地球にも太陽にも宇宙にも終わりがあります。重力とダークエネルギーが重要です。天体を意識すると時間が、宇宙全体を意識すると空間が認識できます。
『Newton』2020年2月号では「宇宙の終わり」について特集・解説しています。




PART 1 太陽系の終わり


太陽はガスのかたまりです。現在の太陽の表面温度はおよそ6000℃であり、中心部の温度は1500万℃にも達します。高温のため、太陽内部の原子は、原子核と電子がバラバラの状態になって飛びかっています。超高温・超高圧環境である中心部では、飛びかう水素の原子核(陽子)どうしが衝突し、より重い原子核がつくられることがあります。これが、水素の核融合反応です。

水素の核融合反応がおきると、最終的にヘリウム原子核が生成されます。この反応の過程で、膨大なエネルギーが放出されて、太陽を輝かせているのです。


いまから46億年前、宇宙空間をただようガスが重力によってあつまり、太陽がうまれました。太陽はその後、46億年をかけてゆっくりとかがやきをましてきました。

この増光は今後もつづき、20億年後には現在の1.2倍のあかるさに、60億年後には2倍のあかるさになります。

太陽があかるさをますにつれ、地球の気温は上昇します。地球は、海はひあがって灼熱の大地になり、生命はすべて死滅し、「死の星」になります。

太陽の中心部では、核融合の燃料である水素が60億年後にはつきてしまい、太陽は急激にふくれはじめ、その後20億年ほどかけて現在の170倍に直径が膨張し、「赤色巨星」になります。

しかしその後、太陽中心部の温度がおよそ1.5億℃に達し、ヘリウムが核融合反応をおこしはじめ、太陽は収縮しはじめます。

ところがその1〜2億年後には、ヘリウムが中心部でもえつき、前回と同様のメカニズムによってふたたび膨張をはじめ、今度は、赤色巨星よりもさらにおおおきい「漸近巨星分枝星」になります。おおきさは現在の200倍をこえ、600倍に達する可能性もあります。

地球は太陽にのみこまれ、ついに、完全な死をむかえます。

太陽はその後、「白色矮星」になり、ゆっくりとひえていきます。そして完全にひえきり、かがやきをうしなった星の残骸だけが宇宙空間にのこされます。





PART 2 天体の時代の終わり


太陽の質量の8倍程度までの比較的軽い恒星は、生涯の最後にガスを大量に放出し、「惑星状星雲」をつくります。太陽の質量の8倍程度以上の重い恒星は、「超新星爆発」というはげしい爆発をおこして死をむかえます。これらの過程で放出された物質は、やがて「分子雲」として集まり、そこから次の世代の恒星が生まれます。


恒星の死には、「惑星状星雲」を形成するタイプと「超新星爆発」をおこすタイプとがあります。いずれにしても、恒星をつくっていたガスのほとんどが宇宙空間に放出され、つぎの世代の恒星の材料になります。こうして、世代交代を星はくりかえします。

しかし恒星のなかの核融合反応などによって酸素や炭素・鉄といった重い元素がつくられることがくりかえされると、恒星の「燃料」となる軽い元素はしだいにすくなくなり、あらたな恒星はうまれにくくなっていき、その結果、銀河はかがやきをよわめます。恒星の世代交代は永遠にはつづきません。

かがやきをうしなった宇宙では、ブラックホールが天体をのみこむときや天体同士が衝突する際にのみかがやきをときおりはなちます。

ブラックホールとは、中性子星が形成される場合よりも重い恒星が超新星爆発をおこしたあとに、もとの恒星の中心部が収縮してできる天体です。あまりにもつよい重力のために中心部は際限なく収縮し、「特異点」とよばれる1点に最終的にはつぶれてしまい、特異点の周囲には、強烈な重力によって光さえも脱出不可能な領域ができます。この領域がブラックホールであり、ブラックホールは空間の領域をさす用語だといえます。

銀河の中心には、巨大なブラックホール(大質量ブラックホール)が一般に存在しています。その質量は、太陽のそれの100万倍から数百億倍にも達します。天体同士の接近遭遇などで銀河の中心におちていった天体のおおくはブラックホールに最終的にのみこまれます。

ブラックホールの周囲にのみこむ物がなくなるとブラックホールはそれ以上おおきくなれなくなり、その後、光や電子などを放出してちいさくなっていきます。ブラックホールはゆっくりと「蒸発」をはじめ、質量をへらしていくにつれて温度を徐々にあげ、蒸発のスピードをまし、最終的には、爆発的な勢いで光や素粒子を放出して消滅するとかんがえられます。巨大なブラックホールが消滅しつくすまでには約10100年もかかると予測されています。



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