PCR検査・抗原検査・抗体検査があります。偽陽性・偽陰性の可能性があります。定期的な検査が必要です。
新型コロナウイルス感染症について『Newton』2020年1月号が特集しています。感染検査についても解説しています。新型コロナウイルスの検査法には「PCR検査」「抗原検査」「抗体検査」があります。




PCR検査
唾液や鼻・喉などの粘膜に、新型コロナウイルスの遺伝子配列をもつ RNA が存在しているかどうかを調べる検査です。十分な量のウイルスがあれば陽性と判定されます。

抗原検査
唾液や鼻・喉などの粘膜に、新型コロナウイルスに特有のタンパク質が存在しているかどうかを調べる検査です。十分な量のウイルスがあれば陽性と判定されます。

抗体検査
血液中に、新型コロナウイルスに対する抗体が存在しているかどうかを調べる検査です。感染してから抗体ができるまでの数日間は陽性になりません。


「PCR検査」と「抗原検査」は、「体内にいま、ウイルスがあるかどうか」をしらべる検査です。十分な量のウイルスがいま存在すれば陽性となります。ウイルスに過去に感染しても、治療してきえれば陰性となります。

一方、「抗体検査」は、「体内にいま、ウイルスがあるかどうか」をしらべる検査ではなく、抗体検査の陽性は、「ウイルスが過去に体内にあった」ことを意味します。現在感染しているかどうかはPCR検査あるいは抗原検査をおこなわないとわかりません。あるいはウイルスが体内にあっても(感染していても)、感染初期の数日間は抗体が体内でまだ十分につくられていないため、抗体検査では陰性となります。

いずれの検査も完璧ではなく、「偽陽性」あるいは「偽陰性」の可能性がつねにつきまといます。偽陽性とは、ほんとうは感染していないのに陽性と判定しまうことであり、偽陰性とは、ほんとうは感染しているのに陰性と判定してしまうことです。

PCR検査と抗原検査は、検査法にもよりますが、感染者をただしく陽性と判定する割合(「感度」という)は70%、非感染者をただしく陰性と判断する割合(「特異度」という)は99%とされます。一方、抗体検査の感度は66〜98%、特異度は97%前後であると報告されています。

したがって実際には、複数回の検査をおこなわざるをえません。




感染者が急増するなか、最近は、PCR検査あるいは抗原検査を自費でうけるケースがふえています。両方とも、「いま感染しているかどうか」をしらべる検査です。どちらを選択すべきでしょうか?

厚生労働省は、「PCR検査は、どの検査よりも精度が高い」とし、溝口充志久留米大教授(免疫学)らは、「症状がない人は、ウイルスが少量でも判定できるPCR検査をするべきだ」とよびかけています。高齢者施設職員や高齢者と同居する人などは、PCR検査を定期的にうけることがすすめられます(西日本新聞、2020.12.1)。

しかし約40分で結果がわかり、比較的安価で検査ができる抗原検査を、「陰性証明書」を取得するために現実的に選択するケースがみられます。

偽陰性の可能性もあるので、いずれにしても、それぞれの検査のしくみを理解し、定期的に検査をすることが実際には必要です。


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▼ 参考文献
『Newton』(2021年1月号)ニュートンプレス、2021年
 2020-12-22 5.10.41


▼ 参考サイト
新型コロナウイルス感染症に関する検査について(厚生労働省)