原則がわかれば簡単です。アウトプットのためにインプットします。技術よりも中身のほうが重要になります。
日本語の原則(注)にしたがって以下の例文を検討します。
「都が酒類を提供する」というところがわかりにくいです。構造化します。

語順の原則にしたがってなおします。
「都が」を強調します。テンの原則「逆順」によりテンをうちます。
構造化します。

語順の原則にしたがってなおします。
「税金を」を強調します。テンの原則「逆順」によりテンをうちます。
「クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は」と「横浜市として対応することは」と、「〜は」が2つありますが、要するに、横浜市として対応することは決まっていない」ことについてのべるのであれば「横浜市として対応することは」を題目語にし、「クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は」の「は」は「が」にします。
「クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は」の「は」をそのままにすると対照あるいは限定のニュアンスがでます。すなわち「市民の目は厳しい」が横浜市民でない人の目はきびしくないということがしめせます。
語順の原則もテンの原則もできておらず、わかりにくい文です。構造化します。

語順の原則にしたがってかきなおします。テンはなくても文がかけます。
「アメリカ大統領選挙では」(題目語)を強調します。
テンの原則「ながい修飾語」によりテンをうちます。
「開票作業が順次始まって」というところが視覚的にややわかりにくいので、漢字とカナの原則により「開票作業が順次はじまって」とします。
構造化します。

語順の原則にしたがってなおします。
テンの原則「ながい修飾語」にしたがってテンをうちます。
「「第一生命」の89歳の元社員がおよそ19億円を顧客から不正に集めていたとされる問題で」を強調するために前にもってきます。
「〜問題で」を「〜問題は」として題目をしめします。
語順の原則にしたがってなおします。
この文には、題目語「〜は」がありません。もし、「菅総理」についていうならばという心持ちで題目をしめすのであれば、
「観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考え」を題目にすることもできます。
「観光振興策「GoToトラベル」事業」を題目にすることもできます。
「観光振興策「GoToトラベル」事業の期限」を題目にすることもできます。
このように、おもしろいように題目語として語句をとりだすことができます。それは、係助詞「は」は、格助詞「が」「の」「に」「を」を兼務できるという原則があるからです。
何についてつたえたいのか、題目語「〜は」としてそれをしめします。メッセージがつたわりやすくなります。
日本語の原則をつかえばわかりやすい日本語がすぐに書けます。原則がわかれば簡単です。むずかしいことはありません。日本語もけっこう簡単な言語です。
するとつぎは、作文の技術よりも、文の内容・中身が問題になります。メッセージは何なのか? どのようなアウトプットをするのか?
文を書くとは、人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)でいうとアウトプットにあたり、アウトプットはインプットを如実に反映します。インプットをろくにしていなければ満足なアウトプットはできません。インプットがそもそもよくできているかどうか?
アウトプットをくりかえしているとインプットの重要性に結果的・必然的に気がつきます。目でみる、耳できく、鼻でかぐ、舌で味わう、肌で感じるなど、インプットをもっとやろうという気持ちが生じます。よくできたインプットのためには問題意識をふかめ、課題を選択し、主題を明確にするとよいでしょう。
▼ 注
日本語の作文法 − 日本語の原則 −
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本多勝一著『実戦・日本語の作文技術(新版)』朝日新聞出版、2019年
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梅棹忠夫著『知的財産の技術』(岩波新書)岩波書店、1969年
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例文61)
都が酒類を提供する23区内の飲食店やカラオケ店に要請していた営業時間短縮は16日に解除された。(The Sankei News, 2020.9.16)
例文62)
税金をクルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は厳しく、現状では横浜市として対応することは決まっていないという。(日本経済新聞 電子版, 2020.11.5)
例文63)
アメリカ大統領選挙では法律で11月の最初の月曜日の翌日に定められた投開票日に、投票時間が終わった州から順次、開票作業が始まって、過去の多くの選挙ではその日の夜から翌日の未明にかけて大手メディアが当選確実を判定して速報してきました。(NHK NEWS WEB, 2020.11.7)
例文64)
「第一生命」の89歳の元社員が顧客からおよそ19億円を不正に集めていたとされる問題で会社が社内調査の概要を公表し、3年前に不審に思った外部から問い合わせを受けながらも結果として被害の拡大を防げなかったことが分かりました。(NHK NEWS WEB, 2020.11.9)
例文65)
菅総理が観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考えを正式表明しました。(TBS NEWS, 2020.12.3)
例文61)
都が酒類を提供する23区内の飲食店やカラオケ店に要請していた営業時間短縮は16日に解除された。
「都が酒類を提供する」というところがわかりにくいです。構造化します。

語順の原則にしたがってなおします。
- 酒類を提供する23区内の飲食店やカラオケ店に都が要請していた営業時間短縮は16日に解除された。
「都が」を強調します。テンの原則「逆順」によりテンをうちます。
- 都が、酒類を提供する23区内の飲食店やカラオケ店に要請していた営業時間短縮は16日に解除された。
例文62)
税金をクルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は厳しく、現状では横浜市として対応することは決まっていないという。
構造化します。

語順の原則にしたがってなおします。
- クルーズ船に優先的に税金を投入することに対する市民の目は厳しく横浜市として対応することは現状では決まっていないという。
「税金を」を強調します。テンの原則「逆順」によりテンをうちます。
- 税金を、クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は厳しく横浜市として対応することは現状では決まっていないという。
「クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は」と「横浜市として対応することは」と、「〜は」が2つありますが、要するに、横浜市として対応することは決まっていない」ことについてのべるのであれば「横浜市として対応することは」を題目語にし、「クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は」の「は」は「が」にします。
- 税金を、クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目が厳しく横浜市として対応することは現状では決まっていないという。
「クルーズ船に優先的に投入することに対する市民の目は」の「は」をそのままにすると対照あるいは限定のニュアンスがでます。すなわち「市民の目は厳しい」が横浜市民でない人の目はきびしくないということがしめせます。
例文63)
アメリカ大統領選挙では法律で11月の最初の月曜日の翌日に定められた投開票日に、投票時間が終わった州から順次、開票作業が始まって、過去の多くの選挙ではその日の夜から翌日の未明にかけて大手メディアが当選確実を判定して速報してきました。
語順の原則もテンの原則もできておらず、わかりにくい文です。構造化します。

語順の原則にしたがってかきなおします。テンはなくても文がかけます。
- 11月の最初の月曜日の翌日に法律で定められた投開票日に投票時間が終わった州から開票作業が順次始まってその日の夜から翌日の未明にかけて過去の多くの選挙では大手メディアが当選確実を判定してアメリカ大統領選挙では速報してきました。
「アメリカ大統領選挙では」(題目語)を強調します。
- アメリカ大統領選挙では、11月の最初の月曜日の翌日に法律で定められた投開票日に投票時間が終わった州から開票作業が順次始まってその日の夜から翌日の未明にかけて過去の多くの選挙では大手メディアが当選確実を判定して速報してきました。
テンの原則「ながい修飾語」によりテンをうちます。
- アメリカ大統領選挙では、11月の最初の月曜日の翌日に法律で定められた投開票日に投票時間が終わった州から開票作業が順次始まって、その日の夜から翌日の未明にかけて過去の多くの選挙では大手メディアが当選確実を判定して速報してきました。
「開票作業が順次始まって」というところが視覚的にややわかりにくいので、漢字とカナの原則により「開票作業が順次はじまって」とします。
- アメリカ大統領選挙では、11月の最初の月曜日の翌日に法律で定められた投開票日に投票時間が終わった州から開票作業が順次はじまって、その日の夜から翌日の未明にかけて過去の多くの選挙では大手メディアが当選確実を判定して速報してきました。
例文64)
「第一生命」の89歳の元社員が顧客からおよそ19億円を不正に集めていたとされる問題で会社が社内調査の概要を公表し、3年前に不審に思った外部から問い合わせを受けながらも結果として被害の拡大を防げなかったことが分かりました。
構造化します。

語順の原則にしたがってなおします。
- 不審に思った外部から問い合わせを3年前に受けながらも被害の拡大を結果として防げなかったことが「第一生命」の89歳の元社員がおよそ19億円を顧客から不正に集めていたとされる問題で社内調査の概要を会社が公表し分かりました。
テンの原則「ながい修飾語」にしたがってテンをうちます。
- 不審に思った外部から問い合わせを3年前に受けながらも被害の拡大を結果として防げなかったことが、「第一生命」の89歳の元社員がおよそ19億円を顧客から不正に集めていたとされる問題で社内調査の概要を会社が公表し分かりました。
「「第一生命」の89歳の元社員がおよそ19億円を顧客から不正に集めていたとされる問題で」を強調するために前にもってきます。
- 「第一生命」の89歳の元社員がおよそ19億円を顧客から不正に集めていたとされる問題で、不審に思った外部から問い合わせを3年前に受けながらも被害の拡大を結果として防げなかったことが社内調査の概要を会社が公表し分かりました。
「〜問題で」を「〜問題は」として題目をしめします。
- 「第一生命」の89歳の元社員がおよそ19億円を顧客から不正に集めていたとされる問題は、不審に思った外部から問い合わせを3年前に受けながらも被害の拡大を結果として防げなかったことが社内調査の概要を会社が公表し分かりました。
例文65)
菅総理が観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考えを正式表明しました。
語順の原則にしたがってなおします。
- 観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考えを菅総理が正式表明しました。
この文には、題目語「〜は」がありません。もし、「菅総理」についていうならばという心持ちで題目をしめすのであれば、
- 観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考えを菅総理は正式表明しました。
「観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考え」を題目にすることもできます。
- 観光振興策「GoToトラベル」事業の期限を延長する考えは菅総理が正式表明しました。
「観光振興策「GoToトラベル」事業」を題目にすることもできます。
- 観光振興策「GoToトラベル」事業は期限を延長する考えを菅総理が正式表明しました。
「観光振興策「GoToトラベル」事業の期限」を題目にすることもできます。
- 観光振興策「GoToトラベル」事業の期限は延長する考えを菅総理が正式表明しました。
このように、おもしろいように題目語として語句をとりだすことができます。それは、係助詞「は」は、格助詞「が」「の」「に」「を」を兼務できるという原則があるからです。
何についてつたえたいのか、題目語「〜は」としてそれをしめします。メッセージがつたわりやすくなります。
*
日本語の原則をつかえばわかりやすい日本語がすぐに書けます。原則がわかれば簡単です。むずかしいことはありません。日本語もけっこう簡単な言語です。
するとつぎは、作文の技術よりも、文の内容・中身が問題になります。メッセージは何なのか? どのようなアウトプットをするのか?
文を書くとは、人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)でいうとアウトプットにあたり、アウトプットはインプットを如実に反映します。インプットをろくにしていなければ満足なアウトプットはできません。インプットがそもそもよくできているかどうか?
アウトプットをくりかえしているとインプットの重要性に結果的・必然的に気がつきます。目でみる、耳できく、鼻でかぐ、舌で味わう、肌で感じるなど、インプットをもっとやろうという気持ちが生じます。よくできたインプットのためには問題意識をふかめ、課題を選択し、主題を明確にするとよいでしょう。
▼ 注
日本語の作文法 − 日本語の原則 −
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梅棹忠夫著『知的財産の技術』(岩波新書)岩波書店、1969年
栗田昌裕著『「速く・わかりやすく」書く技術』(ベスト新書)ベストセラーズ、2005年