難民居住区が、経済力をもった都市になる日がくるかもしれません。都市に注目して歴史と文明をとらえなおします。
『ナショナルジオグラフィック』2019年4月号の特集ではアフリカ・ウガンダのビディビディ難民居住区について報告しています。
アフリカ・ウガンダのビディビディ難民居住区には南スーダンからのがれてきた難民が多数くらしています。
南スーダンは、スーダンから独立しましたが、独立後2年たった2013年12月に政権争いから内戦が勃発、和平協定が一旦はむすばれたものの2016年7月に合意がくずれ、無差別の殺戮がひろがって数万人の人々がウガンダにのがれました。ウガンダ政府は、難民居住区としてビディビディを開放、1日あたり約6000人が到着しはじめました。
そして今では、約25万人の難民が、いくつもの集落をつくってビディビディでくらしており、そこは、バングラデシュにあるロヒンギャのキャンプについで世界で2番目におおきな難民居住区になりました。
ウガンダ政府は、ビディビディの学校や診療所の大半を耐久性のたかい施設にたてかえ、水道網や農地も整備し、難民居住区を持続的な都市にしようと計画しています。都市が形成されつつある今、難民たちも、自分たちの意見を街づくりに反映させたいとかんがえています。
ただし難民たちが、長期的に安定した生活をおくるためには、支援の枠組みを、従来の人道支援から、民間の経済活動をそだてる方向へ抜本的に転換する必要があります。
歴史的にみると、たとえばベネチアは5世紀に、イタリア本土の戦乱をのがれてきた難民たちによってきずかれた都市であり、またパレスチナ難民キャンプも、中東の近隣地域にひけをとらない街並みに今やなっています。したがってビディビディも、恒久的な都市になるという可能性を否定できません。
世界中で現在、祖国をあとにする難民は記録的な数にのぼっており、その対応に世界がおわれています。数百万の人々が仮設キャンプでくらし、その維持費は年間数百億円にものぼります。
しかしウガンダは、壮大な実験を開始しました。難民が都市をつくった例は過去にもあることから無謀な計画とはあながちいえません。ただし従来の人道支援とはことなる、民間の経済活動をそだてる方策が必要です。支援から脱却し、支援に依存しない自立の道へすすめるかどうか。
あたらしいタイプの都市がどのように形成されていくのか、ビディビディにおいて歴史的な実験がすすんでいるとかんがえてよいでしょう。この過程を記録し研究している人々もいます。
『ナショナルジオグラフィック』2019年4月号は、丸ごと一冊「世界の都市」を大特集していました。歴史的につねに、都市は、おおきな役割をはたしてきました。
そもそも文明(古代文明)は基本的には都市からはじまりました。そしていくつかの都市は成長して都市国家になりました。
さらにいくつかの都市国家は、ほかの都市国家を征服あるいは包含して領土国家(領域国家)になりました。しかし都市は、領域国家の時代になっても、その国のあるいはその地域の政治・経済・文化の中心地としておおきな役割をにないつづけました。
その後、いくつかの選択された都市はさらに成長して大都市になりました。たとえば日本には、政令指定都市があります。このような大都市は県と同等か、あるいは県よりもおおきな力をもつようになっています。都市の時代が到来しています。
そして今日、グローバル化(全球化)の時代に突入するとともに巨大都市(メガシティ)がいくつもあらわれはじめました。現在は、領域国家の時代から全球社会の時代への過渡期であるとかんがえられます。
それではこれからの先の時代は、都市は、どのような役割をはたしていくのでしょうか?
かなり先になるかもしれませんが、未来の全球社会では、領域国家の国境の存在がよわまり、全球ネットワークの方が重要になって、それぞれの地域の拠点として都市の役割がもっとつよくなるでしょう。領域国家の役割がよわまり、全球的にひろがる都市ネットワークが全球社会をむしろささえていくようになり、都市の役割はますますおおきくなっていきます。
『ナショナルジオグラフィック』の今回の大特集により、都市に注目して、歴史あるいは文明をあらためてとらえなおすことができました。また未来のネットワーク社会を予想するためのポイントとしても都市が重要であることがわかりました。
▼ 関連記事
「トーキョーを歩く」(ナショナルジオグラフィック 2019.4号)
「未来都市のマスタープラン」(ナショナルジオグラフィック 2019.4号)
あたらしい都市ができる -「難民の都市、現る」(ナショナルジオグラフィック 2019.4号)-
▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本語版』(2019年4月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2019年
ウガンダでは今、壮大な実験が進行中だ。泥れんが造りの家や小さな農地が点在するこの居住区には、給水塔や携帯電話の基地局がいくつも立っている。学校や医療施設は、れんがをコンクリートで塗り固めた、ガラス窓のある建物だ。清潔な水が出る水道、太陽光パネルの付いた電灯、携帯電話の充電ステーションも備わり、理髪店のラジオからは音楽が流れ、集会場ではテレビでサッカー観戦ができる。
アフリカ・ウガンダのビディビディ難民居住区には南スーダンからのがれてきた難民が多数くらしています。
南スーダンは、スーダンから独立しましたが、独立後2年たった2013年12月に政権争いから内戦が勃発、和平協定が一旦はむすばれたものの2016年7月に合意がくずれ、無差別の殺戮がひろがって数万人の人々がウガンダにのがれました。ウガンダ政府は、難民居住区としてビディビディを開放、1日あたり約6000人が到着しはじめました。
そして今では、約25万人の難民が、いくつもの集落をつくってビディビディでくらしており、そこは、バングラデシュにあるロヒンギャのキャンプについで世界で2番目におおきな難民居住区になりました。
ウガンダ政府は、ビディビディの学校や診療所の大半を耐久性のたかい施設にたてかえ、水道網や農地も整備し、難民居住区を持続的な都市にしようと計画しています。都市が形成されつつある今、難民たちも、自分たちの意見を街づくりに反映させたいとかんがえています。
ただし難民たちが、長期的に安定した生活をおくるためには、支援の枠組みを、従来の人道支援から、民間の経済活動をそだてる方向へ抜本的に転換する必要があります。
歴史的にみると、たとえばベネチアは5世紀に、イタリア本土の戦乱をのがれてきた難民たちによってきずかれた都市であり、またパレスチナ難民キャンプも、中東の近隣地域にひけをとらない街並みに今やなっています。したがってビディビディも、恒久的な都市になるという可能性を否定できません。
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世界中で現在、祖国をあとにする難民は記録的な数にのぼっており、その対応に世界がおわれています。数百万の人々が仮設キャンプでくらし、その維持費は年間数百億円にものぼります。
しかしウガンダは、壮大な実験を開始しました。難民が都市をつくった例は過去にもあることから無謀な計画とはあながちいえません。ただし従来の人道支援とはことなる、民間の経済活動をそだてる方策が必要です。支援から脱却し、支援に依存しない自立の道へすすめるかどうか。
あたらしいタイプの都市がどのように形成されていくのか、ビディビディにおいて歴史的な実験がすすんでいるとかんがえてよいでしょう。この過程を記録し研究している人々もいます。
『ナショナルジオグラフィック』2019年4月号は、丸ごと一冊「世界の都市」を大特集していました。歴史的につねに、都市は、おおきな役割をはたしてきました。
そもそも文明(古代文明)は基本的には都市からはじまりました。そしていくつかの都市は成長して都市国家になりました。
さらにいくつかの都市国家は、ほかの都市国家を征服あるいは包含して領土国家(領域国家)になりました。しかし都市は、領域国家の時代になっても、その国のあるいはその地域の政治・経済・文化の中心地としておおきな役割をにないつづけました。
その後、いくつかの選択された都市はさらに成長して大都市になりました。たとえば日本には、政令指定都市があります。このような大都市は県と同等か、あるいは県よりもおおきな力をもつようになっています。都市の時代が到来しています。
そして今日、グローバル化(全球化)の時代に突入するとともに巨大都市(メガシティ)がいくつもあらわれはじめました。現在は、領域国家の時代から全球社会の時代への過渡期であるとかんがえられます。
- 都市国家の時代
- 領域国家の時代
- 全球社会の時代
それではこれからの先の時代は、都市は、どのような役割をはたしていくのでしょうか?
かなり先になるかもしれませんが、未来の全球社会では、領域国家の国境の存在がよわまり、全球ネットワークの方が重要になって、それぞれの地域の拠点として都市の役割がもっとつよくなるでしょう。領域国家の役割がよわまり、全球的にひろがる都市ネットワークが全球社会をむしろささえていくようになり、都市の役割はますますおおきくなっていきます。
『ナショナルジオグラフィック』の今回の大特集により、都市に注目して、歴史あるいは文明をあらためてとらえなおすことができました。また未来のネットワーク社会を予想するためのポイントとしても都市が重要であることがわかりました。
▼ 関連記事
「トーキョーを歩く」(ナショナルジオグラフィック 2019.4号)
「未来都市のマスタープラン」(ナショナルジオグラフィック 2019.4号)
あたらしい都市ができる -「難民の都市、現る」(ナショナルジオグラフィック 2019.4号)-
▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本語版』(2019年4月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2019年