視野には、中心視野と周辺視野があります。周辺視野もつかえば視野がひろがります。風景をみて視覚系をきたえます。
『Newton』(2020年10月号)の FOCUS で周辺視野に関する研究結果を紹介しています(注)。アメリカ、アマースト大学のコーヘン博士らは、周辺視野における色の認識についての実験をおこないました。


被験者に VR(バーチャルリアリティ)ゴーグルを装着させ、カラー表示にした景色を提示した。そして、視線を追跡しながら、被験者の周辺視野の一部を白黒表示にした。しかし、この状態でも多くの場合被験者は視野の一部が白黒表示になったことに気づかなかった。(PNAS 2020.6.16)


今回の実験により、周辺視野では、色は、ほとんど認識されていないことがしめされました。もっとも極端な場合では、白黒表示が視野の95%以上となっても、約3分の1の被験者はそのことにまったく気づきませんでした。

私たちの視野は、視線の方向にある「中心視野」と、そのまわりにある「周辺視野」とにわけられます(図)。


200925 視野
図 視野のしくみ


中心視野と周辺視野があることを自覚することはとても大事です。現代人のおおくは、中心視野をおもにつかっており、周辺視野があることをわすれている人さえいます。

中心視野はかなりせまいですが、くっきりはっきりと対象がみえるので、文字や数字などをおいかけるために誰もがつかっています。

一方、周辺視野は非常にひろいですが、ぼやっとしており、現代人はあまり意識していません。今回の実験結果によると色の認識もほとんどできていないようです。

しかし視野全体が色彩ゆたかにみえるのは、中心視野でえられた情報にもとづいて、脳が、情報処理をして、情報をおぎない、視覚を補正しているからだという仮説がたてられます。たとえば旅先で風景をみるときには、誰もが、周辺視野もつかって風景の全体を色彩ゆたかにみています。視覚には、脳の情報処理がおおきな役割をはたしています。

いいかえると、中心視野だけをつかって周辺視野をつかわない状態は、視覚系の情報処理がまったく不十分であるということになります。

それではどうすればよいでしょうか?

たとえば球技が参考になります。球技の選手は、中心視野でボールをおいかけながら、周辺視野で、フィールドにいる全選手のうごきをつかむ練習をしています。視野(視覚系)をフルにつかいこなします。

この、ボールとフィールドの関係はフィールドワークにも応用できます。すぐれたフィールドワーカーは、人間(あるいは生物)をおいながら、周辺視野をつかってその環境も同時にとらえます。〈人間-環境〉系あるいは〈主体-環境〉系の認識ができます。

したがって旅行や散歩などにでかけたときに、特定の対象だけでなく、風景もみるようにすると周辺視野がきたえられます。中心視野で花をみたら、周辺視野でそのまわりもみます。あるいは通学や通勤の途中でも、周辺視野で景色をみるようにします。そのときに、目をきょろきょろさせません。きょろきょろするということは中心視野をつかっていることになります。

あるいは文字をみるときにも、周辺視野をつかってその文字の周囲も同時にみるようにします。この方法は速読法に通じます。

学校などで、「おおきな視野をもちなさい」、「視野をひろげなさい」などとよくいわれてきましたが、具体的・実践的には、それは周辺視野をつかうことでした。周辺視野を自覚してそれを日々つかえば、本当に視野がひろくなります。



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