会場入口
(交差法で立体視ができます)
(交差法で立体視ができます)
大陸の海岸線の形が一致することから、ひとつの大陸が分裂し、移動したという仮説がたてられます(大陸移動説)。化石・岩石などの分布によって仮説を検証します。壮大な自然史がわかります。
企画展「ゴンドワナ - 岩石が語る大陸の衝突と分裂 -」が生命の星・地球博物館で開催されています(注1)。「ゴンドワナ」とは、およそ6億年前に南半球に存在したとされる大陸です。
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
世界地図をひろげて、南アメリカ大陸・大西洋・アフリカ大陸をみると、南アメリカ大陸の東の海岸線とアフリカ大陸の西の海岸線の形がとてもよく一致することがわかります。この事実から、南アメリカ大陸とアフリカ大陸はもともとはくっついていて、もともとあったひとつのおおきな大陸が分裂し、移動して現在の配置になったのではないだろうかという仮説がたてられます。「大陸移動説」です。
もし、この仮説がただしいとすると、現在はわかれている南アメリカ大陸とアフリカ大陸には、共通する化石や岩石が存在するはずであるという推論(予見)ができます。
そこで化石をしらべてみると、たとえば植物化石である「グロッソプテリス」(古生代ペルム紀、約2億9900万年〜2億5200万年前)は、アルゼンチン共和国など、南アメリカで多数みつかる一方、南アフリカ共和国など、アフリカ大陸でも多数みつかります。このことは、南アメリカ大陸とアフリカ大陸がかつてはくっついていた(地続きだった)ことをしめします。さらにしらべていくと、マダガスカル・インド・オーストラリア・南極大陸にもグロッソプテリスがみつかります。グロッソプテリスは、寒冷な気候のもとで、氷河周辺の湿地などに群生していた植物であるとかんがえられます。
したがって南アメリカ大陸とアフリカ大陸がくっついていただけでなく、マダガスカル島・インド亜大陸・オーストラリア大陸・南極大陸もかつてはくっついていて、ひとつの巨大な大陸が存在していたことがわかります。この巨大な大陸は「ゴンドワナ」と命名されました。
あるいは単弓類の仲間である「リストロサウルス」(陸生動物)の化石は、アフリカ大陸・インド亜大陸・南極大陸でみつかります。側爬虫類(爬虫類の仲間)の「メソサウルス」の化石は、南アメリカ大陸とアフリカ大陸に分布します。三葉虫「メタクリファエウス類」の化石は、南アメリカ大陸とアフリカ大陸でみつかります。
またムカシヤンマ類・ベニボシヤンマ類・クワガタムシの仲間(シバネクワガタなど)は、現在は、南アメリカとオーストラリアなどに分布(隔離分布あるいは不連続分布)することがしられ、とおくはなれた場所に同一の種が分布することはたいへん不思議なことでした。南アメリカからオーストラリアまで、太平洋をとんでいったとはとてもおもえません。この隔離分布も大陸移動によって説明できます。これらの昆虫は、かつて存在した巨大な大陸・ゴンドワナに生息していたのであり、ゴンドワナがいくつかの大陸に分裂・移動したのちは、それぞれの昆虫がそれぞれの大陸で現代までいきのこったのだとかんがえられます。
あるいは熱帯性淡水魚類であるアロワナ亜目魚類は、アロワナ科とパントドン科に大別され、前者はヘテロティス亜科とアロワナ亜科がしられ、ヘテロティス亜科は、南アメリカとアフリカに分布し、アロワナ亜科は、南アメリカ・オーストラリア・東南アジアに分布します。これらの魚類は淡水魚なので海をわたって分布をひろげることはできません。またおなじ科の最古の化石が同様な分布パターンをしめし、ヨーロッパや北アフリカ・インドからも化石種がしられていることから、現在はわかれている各大陸がかつて陸続きだった時代に、その巨大大陸内でひろく生息していたのだとかんがえられます。
他方、岩石に注目してみると、玄武岩質火成岩である「ドレライト(カレードレライト)」(中生代ジュラ紀、約1億8000万年前)が南アメリカからジンバブエにかけて分布します。大陸が分裂するときには、大量の玄武岩質溶岩が噴出することがしられ、カレードレライトはそのときのものであり、同様な溶岩は、オーストラリアや南極でもみつかっています。
以上のように、大陸の海岸線の形から発想された大陸移動説は、化石や現世生物や岩石などをしらべることによって検証され、具体的なデータにより実証されました。化石や岩石などのデータは、巨大大陸がかつて存在したことをしめす証拠であり、大陸移動説を支持します。
大陸移動説は、1912年、ドイツの地球科学者・アルフレート=ウェーゲナーによって提唱されました。わかれて現在は存在するアメリカ大陸・アフリカ大陸・インド亜大陸・オーストリア大陸・南極大陸などは、かつては巨大なひとつの大陸をつくっていました。ジグソーパズルのように各大陸をくみあわせてみれば巨大大陸が復元できます(注2)。科学とはパズルです。そして仮説を発想したら、あとは検証です。化石、岩石、生物・・・、分析的な研究をすすめます。
今回の企画展は、仮説をたてて検証するという科学的な方法を体験できるとてもよい機会でした(図)。
▼ 関連記事
大陸移動説と3段階モデル - ウェゲナー『大陸と海洋の起源』-
モデルをつかって理解する -『図解 プレートテクトニクス入門』-
大地震や火山噴火はくりかえし今後ともおそってくる - 是永淳著『絵でわかるプレートテクトニクス』-
地球を概観する -『地球 図説アースサイエンス』-
日本列島とその周辺域を俯瞰する -『海の底にも山がある! 日本列島、水をとったら?』-
古環境をしる手がかり -「地層」(Newton 2018.12号)-
演繹法をつかって検証する -「失われた大陸の謎」(Newton 2020.5号)
仮説を検証する - 海底掘削船「ちきゅう」(Newton 2018.9号)-
[世界を変えた書物]展(上野の森美術館)(まとめ)
3D 国立科学博物館「宇宙を見る眼」- 地動説・ケプラーの法則・万有引力の法則 –
地球の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 地球の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
真実への推理 - 名探偵コナン 科学捜査展(日本科学未来館)-
仮説をたて検証する - 仮説法(発想法)と演繹法の活用 -
仮説をたてて検証する -「ゲノム解析でウイルスの謎に挑む」(日経サイエンス 2020.08号)-
新型コロナウイルスの感染拡大と〈仮説法→演繹法→帰納法〉
オオクニヌシ鎮魂説 - 特別展「出雲と大和」(東京国立博物館)(1)-
▼ 注1
企画展「ゴンドワナ -岩石が語る大陸の衝突と分裂-」
会場:生命の星・地球博物館(1階・特別展示室)
会期:2020年2月29日~ 2020年11月8日
箱根登山鉄道 「入生田(いりうだ)」駅から徒歩3分
▼ 注2:大陸の衝突・集合と分裂・移動
約5億5000万年前、ゴンドワナ大陸は南半球に存在しており、それは、現在の南アメリカ大陸・アフリカ大陸・マダガスカル島・インド亜大陸・オーストラリア大陸・南極大陸が集合したものでした。
ゴンドワナ大陸は、当時の陸地の約65%をしめていましたが、これには、北アメリカ大陸とユーラシア大陸はふくまれず、北アメリカ大陸とユーラシア大陸は孤立した大陸でした。
約3億年前になると、北アメリカ大陸とユーラシア大陸はゴンドワナ大陸と衝突・集合し、超大陸が形成されました。この超大陸は「パンゲア」といいます。
約2億年前になると、パンゲア超大陸は分裂をはじめ、北はローラシア大陸、南はゴンドワナ大陸となり、両大陸はさらに分裂・移動して、現在みられる大陸の配置になったとかんがえられています。
▼ 参考文献
アルフレッド=ウェゲナー著・竹内均訳・鎌田浩毅解説『大陸と海洋の起源』(ブルーバックス)講談社、2020年
▼ 関連書籍
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
海岸線の形が一致する
グロッソプテリス属の一種
(植物化石、産地:南アメリカ)
(植物化石、産地:南アメリカ)
グロッソプテリス属の一種
(植物化石、産地:アフリカ)
グロッソプテリス属の一種
(植物化石、産地:南極)
グロッソプテリス属の一種
(植物化石、産地:インド)
グロッソプテリスの復元図
グロッソプテリスの分布とゴンドワナ大陸の復元
リストロサウルス(単弓類)
(南アフリカ・南極・インド・ロシアなどに分布)
メソサウルス(側爬虫類)
(南アフリカと南アメリカに分布)
三葉虫メタクリファエウス類の起源と移動
ムカシヤンマ類の分布
ベニボシヤンマ類の分布
クワガタムシの仲間の分布
アロワナ亜目魚類の分布
ドレライト
(大陸が分裂したときにできた火成岩)
ゴンドワナの謎にパズルで迫る!!
*
世界地図をひろげて、南アメリカ大陸・大西洋・アフリカ大陸をみると、南アメリカ大陸の東の海岸線とアフリカ大陸の西の海岸線の形がとてもよく一致することがわかります。この事実から、南アメリカ大陸とアフリカ大陸はもともとはくっついていて、もともとあったひとつのおおきな大陸が分裂し、移動して現在の配置になったのではないだろうかという仮説がたてられます。「大陸移動説」です。
もし、この仮説がただしいとすると、現在はわかれている南アメリカ大陸とアフリカ大陸には、共通する化石や岩石が存在するはずであるという推論(予見)ができます。
そこで化石をしらべてみると、たとえば植物化石である「グロッソプテリス」(古生代ペルム紀、約2億9900万年〜2億5200万年前)は、アルゼンチン共和国など、南アメリカで多数みつかる一方、南アフリカ共和国など、アフリカ大陸でも多数みつかります。このことは、南アメリカ大陸とアフリカ大陸がかつてはくっついていた(地続きだった)ことをしめします。さらにしらべていくと、マダガスカル・インド・オーストラリア・南極大陸にもグロッソプテリスがみつかります。グロッソプテリスは、寒冷な気候のもとで、氷河周辺の湿地などに群生していた植物であるとかんがえられます。
したがって南アメリカ大陸とアフリカ大陸がくっついていただけでなく、マダガスカル島・インド亜大陸・オーストラリア大陸・南極大陸もかつてはくっついていて、ひとつの巨大な大陸が存在していたことがわかります。この巨大な大陸は「ゴンドワナ」と命名されました。
あるいは単弓類の仲間である「リストロサウルス」(陸生動物)の化石は、アフリカ大陸・インド亜大陸・南極大陸でみつかります。側爬虫類(爬虫類の仲間)の「メソサウルス」の化石は、南アメリカ大陸とアフリカ大陸に分布します。三葉虫「メタクリファエウス類」の化石は、南アメリカ大陸とアフリカ大陸でみつかります。
またムカシヤンマ類・ベニボシヤンマ類・クワガタムシの仲間(シバネクワガタなど)は、現在は、南アメリカとオーストラリアなどに分布(隔離分布あるいは不連続分布)することがしられ、とおくはなれた場所に同一の種が分布することはたいへん不思議なことでした。南アメリカからオーストラリアまで、太平洋をとんでいったとはとてもおもえません。この隔離分布も大陸移動によって説明できます。これらの昆虫は、かつて存在した巨大な大陸・ゴンドワナに生息していたのであり、ゴンドワナがいくつかの大陸に分裂・移動したのちは、それぞれの昆虫がそれぞれの大陸で現代までいきのこったのだとかんがえられます。
あるいは熱帯性淡水魚類であるアロワナ亜目魚類は、アロワナ科とパントドン科に大別され、前者はヘテロティス亜科とアロワナ亜科がしられ、ヘテロティス亜科は、南アメリカとアフリカに分布し、アロワナ亜科は、南アメリカ・オーストラリア・東南アジアに分布します。これらの魚類は淡水魚なので海をわたって分布をひろげることはできません。またおなじ科の最古の化石が同様な分布パターンをしめし、ヨーロッパや北アフリカ・インドからも化石種がしられていることから、現在はわかれている各大陸がかつて陸続きだった時代に、その巨大大陸内でひろく生息していたのだとかんがえられます。
他方、岩石に注目してみると、玄武岩質火成岩である「ドレライト(カレードレライト)」(中生代ジュラ紀、約1億8000万年前)が南アメリカからジンバブエにかけて分布します。大陸が分裂するときには、大量の玄武岩質溶岩が噴出することがしられ、カレードレライトはそのときのものであり、同様な溶岩は、オーストラリアや南極でもみつかっています。
以上のように、大陸の海岸線の形から発想された大陸移動説は、化石や現世生物や岩石などをしらべることによって検証され、具体的なデータにより実証されました。化石や岩石などのデータは、巨大大陸がかつて存在したことをしめす証拠であり、大陸移動説を支持します。
大陸移動説は、1912年、ドイツの地球科学者・アルフレート=ウェーゲナーによって提唱されました。わかれて現在は存在するアメリカ大陸・アフリカ大陸・インド亜大陸・オーストリア大陸・南極大陸などは、かつては巨大なひとつの大陸をつくっていました。ジグソーパズルのように各大陸をくみあわせてみれば巨大大陸が復元できます(注2)。科学とはパズルです。そして仮説を発想したら、あとは検証です。化石、岩石、生物・・・、分析的な研究をすすめます。
今回の企画展は、仮説をたてて検証するという科学的な方法を体験できるとてもよい機会でした(図)。
図 仮説をたてて検証する
▼ 関連記事
大陸移動説と3段階モデル - ウェゲナー『大陸と海洋の起源』-
モデルをつかって理解する -『図解 プレートテクトニクス入門』-
大地震や火山噴火はくりかえし今後ともおそってくる - 是永淳著『絵でわかるプレートテクトニクス』-
地球を概観する -『地球 図説アースサイエンス』-
日本列島とその周辺域を俯瞰する -『海の底にも山がある! 日本列島、水をとったら?』-
古環境をしる手がかり -「地層」(Newton 2018.12号)-
演繹法をつかって検証する -「失われた大陸の謎」(Newton 2020.5号)
仮説を検証する - 海底掘削船「ちきゅう」(Newton 2018.9号)-
[世界を変えた書物]展(上野の森美術館)(まとめ)
3D 国立科学博物館「宇宙を見る眼」- 地動説・ケプラーの法則・万有引力の法則 –
地球の謎に推理法でいどむ -『名探偵コナン推理ファイル 地球の謎』(小学館学習まんがシリーズ)-
真実への推理 - 名探偵コナン 科学捜査展(日本科学未来館)-
仮説をたて検証する - 仮説法(発想法)と演繹法の活用 -
仮説をたてて検証する -「ゲノム解析でウイルスの謎に挑む」(日経サイエンス 2020.08号)-
新型コロナウイルスの感染拡大と〈仮説法→演繹法→帰納法〉
オオクニヌシ鎮魂説 - 特別展「出雲と大和」(東京国立博物館)(1)-
▼ 注1
企画展「ゴンドワナ -岩石が語る大陸の衝突と分裂-」
会場:生命の星・地球博物館(1階・特別展示室)
会期:2020年2月29日~ 2020年11月8日
箱根登山鉄道 「入生田(いりうだ)」駅から徒歩3分
▼ 注2:大陸の衝突・集合と分裂・移動
約5億5000万年前、ゴンドワナ大陸は南半球に存在しており、それは、現在の南アメリカ大陸・アフリカ大陸・マダガスカル島・インド亜大陸・オーストラリア大陸・南極大陸が集合したものでした。
ゴンドワナ大陸は、当時の陸地の約65%をしめていましたが、これには、北アメリカ大陸とユーラシア大陸はふくまれず、北アメリカ大陸とユーラシア大陸は孤立した大陸でした。
約3億年前になると、北アメリカ大陸とユーラシア大陸はゴンドワナ大陸と衝突・集合し、超大陸が形成されました。この超大陸は「パンゲア」といいます。
約2億年前になると、パンゲア超大陸は分裂をはじめ、北はローラシア大陸、南はゴンドワナ大陸となり、両大陸はさらに分裂・移動して、現在みられる大陸の配置になったとかんがえられています。
▼ 参考文献
アルフレッド=ウェゲナー著・竹内均訳・鎌田浩毅解説『大陸と海洋の起源』(ブルーバックス)講談社、2020年
▼ 関連書籍