パタン博物館
(平行法で立体視ができます)
(平行法で立体視ができます)
インド密教(後期大乗仏教)がネパールに伝来しました。仏教の伝統がパタンには息づいています。仏教とヒンドゥー教が共存し、独自のネワール文化が花ひらきました。
ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます(注)。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
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▼ 注
2020年2月に撮影。
▼ 参考文献
田中公明・吉崎一美著『ネパール仏教』春秋社、1998年
立川武蔵編著『ネパール密教 歴史・マンダラ・実践儀礼』春秋社、2015年
佐々木閑著『大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか』NHK出版新書、2019年
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
Shiva and Parvati (18th century)
Hevajra (20th century)
Amoghapasha (14th-15th century)
Dipankara, the Buddha of Fixed Light
(17th-18th century)
Shakyamuni, the Historical Buddha
(12th century)
(12th century)
Vajrasattva and Prajna (A.D. 1859)
Padmapani Lokeshvara,
the Bodhisattva of Compassion
(16th-17th century)
(16th-17th century)
Linga, Symbol of Shiva (11th century)
Four-Faced Shivalinga (18th century)
Ganesha (17th-18th century)
Visnu
Shakyamuni Buddha (17th-18th century)
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カトマンドゥ盆地の原住民であり、都市文明をこの地にきずいたネワールの人々は、古来、さまざまな文化をインドから摂取しつつ、独自のネワール文化をつくりだしました。
ネワールの社会は、ヒンドゥー教徒と仏教徒が共存するという非常にめずらしい社会構造をもっています。
ユネスコがおこなったカトマンドゥ盆地における仏教・ヒンドゥー教寺院の調査・報告書『カトマンドゥ盆地』(1975)によると、カトマンドゥ盆地の3主要都市において、パタンは仏教寺院がおおく、バクタプルはヒンドゥー教寺院がおおく、カトマンドゥは、仏教寺院の数とヒンドゥー教寺院の数が拮抗しているとされます。したがってパタンには仏教徒がとてもおおく、バクタプルやカトマンドゥにくらべて仏教の伝統が色こく息づいているといえ、このことが、パタン博物館の展示作品にも反映されています。
カトマンドゥ盆地で、仏教の存在を最初にしめした資料は、紀元後5世紀の中頃から8世紀におよぶリッチャヴィ時代の碑文集のなかにあり、リッチャヴィ王朝は、パシュパティ(シヴァ)を崇拝しましたが、同時に仏教も容認したことがしられています。プリシャ=デーヴァ王(4世紀末〜5世紀初)はスヴァヤンブーの地に仏教寺院を建立したといいます。
またアンシュヴァルマン王の碑文断片により、7世紀にはすでに密教がつたえられていたことがしらます。
密教(仏教タントリズムともいう)とは、4〜5世紀頃のインドで、バラモン教やヒンドゥー教の影響をうけながら誕生し、7世紀頃に、主要な経典ができて体系化された当時としてはあたらしい仏教です。この密教は、ガンダーラからシルクロードをとおって長安にもつたわり、長安でまなんだ空海が日本にもつたえました。
9〜13世紀は、ネパール史では、タクリ王朝またはつぎのマッラ王朝へいたる過渡期の時代であり、この時期に、それ以前のふるい仏教とあたらしい密教が主役の座を交替しました。
13世紀初頭、インドで仏教が姿をけそうとした時期には、カトマンドゥ盆地にインドの仏教徒が多数やってきました。
13世紀よりはじまるマッラ時代は、1482〜84年までの統一王朝時代(初期マッラ時代)と1768年までの三国分裂時代(後期マッラ時代)とに区分され、今日のネパール仏教を特徴づけるおおくの要素がこの時代に成立しました。マッラ時代のネワール人たちは、その人口の3分の2ほどが仏教徒であったといわれます。
他方、カトマンドゥ盆地は、インド・チベット貿易の中継地としてふるくからさかえており、インドで成立した仏教をチベットにつたえる中継地点としての役割もはたしました。
そもそも仏教は、紀元前500年(約2500年前)頃、釈迦(ゴータマ=シッダッタ)が創始した宗教であり、紀元前後(約2000年前)頃になると、20ほどの部派にわかれていた仏教世界のなかから大乗仏教がうまれました。
そして4〜5世紀頃になると大乗仏教のなかから密教がうまれます。当時のインドでは、ヒンドゥー教の勢力がつよまり、仏教が次第に衰退しはじめており、そんななかで、いきのこる方法をかんがえた大乗仏教が、ヒンドゥー教の要素をとりいれて誕生したのが密教です。
カトマンドゥ盆地にはこの密教が定着し、そしてここを中継してチベットにも密教がつたわり、それが、チベットで独自の発展をとげてチベット仏教になりました。
このように、ネパール仏教(正確にはネワール仏教)はインドから直接伝来した密教であり、インド的な要素をのこしながら現在にいたっており、チベット仏教がネパールに輸入されたものではありません。ネワールの人たちは、自分たちの密教を「ヴァジュラヤーナ(金剛乗)」とよびます。
1956年に勃発したチベット動乱以後、ネパールにはチベット人が多数渡来し、同時に、チベット仏教も伝来していますが、ネパール仏教とチベット仏教は区別して認識しなければなりません。
パタン博物館にくると、ネパール仏教の伝統を感じることができ、またネワールの人々が美術工芸にひいでていることがよくわかります。さらにパタンの街中もあるいてみれば、ちいさな寺院や街角の店でもさまざまな仏像をみることができます。仏像などの鋳造をおこなっているところもみられます。「美の都」の伝統はいまでも息づいています。
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2020年2月に撮影。
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田中公明・吉崎一美著『ネパール仏教』春秋社、1998年
立川武蔵編著『ネパール密教 歴史・マンダラ・実践儀礼』春秋社、2015年
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