「足」をつかった取材をおこない、仮説をたてます。定量的データで検証します。処理結果を発表します。
2020年7月5日、東京都知事選挙がおこなわれ、投票しめきり早々、小池百合子氏の当選確実が速報されました。

当選確実は、「出口調査」の結果にもとづいてだされます。たとえば TBS は、つぎのように報道しました。


調査は、都内40か所の投票所で投票を終えた有権者1760人から回答を得ました。2度目の当選を確実にした小池氏は、自民党支持層の81%、実質支援した公明党支持層の91%を固めました。小池氏はさらに「支持する政党はない」と答えた、いわゆる無党派層の57%を固め、他の候補を大きく引き離しています。(以下略)


また NHK は、つぎのように報道しました。


都内32か所の投票所で投票を終えた有権者2845人を対象に出口調査を行い、およそ62%にあたる1763人から回答を得ました。小池さんは、男性の50%余り、女性の60%台半ばから支持を集めました。年代別に見ますと、小池さんは、18歳、19歳では70%台後半、20代では40%台後半、30代ではおよそ50%、40代では50%台半ば、50代では50%台後半、60代では60%余り、70代以上の60%台後半の支持を集め、すべての年代で最も支持されました。(以下略)


このような当選確実は、出口調査の集計結果にもとづいてだされますが、実際には、いろいろな調査を各報道機関は投票前にもおこなっています。たとえば各陣営の体制やスタッフ・選挙戦略・重点地域、選挙の争点、有権者がもっている印象・意見、一般的な雰囲気、選挙区にふく「風」などを選挙担当記者がしらべます。

こうした「足」をつかった取材(フィールドワーク)により情勢判断ができ、今回の選挙の場合は小池氏が優勢であり、小池氏が当選するにちがいないという仮説が事前にたてられました。

しかし仮説だけで当選確実をだすわけにはいきません。仮説の検証がいります。定量的データによる裏づけが必要です。そこで出口調査と統計学の出番です。

このような統計学的な調査では有権者のすべてをしらべる必要はありません。今回の有権者数は11,290,229人でしたが、TBS は1760人、NHK は1763人しかしらべていません。こんな小規模な調査で大丈夫なのだろうかとおもう人がいるかもしれませんが問題ありません。スープの味をたしかめるのに、そのスープがよくまざっていれば、そのスープのすべてをのむ必要はなく、スプーン1杯あれば十分です。

こうして、取材による仮説立案、出口調査によるデータ収集、統計学的処理による当確発表ということになりました。ここでは、〈仮説 → データ(事実)→ 一般〉とすすむ論理がつかわれており、これは帰納法です(図)。「一般」は、あらたな推論(予測)のための前提としてつかえるのでここでは「前提」としるしておきます。


200514 帰納法
図 帰納法のモデル


あまり気づかれていないことですが、帰納法では、仮説をまずたてることが重要です。実際にはここで仮説法がつかわれます。仮説をたてないで(あるいはモデルをつくらないで)やみくもにデータをあつめはじめると泥沼にはまります。

また出口調査にかぎらずどのような調査でも、高額予算・高性能機器・大量人員をつかった大規模調査はかならずしも必要ないこともわかります。むしろ、小規模調査で、明瞭な傾向や相違をあきらかにすることのほうに意義があります。



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