ヒマラヤの氷河がとけて氷河湖がふえています。氷河湖の水位が上昇すると氷河湖決壊洪水がおこります。防災のためには予測が必要です。
地球温暖化にともなう氷河湖決壊について『ナショナルジオグラフィック』(2019年12月号)が報告しています。
ヒマラヤ山脈の氷河がとけだし、その水がながれこんで、巨大な氷河湖がつぎつぎにうまれています。それらが決壊し、壊滅的な洪水が発生する危険性がたかまっています。
1990年から2010年にかけて、アジアの高山地帯において、氷河を水源とする氷河湖が900カ所以上もあらたに形成されました。国際総合山岳開発センターの2019年の報告では、ヒマラヤからパミール高原におよそ5万6000ヵ所ある氷河の1/3〜2/3が2011年までに消滅すると予測しています。つまり、氷河がとけて、氷河湖がふえているということです。
氷河を、氷の「ブルドーザー」にたとえるとわかりやすいです。ブルドーザーはゆっくりと山腹をくだりながら大地をけずり、「モレーン(堆石)」とよばれる「岩屑」の土手をつくります。氷河がとけて縮小すると、天然のダムの役割をモレーンがはたし、くぼみに水がたまります。そして氷河湖の水位があがると、モレーンをこえて湖水があふれだしたり、モレーンが決壊して「氷河湖決壊洪水」(GLOF)がおこります。
ネパールのエベレスト山麓地方であるクンブ地方ののディグ湖の例では、氷雪崩によって、たかさ4〜6メートルの波が発生、それによりモレーンが決壊し、500万立方メートルをこえる水が一気にあふれだして洪水がおきました。
クンブ地方の住民たちは、金網の籠に岩石をつめこんでつみあげ、洪水の直撃を集落がうけないようにしています。チュクン村を2016年に洪水がおそったとき、洪水のながれの進路をかえて村をまもりました。
氷河湖決壊洪水は、地球温暖化がもたらす直接的な災害の例です。また氷河湖の成長と決壊は、地球温暖化が確実にすすんでいることをしめす具体的な指標(目印)でもあります。氷河湖の調査は、洪水の予防のためであるとともに、地球温暖化をモニタリングするという役割ももちます。
防災のためには、長期間にわたる観測とその結果にもとづいて現象の予測をすることが必要です。
▼ 関連記事
地球温暖化の指標 -「氷河」(Newton 2019.4号)
消える生命の氷 -「南極半島」(ナショナルジオグラフィック 2018.11号)
海水面上昇にそなえる -「崩壊する氷の大陸」(ナショナルジオグラフィック 2017.7号)-
民族と環境 -『ヒマラヤの環境誌 -山岳地域の自然とシェルパの世界-』-
▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』(2019年12月号)日経ナショナル ジオグラフィック社、2019年
ヒマラヤ山脈の氷河がとけだし、その水がながれこんで、巨大な氷河湖がつぎつぎにうまれています。それらが決壊し、壊滅的な洪水が発生する危険性がたかまっています。
1985年8月4日には、ネパールのクンブ地方で、ヒマラヤでも屈指の大規模な「氷河湖決壊洪水」(GLOF)が発生した。きっかけは氷雪崩がランモチェ氷河を下り、ディグ湖に流れ込んだことだった。(中略)
洪水は14の橋と30軒ほどの家屋、そして新しい水力発電所を破壊した。一部の報道によると、数人の死者が出たとされている。不幸中の幸いと言うべきか、洪水が発生したのは収穫を祝う祭りの最中だった。おかげで当日は川の近くに住民がほとんどおらず、多くの人命が奪われずに済んだ。
1990年から2010年にかけて、アジアの高山地帯において、氷河を水源とする氷河湖が900カ所以上もあらたに形成されました。国際総合山岳開発センターの2019年の報告では、ヒマラヤからパミール高原におよそ5万6000ヵ所ある氷河の1/3〜2/3が2011年までに消滅すると予測しています。つまり、氷河がとけて、氷河湖がふえているということです。
氷河を、氷の「ブルドーザー」にたとえるとわかりやすいです。ブルドーザーはゆっくりと山腹をくだりながら大地をけずり、「モレーン(堆石)」とよばれる「岩屑」の土手をつくります。氷河がとけて縮小すると、天然のダムの役割をモレーンがはたし、くぼみに水がたまります。そして氷河湖の水位があがると、モレーンをこえて湖水があふれだしたり、モレーンが決壊して「氷河湖決壊洪水」(GLOF)がおこります。
ネパールのエベレスト山麓地方であるクンブ地方ののディグ湖の例では、氷雪崩によって、たかさ4〜6メートルの波が発生、それによりモレーンが決壊し、500万立方メートルをこえる水が一気にあふれだして洪水がおきました。
クンブ地方の住民たちは、金網の籠に岩石をつめこんでつみあげ、洪水の直撃を集落がうけないようにしています。チュクン村を2016年に洪水がおそったとき、洪水のながれの進路をかえて村をまもりました。
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氷河湖決壊洪水は、地球温暖化がもたらす直接的な災害の例です。また氷河湖の成長と決壊は、地球温暖化が確実にすすんでいることをしめす具体的な指標(目印)でもあります。氷河湖の調査は、洪水の予防のためであるとともに、地球温暖化をモニタリングするという役割ももちます。
防災のためには、長期間にわたる観測とその結果にもとづいて現象の予測をすることが必要です。
▼ 関連記事
地球温暖化の指標 -「氷河」(Newton 2019.4号)
消える生命の氷 -「南極半島」(ナショナルジオグラフィック 2018.11号)
海水面上昇にそなえる -「崩壊する氷の大陸」(ナショナルジオグラフィック 2017.7号)-
民族と環境 -『ヒマラヤの環境誌 -山岳地域の自然とシェルパの世界-』-
▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』(2019年12月号)日経ナショナル ジオグラフィック社、2019年