皮膚は、人体と環境を分かちます。皮膚は、体をまもるバリアであるとともに、環境の変化をしる感覚器官です。皮膚は体と環境の「鏡」です。
『Newton』2020年5月号の「教えて!お医者さん!」の第2回では「皮膚科」をとりあげています。
肝臓に異常があると、皮膚が黄色っぽくなることがある。梅毒という感染症にかかると、頭髪が急に抜けることもある。これらは、体の中でおきた異常が皮膚にあらわれているのだ。皮膚が「全身の鏡」といわれるゆえんである。皮膚のお医者さんは、こうした病気のサインを見のがさないように診察している。(中略)皮膚は、人体を守る「バリア」であるといえる。たとえば、日焼けをすると「メラニン」という物質が放出され皮膚が黒くなる。黒くなった皮膚は、紫外線をシャットアウトするバリア機能を果たす。
わたしたちの皮膚の表面(角質層)には体の内部から水分がつねに補給され、適度な水分が保持されます。また手のひらと足の裏以外の皮膚には「皮脂腺」があり、皮膚の油分である皮脂をだしており、これが汗とまざって皮膚をおおうことで水分の過剰な蒸発をふせいでいます。
皮脂腺や汗腺がつまると炎症がおきたり、乾燥によって、慢性的なかゆみや湿疹がつづいたりします。他方、角質層内の水分がおおすぎてもよくなく、こうした皮膚には、真菌(カビ)や細菌・ウイルスなどが感染しやすくなります。皮膚科を受診する患者さんのおよそ10人に1人は水虫でこまっている人です。
あるいは蚊にさされると皮膚がはれてかゆくなります。このかゆみをもたらすのは皮膚にある「肥満細胞」が放出する「ヒスタミン」という物質です。
そば職人は、手を使ってそばを打ちます。すると皮膚からそばの成分が少しずつ体内に入って免疫反応がおき、ついにはアレルギーの症状に至ってしまうことがあるのです。
このように、皮膚から異物がはいりこんでアレルギーをおこすことを「経皮感作」といいます。これをふせぐためには皮膚をよく保湿するようにします。
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皮膚は、異物や外敵から人体をまもるバリアであり、一方で、暑さ寒さや空気のながれなどを感じとる感覚器官でもあります(図1)。
図1 皮膚のモデル
皮膚に異常があらわれるということは、体の内部に異常があることをしめすサインであるとともに、環境の変化をしめすサインでもあります。環境の変化とは、気温・湿度・風・大気物質などの変化や、カビ・細菌・虫・ウイルスなどからの攻撃です。皮膚をとおして、体だけでなく、環境の変化にも意識をくばることができます。皮膚は体と環境の「鏡」です。したがって常日頃から皮膚感覚をとぎすまして、体の内部に異常がおこるまえに環境の変化を察知し、病気を予防することも大事でしょう。
現代人は一般的に、皮膚感覚をあまりつかわなくなっています。しかし情報は、目と耳だけからとりいれればよいというものではありません。皮膚も重要です。
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▼ 参考文献
『Newton』(2020年5月号)ニュートンプレス、2020年