多数の空中写真(航空写真)が掲載されています。平行法で地形が立体視できます。インプットされる情報量がふえます。
貝塚爽平ほか編『写真と図でみる地形学 増補新装版』(東京大学出版会)は、多数の 3D 写真(ステレオ写真)でまなぶ地形学の教科書です。1985年の初版刊行以来、30年以上のロングセラーとなっています。学生のときにわたしも、本書をつかって地形と立体視をまなびました。昨年(2019年)、あたらしい項目を増補した増補新装版が刊行され、地形学の最新の知識もえられるように工夫されています。地形学教科書の決定版といってもよいでしょう。




目 次
空中写真と地形図の見方
第1章 序説 -地形形成要因-
第2章 風化とマスウェイスティング
第3章 流水による侵食地形
第4章 川のつくる堆積地形
第5章 海岸地形
第6章 風のつくる地形
第7章 乾燥〜半乾燥地形
第8章 周氷河地形
第9章 氷河地形
第10章 火山地形
第11章 変動地形
第12章 組織地形
第13章 海底地形
第14章 大地形
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伊豆大室山
(平行法で立体視ができます)


他書にはない本書の特色は、立体視できる空中写真(航空写真)が多数掲載されていることです。地形は3次元(立体)の形であり、3次元でとらえないと意味がありません。

立体視ができると「読める情報」が圧倒的にふえます。内面にはいってくる(インプットされる)情報量が格段におおくなります。インプットにとって立体視がいかに有効であるか、よくわかります。

本書のステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。右目で右の写真を、左目で左の写真をみます。立体視がうまくできない場合は、左右の写真のあいだに紙などを垂直にたて、左右の目が一方の写真しかみえないようにするのもひとつの方法です。

まずは、理屈ぬきで、すべてのステレオ写真を最後まで一気に立体視するとよいでしょう。地形の分類がおのずと理解できます。その後、言語による解説も適宜参照します。

本書をつかえば、地形をまなびながら立体視の訓練もでき、そしてその立体視の方法はあらゆる分野に応用できます。
 


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▼ 参考文献
貝塚爽平ほか編『写真と図でみる地形学 増補新装版』東京大学出版会、2019年5月27日