系は、生命の星のあらゆる階層でなりたち、世界を理解するために、また生存するためにたいへん役だつモデルです。


210110 単純モデル
図 〈主体-環境〉系 のモデル




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▼ 注1
生命の星・地球博物館



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▼ 注2
撮影日:2020年10月28日


▼ 参考文献
『神奈川県 生命の星・地球博物館 展示解説書(改訂新版)』神奈川県 生命の星・地球博物館発行、2018年
大森徹著『大森徹の最強講義117講 生物』文英堂、2015年
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