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楣(まぐさ、アンコール時代・11世紀)
中央で、美と幸運の女神ラクシュミーに2頭の象が水をそそいでいます。象の背中からのびた花綱は怪魚マカラがのみこんでいます。

楣(lintel)とは、堂の入口上部をかざるものであり、人がとおりぬける部屋の出入口の表裏にあるので、1つの堂にはおおくの楣があり、さまざまな浮き彫りがほどこされます。



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浮彫人物像(アンコール時代・12世紀)



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浮彫アプサラス像(アンコール時代・12〜13世紀)
インドでは水の精をアプサラスとよび、きれいな女性の姿にあらわします。インドラ(帝釈天)神がいる天界にすみ、天上界の踊り子ともよばれます。



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浮彫人物像(アンコール時代・12〜13世紀)



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九曜像(アンコール時代・11〜12世紀)
むかって左から、日輪、月輪、火星、水星、木星、金星、土星、羅睺星(らごしょう)、計都星(けいとせい)の九曜(くよう)をあらわします。インドでは、人間の運命に星がかかわっているとして占星術が発達し、カンボジアや日本にもつたわりました。



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ブッダ坐像(アンコール時代・12世紀)



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ブッダ三尊像(アンコール時代・12〜13世紀)
中央には、ナーガに坐すブッダ、ブッダの右には、四本の腕をもつローケーシヴァラ(観音菩薩)、ブッダの左には、プラジュニャーパーラミター(般若波羅蜜多菩薩)をあらわしています。ブッダは本人、脇侍は父母であるといわれます。



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ブッダ坐像(アンコール時代・12〜13世紀) 



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楣(まぐさ、アンコール時代・10世紀)
象にのるのは雷神インドラです。



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楣(まぐさ、アンコール時代・10世紀)
中央のカーラとよばれる鬼面が花綱をふきだし、植物文を上下に、ナーガを両端にあらわしています。 






カンボジアのアンコール遺跡には、クメール王朝時代につくられた寺院が点在、クメール彫刻の数々がみつかりました。1992年には世界遺産に登録されました。

そのなかのひとつのアンコール・ワットは、シヴァ神の化身とかんがえられていた国王が、神々と交信するためにつくられた石造の寺院です。欄干や門などのあらゆるところに、7つの頭をもつ蛇の神ナーガの姿がみられ、回廊の壁は、国王の姿や天地創造の物語、デバダー(女神)の浮彫であふれます。

アンコール・ワットから北へおよそ2km の地点にあるアンコール・トムは国王の城であり、一辺3km の正方形の地を、濠と、たかさ8mの壁でかこんでいます。その中心につくられたバイヨンは、東西160m、南北140mのピラミッド状の構造をもち、49基の塔がたてられ、その塔の四方には観音菩薩の顔があらわされ、その顔は、「クメールの微笑み」とよばれます。

アンコール王朝時代にクメール文化は最盛期をむかえ、この時代に、クメールの彫刻の表現も完成しました。



アンコール・トムの位置



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東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)


▼ 注
東京国立博物館・アジアギャラリー(東洋館)
東洋館11室(地下):クメールの彫刻
※ 写真撮影が許可されています。





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