睡眠の科学的研究がすすんでいます。睡眠は記憶を強化します。よくねむって情報処理をすすめます。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2019年8月号の Newton Special では「新・睡眠の教科書」と題して睡眠の研究最前線を紹介しています。その PART 1 は「睡眠の科学」です。



ノンレム睡眠で「記憶」が強化される
近年の研究で、ノンレム睡眠は記憶の定着や強化に重要であることがわかってきました。記憶は、神経細胞どうしのつながりが、脳の中で形成・強化される現象です。ノンレム睡眠中の脳では、不要な神経細胞どうしのつながりを解除するなどして、記憶の再構築と強化が行われているという説があります。


睡眠には、「睡眠サイクル」があり、眠りにおちると「ノンレム睡眠」に通常はまずはいり、それが60分前後つづき、その後、「レム睡眠」とよばれるあさい睡眠にはいります。これらのセットが「睡眠サイクル」であり、1回の睡眠中に4〜6回程度くりかえされます。1回のサイクルのながさはおおむね90分であり、そのなかにしめるレム睡眠の割合は1回の睡眠中に徐々におおきくなります。

覚醒時(目をつぶっている状態)のリラックスした脳ではアルファ波とよばれる脳波がみられますが、ねむりにおちると、1秒程度で脳波のパターンがかわり、ノンレム睡眠の「ステージ1」では振幅のちいさな脳波があらわれ、その「ステージ2」では「紡錘波」とよばれる脳波があらわれます。この紡錘波は、脳の「海馬」でつくられた一時的な記憶を大脳皮質へうつして固定化するはたらきと関係しているという仮説が提唱されています。

脳内にある神経細胞(ニューロン)は、ほかの神経細胞から信号をうけとると電気がながれ、多数の神経細胞による電気信号を、頭部につけた電極でとらえたものが脳波です。多数の神経細胞の電気信号が生じるタイミングがばらばらだと脳波は小きざみになり、同期するほどゆっくり波うつとかんがえられています。






記憶は、人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をささえる「データベース」として非常に重要な役割をになっています。

記憶法は、具体的には、「記銘→保持→想起」という3つの場面からなり、人間主体の情報処理におけるプロセシングに位置づけられます(図1)。

190701 記憶法
図1 記憶法のモデル


この記憶法において、情報の保持のために睡眠がもっともおおきな役割をはたしているのはもはやあきらかです。したがって睡眠と記憶についてあらためて自覚し、毎日よくねむることが大事です。勉強でも仕事でも、睡眠をけずって頑張っていると記憶がうまくできず、情報処理もすすみません。以前は、「寝る間も惜しんで」といったかんがえかたがありましたが、それはまちがっていたことが科学的・医学的に証明されました。



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▼ 参考文献
『Newton』2019年8月号、ニュートンプレス