がんゲノム医療が注目されています。
「がんゲノム医療」(がん遺伝子パネル検査)が2019年内にはじめて保険適用されるみこみです。「がんゲノム医療」とは何か? 『Newton』2019年6月号の Topic で解説しています。



がんを構成する「がん細胞」では、「DNA」に多くの変化がおきている。DNA の分子は、2本の鎖がらせんをえがくような構造をしているが、その2本の鎖の間に、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の「塩基」が並んでいる。この並びである「塩基配列」のうち、特定の機能をもつ部分が「遺伝子」である。細胞がふえすぎないように制御している遺伝子に変化がおきると、細胞はふえつづけるようになってしまう。これが、がんの原因である。がんは、「遺伝子に変化がおきた細胞の病気」ともいえるのだ。


日本人の2人に1人は一生に一度はがんを発症し、3人に1人はがんでなくなります。あたらしくがんと診断される人は1年間で86万人以上と推定されています。

がんは、わたしたちの体を構成する細胞からうまれます。細胞は、ふえすぎないように通常は制御されていますが、その制御がきかなくなって無秩序にふえつづけると細胞のかたまり「腫瘍」になります。腫瘍には、良性と悪性があり、良性腫瘍は基本的には手術のみでとりのぞくことができますが、悪性腫瘍は転移をします。悪性腫瘍にくわえ、白血病などもがんです。


国立がん研究センター中央病院は、シスメックス株式会社と共同で「NCCオンコパネル」という試薬を開発した。この試薬を用いたがん遺伝子パネル検査が、がん細胞の遺伝子変化の特定や、治療薬の選択に有効かどうか、それを検証する臨床試験「TOP-GEARプロジェクト」が、2013年からおこなわれている。


多数の遺伝子を同時にしらべて、患者ひとりひとりにあわせたがんの治療をおこなうのが「がんゲノム医療」です。ゲノムとは通常は、ある生物がもつ遺伝情報のすべてのことをさしますが、ここでは、検査対象となる多数の遺伝子をさします。

がん遺伝子パネル検査については、2019年内にははじめて保険適用されるとみこまれています。

今回の Topic では「抗がん剤治療」についても説明していますが、現在は、多数の遺伝子を同時にしらべてがんをねらいうちにする「がんゲノム医療」におおきな期待がかかっています。しかしそれは、発展途上にまだあるので、最新情報をこれからもチェックしていくべきでしょう。



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▼ 参考文献
『Newton』2019年6月号、ニュートンプレス、2019年

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