バクタプル国立美術館
(平行法で立体視ができます)
立体的にとらえます。ヒンドゥー教と仏教の彫像がみられます。おおくの神々や仏が日本にもやってきています。
ネパール・バクタプル国立美術館(注1)では、ヒンドゥー教と仏教のさまざまな彫像をみることができます。
ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます(注)。立体視訓練をしていると常日頃から物事が立体的にとらえられるようになります。みる力(目から情報をインプットする能力)がたかまります。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
ガネーシャ(Ganesh, Ganesha)は、ヒンドゥー教の主神の一柱であるシヴァの子供、知恵と豊饒の神であり、学問の成就、農業の豊作、商売の繁盛をつかさどります。人間の身体に象の頭をもち、ふとった腹をしたユニークな姿であらわされます。仏教にもとりいれられて日本にもきており、歓喜天(かんぎてん)あるいは聖天(しょうてん)とよばれます。
リンガ(Linga)は、サンスクリット語でシンボルを意味し、男根をかたどった彫像であり、ヴィシュヌ・ブラフマーとならぶヒンドゥー教の主神である、宇宙の破壊をつかさどるシヴァを象徴します。シヴァも仏教にとりいれられて日本にもきており、大黒天とよばれ、七福神の一柱になっています。
ヴィシュヌ(Vishnu, Visnu)も、ブラフマー・シヴァとならぶヒンドゥー教の主神ですが、宇宙の維持をつかさどり、仏教では、毘紐天(びちゅうてん、毘紐は Vishnu の音写)とよばれます。またヒンドゥー教では、釈迦(ゴータマ=ブッダ )をヴィシュヌの化身とみることがときどきあります。
パールヴァティー(Parvati, 異名 ウマー(Uma))は、ヒンドゥー教の女神の一柱で、シヴァ神の妃、ガネーシャの母であり、ヒマラヤ山脈の山神 ヒマヴァットの娘で、ガンジス川の女神 ガンガーの姉にあたります。仏教では、烏摩妃(うまひ)とよばれます。「Uma-Shankara(パールヴァティー-シヴァ, Parvati-Shiva)」(シャンカラ(Shankara, Sankara)はシヴァの異名)は、シヴァ(右半身)とパールヴァティー(左半身)が合体した姿(男らしさと女らしさをかねそなえた男女両性の神)をあらわします。
シヴァは、マヘーシュヴァラ(Mahesvara:偉大な支配者の意)という異名ももち、これが仏教にとりいれられて大自在天あるいは自在天(世界を意のままにするという意)になりました。
ラクシュミー(Laksmi, Lakshmi)は、ヒンドゥー教の女神の一柱で、ヴィシュヌの妃であり、美と富と豊穣と幸運をつかさどります。仏教にもとりこまれ、吉祥天とよばれます。サラスヴァティー(弁才天)と混同しないでください。仏教では、父は徳叉迦(とくさか)、母は鬼子母神、夫は毘沙門天とします。なおナラヤン(Narayan)はヴィシュヌの異名です。
クベーラ(Kubera)は、財宝の神、北方の守護神であり、ヴァイシュラヴァナという異名をもちます。仏教にもとりいれられ、ヴァイシュラヴァナを音写して毘沙門天、意訳して多聞天とよばれます。四天王の一柱であり、四天王がそろっているときは多聞天といい、独尊のものは毘沙門天といいます。四天王の多聞天が北方に配置されるのはクベーラが北方の守護神だからです。また毘沙門天は七福神の一柱でもあります。
マハーデーバ(Mahadeva)は、サンスクリット語でおおいなる神を意味し、ヒンドゥー教ではシヴァをとくに尊称していいます。仏教では大天とよばれ、釈尊の没後100年頃のインドの仏教僧です。
スーリヤ(Surya)は、太陽を神格化した太陽神であり、仏教では日天とよばれます。
ヴァジュラサトゥワ(Vajrasatwa, Vajrasattva)は金剛薩埵(こんごうさった)であり、中期密教においては大日如来のおしえをうけた菩薩であり、真言密教では第二祖とされ、大日如来と衆生とをむすぶ役目をはたす菩薩です。
マヤ(あるいはマーヤー)(Mayadevi, devi は女神の意)は釈迦の生母であり、カピラバストゥの浄飯(じょうぼん)王の妃です。出産のため実家にかえる途中、ルンビニ(現ネパール領)で釈迦をうみ、7日後に没したといいます。日本では、摩耶夫人(まやぶにん)あるいは摩訶摩耶とよばれます。
日本にもきたヒンドゥー教の神々
このように、ヒンドゥー教の神々はふるくから日本にもきており、日本各地でひろく信仰されています。日本人にとってヒンドゥー教はかならずしも異教ではありません。
日本の仏教あるいは日本人の民間信仰はヒンドゥー教の影響をうけていますが、それ以上に、日本人の民間信仰はヒンドゥー教によく似ています。ヒンドゥー教にちかいといえるでしょう。
日本人も、おりにふれて、それぞれの神々や仏におまいりします。さまざまな神々や仏に生命力を感じます。このような、生活に根づいた民間信仰(民族宗教)の観点から、日本そして東洋の精神文化をとらえなおしてみると、森羅万象とともにいきる人々の姿がみえてきます。
ネパール・バクタプルにある国立美術館は、旧王宮内にある本館のほかに、タチュパル広場・ダッタトラヤ寺院のそばに、木彫美術館とブラス・ブロンズ美術館の別館があります。3ヵ所にわかれているので注意してください。本館で購入したチケット(150ルピー)で別館にもはいれます。写真撮影は、有料(100ルピー)で許可されています。2015年のネパール地震でいずれも被害をうけましたが今ではかなり修復されつつあります。
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▼ 参考文献
地球の歩き方編集室編集『地球の歩き方 -ネパールとヒマラヤトレッキング-』(2018~2019)ダイヤモンド・ビッグ社、2018年
▼ 注1:ネパール・バクタプル国立美術館(本館)の位置
▼ 注2
2020年2月に撮影。
ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます(注)。立体視訓練をしていると常日頃から物事が立体的にとらえられるようになります。みる力(目から情報をインプットする能力)がたかまります。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
Ganesh(年代不詳)
Linga(14世紀)
Vishnu(13世紀)
Uma-Shankara(Parvati-Shiva, 17世紀)
Uma-Mahesvara(Parvati-Shiva, 17世紀)
Laksmi-Narayan(17世紀)
Kubera, Bhimsena and Mahadeva(1687年)
Surya(17世紀)
Vajrasatwa(18-19世紀)
Mayadevi(17-18世紀、中央)
Lama Monk(18世紀、左)
Pandara Tara(18世紀、右)
Lama Monk(18世紀、左)
Pandara Tara(18世紀、右)
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ガネーシャ(Ganesh, Ganesha)は、ヒンドゥー教の主神の一柱であるシヴァの子供、知恵と豊饒の神であり、学問の成就、農業の豊作、商売の繁盛をつかさどります。人間の身体に象の頭をもち、ふとった腹をしたユニークな姿であらわされます。仏教にもとりいれられて日本にもきており、歓喜天(かんぎてん)あるいは聖天(しょうてん)とよばれます。
リンガ(Linga)は、サンスクリット語でシンボルを意味し、男根をかたどった彫像であり、ヴィシュヌ・ブラフマーとならぶヒンドゥー教の主神である、宇宙の破壊をつかさどるシヴァを象徴します。シヴァも仏教にとりいれられて日本にもきており、大黒天とよばれ、七福神の一柱になっています。
ヴィシュヌ(Vishnu, Visnu)も、ブラフマー・シヴァとならぶヒンドゥー教の主神ですが、宇宙の維持をつかさどり、仏教では、毘紐天(びちゅうてん、毘紐は Vishnu の音写)とよばれます。またヒンドゥー教では、釈迦(ゴータマ=ブッダ )をヴィシュヌの化身とみることがときどきあります。
パールヴァティー(Parvati, 異名 ウマー(Uma))は、ヒンドゥー教の女神の一柱で、シヴァ神の妃、ガネーシャの母であり、ヒマラヤ山脈の山神 ヒマヴァットの娘で、ガンジス川の女神 ガンガーの姉にあたります。仏教では、烏摩妃(うまひ)とよばれます。「Uma-Shankara(パールヴァティー-シヴァ, Parvati-Shiva)」(シャンカラ(Shankara, Sankara)はシヴァの異名)は、シヴァ(右半身)とパールヴァティー(左半身)が合体した姿(男らしさと女らしさをかねそなえた男女両性の神)をあらわします。
シヴァは、マヘーシュヴァラ(Mahesvara:偉大な支配者の意)という異名ももち、これが仏教にとりいれられて大自在天あるいは自在天(世界を意のままにするという意)になりました。
ラクシュミー(Laksmi, Lakshmi)は、ヒンドゥー教の女神の一柱で、ヴィシュヌの妃であり、美と富と豊穣と幸運をつかさどります。仏教にもとりこまれ、吉祥天とよばれます。サラスヴァティー(弁才天)と混同しないでください。仏教では、父は徳叉迦(とくさか)、母は鬼子母神、夫は毘沙門天とします。なおナラヤン(Narayan)はヴィシュヌの異名です。
クベーラ(Kubera)は、財宝の神、北方の守護神であり、ヴァイシュラヴァナという異名をもちます。仏教にもとりいれられ、ヴァイシュラヴァナを音写して毘沙門天、意訳して多聞天とよばれます。四天王の一柱であり、四天王がそろっているときは多聞天といい、独尊のものは毘沙門天といいます。四天王の多聞天が北方に配置されるのはクベーラが北方の守護神だからです。また毘沙門天は七福神の一柱でもあります。
マハーデーバ(Mahadeva)は、サンスクリット語でおおいなる神を意味し、ヒンドゥー教ではシヴァをとくに尊称していいます。仏教では大天とよばれ、釈尊の没後100年頃のインドの仏教僧です。
スーリヤ(Surya)は、太陽を神格化した太陽神であり、仏教では日天とよばれます。
ヴァジュラサトゥワ(Vajrasatwa, Vajrasattva)は金剛薩埵(こんごうさった)であり、中期密教においては大日如来のおしえをうけた菩薩であり、真言密教では第二祖とされ、大日如来と衆生とをむすぶ役目をはたす菩薩です。
マヤ(あるいはマーヤー)(Mayadevi, devi は女神の意)は釈迦の生母であり、カピラバストゥの浄飯(じょうぼん)王の妃です。出産のため実家にかえる途中、ルンビニ(現ネパール領)で釈迦をうみ、7日後に没したといいます。日本では、摩耶夫人(まやぶにん)あるいは摩訶摩耶とよばれます。
日本にもきたヒンドゥー教の神々
- シヴァ(大黒天)=マヘーシュヴァラ(大自在天 or 自在天)、パールヴァティー(烏摩妃、シヴァの妃)、ガネーシャ(歓喜天 or 聖天、シヴァの子)
- ブラフマー(梵天)、サラスヴァティー(弁才天、ブラフマーの妃)
- ヴィシュヌ(毘紐天)、ラクシュミー(吉祥天、ヴィシュヌの妃)
- クベーラ(毘沙門天、多聞天)
- スーリヤ(日天)
このように、ヒンドゥー教の神々はふるくから日本にもきており、日本各地でひろく信仰されています。日本人にとってヒンドゥー教はかならずしも異教ではありません。
日本の仏教あるいは日本人の民間信仰はヒンドゥー教の影響をうけていますが、それ以上に、日本人の民間信仰はヒンドゥー教によく似ています。ヒンドゥー教にちかいといえるでしょう。
日本人も、おりにふれて、それぞれの神々や仏におまいりします。さまざまな神々や仏に生命力を感じます。このような、生活に根づいた民間信仰(民族宗教)の観点から、日本そして東洋の精神文化をとらえなおしてみると、森羅万象とともにいきる人々の姿がみえてきます。
ネパール・バクタプルにある国立美術館は、旧王宮内にある本館のほかに、タチュパル広場・ダッタトラヤ寺院のそばに、木彫美術館とブラス・ブロンズ美術館の別館があります。3ヵ所にわかれているので注意してください。本館で購入したチケット(150ルピー)で別館にもはいれます。写真撮影は、有料(100ルピー)で許可されています。2015年のネパール地震でいずれも被害をうけましたが今ではかなり修復されつつあります。
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3D ネパール旅行
3D バクタプル - ネパールの都市国家 -
3D パシュパティナート - ネパール、ヒンドゥー教の聖地 -
▼ 参考文献
地球の歩き方編集室編集『地球の歩き方 -ネパールとヒマラヤトレッキング-』(2018~2019)ダイヤモンド・ビッグ社、2018年
▼ 注1:ネパール・バクタプル国立美術館(本館)の位置
▼ 注2
2020年2月に撮影。