神経細胞(ニューロン)の数がへると記憶ができなくなります。人間主体の情報処理訓練をして予防します。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2019年7月号の SCIENCE SENSOR で「アルツハイマー病」の研究について紹介しています。



スペイン、セベロ・オチョア分子生物学研究所のヒメネス博士らは、健康な人の脳とアルツハイマー病患者の脳を比較研究しました。


健康な人の海馬では、年齢をかさねても、新しい神経細胞が何千個も生まれている一方、アルツハイマー病の患者の海馬では、神経細胞が新しく生まれる量が少なくなっていることがわかった。(Nature Medicine, 2019.3.26)


アルツハイマー病は、記憶力や思考能力などがすこしずつうしなわれ、日常生活に悪影響をおよぼす脳の病気です。その原因はよくわかっておらず、根本的な治療法もまだみつかっていません。

ヒメネス博士らは、記憶をつかさどる脳の海馬についてしらべ、アルツハイマー病患者では、神経細胞があたらしくうまれる量がすくないことをつきとめました。またアルツハイマー病が進行するにつれて、あたらしくうまれる神経細胞の数はさらに減っていくこともあきらかにしました。

すなわちあらたな神経細胞が海馬でうまれなくなり、海馬の神経細胞が減少することによって記憶ができなくなったり、過去のできごとが想起できなくなったりします。






アルツハイマー病は、人間主体の情報処理でいうとプロセシングにエラーが生じ、プロセシングがすすまなくなる病気といえるでしょう。抜本的な治療法が現段階ではない以上、予防する以外に方法はありません。身体の健康を増進するとともに、情報処理訓練(〈インプット→プロセシング→アウトプット〉訓練)を日々おこなう必要があるでしょう。



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▼ 参考文献
『Newton』(2019年7月号)ニュートンプレス、2019年

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