地球温暖化が “異常気象” をもたらします。 “異常気象” は普通の気象になりました。水害が毎年おそってくるという前提のもとで対策をたてます。
産業革命以降、過去に例をみないペースで地球温暖化がすすんでいます。それにともない “異常気象” 多発します。



1870年ごろ、二酸化炭素の大気濃度は278ppm(1ppmは、0.0001%)。しかしその後、二酸化炭素濃度は急増し、2014年には397.7ppmにまで至りました。この間に、世界の平均気温は約0.8℃も上昇していますが、これは温室効果ガスの増加以外の理由では説明がつきません。


近年、“異常気象” が世界で頻発している要因のひとつは、二酸化炭素などの「温室効果ガス」の増加がもたらす地球温暖化だとかんがえられています。

人間は、とくに、18世紀なかばにおきた産業革命以降、おおくの化石燃料をもやすことで大量の二酸化炭素を排出してきました。二酸化炭素などの温室効果ガスは、太陽からもたらされたエネルギーを宇宙空間へにげだしにくくし、地球にとどめるはたらきをもつため、温室効果ガスの増加が地球温暖化をひきおこします。

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2013年に公表した『地球温暖化に関する報告書』は、「地球が温暖化していることは疑いようがなく、20世紀半ば以降の地球温暖化は、人間活動がおもな要因である可能性がきわめて高い(95%以上)」と結論づけました。

地球温暖化は、南極やグリーンランドの氷をとかしたり、海水を膨張させたりするため、海水面の上昇もひきおこします。21世紀末までに、世界の平均海面水位は26〜82センチメートル上昇すると予測され、これにより、海抜のひくい島々は水没し、高潮や津波による被害が増大します。

スーパーコンピューターをつかった「イベント・アトリビューション(EA)」というシミュレーションによると、2010年夏にロシアでおきた熱波の発生について、地球温暖化がおきていなかったとした場合の熱波発生確率は0.6%でしたが、温暖化の影響があった場合は3.3%に上昇しました。同様に、2013年夏に日本でおきた「酷暑」についても、地球温暖化の影響がなかった場合は酷暑となった確率は0.5〜1.73%だったのに対し、地球温暖化の影響がある場合は12.4%という結果になりました。

すなわち “異常気象” の発生に地球温暖化はおおきく影響しているといえます。

IPCC によると、「2081〜2100年の世界の平均地上気温は、1986〜2005年の世界の平均地上気温とくらべて、0.3〜4.8℃上昇する可能性が高い」と予測しています。

今後、地球上のほとんどの地域で猛暑日や熱波が発生する頻度がふえます。また、温暖化の対策をとらなかった場合、2050年ごろには、北極の氷が夏には完全に消失してしまう可能性が指摘されています。北極の氷は、地球全体の気候変動に非常におおきな影響をおよぼします。

地球温暖化はさらに、大気中に存在できる水蒸気量(飽和水蒸気量)を増加させ、雲を発達させ、地球全体でみると降水量を増加させます。雨の量が単にふえるだけでなく、集中豪雨の発生をふやし、日本列島でも全体的に豪雨がふえます。さらに、あるところで局所的に雨がふるということは、これまですこしの雨がふっていた場所では雨がふらなくなり、旱魃におちいることになり、降水量の地域差がおおきくなります。また地球温暖化により、「エルニーニョ現象」がつよめられることによっても日本やアメリカでは豪雨が多発するという研究結果もあります。

そして台風やハリケーンといった熱帯低気圧の発達にも影響します。熱帯域の海面水温上昇にともない、熱帯低気圧の強度は増大し、最大風速や降水強度は増加します。台風は、猛烈ないきおいをたもったまま日本列島に上陸します。

気象庁の地域気象観測システム「アメダス(AMeDAS)」の観測結果によると「1日の降水量が50ミリメートル以上の日数」は増加傾向にあり、また気象庁の『地球温暖化予測情報 第8巻』により作成した、「1時間あたりの降水量が50ミリメートル以上となる豪雨」が1年間でどれだけ発生するかを予測したグラフをみると、豪雨の発生回数は全国的に増加すると予測されます(下図)。


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(出典:Newton『異常気象と温暖化の脅威』)








このように、“異常気象” は普通の気象になりつつあります。

すでに、気温上昇や海水温上昇・豪雨・台風・水害などが多数観測されており、これらのデータ(情報)から、それぞれの現象や災害について理解をふかめることが重要ですが、一方で、これらのデータ(情報)から全体的・一般的な傾向をつかむことも大事です。傾向や規則性をつかむ帰納法が役だちます。

すると地球温暖化はじわじわと進行しており、水害などが増加傾向にあることがよくわかります。

また個々の水害の背後には、地球温暖化という全球的な環境変動がおこっているという、局所的なみかたと大局的なみかたも大事です。局観と大観といってもよいでしょう。

地球の変動は大規模であり、一度うごきはじめると容易にはとめられません。現実的には、地球温暖化をくいとめるのはむずかしい状況です。したがって気象災害は毎年おこるという前提にたって対策を講じたほうがよいでしょう。対策は急務です。



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