日本語の作文は、人間主体の情報処理におけるアウトプットの手段として重要です。アウトプットをすればするほど、おのずと、インプットとプロセシングがすすみます。情報がながれます。
今回も、「語順の原則」と「テンの原則」(注)をつかって例文を修正してみます。
この文を構造的にあらわすと、
「永遠に消えない」という語順(「1-1. 述部が最後にくる」)が、「2-2. 逆順」によりテンがうたれ、「消えない、永遠に」としたのは原則どおりであり適切です。しかし「トランプから『弾劾された大統領』」というところがわかりにくいです。
「語順の原則」にしたがうと、
「永遠に消えない」を「2.2 逆順」にすると、
「トランプから」を強調するのであれば、
「2-2. 逆順」によりテンがいります。
例文39は記事の見出しであり、キャッチフレーズですから、ぱっとみてわかりやすい誤解のない表現がもとめられます。語順とテンの原則がとくに重要な役割をはたします。
作文上の問題点は、「国会で政治的な発言だなどと」というところにあり、「国会で」の配置が不適切です。この文を構造的にあらわすと、
語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがって修正すると、
「」内は別として、テンがなくてもわかりやすい文がかけます(「」内は引用なので変更不可です)。
「内閣法制局の横畠長官が」と「6日」を強調したいのであれば前に配置して、テンの原則「2-2. 逆順」にしたがってテンをうちます。
「伊吹元衆議院議長は」を強調したいのであれば、
何を強調したいのか、何をつたえたいのか、みずからのメッセージをはっきりさせることが大切です。
語順に問題があります。また「光景が」のあとのテンは不要です。
構造的にあらわすと、
語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがって修正すると、
例文41の「光景が」のあとのテンは「テンの原則」からはずれており不要です。もしテンをうつなら、テンの原則「2-2. 逆順」により「1997年に」のあとにうたなければなりません。
しかしこれでは、1997年に「アルビン」が見た光景なのか、1997年にその常識を吹き飛ばしたのかわかりません。語順の変更は慎重におこなわなければなりません。基本的には、「語順の原則」にしたがっておいたほうが誤解のないわかりやすい文になります。強調したい語がある場合にのみ「逆順」をつかうのがよいでしょう。
作文は、人間主体の情報処理(人間がおこなう情報処理)におけるアウトプットの手段として重要です。おおくの人々が作文によってメッセージを相手につたえています。
情報処理は、アウトプットをしてこそすすみます。アウトプットをすればするほど、おのずと、インプットとプロセシングがすすみます。アウトプットの効能はここにあります。インプット訓練、プロセシング訓練も重要ですが、まずは、アウトプットを強化するのがよいでしょう。おもしろいように必要な情報が内面にはいってくるようになります。川のように情報がながれはじめます。どんどん書いてください。
▼ 注
日本語の作文法 − 日本語の原則 −
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▼ 参考文献


1. 語順の原則
- 1-1. 述部(動詞・形容詞・形容動詞)が最後にくる。
- 1-2. 形容する詞句が先にくる(修飾辞が被修飾辞の前にくる)。
- 1-3. ながい修飾語ほど先に。
- 1-4. 句を先に。
2. テンの原則
- 2-1. ながい修飾語:ながい修飾語が2つ以上あるときにその境界にテンをうつ。
- 2-2. 逆順:語順が逆になったときにテンをうつ。
例文39)
トランプから「弾劾された大統領」の汚点は消えない、永遠に (Newsweek 日本版, 2019.12.23)
この文を構造的にあらわすと、
「永遠に消えない」という語順(「1-1. 述部が最後にくる」)が、「2-2. 逆順」によりテンがうたれ、「消えない、永遠に」としたのは原則どおりであり適切です。しかし「トランプから『弾劾された大統領』」というところがわかりにくいです。
「語順の原則」にしたがうと、
- 「弾劾された大統領」の汚点はトランプから永遠に消えない
「永遠に消えない」を「2.2 逆順」にすると、
- 「弾劾された大統領」の汚点はトランプから消えない、永遠に
「トランプから」を強調するのであれば、
- トランプから、「弾劾された大統領」の汚点は消えない、永遠に
「2-2. 逆順」によりテンがいります。
例文39は記事の見出しであり、キャッチフレーズですから、ぱっとみてわかりやすい誤解のない表現がもとめられます。語順とテンの原則がとくに重要な役割をはたします。
例文40) 内閣法制局の横畠長官が6日、国会で政治的な発言だなどと指摘される答弁をしたことについて、伊吹元衆議院議長は「ありえないことで、少し思い上がっているのではないか」と批判しました。(NHK NEWS WEB, 2019.3.7)
作文上の問題点は、「国会で政治的な発言だなどと」というところにあり、「国会で」の配置が不適切です。この文を構造的にあらわすと、
語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがって修正すると、
- 政治的な発言だなどと指摘される答弁を内閣法制局の横畠長官が国会で6日したことについて「ありえないことで、少し思い上がっているのではないか」と伊吹元衆議院議長は批判しました。
「」内は別として、テンがなくてもわかりやすい文がかけます(「」内は引用なので変更不可です)。
「内閣法制局の横畠長官が」と「6日」を強調したいのであれば前に配置して、テンの原則「2-2. 逆順」にしたがってテンをうちます。
- 内閣法制局の横畠長官が6日、政治的な発言だなどと指摘される答弁を国会でしたことについて「ありえないことで、少し思い上がっているのではないか」と伊吹元衆議院議長は批判しました。
「伊吹元衆議院議長は」を強調したいのであれば、
- 伊吹元衆議院議長は、政治的な発言だなどと指摘される答弁を内閣法制局の横畠長官が国会で6日したことについて「ありえないことで、少し思い上がっているのではないか」と批判しました。
何を強調したいのか、何をつたえたいのか、みずからのメッセージをはっきりさせることが大切です。
例文41) 1977年にアメリカの有人潜水調査船「アルビン」がガラパゴス諸島沖の深海で見た光景が、その常識を吹き飛ばした。(Newton, 2019年4月号)
語順に問題があります。また「光景が」のあとのテンは不要です。
構造的にあらわすと、
語順の原則「1-3. ながい修飾語ほど先に」にしたがって修正すると、
- アメリカの有人潜水調査船「アルビン」がガラパゴス諸島沖の深海で1977年に見た光景がその常識を吹き飛ばした。
例文41の「光景が」のあとのテンは「テンの原則」からはずれており不要です。もしテンをうつなら、テンの原則「2-2. 逆順」により「1997年に」のあとにうたなければなりません。
- 1977年に、アメリカの有人潜水調査船「アルビン」がガラパゴス諸島沖の深海で見た光景がその常識を吹き飛ばした。
しかしこれでは、1997年に「アルビン」が見た光景なのか、1997年にその常識を吹き飛ばしたのかわかりません。語順の変更は慎重におこなわなければなりません。基本的には、「語順の原則」にしたがっておいたほうが誤解のないわかりやすい文になります。強調したい語がある場合にのみ「逆順」をつかうのがよいでしょう。
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作文は、人間主体の情報処理(人間がおこなう情報処理)におけるアウトプットの手段として重要です。おおくの人々が作文によってメッセージを相手につたえています。
情報処理は、アウトプットをしてこそすすみます。アウトプットをすればするほど、おのずと、インプットとプロセシングがすすみます。アウトプットの効能はここにあります。インプット訓練、プロセシング訓練も重要ですが、まずは、アウトプットを強化するのがよいでしょう。おもしろいように必要な情報が内面にはいってくるようになります。川のように情報がながれはじめます。どんどん書いてください。
▼ 注
日本語の作文法 − 日本語の原則 −
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▼ 参考文献