作文には、情報の統合作用があります。情報の統合はアウトプットの本質です。書けば書くほど心がととのいます。
今回も、「語順の原則」と「テンの原則」(注)をつかって例文を修正してみます。


1. 語順の原則
  • 1-1. 述部(動詞・形容詞・形容動詞)が最後にくる。
  • 1-2. 形容する詞句が先にくる(修飾辞が被修飾辞の前にくる)。
  • 1-3. ながい修飾語ほど先に。
  • 1-4. 句を先に。

2. テンの原則
  • 2-1. ながい修飾語:ながい修飾語が2つ以上あるときにその境界にテンをうつ。
  • 2-2. 逆順:語順が逆になったときにテンをうつ。


例文42)
大戸屋 HD に対して事前に創業家側とコロワイド側からそれぞれ株式譲渡の連絡はあったが、協議の場はなかったという。(J-CASTニュース, 2019.10.14)


語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」はできていません。また接続詞「が」のあとのテンはかならずしも必要ありません。構造的にあらわすと、

例文42


語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがってなおすと、

  • 創業家側とコロワイド側から大戸屋 HD に対して株式譲渡の連絡はそれぞれ事前にあったが協議の場はなかったという。

すらすらよめます。

「大戸屋 HD に対して」を強調したければ前に配置して、テンの原則「2-2. 逆順」によりテンをうちます。

  • 大戸屋 HD に対して、創業家側とコロワイド側から株式譲渡の連絡はそれぞれ事前にあったが協議の場はなかったという。

「事前に」も強調したいのであれば、

  • 大戸屋 HD に対して事前に、創業家側とコロワイド側から株式譲渡の連絡はそれぞれあったが協議の場はなかったという。

「株式譲渡の連絡」について話題(題目)にしていることをはっきりつたえたいのであれば、

  • 株式譲渡の連絡は、創業家側とコロワイド側から大戸屋 HD に対してそれぞれ事前にあったが協議の場はなかったという。

何をつたえたいのか、何を強調したいのかがはっきりしない文は語順も混乱しています。メッセージを明確にして、「語順の原則」と「テンの原則」をつかうとわかりやすい文になります。





例文43)
防衛省が陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を検討している地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」をめぐり秋田市内で開いた住民説明会で、伊藤茂樹東北防衛局長が、同席した職員が居眠りしていたとして謝罪していたことが10日、分かった。(The Sankei News, 2019.6.10)


わかりにくい文です。構造的にあらわすと、

例文43


語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがって修正すると、

  • 陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を防衛省が検討している地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」をめぐり秋田市内で開いた住民説明会で同席した職員が居眠りしていたとして伊藤茂樹東北防衛局長が謝罪していたことが10日分かった。

テンがなくてもわかりやすい文がかけます。

もしテンをいれるなら、テンの原則「2-1. ながい修飾語」にしたがって、

  • 陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を防衛省が検討している地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」をめぐり、秋田市内で開いた住民説明会で同席した職員が居眠りしていたとして伊藤茂樹東北防衛局長が謝罪していたことが10日分かった。

「10日」のあとのテンは不要です。

「伊藤茂樹東北防衛局長が」を強調したいのであればまえに配置して、テンの原則「2-2. 逆順」によりテンをうちます。

  • 伊藤茂樹東北防衛局長が、陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を防衛省が検討している地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」をめぐり、秋田市内で開いた住民説明会で同席した職員が居眠りしていたとして謝罪していたことが10日分かった。

例文43も、語順(1-3. ながい修飾語ほど先に)とテンが不適切でした。語順とテンはセットにしてつねにかんがえます。





例文44)
衆議院予算委員会の集中審議で「桜を見る会」をめぐり、安倍総理大臣は立憲民主党の議員から先週の審議で「うそをついているのと同じだ」と発言したことへの謝罪を求められたのに対し、この議員の発言を引き合いに「私としても謝罪していただきたい」と応じる場面がありました。(NHK NEWS WEB, 2020.2.12)


わかりにくいです。ストレスが読者に生じます。構造的にあらわすと、

例文44


語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがって修正すると、

  • 「うそをついているのと同じだ」と発言したことへの謝罪を立憲民主党の議員から「桜を見る会」をめぐり先週の審議で求められたのに対し、「私としても謝罪していただきたい」と衆議院予算委員会の集中審議でこの議員の発言を引き合いに安倍総理大臣は応じる場面がありました。

例文44は、語順の原則「1-1. 述部が最後にくる」と「1-2. 形容する詞句が先にくる」はできていましたが、「ながい修飾語ほど先に」はできていませんでした。

この筆者(記者)はこの出来事について自分ではわかっているのでしょうが自分がわかることと他者につたえることとは別のことです。人間主体の情報処理(人間がおこなう情報処理)でいうと自分がわかるのはインプットとプロセシング、他者につたえるのはアウトプットです。自分がわかったからといっておもいつくままに書いているだけだと相手にはうまくつたわりません。わかりやすい表現がもとめられます。





例文45)
名古屋市交通局は、二人乗りのベビーカーに双子を乗せた女性から、市バスに乗車拒否されたと問い合わせを受けた際、誤って「乗車できない」などと回答していたことが分かりました。(CBCテレビ, 2019.11.8)


語順の原則「1-1. 述部が最後にくる」と「1-2. 形容する詞句が先にくる」はできていますが、「1-3. ながい修飾語ほど先に」はできておらす、「誤って『乗車できない』などと回答していた」というところがとくにわかりにくいです。構造的にあらわすと、

例文45


  • 二人乗りのベビーカーに双子を乗せた女性から市バスに乗車拒否されたと問い合わせを受けた際、「乗車できない」などと名古屋市交通局は誤って回答していたことが分かりました。


「名古屋市交通局は」が題目であることをはっきりしめすのであれば、

  • 名古屋市交通局は、二人乗りのベビーカーに双子を乗せた女性から市バスに乗車拒否されたと問い合わせを受けた際、「乗車できない」などと誤って回答していたことが分かりました。

すっきりしました。





例文46)
カリフォルニア州立大学バークレー校の近くからかよっている卒業生が研究室にいます。(会話記録の一部)


この研究室は日本の大学の研究室ですからこの文は不自然です。構造的にあらわすと、

例文46

例文46は、語順の原則「1-1. 述部が最後にくる」「1-2. 形容する詞句が先にくる」「1-3. ながい修飾語ほど先に」にかなっていますが、つぎの文のほうがわかりやすく誤解がないです。

  • 近くからかよっているカリフォルニア州立大学バークレー校の卒業生が研究室にいます。

これが語順の原則「1-4. 句を先に」です。

ただし「カリフォルニア州立大学バークレー校の」を強調したければ前に配置します。するとテンの原則「2-2. 逆順」によりテンが必要です。

  • カリフォルニア州立大学バークレー校の、近くからかよっている卒業生が研究室にいます。

こうすれば誤解がないです。

なお句であっても相対的に非常にみじかければ、語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」を適用することができます。

  • カリフォルニア州立大学バークレー校の髭がある卒業生が研究室にいます。










文は、書けば書くほど洗練されます。体験したことを要約して書きだしたり、印象や感想を書きだしたりしているとインプットされた情報が適切に統合され、妄想がふくらみすぎることもなくなります。なるべく毎日かくようにするとよいでしょう。

心のなかにうかんだことをすべて書きだし、内面から徹底的に情報をはきだすことをくりかえして鬱病を克服し、そして精神科医になった人もいます。アウトプットにより心のなかが整理され、統一され、心がととのえられたのでしょう。作文には、情報の統合作用があります。





▼ 注
日本語の原則


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