地形という視点から日本史をとらえなおすことをおしえてくれる本です。
特別対談と次の5章から構成されています。
特別対談 竹村公太郎X荒俣宏 地形をみることで歴史の本質を理解する!第一章 徳川家康幕府260年の礎となる都市計画第二章 織田信長・豊臣秀吉 天下人の都市計画第三章 日本の都市と地形の秘密第四章 外交・合戦の地形の秘密第五章 時代の移り変わりの戦いと地形の秘密
たとえば第一章を見ると、一面の湿地帯だった関東平野を肥沃な土地へと変えた徳川家康が、関東平野の地形を非常によく理解していたことがわかります。現在の日本の中心地がいかにして形成されたかについて、地形というあたらしい観点からとらえなおすことができてとてもおもしろいです。
そもそも歴史とは時間的な流れであり、年表や物語で本来は理解するものですが、本書は、地形という空間をつかって理解しようとしています。
情報処理の観点からいうと、歴史とは時間的(時系列的)に認識されることであり、一方の地形は空間的に認識されるものであり、本書では、それら両者を見事にむすびつけて理解をふかめています。
地形を見て歴史を読むということは、空間を見て時間的な流れを読むということであり、地形(空間)は、様々な情報を並列的にとらえることを可能にし、歴史(時間)は情報を一本の流れに統合する役割を果たします。
ここに、空間を利用した情報の並列処理と、時間を利用した情報の統合的アウトプットの一例を見ることができます。
空間(地形) :並列的なプロセシング
時間(歴史) :統合的なアウトプット
このように、地形(空間)と歴史(時間)は情報処理の観点からとらえなおすことができるわけです。従来の地理学と歴史学も、このような観点からとらえなおし、両者をくみあわせていくことにより、日本に関する認識をさらにふかめるために活用できるでしょう。
文献:『地形から読み解く日本の歴史』(別冊宝島)宝島社、2014年5月10日