基本再生産数 R0 により感染状況の予測ができます。R0 が1よりちいさければ感染者数は減少していきます。人と人との接触をなくし、感染者を隔離すれば、R0 値はちいさくなります。
『Newton』2020年6月号の FOCUS Plus では新型コロナウイルスの感染拡大についてモデルをつかって解説しています。
どこまで感染は拡大するのか? いつ終息するのか? 誰もがしりたいです。
世界各国で集積したデータをもとに、グラフをつくるなどの統計学的方法(帰納法)により、一般的傾向や規則性、感染の全体像があきらかになってきています。するとつぎに、今後の感染状況の予測(予見)ができます。R0(基本再生産数)をつかえば定量的な予測が可能です。
オーバーシュート(感染者の爆発的増加)をおこしたヨーロッパでは、集計されたデータから、R0 は約 2.5 とされました。また3月20日からの10日間の東京の R0 は 1.7 でした。
日本の場合、仮に、何の対策もとらないとして、R0 を 2.5 とすると、重篤患者数は合計85万3367人となり、これまでのデータから重篤患者の致死率を約49%とすると死者は41万8000人となります。
これは最悪のケースであり、人と人との直接的な接触、間接的な接触をへらし、感染者の隔離をすれば、R0 の値はちいさくなり、患者数・死者数をへらすことができます。
北海道大学の西浦博教授は、もし、人と人との接触を80%へらすことができれば、R0 を 1 以下にして、新規感染者数を比較的短期間で減少にむかわせることができると予測しました。
しかし接触を80%へらすことは現在までできていません。
またイギリスのニール=ファーガソン教授らは、R0 を 3 と想定し、何の対策もとらなかった場合、世界の70億人が2020年中に感染し、死亡者数は4000万人におよぶと計算しました。これも最悪のケースであり、R0 値をさげることができれば感染者数・死者数ともにへらせます。
基本再生産数のモデルによれば、R0 値は、人間の側の努力によってさげられます。現実の R0 値をどれだけちいさくできるかに今後がかかっています。
対策としては、新型コロナウイルスに対する特効薬もワクチンも現在のところないため、人と人との直接的・間接的な接触をさける(他者と会わない、手洗い・消毒などを徹底する)ことと感染者の隔離以外に方法はありません。
基本再生産数 R0 のモデルは感染状況の予測をするためにわかりやすいです。現代人は、精神論や根性・希望的観測ではやっていけません。論理と定量性が必要です。R0 値に注目するとよいでしょう(注)。
日本では、現在までのところ、人と人との接触を80%へらすことはできていません。つまり R0 値は 1 をこえています。
いつ、R0 値が 1 よりもちいさくなるのか? すくなくとも、2020年5月6日で緊急事態宣言が解除されることはないことが予測できます。長期化を覚悟せざるをえません。
なお基本再生産数のモデルとは別に、「集団免疫」(人口の6〜7割が免疫を獲得すること)により、新型コロナウイルスの流行が終息するという仮説をたてている学者がいますが、そのためには、数年の時間がかかり、その間に、死者(犠牲者)もおおくなることを想定しなければなりません。
▼ 関連記事
新型コロナウイルスの感染拡大と〈仮説法→演繹法→帰納法〉
みえにくい感染症 - 新型コロナウイルス(Newton 2020.4-5号)-
論理の3段階モデル - 新型コロナウイルスの感染拡大 -
新型コロナウイルスの感染拡大がつづく -「基本再生産数」(Newton 2020.6号)-
コウモリ起源説 -「コロナウイルスはどこから来たのか」(日経サイエンス 2020.05号)-
往来拡大の歴史 - 池上彰・増田ユリヤ著『感染症対人類の世界史』-
長期的視野にたつ -「感染拡大に立ち向かう」(日経サイエンス 2020.06号)-
ウイルスにうまく対処する -「COVID-19 長期戦略の模索」(日経サイエンス 2020.07号)-
▼ 参考文献
「新型コロナ」はどうすれば終息できるか、『Newton』(2020年6月号)、ニュートンプレス、2020年6月
▼ 注(追記):基本再生産数と実効再生産数
今回の『Newton』の記事には説明がありませんでしたが、再生産数には、基本再生産数と実効再生産数があります。『日経サイエンス』(2020年07号)でつぎのように説明しています。
どこまで感染は拡大するのか? いつ終息するのか? 誰もがしりたいです。
感染状況の推移を見通すうえで重要な値が「基本再生産数」だ。基本再生産数は「1人の感染者から平均して生じる2次感染者の数」で、R0 (アールノートと読む)であらわす。R0 が1より小さければ感染者数は減っていき、封じ込めにつながる。だが R0 が1より大きければ感染は拡大していく。
世界各国で集積したデータをもとに、グラフをつくるなどの統計学的方法(帰納法)により、一般的傾向や規則性、感染の全体像があきらかになってきています。するとつぎに、今後の感染状況の予測(予見)ができます。R0(基本再生産数)をつかえば定量的な予測が可能です。
- R0 = 1 のとき:感染者数は不変である
- R0 < 1 のとき:感染者数は減少していく
- R0 > 1 のとき:感染者数は増加していく
- R0 = 2 のとき:感染者数は倍増していく
オーバーシュート(感染者の爆発的増加)をおこしたヨーロッパでは、集計されたデータから、R0 は約 2.5 とされました。また3月20日からの10日間の東京の R0 は 1.7 でした。
日本の場合、仮に、何の対策もとらないとして、R0 を 2.5 とすると、重篤患者数は合計85万3367人となり、これまでのデータから重篤患者の致死率を約49%とすると死者は41万8000人となります。
これは最悪のケースであり、人と人との直接的な接触、間接的な接触をへらし、感染者の隔離をすれば、R0 の値はちいさくなり、患者数・死者数をへらすことができます。
北海道大学の西浦博教授は、もし、人と人との接触を80%へらすことができれば、R0 を 1 以下にして、新規感染者数を比較的短期間で減少にむかわせることができると予測しました。
しかし接触を80%へらすことは現在までできていません。
またイギリスのニール=ファーガソン教授らは、R0 を 3 と想定し、何の対策もとらなかった場合、世界の70億人が2020年中に感染し、死亡者数は4000万人におよぶと計算しました。これも最悪のケースであり、R0 値をさげることができれば感染者数・死者数ともにへらせます。
基本再生産数のモデルによれば、R0 値は、人間の側の努力によってさげられます。現実の R0 値をどれだけちいさくできるかに今後がかかっています。
対策としては、新型コロナウイルスに対する特効薬もワクチンも現在のところないため、人と人との直接的・間接的な接触をさける(他者と会わない、手洗い・消毒などを徹底する)ことと感染者の隔離以外に方法はありません。
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基本再生産数 R0 のモデルは感染状況の予測をするためにわかりやすいです。現代人は、精神論や根性・希望的観測ではやっていけません。論理と定量性が必要です。R0 値に注目するとよいでしょう(注)。
日本では、現在までのところ、人と人との接触を80%へらすことはできていません。つまり R0 値は 1 をこえています。
いつ、R0 値が 1 よりもちいさくなるのか? すくなくとも、2020年5月6日で緊急事態宣言が解除されることはないことが予測できます。長期化を覚悟せざるをえません。
なお基本再生産数のモデルとは別に、「集団免疫」(人口の6〜7割が免疫を獲得すること)により、新型コロナウイルスの流行が終息するという仮説をたてている学者がいますが、そのためには、数年の時間がかかり、その間に、死者(犠牲者)もおおくなることを想定しなければなりません。
▼ 関連記事
新型コロナウイルスの感染拡大と〈仮説法→演繹法→帰納法〉
みえにくい感染症 - 新型コロナウイルス(Newton 2020.4-5号)-
論理の3段階モデル - 新型コロナウイルスの感染拡大 -
新型コロナウイルスの感染拡大がつづく -「基本再生産数」(Newton 2020.6号)-
コウモリ起源説 -「コロナウイルスはどこから来たのか」(日経サイエンス 2020.05号)-
往来拡大の歴史 - 池上彰・増田ユリヤ著『感染症対人類の世界史』-
長期的視野にたつ -「感染拡大に立ち向かう」(日経サイエンス 2020.06号)-
ウイルスにうまく対処する -「COVID-19 長期戦略の模索」(日経サイエンス 2020.07号)-
▼ 参考文献
「新型コロナ」はどうすれば終息できるか、『Newton』(2020年6月号)、ニュートンプレス、2020年6月
▼ 注(追記):基本再生産数と実効再生産数
今回の『Newton』の記事には説明がありませんでしたが、再生産数には、基本再生産数と実効再生産数があります。『日経サイエンス』(2020年07号)でつぎのように説明しています。
- ある人口集団内に免疫をもつ人がいない場合の再生産数を「基本再生産数」といい、疾病そのものの特徴をあらわします。
- 免疫をもつ人があらわれはじめ、さまざまな公衆衛生の施策が講じられると時間をおって再生産数は変化します。この変化は、施策の実効性をしめすバロメーターであり、「実効再生産数」といいます。