オオハナインコは、可視光線にくわえて紫外線もみることができます。光(電磁波)には色はついていません。脳の情報処理によって色彩が生じます。
『Newton』2020年10月号から、新連載「こんなに違う! オスとメス」がはじまりました。第1回は「オオハナインコ」です。




オオハナインコは、可視光線だけでなく紫外線も見えている。するとメスから見たオスの体色は、周囲の色などの条件によってはよりあざやかに見え、アピールになるようだ。


オオハナインコは、パプアニューギニアやオーストラリア北東部などに生息するインコであり、オスは、体の大部分が緑色ですが、メスは、体の大部分が赤色です。あまりにも見た目がことなるため、メスは、別の種だとかつてはかんがえられていました。

メスは、ほぼ1年中を木の穴につくった巣のなかですごし、そこに、複数のオスがエサをはこんできます。メスの赤色は、緑のおおい森のなかでも目だつことで、オスに対してアピールできる利点があり、また巣のなかのくらいところでは目だちにくくなるため、天敵からみつかりにくいといいます。

一方のオスは、緑の森にまぎれることで、天敵にみつかりにくいという利点があります。






オオハナインコは、人間とはちがい、可視光線にくわえて紫外線もみることができるという点はとても重要です。つまり、人間がみている色とオオハナインコがみている色とはことなるのであり、周囲の条件によっては、人間よりもあざやかな色彩をオオハナインコはみているのではないかという仮説がたてられます。

このことに気がつかずに、人間にみえている色彩だけにとらわれると、インコが、周囲の色にまぎれこんでいるかどうかや、天敵にみつかりにくいかどうか、相手に対するアピールになっているかどうかなど、判断をあやまります。

動物の体色や生態をしるためには、前提として、色覚のしくみについて理解しておく必要があります。そもそも光(電磁波)には色はついておらず、電磁波の波長のちがいを脳の情報処理によって色のちがいとして認知しているにすぎません。

つまり、人間がもっている色覚は絶対的なものではなく、オオハナインコの色覚とはことなるのであり、「見た目」といいますが、人間にはみえない見た目があります。人間のみている世界とオオハナインコのみている世界はことなるといってもよいでしょう。



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▼ 参考文献
『Newton』(2020年10月号)ニュートンプレス、2020年