過去形は、「遠くに眺める」距離感をともないます。遠回しな丁寧な言葉づかいになります。ひかえめな表現ができます。
NHK ラジオ英会話テキストの「よくわかる中学英文法」の第5回は「過去形」です。


I played tennis yesterday.


「過去」は、すぎさった出来事を「遠くに眺める」意識でつかいます。この意識が、「現在完了形」とのちがいをつかむカギともなります。


Bill was a good guy.


話し手とビルの関係がすでにおわっていることを感じさせます。たとえば出先でちょっとあっただけの人であったり、すでにビルが会社をやめていたり、ビルがなくなっていたり、関係はすでに断たれています。とおくはなれた、きりはなされた感触が過去形からにじみだします。


Can you help me?


依頼をあらわす文です。


Could you help me?


過去形にすると丁寧度があがります。過去形は、「遠くに眺める」距離感をともなっているので、自分の依頼内容から距離をとって遠回しにいっている感じがし、丁寧な言葉づかいになります。


Chris can do it.(クリスならできるよ)
Chris could do it.(クリスならできるかもなぁ)


助動詞の過去形は、現在形の控えめバージョンとして非常にしばしばつかわれます。これも、過去形のもつ距離感がうみだすつかい方であり、can の「できるよ」という断言の強さから距離をとり、「できるかもなぁ」と遠回しないい方になっています。






「なんだ、そういうことだったのか!」
わたしはかつて、大西泰斗先生の番組で過去形の説明をきいて合点がいきました。

しかしわたしがかよっていた学校(公立)にはそのようにおしえられる教師はひとりもいませんでした。それどころか「欧米人は、遠回しにはいいません。ダイレクトにいいます」と指導した教師が何人もいました。まったくこまったものです。

外国にいって実際に仕事をしてみると、欧米人とはかぎらず何人でも、相手と場合によってダイレクトにいったり、丁寧にいったり、ひかえめにいったりします。何語でも、さまざまな表現方法があります。

過去形は、「遠くに眺める」距離感が決め手です。どのような言葉であっても、言葉の背後あるいは深層にある意識をつかむことが大事です。




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▼ 参考文献
『NHK ラジオ英会話』(2020年8月号テキスト)NHK 出版、2020年
 2020-08-27 17.43.54



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大西泰斗先生が講師をつとめる NHK ラジオ英会話の全講義を収載しています。

本書は、NHK ラジオ英会話の2018年度の内容を再構成してまとめたものです。音声は、NHK ラジオ英会話の CD の2018年度のものを再編集してまとめたもので、NHK 出版サイトからダウンロードできます。コンパクトに録音されているので効率的に学習できます。


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