大震災時には、防火樹林帯の有無が生死をわけます。植樹活動が必要です。
日本各地で植樹をすすめている鎮守の森のプロジェクト(注)の2019年次の報告書がとどきました。


  • 今年の植樹本数 45,691本
  • 参加人数 3,790人


今年の報告書には、「関東大震災に学ぶ」と題して、避難地の防火樹林帯についても解説しています。


  1. 火災から逃れる安全な避難場所となるための最も重要な条件は面積である。
  2. 周囲に防火樹林のある空地が、焼け止まりに大きく関与している。


96年前の9月1日、関東大震災が発生、犠牲者の90%が焼死・熱傷でした。当時の農商務省山林局は、9月21日から3日間にわたり火災全域を調査、避難地となった公園・社寺境内・学校・私庭などの広場の樹林について防火力および耐火力などを分析し、上記の2条件をあきらかにしました。

たとえば上野公園は 83.4ha あり、避難者を多数収容することができました。このほか、芝公園(48.2ha)・浅草公園(31.7ha)・宮城前公園(25.5ha)・日比谷公園(18.1ha)も多数収容することができました。ちなみに東京ドームのグランド部分の面積は 1.3ha です。

しかし一方で、吉原小公園・坂本公園・待乳山・両国橋側公園・数寄屋小公園などの1ha 未満のせまい避難地では非常に多数の死者をだしてしまいました。

これらのデータから、広大な避難地ほど安全であり、せまい避難地は危険であり、安全な避難場所の第1の条件は面積がおおきいことであることがわかりました。大震災が発生して非難する場合には、なるべく広大な避難地を選択するのが賢明です。

それでは 10ha 以下、1ha 以上の中規模の避難地はどうだったのでしょうか? 靖国神社・深川岩崎邸・湯島公園は避難者を収容できましたが、深川公園・本所被服廠跡・小梅徳川邸・愛宕公園では多数の死者をだしてしまいました。たとえば本所被服廠跡では、避難者4万人のうち、実に、3万8千人が焼死しました。

すなわち1〜10ha の避難地には、安全な避難地と危険な避難地が混在しています。この安全と危険、つまり生死をわけたのが樹林の有無でした。樹林は、その密集する枝葉により火の粉や熱風をさえぎり、消火して火災延焼を防止しました。防火力がおおきい樹種はつぎのとおりです。

  • 高木・亜高木:シイ、イチョウ(落葉していない時期)、シラカシ、タブノキ、カシワ、ツバキ、モッコク、アカガシ
  • 低木:マサキ、アオキ、ヤツデ 他

したがって大震災時の避難地としては、せまい場所は不適切であり、中規模の避難地では、防火樹林をもつ避難地がよいです。防火樹林のない避難地にはそれを整備することが急務です。今からでもおそくはありません。

たとえば東京都豊島区では、「植えるところがない」と当初はいっていましたが、工夫すればできることがわかり、「いのちを守る森」つくるをスタートさせました。いまでは、小中学校全校や公園・公共施設に樹林帯をつくっています。