発展途上国と先進国という分類はもはや役立ちません。〈仮説(モデル)→ 事実(データ)→ 一般(前提)〉とすすみます。事実で世界を理解します。
数値とグラフを自在にあやつる「統計の達人」、スウェーデン、カロリンスカ研究所のハンス=ロスリング博士は、「どのようなことを目標にしてデータ公開をしていますか?」という質問に対してつぎのようにこたえました(注1)。


事実にもとづいて、世界について理解してもらうことです。だれにでも理解できる物の見方を使って、無知をなくしたいと考えています。


たとえば、ロスリング博士らは、発展途上国と先進国について、もはや、そのような分類はなりたたないことを統計学的にしめしました。


2020-07-06 17.01.27
(ギャップマインダー財団ウェブサイトから引用)

 
これは、女性1人あたりの子供の数(横軸)と子供の死亡率(縦軸)との関係をあらわすグラフであり、1963年の段階では、発展途上国と先進国の2つのグループにわかれていましたが、1990年には、両者はひとつながりに分布しており、2つのグループにわけることはできなくなりました。したがって現在では、発展途上国と先進国という分類はなりたたず、そのような固定観念や常識からわたしたちは開放されなければなりません。

わたしは、“発展途上国” とよばれるネパールによくいくので、そこには、まずしいネパール人がいる一方で、庭つき3階建ての一軒家にすんでランドクルーザーをのりまわしているネパール人もいることをしっています。お金持ちの人ほど、商売や援助資金獲得の能力にたける傾向があるので、富める者はますます富み、貧富の差が拡大しています。

問題は、その国やその地域の内部において貧富の差があり、それが拡大していることであり、格差を解消することが課題ですが、他方で、格差を解消したくないという人々もたくさんいるという現実があり、ことは難題になっています。“発展途上国” だから援助をすればよいという簡単な話ではありません。

このように、統計学の方法をつかえば、事実(データ)にもとづいて理解ができるので誤解や判断のあやまりがなくなります。統計学では、仮説(モデル)にもとづいてデータ(事実をしめす数値など)をあつめ、一般的傾向をあきらかにします。これは、〈仮説(モデル)→ 事実(データ)→ 一般(前提)〉とすすむ論理であり、帰納法です(図)。ここで「一般」は、あらたな推論(予測)のための前提としてつかえるので「前提」としるしておきます。


200514 帰納法
図 帰納法のモデル


ハンス=ロスリング博士のウェブサイト「Gapminder World」は、事実にもとづいて世界を理解するための事例を多数掲載していて、たいへん参考になります。



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▼ 注1:参考文献
Newton『統計の威力』(Kindle版)ニュートンプレス、2015年
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▼注2:参考サイト
Gapminder World