ポーラ美術館のコレクションのなかから、19-20世紀のフランスの風景画を特集して、北部から南部までのフランス各地にわけて紹介、モネと印象派の画家たちの旅、20世紀の画家たちの旅、さらに想像の世界の旅に案内してくれる風景画集です。
2007年9月〜2008年3月にポーラ美術館で開催された展覧会の図録を書籍として出版したものです。
画家たちが実際に旅し、えがいた場所によって風景画を分類していて、えがいた場所や土地とのむすびつき、その土地がはたした役割に焦点をあてています。
目次は以下の通りです。
I. パリ近郊 -近代風景画の揺籃II. パリを離れて -自然との対話III. 南へ - 光、色彩、エキゾティシズムIV. 想像の旅
本書は、それぞれの風景画とともにフランスの地図を掲載していて、その風景の場所を地図上で特定できるところに特色があります。
フランスに行ったことがある人は旅の記憶を想起しながらたのしむことができ、これから行く人にとってはフランス風景ガイドになるでしょう。
1ページが単位になり、画家・題・地図・解説文・写真・風景画がセットになっていてレイアウト的にもとてもわかりやすい構成になっており、旅をしながら風景を見るように、ページをめくってたのしむことができます。
情報処理の観点からいうと、風景を見るようにページをめくることは速読法に通じます。
地図上の特定の場所にむすびつけてイメージをとらえることは空間記憶法に通じます。
風景をえがいたり、想像したりすることは心象法そのものです。
いうまでもなく画家がえがいた風景画は、外界の風景をそのままうつしとったものではなく、心のなかに外界を一旦とりいれて(インプットして)、それを編集・加工(プロセシング)、その結果を絵画としてアウトプットしたものです。風景画とは、画家の心のなかを通りぬけてきたものであり、それは画家の情報処理の結果です。情報処理の観点からみるとこれは心象法にあたり、 画家はいわば「心象法のプロ」です。
このように本書は、旅によって、速読法や記憶法や心象法などに総合的にとりくめることをおしえてくれます。
わたしたちが実際に旅をしたときも、風景を見て、写真をとったりスケッチをしたり、また、印象的な風景を記憶して心のなかにとりこんだり、あるいは自由に想像の世界をふくらませたりして、内面世界を構築していけばよいのです。本書を味わい参考にして、あるいは実際の旅をして、心の世界をさらにゆたかにしていきたいものです。
▼ 引用文献
高橋明也監修『モネと画家たちの旅 -フランス風景画紀行-』西村書店、2010年1月15日
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