ワクチンには、生ワクチン・不活化ワクチン・核酸ワクチンがあり、核酸ワクチンには、DNAワクチン・RNAワクチン・組換えウイルスワクチンがあり、核酸ワクチンに期待がかかりますが、実用化には時間がかかります。
『Newton』2020年9月号の FOCUS Plus がワクチン開発の現状について解説しています。


新しい技術によって開発時間が短縮できたとしても、安全性がしっかり担保されたワクチンを開発するには、通常3〜4年かかります。どれだけプロセスを圧縮しても、国内で開発されたワクチンが実用化されるのは、2022年以降になると思います。国外で開発されたものを輸入して国内で承認するとしても、検定作業に半年以上はかかるので、安全なワクチンが手元に届くのは、2021年の夏以降でしょう。


2020年7月2日時点で、129種類のワクチンが臨床試験の前の段階にあり、18種類のワクチンが臨床試験にすすんでいます。

ワクチンには、「生ワクチン」(弱毒化されたウイルスが細胞内へ侵入し、免疫応答をひきおこす)、「不活化ワクチン」(細胞内には侵入せず、細胞外で免疫細胞が抗原を認識する)、「核酸ワクチン」(DNA や RNA を細胞内にいれ、抗原をつくらせて免疫応答をおこす)があり、いま注目されているのが核酸ワクチンです。

核酸ワクチンにはおおきくわけて3種類があり、1つは「DNAワクチン」であり、「プラスミド」とよばれる環状の DNA に抗原の遺伝子をくみこんだものです。プラスミドが細胞内にはいるとその一部が RNA にコピーされ、RNA からスパイクの一部がつくられ、これが抗原になります。2つめは「RNAワクチン」であり、DNA から RNA にコピーされる必要がなく、効率よく抗原がつくられるため、DNA ワクチンよりもつよい免疫応答をひきおこせます。3つめは、抗原の遺伝子をふくむ DNA をウイルスにはこばせる「組換えウイルスワクチン」です。

現在、ワクチンの開発が世界各国ですすんでいますが、実際には、ワクチンの実用化にはかなりの時間がかかります。ワクチンは、健康な人に投与する薬であるため、副作用がもしおこったら大問題になります。投与したことによって感染リスクが逆にたかまってしまう「ADE(抗体依存性感染増強)」がおこり、健康な人が死亡する可能性もあります。核酸ワクチンにはおおきな期待がかかりますが、これは、これまでに実用化されたことはなく、その有効性と安全性は未知数です。

したがって万が一のことをおこさないために十分な時間をかけて安全性を確認しなければなりません。

こうして海外で開発されたワクチンが日本国内で実用化されるのは2021年夏以降、国内で開発されたワクチンが実用化されるのは2022年以降になると予測されます。

すなわち来年の東京オリンピックにはまにあいません。東京オリンピックの開催を、もし、ワクチンの実用化を前提にするならば、それは開催できないという論理になります。きびしい現実をわたしたちは認識しなけれればなりません。



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▼ 参考文献
『Newton』(2020年9月号)ニュートンプレス、2020年