光がインプットされ、脳が認識します。情報処理の結果として世界がみえます。それぞれの動物にそれぞれの世界があります。
「認知科学でさぐる鳥の“心” 〜鳥は何を見て、何を考えているのか〜」について『milsil』(2020 No.4、国立科学博物館)が解説しています(注)。


鳥は局所的にとらえる(微細な部分部分にこだわる)、それに対しヒトは周りの物と一緒に全体をとらえるという違いがあると考えられています。


たとえば目の前に馬があらわれたとき、馬に反射した光が目のなかの網膜にあたって視細胞が興奮し、それが、神経をつたわって脳にいたり、脳の中で、馬がいるという認識が生じます。認識するのは脳であり、したがって目ではなく脳で「見る」といってもよいでしょう。

このように、わたしたちが世界を認識するのは脳のはたらきによるのであり、このはたらき、心のなかの過程を解明するのが認知科学です。

脳のはたらきはヒトと鳥ではことなり、ヒトは、まわりの物と一緒に全体をとらえる傾向がありますが、鳥は、局所的にとらえる傾向があります。ヒトと鳥は、進化的にずいぶんはなれているので両者は独立に視覚を発達させたとかんがえられます。


2020-11-09 16.00.09
錯視を引き起こす図形


それぞれの中心にある丸をくらべるとどちらがおおきくみえるでしょうか?

実は、丸のおおきさはおなじです。これは錯視(目の錯覚)であり、わたしたちは認知によって判断をあやまる場合があることをおしえています。

ところがハトは、このような錯視をおこさないことが実験によってたしかめられています。

ヒトと鳥では、脳のはたらき、認知にちがいがあり、ヒトは、まわりの物と一緒に全体をとらえて相対的に対象をとらえますが、ハトは、局所的にとらえるためにこのような錯視がおこりません。






このように、視覚系の情報処理のしくみはヒトと鳥でことなり、みえる世界がヒトと鳥ではことなります。

みえている世界は、それぞれの動物の情報処理のしくみ(心のはたらき)に依存しており、情報処理の結果としてみえています。わたしたちヒトがみている世界も絶対的なものでは決してなく、ヒトの世界でしかありません。

鳥は、きわめて長距離を目的地までわたったり、群れのなかで1羽1羽を区別したり、複雑な音声コミュニケーションをおこなったり、ヒトにはないすぐれた能力をもちます。ながい進化の歴史のなかで、環境に適応して身につけた特別な認知のしくみがそこにはあり、それは、ヒトのしくみとはことなります。

けっきょく、それぞれの動物にはそれぞれに世界があるといってもよく、このことは、世界とは何かという問題をかんがえるうえで重要です。




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▼ 参考文献
「認知科学でさぐる鳥の“心” 〜鳥は何を見て、何を考えているのか〜」milsil, 2020 No.4, 国立科学博物館, 2020年