インプットとプロセシングによって認識がなりたちます。あらたな刺激をもとめます。散歩や旅行にでかけます。
「感覚と老い」について、『Newton』2020年11月号が解説しています(注)。年をとると感覚がにぶくなります。五感のおとろえは日常生活に悪影響をあたえます。




「お年寄りはがまん強い」「昔の人は暑さも寒さも平気」「塩辛い食べ物が好き」などと言われることもあるが、それは誤った印象かもしれない。高齢者は周囲の状況を適切に認識できていない可能性があることを念頭に置いておく必要があるのだ。


高齢になると、感覚器官のおとろえによって外界の情報をうけとりにくくなります。

感覚とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などであり、たとえば聴覚では、外界で生じた空気振動が耳の「鼓膜」から「蝸牛」へつたわり、蝸牛の内側にならんでいる「有毛細胞」がゆれを感じとると電気信号が発生し、それが、神経をとおって脳につたわると、脳が、信号を処理して音が生じます。

ところが年齢をかさねると有毛細胞の機能が低下したり、その細胞数がへったりして聴覚がおとろえ、耳がとおくなります。40代ごろから低下し、50代で、高音域が急速にきこえずらくなり、60代以降は低音域も、ちいさな音はきこえずらくなります。聴覚のおとろえは、女性よりも男性のほうがおおきいとされます。


高齢者自身が感覚器官の衰えを自覚したうえで、さまざまなリスクが大きくなっていることを認識し、それをさけるようにふだんから気をつけることがたいせつだ。


感覚器官の機能を維持するためには積極的に外へでかけて、さまざまな「刺激」にであうことが必要です。室内にとじこもっていてはいけません。






聴覚の例をみてもあきらかなように、視覚・嗅覚・味覚・触覚なども、感覚とは、感覚器官からのインプットと、脳におけるプロセシングという2つの段階によりなりたっており、感覚がおとろえるということは、つまり、認識力がおとろえるということであり、これはゆゆしき問題です。

そこで感覚を維持するためにさまざまな刺激にであうようにします。刺激にであうということはあらたなインプットを積極的におこなうということです。人間は、年をかさねると、経験と記憶でものをかたるようになり、あらたなインプットをしなくなります。あらたなインプットがなくなれば認識力もおとろえます。要注意です。

しかしこのことは高齢者だけの問題でしょうか?

わたしは、ネパール・ヒマラヤの山村地域にいって、五感がとてもするどい人々がいることをしりました。よくみえ、よくきこえます。よくかぎわけ、よく味わいます。風もわかります。そして直観がさえます。

彼らにくらべて現代文明人のおおく、とくに都会人は、言葉のインプットばかりしていて、五感がうまくはたらきません。人間が本来もつインプット能力がおとろえています。

インプット能力は、プロセシング能力に直結します。そこであらためて感覚をとらえなおし、自覚し、それを再活性化する訓練をしなければなりません。高齢者だけでなく、わかい人もです。そのためには散歩や旅行に積極的にでかけるのがよいでしょう。




▼ 関連記事
神戸布引ハーブ園(まとめ)
香りを感じとる - シンガポール植物園(7)「フレグラント園」-
人間の情報処理 -『体と体質の科学 感覚』(Newton)-
情報処理をすすめて世界を認知する -『感覚 - 驚異のしくみ』(ニュートン別冊)まとめ -
香りをインプットする - ミニ企画展「香りの魅力」(国立科学博物館)-


▼ 注