視覚について説明しています。目は、光をとおして情報をインプットする器官です。1日2時間以上 太陽光のもとで活動して視力低下をふせぎます。
『Newton』2020年2月号の Topic では視力予防と視力回復の研究について解説しています(注)。


坪田教授がバイオレットライトにたどり着いたきっかけは、「外遊びをする子どものほうが、しない子どもよりも近視の割合が小さい」という報告にあったという。最近になって世界各地で研究が進み、1日あたり、屋外で2時間以上すごしている子どもは近視になる割合が小さくなることが報告されたのだ。そして、この原因として、運動と太陽光の二つが考えられていたが、太陽光のほうがより大きく寄与していることまではわかってきた。


ヒトの目でみえるのは、360〜830ナノメートル(1ナノメートルは、1ミリメートルの100万分の1)の波長をもつ光(可視光)であり、波長がみじかいほうから順に、紫・青・緑・黄・橙・赤のようにみえ、可視光よりも波長のみじかい光は紫外線、波長のながい光は赤外線とよびます。

「バイオレットライト」とは、可視光線のなかでもっとも波長のみじかい紫色の光(360〜400ナノメートルの波長の光)であり、これをあびることにより近視をふせいだり、その進行をくいとめたりすることができます。バイオレットライトが、近視の抑制に関連するとかんがえられる遺伝子を活性化させ、また網膜の細胞にある特殊な受容体の機能に関与していることがつきとめられました。紫外線やブルーライトはカットし、バイオレットライトは透過するメガネレンズがすでに商品化されています。

視覚とは、外界から光をうけとり、物の色や形、奥ゆきなどを認識する感覚のことです。目にむかってきた光は「角膜」とよばれる組織で屈折し、「虹彩」によって光量が調整されます。「瞳孔」(虹彩の中心にあるまるい穴)があかるい空間ではちいさくなり、くらい空間ではおおきくなるのは虹彩のはたらきによるものです。虹彩の奥には「水晶体」とよばれるレンズがあり、これは、かためのゼリーのような弾力をもつ組織で、カメラのレンズとおなじようにピントを調整するはたらきをもちます。水晶体で屈折した光は、眼球の内側にある「網膜」にとどきます。これは、10種類もの神経系の細胞が層状にかさなった構造をもち、えられた光の情報を電気信号に変換して、視神経につたえるはたらきをにないます。この電気信号が視神経から脳につたわり、信号を脳が処理することで、わたしたちは物の形や色を認識することができます。

目のよしあしをいうときにつかわれる「視力」は、「ランドル環」の切れ目の方向をしめす検査によってきめられます。ランドル環の切れ目の2点と目がなす角度を「視覚」といい、その逆数が視力と定義されています(視力=1/視覚)。たとえば視覚が1分のときの視力は1.0、10分のときの視力は0.1となります(1分は1度の60分の1)。裸眼の状態で1.0の視力があれば正常(正視)とみなされます。

しかし角膜や水晶体でただしく光が屈折されなかったり、眼球の形が変化したりすると「近視」(とおくの物がみえずらくなる)、「遠視」(ちかくの物がみえずらくなる)、「乱視」(物が重複してみえる)などがおきます。近視をひきおくす原因のほとんどは、眼球のながさ(眼軸長:黒目から眼底までのながさ)がながくなることでピントがあわなくなる軸性近視です。近視とは逆に、眼軸長がみじかくなると遠視になります。また老視(老眼)は遠視と混同されがちですが、これは、加齢によって水晶体がかたくなり、ピント調節機能が低下することでちかくの物がみえづらくなる症状のことです。

近視には、遺伝の影響もあることがしられています。しかし両親が近視でも、1日2時間以上の屋外活動をしている子どもは近視になる確率がひくいことがわかっています。

また試験勉強ばかりしていると近視になります。黒板の文字がよくみえなくなってきたという経験をした人がおおいとおもいます。2019年に、日本人の中学生727人を対象にしておこなった調査では94.9%が近視でした。医学生・方学生・研究者などがその他よりもメガネやコンタクトレンズをつかっている割合がたかいこともわかっています。しかし勉強とあわせて屋外活動の時間をとることで近視になる確率をちいさくできるという研究結果があります。






スマホやパソコンなどの画面を昼夜をとわずみつづける現代人はとくに目を酷使し、近視や乱視の人がふえています。非常につよい近視の場合は、年齢をかさねるにつれて網膜剥離などの病気を発症しやすくなり、失明のリスクもたかまります。

人間は、外界の情報の8〜9割を目からえているといわれています。したがって視力がおちるということは、情報をとりいれるインプット能力がおちることに直結します。インプット能力がおちれば、プロセシングとアウトプットもすすみません。

今回の記事が指摘しているように、つきなみな方法ですが1日2時間以上 太陽のもとで活動することが必要です。

太陽光のもとで活動すれば、 情報を内面にインプットするということも自覚できます。試験勉強や受験勉強だけをしているとそのことがなかなか自覚できません。そのような意味でも屋外活動が重要です。



▼ 注:参考文献